ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月20日 0811時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地
「さて、諸君。大物を仕留めて、報酬に浮かれているところ悪いが任務だ。これを見てくれ」
ロビン・リー少佐が集まったパイロットを見回して机の上のキーボードを操作した。スクリーンにノルドランドとウェルヴァキアの地図が表示される。
「防空レーダーが我が国に接近中の敵編隊を捉えた。かなりの数故、恐らくは爆撃機部隊と考えられる。近くのパーネリウム航空基地から戦闘機が出撃したが、応答が無い状態だ。非常にまずいことになっているのは言うまでもない。先日の"アイゼン・レーゲン"攻撃に対する、ウェルヴァキア側の報復攻撃であることは間違い無い。このままだと20分前後で我が国の領土上空に進入する。その前にそれを阻止するのが諸君の任務だ。事態は一刻を争う!出撃!」
1996年 2月20日 0825時 ノルドランド ヨアキムロル基地
『燃料と兵装の搭載が完了した者はすぐに離陸せよ!』
『フロッグ1、離陸を許可する。フロッグ2、続いて離陸せよ』
M88エンジンの轟音を立てながらラファールBが離陸した。それにF-16Cが続く。戦闘機に搭載されているのは増槽と空対空ミサイルだ。
『マングース隊、滑走路まで進入せよ』
サイファーはSu-35BMのエンジン、フラップ、ラダー、エレベーター、エルロンの状態を確認した。全て問題無し。相棒が乗るJAS-39Cも滑走路の端で待機している。
『マングース隊、離陸を許可する』
サイファーはスロットルレバーを押し、アフターバーナーに点火させ、VR速度になるとすぐに機体を離陸させた。ジャガーのグリペンもすぐあとに続く。
『マングース隊、こちらはヨアキムロル管制塔だ。以後は周波数109.33でサンムヘリム防空司令部と交信せよ』
「109.33、了解。サンムヘリム防空司令部、聞こえるか?こちらマングース1だ」
『マングース1、南西からウェルヴァキア空軍機が国境を越えて侵入してきている。既に侵入してきた敵機によって陸軍駐屯地やレーダーサイトなどに被害が出ている。急ぎ撃墜せよ』
「了解だ。獲物の位置を知らせてくれ」
『敵は方位224から接近中。距離85マイル。かなりの数だ。既に地上の陸軍基地やレーダーサイトなどに被害が出ている。急ぎ撃墜せよ』
サイファーは返答する代わり無線機のスイッチを2回、動かした。ジャガーは相変わらずサイファーの僚機の位置につき、真っすぐ飛んでいる。サイファーに無線で呼び掛けてくる様子は全く無い。サイファーにとっては、この方がありがたかった。このノルドランド空軍の若いパイロットは、余計なことは殆ど言わない。
周囲を見ると、ノルドランド空軍と傭兵部隊の様々な戦闘機が空を飛んでいた。
『それにしても、寄せ集め部隊がここまで立派な軍隊になるとはな』
『ついこの前みたいな事が嘘みたいだ。みんなキレイに揃って飛んでやがる』
ノルドランド空軍が傭兵をかき集め、臨時の航空部隊を編成した時は、連携も戦術もてんでバラバラで、殆どの傭兵パイロットは好き勝手に戦い、中には命令を無視するような連中もいた。それが、今では極めて組織化され、洗練された戦術を身に着けた航空部隊になっている。まあ、好き勝手にやっていた連中は、この場からは既にいなくなっている者が多いのだが。
『サンムヘリム防空司令部から飛行中の戦闘機部隊へ。敵機接近。注意せよ』
1996年 2月20日 0829時 ノルドランド上空
『ターゲット確認。攻撃開始』
Tu-95からKh-58対レーダーミサイルが発射された。ミサイルは猛スピードで地上を目指し、ノルドランドのレーダーサイト施設を破壊する。
『ターゲット破壊確認。第2チェックポイント通過中』
この爆撃機部隊のターゲットは、ノルドランド南部にあるアルゼノリム陸軍基地だ。そこには大規模な機甲旅団や地対地ミサイル部隊が駐屯しており、ウェルヴァキアにとっては目障りこの上ない存在だ。
『レーダー照射確認。注意・・・・・・ミサイル!ミサイル!』
『ECM作動!チャフ!フレア!』
ノルドランド陸軍の!PAC-2やアロー2といった地対空ミサイルが発射され、ウェルヴァキア空軍の編隊に向かって来た。
『避けろ!』
『くそっ!今のは近かった!』
『やられた!脱出する!』
機体後部を破壊されたMiG-23MLのコックピットからエジェクション・シートが飛び出し、パイロットを空に撃ち出した。パイロットはパラシュートに吊られた状態で空中を漂いながら、ゆっくりと地面に向かって落下する。
『デコイを使え!』
『目障りだ!破壊してやる!』
Su-24MがKh-59をリリースし、ノルドランド陸軍の防空陣地に向かって発射した。長射程ミサイルが投下され、猛スピードでレーダー施設へと向かう。Kh-59は防空レーダーを直撃し、破壊した。
『ターゲット破壊。このまま最終目標へ向かう』
『忘れるな。持ってきた爆弾は全て落として帰るんだ。最終目標にたどり着けなくても、何かしらの損害を与えろ。これが命令だからな』
『敵の対空砲を確認。破壊する』
MiG-29SMTの編隊が散開し、Kh-29を発射する。陸上から20㎜機関砲の曳光弾を撃ちあげていたゲパルト対空機関砲に命中し、鉄屑に変える。
『破壊完了』
『頼むぞ。こっちはチャフとフレア、ケツの機関砲と電子妨害装置しか無いんだ。お前らがやられたら、死ぬしかなくなる』
『任せておけ。お前らがターゲットに辿り着く前に奴らを皆殺しにしてやる。それまでゆっくり遊覧飛行を楽しみな』
『注意、10時方向に対空陣地を確認』
『ECM作動。曳航デコイ射出』
MIM-23ホーク地対空ミサイルが炎の尾を引きながら爆撃機に向かって来た。しかし、旧式の空対空ミサイルは爆撃機の電子妨害システムに騙され、曳航式デコイの近くで爆発した。Tu-95Mは破壊されたデコイをケーブルごと地面に投棄する。
『高射砲だ。注意しろ』
周囲で爆発が散発的に発生し始めた。M51スカイスイーパー高射砲だ。オーシア製の古い装備であるが、破壊力が大きく、運用コストも安いため多くの国で未だに使われている。
『くそっ!今のは近かった!』
曳光弾の列が地面から空に向かって飛び抜けていった。敵はかなり大規模な防空陣地を構成しているようだ。油断していると、あっという間に撃墜されてしまうだろう。おまけに、間もなく敵機もやって来るはずだ。巻き添えの可能性があるため、さすがに迎撃部隊がやってきたときに地対空兵器が撃ち上げてくるとこは無いだろうが、それでもこの爆撃機部隊が苦境に立たされていることには変わりはなかった。