ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 3月8日 1148時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯上空
『AWACSガーディアンよりマングース隊へ。君たちは当機の管制空域に入った。引き続き、敵を排除せよ』
サイファーは無線のスイッチを2回動かすことでAWACSの管制官であるピーター・ダールに答えた。まだ敵の地上部隊は残っているので、サイファーはR-77やR-73に加えて、RBK-500クラスター爆弾も搭載してきた。ジャガーが乗るJAS-39CにもCBU-97が搭載されている。戦車を効果的に排除したいならば、センサー起爆式子爆弾を積むCBU-97の方がより有利だ。この兵器の子爆弾は戦車の熱源であるエンジンに確実に狙いを定めて破壊してくれる。
ウェルヴァキア軍はしつこくノルドランド領内に地上部隊を送り込んできていた。T-72やT-64、BMP-2が列を成し、ノルドランド国内へと向かっている。それに向かって複数の煙の筋が伸びていく。遥か後方で待機していたM270自走多連装ロケットシステムが放ったロケット弾だ。ロケットは一旦上昇してから落下し、弾頭のカバーを開いた。中から無数の対人弾や対装甲弾がばら撒かれた。子爆弾は着弾すると破裂し、戦車のキャタピラや転輪を破壊した。更に運が悪い車両はエンジンや燃料タンクを破壊され、炎上した。この憂き目に遭った戦車に乗った乗員はことごとく車内で蒸し焼きになった。
『ガーディアンよりマングース隊へ。敵機接近。方位233、距離200、高度11000』
「マングース1、迎撃する」
『2、援護します』
サイファーはR-77を選び、レーダーをサーチに切り替えた。2つの目標がレーダーマップ画面上に表示される。次なる獲物はこいつらだ。
「レーダーロック・・・・・・Fox1!」
サイファーはR-77を2発、連続でリリースした。ミサイルは50kmほど飛行し、それぞれターゲットを撃ち落とす。撃たれたMiG-23MLのうち、1機からはパイロットが脱出したが、もう1機の方に乗っていたパイロットはそのまま地面に機体ごと叩きつけられた。
『サイファーが敵機撃墜!』
『ガーディアンよりマングース隊へ。偵察機が敵の戦車の車列を確認した。方位256。距離72マイル。排除しろ』
「方位256、確認。ターゲットを排除する」
サイファーは周囲を見回した。ノルドランド空軍のRF-4E偵察機が低空飛行しながら高速で基地の方向に向かって飛び去るとのが見える。ガーディアンが指定したターゲットを見つけた連中だろうか。
傭兵のタイフーンがSu-24に追い付き、サイドワインダーで撃墜した。その機体に向かって1すじの煙が地上から伸びていく。ミサイルだ。コックピットの中でミサイル警報装置の耳障りな警報が鳴り響く。事前にレーダー警戒装置が反応しなかったことを考えると、赤外線誘導式のようだ。
『畜生!ミサイル!どこから!?』
『パンサー2!逃げろ!』
タイフーンはチャフとフレアを撒きながらミリタリーパワーでミサイルから逃れようとした。アフターバーナーを使ったら、赤外線シーカーの良い的になってしまう。ミサイルの赤外線シーカーはフレアの高温に騙されてあらぬ方向へ飛んでいき、地面にぶつかって爆発した。
『畜生!今のは危なかった!』
『敵を見つけろ!』
再び地上からミサイルが引く煙の尾が伸びていった。続いて狙われたのはノルドランド空軍のF-16だ。
『マンティス1、ミサイル!ミサイル!』
『畜生!振り切れん!』
F-16Cは急降下し、ECMを作動させながらチャフとフレアをばら撒いた。ミサイルは蛇行しながら戦闘機を追いかけたが、ターゲットが地面スレスレを飛行してから急上昇するという動きをした時、目標に追随しきれずに小高い丘に衝突して爆発した。
『くそっ!』
『敵はどこだ!?誰か確認できたか!?』
『わからん!』
