ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月15日 1026時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
サイファーはSu-35BMを"アイゼン・レーゲン"の散弾ミサイルの被害範囲外ギリギリである9000フィートまで降下させてから機体を傾け、"アイゼン・レーゲン"の施設の状況を確認した。レーダーと各種地対空ミサイル、自走対空機関砲・・・・・・。
『畜生、まるで要塞だ。こんなのをどうやって破壊すればいいんだ!?』
『ランチャーを潰そうにも、かなり厳しいぞ。SAMや高射砲がそこら中に設置されている』
サイファーはかなり高い高度から"アイゼン・レーゲン"を観察した。目標は、かなりの大きさかつ、移動しないものだ。しかし、持ってきたKh-59のアウトレンジから散弾ミサイルを撃たれてしまっている。だとしたら・・・・・・。
『マングース1よりガーディアンへ。兵装切り替えのため、一端基地への帰還を要請する』
『マングース1、何か考えでもあるのか?』
「ああ。一つだけある。一か八かの考えだし難しいが、試す価値はありそうだ」
『・・・・・・わかった。基地に連絡する。何か用意して欲しいものでもあるのか?』
「BRAB-1000通常爆弾とBRAB-500通常爆弾をありったけ用意して貰いたい」
『基地に連絡しよう。他には?』
「それだけで十分だ」
『了解した、用意させる。君が帰還する頃には全て揃っているだろう』
「マングース2、聞いたか?」
『はい。援護します』
『AWACSガーディアンより作戦中の戦闘機へ。燃料の残りが少ない者は帰還せよ。繰り返す。燃料の残りが少ない者は帰還せよ』
グリペンやF/A-18D、ミラージュ2000など十数機が基地への一時帰還を要請し、承認された。
『いいか、忘れるな。"アイゼン・レーゲン"の射程外から出るまで高度8000フィート以上を飛ぶんだ。いいか、8000フィートより下は飛ぶなよ』
基地へ帰還する戦闘機の集団は高度を高く取り、悠然と編隊飛行する。その下でクラスター爆弾の花火が上がった。だが、全ての戦闘機が危険高度域の外を飛んでいたため、ノルドランド空軍のパイロットたちは誰も被害を受けることなく帰還していった。
1996年 2月15日 1053時 ノルドランド ヨアキムロル基地
『マングース1、マングース2。GCAで誘導する。着陸準備せよ』
「了解。着陸準備する」
サイファーはスイッチを押し、ギアを下げた。HUDに"Gear Down"の文字が表示される。
「マングース1から管制塔へ。ギアを確認できるか?」
『管制塔からマングース1へ。ギアダウン確認。誘導する』
サイファーは後ろをちらりと見た。ジャガーが乗るJAS-39Cのギアが下りているのを確認する。
『マングース1、タッチダウンまで15マイル』
サイファーはHUDに表示される速度、高度、ローカライザー、グライドスロープを確認した。全て適正な数値だ。風は向かい風で、機首から見て11時の方向からやや強めに吹いている。
ドシン!という衝撃が機体に伝わり、フランカーが滑走路に着陸する。グリペンも後に続いた。
『マングース隊へ。D2誘導路に向かえ。兵装を用意してある』
Su-35BMとJAS-39Cが向かった先のエプロンに用意されていた物は、大量のFAB-1500通常爆弾とMk-84通常爆弾だった。整備員が素早くドリーで爆弾を運び、タンクローリーから燃料を戦闘機に注入する。先ほどまで空対地攻撃ミサイルを搭載していたため、パイロンに吊り下げていた空対地ミサイル用ランチャーを航空機爆弾用のエジェクターラックに取り換えねばならなかったため、再出撃には更に時間を要した。サイファーとジャガーは一旦戦闘機から地上に降りて、兵装の転換が完了してから機体の状態を自らの眼で確認した。散弾ミサイルや対空兵器による損傷は無く、燃料の再補給さえ完了すれば、いつでも出撃可能、といった状況だ。
ふと滑走路の方を見て見ると、F-16CやF/A-18C、ミラージュ2000Dといった戦闘機が続々とアプローチしてくるのが見えた。あの連中も、攻めあぐねた結果、燃料の残りがビンゴに達して戻ってきたのだろう。着陸した戦闘機は列を成してエプロンへと進入を開始した。
