ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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反復攻撃

 1996年 3月8日 1112時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯

 

 300年前、かつてウェルヴァキアがアレクサンドル・ツェルソーツ諸侯領と呼ばれていた時代に建設された古城に、フェノベルゲン市侵攻作戦司令部が臨時に設置されている。この煉瓦造りの歴史的価値がある建物は、今は9K37ブークや2K22ツングースカ、9K33オサーといった対空兵器が並び、強固に守られている。

 

 いつまでたってもノルドランド侵攻作戦に目立った成果を上げられていない軍部には焦りの色が出ていた。それは、ウェルヴァキアの最高指導者であり、軍の最高司令官でもあるラズヴァン・メリンテとて同じであった。南ベルカ兵器工厰やベルカの保守派の協力で、ノルドランドは比較的簡単に制圧でき、停戦交渉を有利に進めることができると考えていた。おまけに、徴兵制を憲法で禁じているノルドランドを、徴兵と予備役兵士の動員を基盤とした増強された軍で、数の暴力で制圧できると軍の上層部は考えていた。

 しかし、大きな誤算が生じたのだ。まさか、ノルドランドが、ベルカで起きた戦争に於けるウスティオのように、その豊富な天然資源を背景とした強大な経済力を背景に、世界各地から傭兵を雇うとは軍も政府も、全く予想していなかったのだ。

 

「将軍!参謀本部議長からです!」

 

 イオン・グシェ陸軍准将は副官である少佐から無線機を受け取った。

 

「グシェです」

 

『状況を知らせろ。部隊はフェノベルゲンにはいつ頃到達する見込みか?』

 

「予想以上に敵の抵抗が激しく、かなり消耗していますが、ノルドランド領内で前進を続けております」

 

『わかった。それと、もし、この作戦に失敗した場合は、戦闘部隊の人員拡充をせよと国防長官と最高議長からお達しが出た。私は反対したがな・・・・・・』

 

「徴兵対象を拡大するのですか?」

 

『ああ。徴兵対象年齢を6ヶ月引き下げ、兵卒の基礎訓練の期間を6ヶ月から4ヶ月に短縮。士官学校の教育期間を3ヶ月短縮しろとのことだ。基礎訓練が終了したら、逐次部隊に配属させ、前線へ送るように、と。』

 

「しかし、そんな事をしたら、ただの盾にもならない素人を送り込むようなものですよ!4ヶ月の教育訓練じゃ、銃の撃ち方どころか、ブーツの紐を結ぶことすら儘ならない子供を送り出すようなものです!そんな連中が雁首揃えて前線に送り出されたら、命令を聞く前に撃ち殺され、そうならなくても間違って味方を撃ってしまうのが関の山です!」

 

『私は反対したが、結局は最高議長と他の政治家連中に押しきられてしまった。だが、私が専門技術を身に付けさせるまでの訓練期間がどうしても必要だとなんとか説得したことで、飛行機のパイロットと戦車の乗員、海軍の艦船に乗る水兵は対象にならなかった。ああ、話が逸れたな。これから陸軍の第22機械化歩兵大隊と第33機甲大隊、第56航空大隊と空軍の第1戦闘航空団から支援部隊を派遣させた。まだ援護を出せるかどうかは検討中だ。以上、通信終了』

 

「わかりました」

 

 グシェは無線を切ると、不満そうにため息をつき、椅子に座った。

 

「状況は・・・・・悪いようですね」

 

 グシェに副官である大尉が話しかけた。

 

「最悪だ。こっちは状況が悪いというのに、上の奴らは全くわかっていない!」

 

「議長は何と?」

 

「議長は議長で頭を抱えてらっしゃった。あの素人国防長官め!徴兵対象を拡大して、基礎訓練期間を短縮しろだと!つまり、ナイフやフォークすらまともに使えないガキ共に銃を持たせ、戦車や戦闘機を操縦させろだと!ちょっとした命令すら理解できるかどうかわからん赤ん坊に、そんなことができると思うか?俺は思わん!」

 

「冗談ですよね?」

 

「悪い知らせだ。国防長官は本気でそうするつもりらしい!全く信じられん!」

 

 1996年 3月8日 1120時 ノルドランド南東部

 

 サイファーとジャガーは4機の敵機を排除したが、一息ついている暇は無かった。次の敵がやって来ている。

 

『ガーディアンからマングース隊へ。敵機確認。方位086、高度18000からマッハ1.0で2機が接近中!』

 

「マングース1了解。086、18000。マングース2、確認しろ」

 

『086、18000ですね。迎撃します』

 

