ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月20日 0856時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地
『マングース隊、高度制限を解除する。行ってこい』
着陸してから再補給までに、地上の整備部隊は素晴らしい働きをしていた。まるで、カーレースのピット整備のような素早い動きで弾薬の再装填と燃料の補給を行った。ノルドランド空軍は補給に戻ってきた戦闘機の再出撃までの時間の短縮に躍起になっており、開戦から今日まで平均して7、8分程度の短縮を実現している。
まだ向こうで爆撃機相手の戦闘は続いていた。ウェルヴァキア空軍は多数の爆撃機をこちらに差し向けてきている。
『ヨアキムロルタワーよりマングース隊へ。これから周波数113,32でAWACSガーディアンと交信せよ』
「113.32、マングース1了解」
『マングース2了解。113,32ですね』
「マングース1よりAWACSガーディアン、聞こえるか?」
『AWACSガーディアンよりマングース1へ。敵機接近。方位224、距離34マイル。高度13000フィートだ』
「方位224、高度13000だな。了解」
『マングース2了解。方位224に向かいます』
『ボア1よりAWACSガーディアンへ。敵の位置を知らせてくれ』
『ガーディアンからボア1へ。敵は方位224、高度13000だ』
『ボア1了解。方位224、高度13000。了解』
『頼んだぞ!』
『こちらパルマへリム管区の防空司令部だ。AWACS、聞こえるか?』
『こちらAWACSガーディアンだ。どうした?』
『ガーディアン、奴らの予想進路を分析した。こっちで連中の進路を計算した結果、奴らの狙いはジンキーガー市だ』
『ジンキーガーだと!?』
『どういうことだ?そこには、軍の施設はおろか、空港も、宇宙開発施設も無いぞ!』
『いや・・・・・・ターゲットに一つだけ思い当たる節がある。郊外の北ジンキーガー原子炉だ!』
『畜生!』
北ジンキーガー原子炉はノルドランド国内最大級の原子力施設で、1日に38万キロワットもの電力を周辺の複数の市町村に供給している。
『北ジンキーガー原子炉が攻撃された場合、最悪のパターンだとメルトダウンを引き起こす可能性がある!例えそうならなくとも、広範囲にわたって高濃度の放射性物質が大量に巻き散らされることになる!いずれにせよ、攻撃された場合の被害は甚大だ!』
『何てこった!』
『ウェルヴァキアの奴ら、そこまでイカレたか!?』
『AWACSガーディアンより全機、聞こえたな。何としても敵爆撃機を阻止しろ!1機たりともジンキーガー上空に侵入させてはならない!』
『了解!』
『やってやる!』
1996年 2月20日 0857時 ノルドランド上空
ウェルヴァキアの指導部は、追い詰められたあのベルカと同じだ、とサイファーは思った。敵は核を持っていない分、こっちにある原子力施設を狙う事にしたらしい。水爆を使ったような熱核爆発とはならないが、それでも高濃度の放射性物質が広範囲に渡って飛び散った時の被害は甚大だ。そうなったら、北ジンキーガーが数分の間に数十年から数百年に渡って人間の住めない放射能を放つ荒野と化してしまう。
『サイファー、聞きましたか?』
「ああ。何としても阻止しないと、報酬を払ってくれる相手がいなくなるからな」
『やれやれ。敵はどれだけ残ってます?』
「さあな。だが、まだまだ獲物は多そうだ」
ウェルヴァキアがどれだけの部隊を用意しているか次第だ。ミサイルを使いきったら、また補給しに戻れば良い。奴らとて、無尽蔵の爆撃機や戦闘機をこちらに侵入させることはできないはずだ。
『AWACSガーディアンより迎撃部隊へ。侵入中の爆撃機を20機確認。全て撃墜せよ』
『オックス1よりガーディアンへ。奴らが爆撃に失敗したら、弾道ミサイルや巡航ミサイルでの攻撃に切り替えてくる可能性は考えられないか?』
