ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 1月10日 1326時 ノルドランド共和国 ヨアキムロル空軍基地
ヨアキムロル空軍基地は、ノルドランドでは2番目に大きな空軍基地である。3500mと3100mの滑走路が、丁度、L字型になって造られている。エプロンと管制塔、格納庫、掩体壕があり、C-130Tハーキュリーズ輸送機の他、KC-10Aエクステンダー空中給油機、E-767AWACS、更には主力戦闘機であるF-16CファイティングファルコンとJAS-39Eグリペンも配備されている。
重武装したSu-35BMが1機、微かに雪がちらつく中、滑走路に着陸した。色は明るいグレーで、主翼と水平尾翼の端に青いラインが描かれている。持ち主はサイファーだ。
基地は、剣呑な雰囲気を漂わせていた。エプロンに並ぶJAS-39EとF-16Cには、空対空ミサイルと増槽が搭載されている。地上には固定式や自走式の
この基地には、傭兵も既に到着していた。サイファーが見た限り、F-14Aトムキャット、F/A-18Eスーパーホーネット、タイフーンFGR.4、トーネードF.3、AV-8BハリアーⅡ、MiG-31BMフォックスハウンド、Su-30MKフランカーF2が駐機しているのを確認した。なるほど。どうやら、ノルドランドは、傭兵をそこそこ集めることはできたようだ。もしかしたら、ウスティオで戦っていた時の知り合いもいるかもしれん。そいつらがウェルヴァキア側に雇われた可能性も、ゼロとは言い切れないが。
まあ、傭兵とはそういうものだ。今日までの戦場では味方同士だった者が、翌日からの新しい戦場では敵に分かれているだなんて、当たり前のことである。
サイファーは、機体を指定されたエプロンのスポットに停止させた。戦闘機から降りると、空軍の整備員が、Su-35BMを掩体壕へトーイングしていった。サイファーは、地上の空軍兵に敬礼した。
「今日づけでヨアキムロル空軍基地、第1航空団第1外人航空隊配属となったラミ・"サイファー"・ハータイネンだ」
「自分は、この基地で傭兵部隊の指揮を任されているロビン・リー少佐だ。君たちの指揮は自分が取ることになる」
「どうも、少佐」
「早速だが、ここのやり方を教えよう。君は一匹狼かもしれないが、この基地ではそれは通用せんぞ。全てのパイロットには相棒を付けることになっている」
「わかりました。まあ、"枷"を付けるんですね。裏切り者はすぐに消せるように」
「やれやれ。まあ、それが正しいと言えるだろう。勿論、傭兵同士では組ません。ノルドランド空軍のパイロットと組ませる」
「平時では別ですが、戦時にワンマン・エアフォースができるだなんて思ってはいないですよ」
「うむ。人伝に噂は聞いているぞ。"円卓の鬼神"君」
「その名前は、ウスティオ空軍とベルカ空軍の連中が勝手に付けただけですよ」
しかし、サイファー自身、その渾名が気に入っているのは事実だった。
「まずはブリーフィングルームに来てくれ。君の相棒を紹介するためにもな」
1996年 1月10日 ノルドランド共和国 ヨアキムロル空軍基地
ブリーフィングルームに、傭兵とノルドランド空軍のパイロットが集まってきた。ノルドランド空軍のパイロットは、しっかりと正規のワッペンを飛行服に取り付けているのに対して、傭兵たちの格好は様々だった。
傭兵たちは、お互いとノルドランド空軍パイロットを値踏みするように見ていた。そして、サイファーが入室した時、一斉に傭兵と空軍パイロットの注目を集めた。
ベルカ戦争の英雄、円卓の鬼神。どうやら、噂はあっという間に広がったらしい。円卓の鬼神が、この基地にやって来た、と。容赦ない戦いぶりで、世界最強レベルとも言えるベルカ空軍を叩き潰したパイロット。そいつがどんな奴なのか、皆、気になってしょうがない、といった様子だったのだ。
