ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 2月24日 1120時 ウェルヴァキア パヴロ・レイマンスキ空軍基地
『ターゲット確認。攻撃する』
傭兵が持つ2機のF-16CからAGM-88D対レーダーミサイルが放たれた。ミサイルはマッハ2.8の超高速で短い距離を駆け抜け、レーダーアンテナを破壊した。地上に設置されたZSU-23-4対空機関砲や2K22ツングースカ防空システムから放たれる曳光弾が空に向かって放たれ、上空の戦闘機を追いかける。4機編隊のA-10C攻撃機のうち1機がそれを嘲笑うかのように回避し、30mmアベンジャー機関砲でその自走対空機関砲を潰した。
『はっはっはっ!潰してやったぜ!隊長!次の獲物はどこだ!?』
『ボア1よりボア隊各機へ。地上のエプロンに爆撃機を確認。更に隣にはデカイ格納庫がある。そいつを破壊しろ』
『任せな!』
4機のA-10Cが綺麗にフィンガーチップ編隊を組んでエプロンの上を飛行しながらMk82通常爆弾を続けざまに投下した。Tu-95Mがへし折れ、格納庫が潰れ、コンクリートで舗装された地面にクレーターが作られる。
『ヒャッハー!見たか!ざまあ見やがれ!』
傭兵たちは勝利を確信し、盛り上がり始めたものの、まだまだ戦いは続いていた。
1996年 2月24日 1123時 ウェルヴァキア パヴロ・レイマンスキ空軍基地
サイファーはBRAB-1000通常爆弾を2発投下し、基地の建物を破壊した。今回、持ってきた爆弾はこれだけで、マングース隊は作戦後の上空哨戒を任されることになっている。
「マングース1、ターゲット破壊」
『ガーディアンよりマングース隊へ。一旦タンゴ・ジュリエット空域に向かい、空中給油を受けろ。その後、敵機を見つけ次第排除せよ』
「マングース1、了解」
『マングース2了解。空中給油を受けます』
サイファーはやや不満そうに答えたが、AWACSの指示には従って空中給油機が待機している空域に向かった。後ろを見て、僚機のグリペンの様子を確認する。JAS-39CにはミーティアとIRIS-T、増槽が搭載されている。
サイファーはターゲット上空から離れ、高度を取った。指定された空域には、ミラージュ2000CやF-15C、F-16A、MiG-25Bなどの機体の姿が見える。
ふと低空の方を見てみると、4機のA-6Eイントルーダー攻撃機が4機のF-14Aトムキャットに護衛されながらパヴロ・レイマンスキ空軍基地の方へ向かって行くのが見えた。今頃、A-6EのパイロットとWSOは獲物に殺到し、破壊するのを楽しみにしていることだろう。
『ガーディアンよりマングース隊へ。空中給油機まで100マイル。位置を確認し、112.56でコンタクトせよ』
『マングース1了解。112.56でコンタクト。確認する』
『2了解。112.56でタンカーとコンタクトします』
サイファーはレーダーで空中給油機を捉えた。オーシア製のKC-135Rストラトタンカーだ。登場から既に40年経っているが、未だにオーシア空軍をはじめ、各国空軍を支える主力空中給油機だ。併用している比較的新しいKC-10Aエクステンダーと共にオーレリアやエメリアにも輸出され、多くの空軍を支えている。
『マングース隊へ。こちらダスター1。給油態勢に入れ』
サイファーはコックピットのスイッチを操作し、給油プローブを伸ばした。エンジンの推力を絞り、KC-135Rの右翼に取り付けられたポッドから伸びるホースドローグ・ユニットにゆっくりと接近する。
『ダスター1からマングース1へ。ランデブーまで800メートル』
サイファーはスロットル、ラダーペダル、操縦棹を巧みに動かし、機体をドローグに接近させた。気流でドローグがやや左右に揺れる。サイファーはタイミングを見計らい、プローブにドローグをすんなりと接続させた。空中給油自体はかなり久々だが、それでも腕は衰えていない。サイファーは機体を安定させ、燃料計のグラフが"F"の目盛りまで伸びるのを待った。やがて、燃料が満タンになると、機体を空中給油機から離した。
「給油完了。待機する」
『マングース2、機体をチェックして給油を受けろ』
『マングース2、給油を受けます』
ジャガーはサイファー程とは言わないものの、それでもそれなりにスムーズに給油を完了した。
『マングース2、給油完了』
サイファーとジャガーは編隊を組み、周囲の状況を確認した。傭兵部隊のF-15CやSu-27SKM、F-14Dといった戦闘機がノルドランド空軍の戦闘機と編隊を組み、飛行していた。
これが全部CAP部隊か?自分を含め、全部で12機。それなりの規模だ。
『ドルフィン1よりガーディアンへ。状況を知らせてくれ』
『AWACSガーディアンより警戒中の部隊へ。ターゲットへの攻撃は継続中。追って指示があるまで待機せよ』
1996年 2月24日 1153時 ウェルヴァキア パヴロ・レイマンスキ空軍基地
『ガリウス1からガリウス2へ。仕上げだ!』
『ガリウス2了解。投下する』
2機のトーネードIDSが基地の滑走路のすぐ上を低速で低空飛行した。この攻撃機の胴体下にはJP233という小型爆弾ディスペンサーが取り付けられている。このディスペンサーから小さな爆弾と対人地雷が滑走路の上にばら蒔かれた。爆弾が爆発して滑走路を掘り返した。暫くの間は航空機の離発着はできなくなるだろう。それだけでなく、対人地雷も置かれているため、滑走路の復旧には、まず、これを処理しなければならなくなる。この基地が再び利用できるようになるには、かなりの時間と人手が必要になるだろう。
『ガリウス1、任務完了』
『ガリウス2、任務完了。帰投する』
トーネードIDSのパイロットとWSOたちは自分たちの仕事に満足していた。僚機である2機のノルドランド空軍のF-16Aとランデブーし、帰路につく。
『ガリウス3からガリウス1へ。いい仕上げでしたね』
『ああ。帰ったらウォッカでもやるか。実は、この前の報酬でユークトバニア産のかなり上等なのが手に入ってな』
『それはいいですね。今夜は飲み明かしますか』
『どうせ明日は休暇になるはずだ。遅くまで飲んでも・・・・・・・』
『注意!レーダーに新たな反応!敵機、8!』
『何だと!?ガーディアン、距離は!?』
『ミサイルアラート!ブレイク!ブレイク!』
『畜生!やばい!』
『チャフ!フレア!駄目だ!間に合わん!』
直後に無線に雑音が一瞬だけ流れ、ガリウス隊との連絡が完全に途絶えた。