 味方の戦闘機部隊の一部が燃料や武装を使いきって引き返し始めていた。自分たちもこいつらを排除すれば、燃料や弾薬を補給しに帰らねばならない。

 

『敵機接近中。距離、330』

 

 戦闘機の速さからしてみたらほんの目と鼻の先だ。サイファーはレーダーモードをサーチからトラッキングに切り替えた。そして、レーダーが敵機を捉えた時の電子音が聞こえてくる。やがて、すぐに敵のレーダー波が機体を撫でるのをレーダー警報装置が捉え、やや耳障りな警告音が鳴る。

 

『注意!レーダー照射を受けている!』

 

 サイファーがECMを作動させるとその警告音が途切れる。続いて、HUDの目標指示ボックスが表示され、緑色から赤に変わり、電子音が鳴り始めた。レーダーロック。

 

「マングース1、Fox1!」

 

 Su-35BMの翼のパイロンにアンビリカルを介して取り付けられたランチャーからR-77が撃ち出された。ミサイルは真っすぐ正面に向かって飛翔し、敵機のすぐ近くで近接信管を作動させ、金属片でズタズタに引き裂いた。

 

『マングース2、Fox1!』

 

 ジャガーが操縦するJAS-39CからはAMRAAMが放たれる。ミサイルはそのまま敵の至近距離に到達し、近接信管を作動させて撃墜すると思われた。だが、途中で不具合を起こしたのか、ミサイルは螺旋を描くような動きをした後、地面に向かって真っ逆さまに落下していった。

 

『くそっ!』

 

 だがジャガーは落ち着いてレーダーを近距離交戦モードに切り替え、兵装選択画面からIRIS-Tを選んだ。コブラヘルメット照準システムを作動させ、向こうに見える敵機の小さな機影を睨む。HMDに接続されたコンピューターがパイロットの目の動きを感知し、敵機にミサイルの照準を付ける。目標指示キューの色が変わり、ロックオンを知らせる音が聞こえてくる。

 

『マングース2、Fox2!』

 

 JAS-39Cグリペンの左翼端のランチャーからIRIS-Tが放たれた。ミサイルは真っすぐ飛んだ後に急カーブして爆発し、MiG-23MLを破壊した。

 

「ミサイルの残りが少ない。マングース1、一旦基地へ引き返す」

 

『マングース2、援護します』

 

『ガーディアン了解。補給が完了次第、作戦を再開せよ。今、入れ替わりの攻撃部隊がそちらに急行している』

 

 決してすべての戦力を一度に投入せず、複数の班に分けてローテーションで逐次投入する。戦力に穴が空かないよう、効率的に必要な戦力を必要な場所に送り込まねばならない。

 

 1996年 3月8日 1133時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地

 

 Su-35BMが滑走路にスッと着陸した。このエースパイロットは単に敵を撃ち落とすのが得意なだけではない。操縦も相当上手い。フランカーは高速でタキシングし、エプロンに進入した。

 

『タワーよりマングース隊へ。燃料と弾薬を補給する。エンジンは動かしたままにしろ』

 

 滑走路の端の方を見ると、他にもミサイルを使い果たして戻ってくるF/A-18Dやタイフーン、F-16Cのシルエットが近づいてくるのが見えた。これから弾薬や燃料の搭載を行う整備兵たちは忙しくなるだろう。傭兵連中は、自分の取り分を少しでも増やすためにも、空軍兵をどやしつけながら補給を急かせるはずだ。まあ、そんな暇があったら、少しでも次の戦いに備えて集中するのがいいだろう。サイファーは頭をヘッドレストに預け、目を閉じ、深呼吸を始めた。傍からは眠っているように見えるが、これがサイファーなりの集中力を高める方法だ。

 

『タワーよりマングース隊へ。滑走路への進入を許可する』

 

 管制官の声を聞くと同時にサイファーは目を開き、エンジンを一度空ぶかししてからキャノピー越しに整備兵に敬礼し、滑走路に戦闘機を向かわせた。後ろからはグリペンがしっかりついてきている。

 

 サイファーは一度、エレベーター、ラダー、エルロンを動かして機体の状態を確認した。全く問題は無さそうだ。

 

『マングース隊、離陸を許可する』

 

 Su-35BMは推力偏向ノズルを使って急角度で離陸した。JAS-39Cもそれに匹敵するくらいの勢いで飛び上がっていく。それを見ていた管制官は、ハウゲン中尉に"円卓の鬼神"の性格がうつったのでは、と別の管制官に冗談めかして言った。

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