ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 3月8日 1013時 ノルドランド フェノベルゲン市郊外
T-80UやT-72Mといった戦車やBMP-3、BTR-80といった装甲車が雪原を進んでいる。これらの車輌を航空攻撃から守るため、ZSU-23-4や9K37、2K12といった自走対空兵器が並走している。
ここ数日、負けがこんできたウェルヴァキア軍には焦りが見えてきた。実質上、陸、海、空の三軍を取り仕切っている参謀議長はノルドランドから豊富な資源を強奪し、人民の生活を豊かにするための戦争だと息巻いて、ウェルヴァキアの最高指導者であるラズヴァン・メリンテ人民評議会最高議長に、様々な作戦を提案し、承認を受けて実行していた。
しかしながら、現役・予備役の総兵力でノルドランド軍を大きく上回り、かつ、ベルカ公国の右派とエストバキア連邦の政府及び軍の急進派との密約によって兵力を蓄えていた。更に、軍の人員を確保すべく、徴兵年齢を19歳から16歳に引き下げることまでした。
ベルカに対しては、先の戦争で活躍したエースパイロット集団の派遣まで要請したが、それに対してはベルカ政府からの回答は得られなかった。
だが、その代わり、旧南ベルカ兵器工廠に所属していた連中がウェルヴァキアに対して支援を申し出た。ウェルヴァキアに兵器の製造・試験を行う設備を建設する土地を、ウェルヴァキア政府が提供するという条件で。
ウェルヴァキアにとっては、まさに理想的な条件だった。ウェルヴァキア政府はその条件を飲み、ベルカからの援助によって、軍を立て直したのであった。
1996年 3月8日 1026時 ノルドランド フェノベルゲン市郊外
まもなくフェノベルゲンにたどり着く。情報によれば、そろそろ上空では援護のための戦闘機がやってくるはずだ。
それにしても、ノルドランドの連中、どうやら勝ちが続いているせいか、油断しているようだ。戦車どころか、重機関銃を載せたハマー1両見かけない。まあ、こっちからしてみたら、それはそれで好都合だ、と先遣隊を率いる大尉は思った。自分たちの後方からは、更に大規模な戦車部隊が津波のように押し寄せてくるはずだ。フェノベルゲンに突入したら、一気に暴れまわってやる。戦車部隊は、森林が点在する大地を雪煙を巻き上げながら進んだ。
1996年 3月8日 1031時 ノルドランド フェノベルゲン市郊外
ノルドランド陸軍のOH-58Dカイオワ・ウォリア偵察ヘリのメインローターの上に取り付けられた観測カメラが、森の梢の上にひょっこりと顔を出した。コパイロットがコックピットのカメラ画面を確認した。
「見ろよ。戦車がぞろぞろこっちに向かってきてるぞ。一体、どれだけ揃えているんだ?」
「ウェルヴァキアはこっちと同じく陸軍が主力だからな。戦車と装甲車、自走砲はユークトバニアやエルジアから輸入したものをライセンス生産して、物凄い数を揃えている」
『ハンター1よりオブザーバー1へ。そちらの状況はどうだ?』
「こちらオブザーバー1、敵の機甲部隊を確認した。T-72MやT-80U、T-90SにBMP-3がぞろぞろこっちに向かってきている。司令部に通達する」
『了解』
攻撃ヘリの部隊はその場でホバリングしつつ、待機した。
『ハンター隊へ。こちらAWACSガーディアン。攻撃せよ』
『ハンター1了解。攻撃する』
林の梢すれすれまで低空飛行していたAH-64A攻撃ヘリが静かに上昇した。このオーシア製の攻撃ヘリは、AH-1Fコブラの後継機として今まで100機以上がノルドランド陸軍に納入され、今でも調達が続いている。このヘリの長所は、TOWよりも射程が長く、誘導が容易になったAGM-114Aヘルファイア対戦車ミサイルだ。更に20㎜バルカン砲よりも威力の高い30mmチェーンガンを装備。光学センサーも強化され、装甲も分厚く、生存性も高くなっている。