『ガーディアンよりオックス1へ。勿論、その可能性は十分考えられる。だが、まずは敵を落とせ』
『ビーバー3被弾!脱出する!』
『スワン4、Fox1!』
『畜生!あいつ、爆撃機の間に割り込みやがった!正気か!?』
『スワン4、何があった』
『敵戦闘機が爆撃機の盾になって割り込んでいる!』
作戦の目的達成のためと考えればあり得る選択肢ではあるが、どう考えても普通ではないやり方だ。
『ガーディアンより迎撃部隊へ。敵戦闘機に構うな。爆撃機を優先して撃て』
『んなこたぁわかってる!』
『敵の爆撃機の残りは!?どれだけ落とせばいい!?』
『現在確認している爆撃機は10機だ』
『陸軍のPACは何をしているんだ!?どこで油を売ってやがる!』
『君らの真下だ。君らがいるからミサイルを射てない』
『畜生!』
1機のF-4EファントムがTu-95の後ろに近づき、ミサイルの狙いを付けた。HUDに映る赤い目標指示ボックスが爆撃機と重なり、ロックオンを知らせる電子音が鳴る。
『ラマ1、Fox2!』
サイドワインダーが放たれ、白い煙の条を引きながら爆撃機に向かった。ミサイルはTu-95の近くで炸裂し、金属片を撒き散らして爆撃機を損傷させたが、撃墜には至っていない。
『くそっ!しぶとい!』
『ラマ2、Fox2!』
今度はファントムの僚機であるJAS-39CがIRIS-Tを射った。今度はサイドワインダーの破片が爆撃機に作った傷が広がり、敵機は破壊された。
『やったぞ!次だ!』
F-4Eは上昇し、次の獲物の真後ろに向かう。サイドワインダーで攻撃するためにベアのかなり近くに接近した時だった。
Tu-95の後部に取り付けられたNR-93機関砲が火を吹いた。ファントムの機体に20mm弾の跡が刻まれる。
「畜生!ラマ1被弾!やられた!」
ファントムの翼と胴体に穴が空き、そこから冷たい外気に晒され、白い条となった航空燃料が流れでてきた。F-4Eはベアから距離を取ったが、曳光弾が追い討ちのように追いかけてくる。
『ラマ2よりラマ1へ。一旦帰還しましょう』
『くそっ!誰かこいつを何とかできないのか!?原子炉がやられてしまうぞ!』
そこまで言った時、ラマ1の後方からミサイルが飛んできた。ミサイルは爆撃機を直撃し、地面に叩き落とす。
ラマ1のWSOが後ろを確認すると、主翼と尾翼の翼端を青く塗装したSu-35BMが近づいてきた。そのフランカーの僚機の位置にはJAS-39Cがいる。
2機は真っ直ぐラマ1を追い越した後、獲物を見つけたのか、一旦上昇してから急降下を始めた。そして、機関砲を射ち、瞬く間に3機の敵戦闘機を血祭りに上げる。
ラマ1のパイロットはその光景に目が釘付けになった。件のSu-35BMがミサイルを続けざまに放ったかと思ったら、2機のTu-95が炎上し、落下していく。
『おい、あいつは一体何者だ?』
『さあな。だが、あんな戦いかたができる奴なんて、そんじょそこらの腕前のパイロットじゃないことは確かだ。それよりも死にたくなければ早く帰りな』
『・・・・・・了解だ』
1996年 2月20日 0901時 ノルドランド上空
ジャガーは必死でサイファーに付いていった。その途中、1機のMiG-23がサイファーに狙いを付けたので、AMRAAMで撃墜した。
サイファーの戦い方は正確かつ、非情だ。ミサイル1発で撃墜できなかった敵機には、漏れなく30mm機関砲の弾を浴びせてとどめを刺している。サイファーはTu-95をR-77で撃墜したかと思えば、護衛機のMiG-29SMTの攻撃を嘲笑うかのようにひらりひらりと回避し、機関砲を放って返り討ちにした。
残りる爆撃機は2機となった。そのうちの1機にジャガーは狙いを定め、AMRAAMを2発撃った。
『マングース2、Fox1!』
ミサイルは見事に命中し、ベアは地面に叩き落とされた。もう1機は距離がかなり離れている。その爆撃機には、別の傭兵のF-15Cが向かい、AMRAAMを放ち、撃墜した。だが、その前に爆撃機はKh-55巡航ミサイルを1発放った。
