ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月20日 0831時 ノルドランド上空
『迎撃に上がった部隊へ。こちらAWACSガーディアンだ。爆撃機は南西、方位273から接近中。レーダーサイトが幾つか対レーダーミサイルで破壊された。早いところ奴らを仕留めないと、こっちの防衛システムがボロボロになってしまう』
戦闘機の編隊が南西に向かい、爆撃機を迎え撃ちに行く。地対空兵器による攻撃は一定の効果を上げているものの、完全とは言えない。幾つかのミサイルランチャーと対空機関砲は破壊されている。
とにかく、いつも通りにやればいい。爆撃機の迎撃など、何度もやってきた。注意すべき点は変わらない。護衛機を片付けつつ、爆撃機を破壊する。
下には相変わらず広い雪原と森林が広がっている。ノルドランドの冬は長い。4月中旬頃までこのような雪景色が見られ、5月に春が来たかと思いきや、10月下旬には再び緑豊かな国土は純白の雪に覆われる。
サイファーはSu-35BMのレーダーモードを長距離探索モードのままにしておいた。まだ戦闘機のレーダーでターゲットを捉えられていない。
『AWACSガーディアンより迎撃部隊へ。敵機方位変わらず273。マッハ0.75で接近中』
思ったより遅く飛んでいるようだ。だとしたら、Tu-22MやTu-160のような超音速爆撃機の可能性は低そうだ。Tu-95MやB-52Hなどの可能性もある。この場合は先手必勝。ターゲットを捉えたら中射程ミサイルで一気に片付けるべきだ。
『ガーディアンより迎撃部隊へ。敵機、方位273、距離200マイル。間もなく交戦距離になる』
サイファーは目を凝らした。暫くするとSu-35BMのレーダーがターゲットを捉え、レーダ情報を表示するよう設定した多機能ディスプレイが敵機の情報を表示した。このレーダーはレーダー断面積や反射パターンから敵機の機種を割り出すことができる。
対空戦術マップをディスプレイに表示させると、MiG-29SMTフルクラムやMiG-23MLフロッガーといった機種のアイコンが出た。護衛機だ。そして、爆撃機のアイコンは・・・・・。
「こいつは、まさか・・・・・」
BM-335リントヴルム。ベルカ製の戦略爆撃機だ。1951年に製造開始されて以降、ベルカの主力爆撃機の座を欲しいままにしている。爆弾倉には核兵器を含む大量の自由落下爆弾を搭載可能。オーシアのB-1BやB-2Aといった最新鋭の爆撃機のように、精密誘導爆弾や巡航ミサイルを搭載する能力は無く、防空レーダーにはとんでもない大きさに映る。はっきり言って、飛行機としては骨董品の部類だが、それでもこの爆撃機の破壊力は侮れない。更に、油断していると、機体後部の自衛用機関砲に機体をズタズタに引き裂かれてしまう。
サイファーはこの姿を見た瞬間、1995年6月6日の出来事を思い出した。ベルカの7つの核が爆発し、1万人を軽く越える死者が出た日だ。そして、かつての相棒が敵となった日でもある。
『ベアかと思ったが、全然違う飛行機じゃないか。こいつは何だ?』
『俺もこんな飛行機は見たことが無い』
『ガーディアンより迎撃部隊へ。敵を攻撃せよ。このままだと、敵編隊はアルゼノリム市上空に到達する。奴らが爆弾を落とす前に破壊せよ』
サイファーは兵装選択画面を切り替え、R-77中射程ミサイルを選んだ。暫くすると、レーダーが標的を捉えたことを知らせる電子音が鳴る。
『マングース1、Fox1』
Su-35BMのレールランチャーから射ち出されたR-77は、ほんの僅かな時間、戦闘機から放たれるレーダー波の反射波を頼りに敵を探しだした後、自身の先端に搭載されたアクティブレーダーを作動させた。ミサイルは真っ直ぐターゲットに向かって飛び、BM-335の近くで近接信管を作動させた。爆撃機は機体を切り裂かれ、損傷したが未だに飛行を続けている。
