ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月15日 1117時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
『AWACSガーディアンより攻撃部隊へ。ターゲットの攻撃に向かえ。高度は8000フィート以上を維持せよ』
戦闘機部隊は高い高度を悠然と飛び、ターゲットを目指した。低い高度で爆発が起きていないことを見る限り、敵は"アイゼン・レーゲン"の次弾装填中のようだ。
『こちらピットヴァイパー1、ターゲットをようやく発見した。奴ら、随分離れたところにレーダーを置いてやがった』
ピットヴァイパー隊が探していたのは、"アイゼン・レーゲン"の狙いを定めるためのレーダー施設だ。長射程の対空兵器というのはターゲットの発見、識別、照準に防空レーダーが必ず必要になる。それは"アイゼン・レーゲン"とて同じであった。
だが、"アイゼン・レーゲン"の目標照準・火器管制レーダー施設は遠く離れた場所にあり、なかなか見つけることができずにいたが、ようやくそれを見つけることに成功した。
『ピットヴァイパー1、ミサイル照準完了・・・・・・発射!』
1996年 2月15日 1119時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
「敵ミサイル接近!こちらに向かってきます!」
「何だと!?」
この巨大なレーダー施設は"アイゼン・レーゲン"の目ともいうべきものだ。この施設が潰されれば目標にミサイルを撃ち込むことが極めて困難な状況になる。
レーダースクリーンには高速で飛来してくる物体が光点となって映し出されていた。このままではレーダーを破壊されてしまう。
「防空部隊は何をやってる!?」
「呼び戻していますが、連絡が取れません!」
「撃て!撃つんだ!」
1996年 2月15日 1121時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
"アイゼン・レーゲン"を守る高射部隊の動きが慌ただしくなった。9K37やHQ-7といった地対空ミサイルシステムが稼働し、高高度を飛ぶ敵機に狙いを付ける。
「敵機接近!」
「ターゲットロック・・・・・・何だこれは!?」
「畜生!ジャミングだ!」
「ECCM!早く回復させろ!」
「ダメです!あらゆる周波数で妨害されています!」
9K37のレーダー画面は砂嵐状態で、もはや何がどこにあるのか全く判別をできない状況になっていた。無論、ミサイルの狙いを定めるなど不可能である。
やがて、東の向こうで大きな爆発音と共に煙が立ち上るのが見えた。確か、向こうにはS-300地対空ミサイルシステムの陣地があったはずだ。
「畜生!」
1996年 2月15日 1126時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
一面雪に覆われた平原の遥か上を4機のEA-6Bプラウラー電子攻撃機が飛行していた。翼と動体の下にはAN/ALQ-99電子妨害ポッドと増槽、AGM-88D対レーダーミサイルを吊り下げている。
『こちらシープ1、敵の防空レーダーの電波を捉えた。間もなくミサイルの射程内に捉える』
『シープ2からシープ1へ。敵のレーダー照射を確認。周波数解析・・・・・・・妨害電波送信開始』
EA-6Bプラウラーが敵のレーダーに"見えない"攻撃を仕掛け始めた。映画や漫画のように、薄い光を放つ波のようなものが発せられることも、ブーンという電子音が鳴ることも無い。しかし、その効果は確実に敵の防空レーダーの画面に表れていた。
『こちらシープ4、敵対空レーダーの電波を捉えた。情報をデータリンクで送信する』
『シープ1了解。こちらも敵レーダーの電波を補足。攻撃する』
プラウラーから一斉にAGM-88Dが発射された。このミサイルはパッシブホーミング式で、レーダーが放つ電波の発信源目掛けて飛んでいく仕組みとなっている。すなわち、敵がレーダーのスイッチを切らない限り、自らミサイルを自分たちの方へと誘導してしまうことになるのだ。
1996年 2月15日 1129時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
「中佐、僅かながらですが、敵のジャミングの隙を見つけました。数秒ごとに妨害が弱まる事があります」
「そんなの役に立つものか!ECCMはどうなっている!?」
「未だに回復しません!」
「司令部に連絡は!?応援部隊は来るのか!?」
「それが、通信にも妨害を受けていまして、未だに繋がらない状態です!」
やがて、轟音と共に雪が積もった西の丘陵の向こうで黒い煙がもくもくと立ち上るのが見えた。
「今のは何だ!?何が起きた!?」
「敵の攻撃です!」
「くそっ!被害状況を報告しろ!」
再び爆発。
『中佐!レーダーがやられました!これでは"アイゼン・レーゲン"を射撃しようにも、目標を照準できません!』
「くそっ!」
1996年 2月15日 1132時 ウェルヴァキア クノフフォルヴァ平原
サイファーは上空から"アイゼン・レーゲン"の発射施設に狙いを定めた。FAB-1500の安全装置を解除し、投下準備をする。HUDにピパーが表示され、それが"アイゼン・レーゲン"の発射設備に重なった瞬間、爆弾をリリースする。1500㎏の爆弾が落下し、巨大なミサイルランチャーを直撃した。サイファーはそれを8500フィートの高さからやってのけたのだ。
『まじかよあいつ・・・・・』
『冗談だろ。誘導爆弾でもないのに、あんな芸当をできる奴がいたとは・・・・・・』
『あれが・・・・・・"円卓の鬼神"か・・・・・・』
サイファーはSu-35BMを再び上昇させ、ループ機動してからまた次の目標に狙いを定めた。山の向こう側にある発射施設だ。投下された爆弾は正確に目標を捉え、炸裂する。中のミサイルの爆薬や燃料に引火したことによる二次爆発が数秒後に起きた。
"アイゼン・レーゲン"のミサイルの発射設備はまだ幾つか生き残っているが、レーダーを破壊されたため、目標照準が困難になっていた。その為、散弾ミサイルのよる攻撃がピタリと止んだ。
『やるぞ!あいつに遅れを取るな!まだ獲物は残っている!』
F/A-18DからSLAMが発射され、散弾ミサイルのランチャーに電力を供給していた巨大な発電施設が崩れていく。F-15Cやタイフーンなどは上空にいる敵戦闘機の残党狩りを始めた。
『Fox2・・・・・・スプラッシュ!』
MiG-23がミーティア空対空ミサイルの破片を食らってズタズタに引き裂かれた。
『やられた!脱出する!』
Su-35BMは急降下すると、まだ残っている爆弾を一つずつ、まるで精密誘導弾のように敵軍の設備に命中させていく。後から続くJAS-39CはAGM-65D空対地ミサイルを1発ずつ、"アイゼン・レーゲン"の電力供給設備に命中させて飛び去った。
地上では巨大なミサイル発射設備が攻撃されたことによる黒煙が連続して立ち上った。最後の弾道ミサイルランチャーが爆発し、"アイゼン・レーゲン"は完全に破壊された。その攻撃を行ったパイロットは上昇し、まだ殺し足りないと言わんばかりにウェルヴァキア空軍の戦闘機を狩り始めた。破壊され、瓦礫となった建物、それに押しつぶされて死んだ兵士、燃え盛る車両。まるで、神話に出てくる地獄を再現したような光景がそこにはあった。その光景を作り上げた最大の功労者。それはもちろん"円卓の鬼神"であった。