ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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契約成立

 1996年 1月5日 0913時 ファート共和国 ディオフィッツェ空港

 

 約束通り、男はR-77を1発、トラックに載せて現れた。ウェポンローダーも用意してあった。武器商人は、サイファーの戦闘機を見た。ユークトバニアの最新鋭戦闘機。Su-35BMだなんていうものは、なかなか手に入らないものだ。市場に出回ったとしても、数も少なく、値段もかなり高価でそんじょそこらの傭兵では、まず、手が出ないはずだ。

 武器商人は、その機体の傍に立つ傭兵は只者では無いと考えた。こんなものを、どこで手に入れたのか。確か、ユーク空軍にも納入が始まったばかりで、それも実戦部隊ではなく、試験部隊や教育・訓練部隊に、ごく少数があるのみのはずだ。

 

「あんた、この機体をどうやって手に入れた?」

 

「質問は無しだ。ミサイルをよこせ」

 

「そうだな。悪かったよ。さあ、そいつにミサイルを搭載しよう」

 

 武器商人は、ウェポンローダーを操り、R-77をSu-35BMに搭載した。サイファーは機体の下に潜り、ミサイルの搭載状態を確認した。しっかりミサイルはランチャーに固定されている。彼はミサイルにセーフティ・ピンを通した。

 

「さて、俺の仕事はここまでだ。まあ、機会があって、また何か必要になったら、連絡してくれ。じゃあな」

 

 武器商人の男は、あっという間にその場から立ち去った。さて、食い扶持を探さねばならない。確か、ノルドランド大使館に・・・・・・。そう思った矢先、一昨日、空港のターミナルで見かけたノルドランド人がいるのを見つけた。その男は、今はエプロンでF-15Cの近くにいるパイロットと話している。やがて、パイロットは、2枚の書類にサインをして、その内の1枚を受け取っていた。どうやら契約成立らしい。

 やがて、その男がこっちを向いた。確か、先日、レストランで話した男だ。そして、その男はサイファーの方へ歩いてきた。

 

「なんと、Su-35BMですか!ユークの最新鋭機ですな。一体、どうやって手に入れたのです?」

 

「それは・・・企業秘密、だな。まあ、先の戦争の報酬、とだけは言っておくか」

 

 ベルカ戦争の後、ウスティオやオーシアに雇われた傭兵たちは、こぞって報酬を要求した。傭兵たちは、その金で遊び明かしたり、貯蓄したり、様々な方法で使った。一方、サイファーはというと、戦闘機を1機、買いたいと、ウスティオ空軍司令部に申し出た。サイファーは、ベルカ戦争最高の功労者だったため、その要求はすぐに受け入れられた。軍司令部は、様々な最新鋭機をサイファーの目の前に並べて見せた。F-22A、F-35C、Su-47・・・・・。

 

 その中でも、一際、サイファーの目を引いたのが、Su-35BMだった。ユークトバニアの主力戦闘機、Su-27SMの正当進化版だ。性能は、ベルカの最新主力機のタイフーンやエルジアの最新鋭機ラファールと同等か、それ以上。確かに、オーシアの最新主力戦闘機である、F-22AやF-35Cと比べると、ステルス性では話にならないほど大きく劣り、電子装備の性能も若干落ちる。

 しかし、ステルス性能を度外視した場合、整備性、運用コスト、航続距離、戦闘行動半径、兵器搭載量、空戦性能、対地攻撃性能、全てに於いて、完璧とも言える程のバランスに仕上がっている戦闘機だ。

 

 サイファーが、Su-35BMを要求すると、ウスティオ空軍の将軍は、快く、お金と引き換えに引き渡しを承諾した。そして、数回のテストフライトを行った後、最新バージョンのフランカー晴れて、サイファーのものになったのだ。

 決して安くはない機体だった。しかし、それでも、F-22AやF-35Cに比べたら、割安な戦闘機ではある。

 

「しかし、このような戦闘機を手に入れるとは。やはり、あなたはただ者では無いですな」

 

「持っている機体とパイロットの腕は別物だ。ラファールやグリペンを持っていても、操縦が下手な奴はいるし、空戦の腕前は月並みな奴だっている」

 

「確かに、それはそうですが、これはいち傭兵が簡単に買えるような機体では無いですよ!」

 