サイファーが席に座ると、隣の席の傭兵が右手を差し出した。
「あんた、噂は聞いたぜ。幻滅させないでくれよ」
サイファーは、その傭兵と握手を交わした。
「おいおい、あまり期待値を高くするなよ。だいたい、英雄と呼ばれた奴なんて、実際に会ったら幻滅するものさ」
「いや、その目を見ればわかる。それは、幾つもの修羅場を潜り抜け、何度も死神を追い返してきた奴の目だ。そして、俺の勘がこう言っている。お前についていくのは、骨が折れる。だが、お前が空を飛べば、敵はあっという間にいなくなる、と」
「言っておくが、自分の身は自分で守れ。例え僚機であっても他人をあまりあてにするな。それができない奴は死ぬだけだ」
「やはり噂通りか。最強のパイロットについて行くには、それ相応の腕が必要か」
「まあ、前の相棒は、それが出来ずに死んだからな」
「なるほど。やはり噂は本当のようだ。いや、これでわかった。あんたは本物だ。そして、俺なんて足下に及ばない、ということがな」
「それは実戦で確かめろ。それが一番だろ」
「ああ。そうだな」
やがて、ロビン・リー少佐が入室してきた。
「さて、諸君、聞いてくれ。自分は諸君の指揮を任されることになった、ノルドランド空軍、ロビン・リー少佐だ。諸君は、ノルドランド連邦共和国軍の指揮下に入り、戦うことを選んでくれた。諸君らの選択に感謝する。勿論、諸君らには、戦果に応じて報酬を払うと約束する。現在、ウェルヴァキアが、我が国を侵攻する可能性が高い、という話は諸君らも知っているであろう。ウェルヴァキアは、昨日、突如として我が国の南西部地域の鉱山及び油田地帯の割譲を要求してきた。勿論、我が国の大統領は、それを一蹴した。そして、ウェルヴァキアは、大使館を通じて、3日後に最後通告を行い、それを飲まなければ我が国を攻撃する、と言ってきた」
少佐は一度、言葉を切り、傭兵や空軍兵たちを見回した。
「間違いなく、ウェルヴァキアは我が国を攻撃するだろう。そうなった場合、諸君らの活躍に期待する。さて、諸君らには、ノルドランド空軍のパイロットを1人ずつ、僚機として付けることにする。エレメントの組み合わせは、こちらで決めさせてもらった」
少佐がブリーフィングルームのパソコンを操作した。スクリーンに表が映され、それには傭兵と空軍兵の名前が書かれていた。
「さて、組み合わせはこうだ。文句は言わせん。お互い、うまくやってくれ」
サイファーの相棒は、マグヌス・"ジャガー"・ハウゲン中尉と書かれていた。恐らく、前の相棒のPJのように若いパイロットだろう。
「では、お互いに挨拶してくれ。今日から、そいつが君らの僚機だ」
傭兵と空軍兵たちは、自分の相棒を探すべく一斉に席を立った。サイファーは、少し時間をかけて、ハウゲン中尉を見つけた。
「マグヌス・"ジャガー"・ハウゲン中尉です!まさか、ベルカ戦争の英雄と組めるだなんて、思ってもいませんでしたよ!しかし、思っているより若い方で驚きましたよ」
「ラミ・"サイファー"・ハータイネンだ。よろしく頼む。早速だが、ジャガー、一つ聞いていいか?」
「何でしょう?」
「いきなり変な事を聞くが、婚約者か恋人はいるか?」
「いいえ。何故です?」
「じゃあ、長生きしたかったら、戦争が終わるまでは作るな。俺からの忠告だ」
「どういう事です?」
「前の相棒は、その話をよくしていた。それで、ベルカ戦争終戦直前に死んだ。他にもそんな奴がいたが、大抵、生きて帰った試しが無い。それと、もう一つ。自分の身は自分で守れ。最後は、僚機すら頼れない状況になることなんてざらだ」
「わかりました。しっかり心に刻んでおきます」
「よろしい。さて、明日からは早速、飛行訓練だったな。改めてよろしくな、ジャガー」
「こちらこそ、サイファー」