1996年 2月20日 0902時 ノルドランド上空
『爆撃機がミサイルを発射!』
『畜生!』
『AWACSガーディアンより、ミサイルの予想進路を計算・・・・・目標はジンキーガーの原子炉だ!迎撃しろ!』
『あれを撃ち落とせだと!?無茶言うなよ!いくら速度が遅いからって、あんな低空を飛ぶ巡航ミサイルを撃ち落とせる奴が・・・・・・』
『いや・・・・一人だけいる』
AWACSガーディアンのオペレーター、ピーター・ダールが無線に割り込んだ。
『円卓の鬼神。やってくれるな』
そのあだ名で呼ばれるのは久々だった。サイファーは何も言わずにSu-35BMのエンジンのアフターバーナーに点火させ、巡航ミサイルを追跡し始めた。
『マングース2、援護します!』
ジャガーもグリペンのエンジンのパワーを上げ、サイファーについていく。もしサイファーが失敗したら、自分がミサイルの迎撃をしなければならない。だが、ジャガーはサイファーが失敗するとはとても思えなかった。
1996年 2月20日 0907時 ノルドランド上空
サイファーはアフターバーナーを使用できる時間を最大限に利用して巡航ミサイルを追いかけた。レーダーでミサイルを捉ている。標的はマッハ0.8で飛行している。Su-35BMならばすぐに追いつける速度だ。ミサイルの残りは、R-77とR-73がそれぞれ3発ずつ。
「サイファーよりジャガーへ。ミサイルの残りはどうなっている?」
『IRIS-Tとミーティアが2発ずつです』
「わかった」
サイファーはそれだけ言ってから無線を切った。ジャガーは残弾数の報告をして以降、ターゲットの追跡に集中するために沈黙した。レーダーを遠距離サーチモードに切り替えた。巡航ミサイルらしき標的がレーダーマップに輝点となって映る。かなり低空を飛んでいるようだ。
「マングース2、まずは高いところから追いかける。ミサイルは全部使うつもりでいろ」
『わかりました』
HUDとMFDを確認しながらミサイルを追いかける。巡航ミサイルは戦闘機と違い、不規則な動きをしないところがありがたいところだ。だが、戦闘機よりもサイズが小さいので、レーダーが上手く追跡、捕捉できない場合がある。ミサイルを全部外した場合、最終手段として機関砲で撃ち落とすことになる。サイファーは燃料の残りを確認した。十分ある。
『ガーディアンよりマングース隊へ。ターゲットまで70マイル』
かなり近づいてきた。もうすぐR-77の射程距離内に入る。レーダー画面を見て見ると、小さな標的が輝点となって表示された。
『ガーディアンよりマングース1へ。ターゲットまで65マイル。方位224』
やがて、レーダー画面にターゲットの輝点が表示された。それが敵機として認識される。サイファーはレーダーモードを切り替え、レーダービームをターゲットに照射した。やがてミサイルのシーカーが巡航ミサイルを捉えたことを知らせる電子音が聞こえてくる。
「マングース1、Fox1!」
サイファーはR-77を1発だけ発射した。外れた時に備えて、他のミサイルは温存しておく。巡航ミサイルは戦闘機と違ってECM装置やチャフ、フレアを装備していないが低空を飛び続けるため、地面クラッターに紛れ込みやすい。迎撃には、高度なルックダウン・シュートダウン性能を持つ戦闘機と空対空ミサイルが不可欠だ。R-77は巡行ミサイルの近くまでは向かったが、地面クラッターに騙されてしまい、雪原に突っ込んでしまった。
「くそっ!」
『マングース2、ターゲットを捉えました』
「撃て」
『マングース2、Fox1!』
グリペンからミーティアが放たれた。このミサイルは巡行ミサイル迎撃能力が向上されている。R-77よりはマシな結果が出るだろう、とサイファーは考えた。しかし、ジャガーが失敗した時に備えて、次のミサイルの発射準備をしておく。ミサイルは見事に命中し、巡航ミサイルを破壊した。
『マングース2、ターゲット撃墜!』
『よくやった!マングース隊!司令部には報酬を上乗せするよう言っておく!作戦終了。全機、RTB』