『タワーからエプロンで待機中の戦闘機へ。準備などが完了した機体は離陸準備に入れ。帰還中の戦闘機は一旦、指示する空域の上空で待機せよ』
周りを見ると、エプロンは多くの戦闘機でひしめき合っていた。これ以上無理に駐機させると、身動きが取れなくなってしまうだろう。
『タワーより全戦闘機へ。エプロンが混雑している。離陸機を優先して動かす。着陸機は上空で待機せよ。繰り返す。離陸機を優先する。着陸機はそのまま待機せよ』
やがて、離陸許可を得た2機のF-15Eが滑走路に向かってタキシングを始めた。続いて2機のグリペンが動き、タイフーン、F-16C、MiG-29SMTなども滑走路に向かう。
『タワーよりライノ隊、離陸を許可する』
F-15Eがアフターバーナーに点火し、一気に離陸した。間を開けずにJAS-39Cも空へと舞いあがる。
『ライノ隊、高度8000フィートを維持しながら"アイゼン・レーゲン"に向かえ。イエローテイル隊、滑走路に向かい、可能であれば即時離陸せよ』
出撃時には40機程度だった戦闘機は30機前後まで減っていた。その殆どが"アイゼン・レーゲン"の散弾ミサイルによって撃墜されたのだ。
轟音を立ててトーネードIDSが離陸滑走を始めた。胴体の下にはGBU-12レーザー誘導爆弾を、翼のパイロンには自衛用のAIM-9Lが搭載されている。
ようやくサイファーとジャガーの離陸の順番が回ってきた。サイファーは今一度エンジン、ラダー、エレベーター、フラップ、推力偏向ノズルの状態を確認する。全て状態は完璧だ。
『マングース隊、離陸を許可する』
『マングース1、離陸』
サイファーはスロットルレバーを前に出し、VR速度まで加速させて操縦桿を引いた。Su-35BMはふわりと浮かび上がり、あっという間に雲の中へと消えていった。僚機のグリペンも後に続く。
サイファーはデジタルマップを確認し、ターゲットへの道のりを再度確認する。エンジンの推力やレーダーも全て正常。作戦を行うには申し分ないコンディションだ。サイファーは続いて高度を確認する。操縦桿を引きながらエンジンのパワーを上げ、12000フィートまで上昇させた。基地から数百マイルも飛行すれば"アイゼン・レーゲン"の射程範囲内に入ってしまう。
ジャガーはコックピットの中で周囲を見回した。生き残り、再出撃に向かう戦闘機が編隊を組んでいる。果たしてこの先、どれだけのパイロットが生き残れるだろうか。アイゼン・レーゲンだなんていうバケモノのような兵器をジャガーが一度も見たことが無かった。しかしながら、あれを排除しなければ、自分が所属している航空団どころか、ノルドランド軍自体が全滅しかねないのも確かだ。
『ヨアキムロルタワーより攻撃部隊へ。以後は周波数113,37でAWACSガーディアンと交信せよ』
『113.37、了解』
戦闘機乗りたちが一斉に無線の周波数を切り替える。
『AWACSガーディアンより攻撃部隊へ。君たちはこちらの管制下に入った。高度8000フィート以上を維持しつつ、ターゲットに接近せよ』
1996年 2月15日 1117時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
暫く飛んでいると、視界の下で爆発が何度も起きているのが見えた。"アイゼン・レーゲン"の散弾ミサイルの爆発だ。だが、8000フィートより高い高度を維持しているノルドランド空軍と傭兵の連合部隊には全く被害を及ぼすことは無かった。
『AWACSガーディアンより攻撃部隊へ。ターゲットまで130マイル。攻撃準備せよ』
無線機をカチカチと鳴らす音が鳴る。ジッパーコマンドというやつだ。攻撃部隊のパイロットのうち何人かは、生きた心地がしなかった。またあんな死の雨が降る空域に行くのか、と。特にノルドランド空軍のパイロットはそんな思いでいた。だが、サイファーをはじめとした傭兵連中は違った。今度こそあのデカブツを仕留めて、多額の報酬を得るのだ、と。再び戦闘機の編隊の下で連続した爆発が起きた。傭兵たちが最も好む死と報酬を掛けたオペラの第二幕は、間もなく幕を開けようとしていた。