やはりあれだけのサイズの飛行機を1発で撃墜するのは無理がある。サイファーはリスク覚悟で爆撃機に接近し、R-73を1発発射した。今度は敵機にできた損傷が広がり、爆撃機が二つに折れて落下を始めた。これ程簡単に撃墜できたところを見る限り、BM-335には電子妨害装置が搭載されていないか、搭載されていたとしても、かなり旧式で今の新型ミサイルに対する効果が薄いかのどちらかだ。このまま畳み掛け、敵を排除すべきだ。F-15CやF/A-18DがAMRAAMやスパローを放ち、敵機を撃ち落としていく。
『AWACSガーディアンより作戦中の戦闘機へ。エコー・シエラ区域で爆撃機の攻撃による被害が出ている。各機、阻止せよ』
『こちらビーバー1、ミサイルが切れた。補給に戻る』
『ビーバー2、援護します』
『ガーディアンより作戦中の部隊へ。防空司令部より入電。交代の戦闘機を離陸させたと連絡が入った。燃料とミサイルに余裕の無い者は適宜補給に戻ってよい』
『早く寄越してくれよ。連中、次から次に飛んで来やがる。一体、どこにそんな戦力をため込んでるんだか』
だが、サイファーにはこの問題に対する回答に、一つだけ確信していることがあった。ベルカの亡霊。ベルカが裏でウェルヴァキアに兵器を提供しているのだ。だが、ベルカがその見返りにウェルヴァキアから何を受け取っているのか。資源が乏しいウェルヴァキアにベルカが欲しがるようなものがあるとは思えない。
サイファーは敵に集中した。レーダーモードを切り替え、R-77でBM-335にロックオンする。
「Fox1」
『マングース2、Fox1!』
骨董品のような戦略爆撃機が金属の破片を食らった。翼と動体の燃料タンクに幾つもの穴を空けられ、そこから漏れ出した燃料が白く細い雲となって流れ出ているのが見える。しかし、完全に破壊できた訳ではない。サイファーはターゲットとの距離が詰まってきたのを見て、機関砲に切り替えた。HUDの中心に表示されたガンサイトが黒い爆撃機と重なった瞬間、操縦桿のトリガーをほんの一瞬だけ引いた。Su-35BMの30mm短砲身機関砲は、かつてサイファーが乗っていたF-15Cの20㎜バルカン砲と違い、発射速度ではなく弾丸の大きさで破壊力を出すタイプの弾丸だ。砲弾が数発命中し、BM-335は機体の尾部からバナナのように裂けた。
『ターゲットの破壊を確認。流石だな、"円卓の鬼神"』
サイファーはミサイルと燃料の残りをちらりと確認した。まだ敵を狩るには十分残っている。味方機の何機かは武器を使い果たして補給に戻り始めた。それと入れ替わるように後続の味方機が続々とこちらに向かってきている。
『ガーディアンより作戦中の戦闘機へ。あと5分で応援の戦闘機が駆けつける。補給が必要な者は基地へ帰還せよ』
『こちらスタッグ隊隊長、スタッグ1だ。敵を迎撃する。AWACS、指示してくれ』
『こちらAWACSガーディアン。敵機、方位197。距離50マイルだ』
『方位197、ヘッドオン。やるぞ』
『マングース2、Fox1!ミサイル残り1発です』
『マングース1、Fox2!敵機撃墜確認。補給のため一旦帰還する』
『了解、マングース隊。戻ってくるまではスタッグ隊が引き継ぐ』
迎撃部隊の第一陣は、兵装と燃料を使い果たし、再補給に向かって引き返し始めた。これから第二陣の部隊が迎撃に向かってきている。ウェルヴァキアの爆撃機部隊が次から次に国内に侵入してきているため、ノルドランド空軍防空司令部はリレー方式で敵を迎撃し、排除する方法を選択した。既に多数の味方戦闘機が上空にいるため、陸軍の地対空ミサイル部隊はお役御免となり撤収を始めていた。