『ハンター1、目標確認。レーザー照射・・・・・・発射!』
『ハンター2、攻撃!』
アパッチからヘルファイアが放たれた。ミサイル自体の射程は8km程度と決して長くは無いが、それでも前任者であるAH-1Fコブラの主力兵装であったTOWの倍以上だ。ミサイルは一度上昇した後、戦車の最も装甲が薄い部分の一つである。戦車や歩兵戦闘車をミサイルで片付けたアパッチは、続いて30mmチェーンガンで随伴歩兵が乗ったトラックやジープを射撃した。歩兵が挽肉と化し、車輌は金属の残骸となる。
『ハンター隊、ターゲット破壊確認。帰還する』
兵装を撃ちきったアパッチは、単なる装甲が頑丈なヘリコプターに過ぎない。攻撃ヘリは後方に設置された燃料と弾薬の補給拠点へと引き返していった。
1996年 3月8日 1034時 ノルドランド フェノベルゲン市郊外
アパッチ部隊が攻撃を終えたのと時を同じくして、戦闘機の編隊がマッハ0.8で敵の機甲部隊に対する攻撃に向かっていた。この部隊の目的は、国境付近の後方にいるウェルヴァキア陸軍部隊を攻撃し、フェノベルゲンへ進軍する先鋒部隊と後方部隊を寸断することだ。よって、彼らの目標はトラックやタンクローリー、弾薬運搬車など、決して魅力的とは言えないが、戦略上、叩いておけば有効な敵だ。それ故、この部隊に選抜されたのは腕利き揃いである。当然、その中にサイファーとジャガーもいた。
『今日のエースは俺のものだな。たっぷり稼いでやるぜ』
『バカ言え。まずは"鬼神"を越えてみろ。それに、昨日までの奴の撃墜数見たか?信じられん数だ』
『なあ、参考までに聞きたいんだが、"円卓の鬼神"って本当に人間なのか?』
『ああ。俺は見たぜ。正真正銘の人間だ。しかも、どう考えても、まだケツの青い若造だ』
『まじかよ。もっと厳ついオヤジかとおもっていたんだが』
『注意!敵機接近!方位223!距離100!高度11000フィート!』
『スプーキー1、交戦する!』
『スプーキー2、交戦!』
敵に対する初弾を放ったのは、傭兵連中が乗るF-14Dトムキャットだ。射程150kmを誇る、AIM-54フェニックス空対空ミサイルが放たれる。続いて、MiG-31BフォックスハウンドがR-37を撃つ。この二種類の大きなミサイルは猛烈な勢いで敵機に向かって飛んでいく。
続いてタイフーンやラファール、グリペンがミーティアを、F-2AがAAM-4Bを発射した。これら最新鋭のミサイルの射程は100km以上。電子妨害耐性にも優れ、その性能はAMRAAMを凌駕するとされている。
ミサイルが命中し、MiG-29SMTやMiG-23MLが爆発し、墜落する。しかし、こちらでも被害が幾つか出た。
『畜生!ドルフィン4被弾!脱出する!』
『ビーバー3、やられた!』
Su-27SKMやAV-8Bハリアー、トーネードF.3のキャノピーが吹き飛び、中からパラシュートに引っ張られるようにしてパイロットが飛び出した。全員傭兵連中だ。どうやら、脱出に失敗した奴らはいないようだ。傭兵は、悪運だけは無駄に強いらしい。事実、傭兵たちはノルドランド軍司令部からは、ほとんど消耗品のような扱いを受けているが、伊達に戦場を渡り歩いていないだけあって、正規軍兵士に比べると死亡率は極端に低い。
サイファーは獲物を見つけ、戦闘機を加速させた。ジャガーがその後ろからしっかりとついてくる。サイファーはあっという間に2機のMiG-29SMTに追い付き、30mm機関砲を放った。2機とも炎上し、墜落していく。"円卓の鬼神"は次の獲物を求め、極寒の冬の空を駆け巡った。