「それで、あんた、いや、俺を雇いたいんだってな?」

 

「私、と言いますか、ノルドランド政府ですが」

 

「ふむ。ちょっと待ってろ」

 

 サイファーは、トラベルポッドからノートパソコンを取り出した。それは、常に無線ネットワークに繋がっている、最新モデルのものだ。そこで、ウェブサイトで検索し、ノルドランド連邦共和国の政治体制、財務状況、軍の戦力などを確認した。続いてウェルヴァキア社会人民民主国のものも。

 なるほど。ウェルヴァキアの経済状況は最近、悪化を辿っているようだ。なるほど。それで、ノルドランドから色々と奪おうとしている訳だ。しかも、その少ない金を使い、ウェルヴァキアは密かにベルカの技術者や旧ベルカ軍の兵士を傭兵として雇っている訳だ。

 

「俺の予想だが、ウェルヴァキアの背後にいるのは、恐らく逃亡したベルカ右派の残党の一部やそのシンパの技術者の可能性がある」

 

「なぜ、そう思われるのです?」

 

「奴ら、自分たちを戦犯から見逃した者に兵器の技術を与えると裏で宣伝していたからな。国際テロ組織や、ならず者国家が、そういった連中に目をつけるのは、当然だろ。それに、ウェルヴァキアは、オーシアとユークトバニアからはテロ支援国家と指定されているからな。去年の10月にオーレリアで発生した超大規模爆弾テロ、そしてベルーサで発生した武装集団による銃乱射テロ。オーレリアで起きたテロは、大型トラックに載せた航空機用の500ポンド爆弾を地上で爆発させたというものだが、こちらはオーレリア軍と警察が回収した爆弾の破片から、ベルカ製の航空爆弾が使用されたと判明した。そして、ベルーサのテロの方は、こっちもベルカ製の銃が使用されていた。後に、これらに関わったテロリストが数名、逮捕、殺害されたが、ウェルバキア人とベルカ人ばかりだったそうだ」

 

「ベルカ人の連中・・・・・そこまでして何がやりたいんでしょうかね。それに、ウェルバキアも、なぜそんな連中とつるんでいるのか・・・・・・」

 

「さあな。だが、俺の予想だが、多分、軍事技術の供与が裏にあると思う。奴らの軍事技術は、相当なものだからな。核兵器搭載可能な戦略爆撃機、超高出力化学レーザー兵器、重航空管制機、そしてテロ攻撃にも使用可能な小型戦術核と、MIRVを搭載した大陸間弾道ミサイル。どれもこれも、あらゆる国が喉から手が出るほど欲しい代物ばかりだ。それを裏でも表でも売り出せば、高額な値段が付く。ウェルバキアとベルカ右派残党の間には、正にWin-Winの関係ができたんだろ。ベルカはこっそり超兵器を売りさばいて、経済制裁の目を逃れるために裏ルートで金を得る、一方、ウェルバキアは、戦略兵器制限条約の縛りで、今まで欲しくてもなかなか手が出なかった、大量破壊戦略兵器を密かに手に入れる。正に、最高の取引だな」

 

 ノルドランド人の男は、舌を巻いた。この男が持っているものは、ただ、傭兵としての技能だけではない。頭も相当切れるようだ。

 

「これで確信が持てました。我が国は、間違いなくあなたを雇うべきである、と」

 

「なるほど。暫くは貯金を切り崩す失業生活が続くと思っていたが、そうならずに済みそうだな。俺は、ベルカの奴らが個人的に気に入らんからな。まあ、そいつらを叩き潰すのが、第2の生きがいみたいなものになりそうだな」

 

「どうですか。まずは、内容をよくご確認ください」

 

 男は、サイファーにクリップボードに挟んだ雇用契約書を差し出した。サイファーは改めて、その内容をじっくり15分もかけて吟味した。そして、ペンを取り出し、2枚の同じ内容が書かれた書類サインした。契約成立だ。

 

「では、こちらはあなたが持っていてください」

 

 男は、契約書の片割れをサイファーに差し出した。サイファーは、丁寧にそれを折りたたむと、飛行服の内ポケットに入れた。

 

「それで、早速ノルドランドに出発かな」

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