再びレーダー警報が鳴り始め、すぐにミサイルアラートがコックピットの中で響く。マンティス1のパイロットはチャフとフレアをばら撒きながらミサイルから逃れようとする。ミサイルは囮に騙されて空中で炸裂した。
『畜生!』
『ガーディアンから作戦中の部隊へ。敵は森林地帯に対空兵器を隠している。排除せよ!』
1996年 3月8日 1152時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯
『キャット1からガーディアンへ。一つ提案があるんだが、Mk77ファイアボムで森林を焼き払うってのはどうだ?』
『なるほど。やってみる価値はありそうだな。Mk77を搭載している機体は?』
『我々が搭載している。敵がどこに潜んでいるかわからん以上、やむを得ないやり方だと思わんか?』
『わかった。許可する』
『任せろ。奴らの骨の髄まで真っ黒こげにしてやる』
1996年 3月8日 1156時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯
ウェルヴァキア陸軍の高射中隊は9K37やZSU-23をバラキューダを使い、巧みに森林の中に隠している。おまけに、工兵部隊が雪を盛り固めて、即席の壁も築き上げていた。
陸軍の軍曹が空を見上げた。高い木々に視界は遮られているが、ミサイルはレーダー誘導や赤外線誘導なので、それが障害になることは殆ど無い。断続的に戦闘機のエンジンの轟音が聞こえてくる。
命令通り、ここで待機して、敵の戦闘機を撃ち落とすことになる。さて、まずはレーダーを作動させて、敵機を狙い撃ちすることとしよう。
「レーダーを起動させ、敵機を発見次第、撃墜せよ」
中隊長である大尉が命令を出した。陸軍兵たちがバラキューダを外し、レーダーを立ち上げた。ミサイルのランチャーが上を向く。
「レーダー作動開始・・・・・サーチモード。敵機を見つけ次第、攻撃する・・・・・・」
1996年 3月8日 1206時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯
4機のF-4Eファントムが低空で森林に近づいた。翼の下には3連ラックでナパームBが搭載されている。その上のランチャーにはAIM-9Lが搭載され、胴体下の4つのランチャーのうち、3つにAIM-7Mスパローが、そして1つにアダプターを介してAN/ALQ-131ジャミングポッドが搭載されている。近代化改修されているとはいえ、ファントムの電子線能力はF-16やグリペンに比べると大きく劣っているので、ノルドランド空軍はミサイルの携行数を1発分減らしてでも、外付けの電子戦装備を搭載させることで補っていた。
「こちらウルフ1、ターゲットまであと30秒・・・・・・20秒・・・・・・10秒・・・・・・・投下!」
4機のファントムが一斉にナパーム弾を投下した。ナパームはジェル状の燃料とスチロールの混合物を巻き散らし、発火させた。あっという間に火が燃え広がり、森林火災を引き起こす。瞬間的に酸素を大量に奪い、その場にいた生物を窒息死させた。
「ウルフ1攻撃完了」
『ウルフ2攻撃完了』
『ガーディアンからウルフ隊へ。敵機接近。方位098、距離230、高度8700。燃料とミサイルに余裕があるのなら攻撃せよ』
全く、人使いが荒いオペレーターだ。とはいうものの、一旦帰還するまでに指定された敵を攻撃して、空中戦を行うには十分すぎるくらいの燃料が残っている。
「ウルフ1了解。攻撃する」
『2、攻撃します』
4機のファントムは編隊を組み、AWACSが発見したMiG-21MFめがけてエンジンの出力を上げ、直進した。機齢25年近いロートル機ではあるものの、MiG-21程度の戦闘機相手に簡単に負けるような戦闘機ではない。おまけに、この機体は配備当初のものと違い、レーダーもECM装置も最新のものに置き換えられているのだ。戦闘機にとって大切なのは、外側のエンジンや機体の空力特性だけでは無い。この先は寧ろ、中身の電子装備の方が重要になってくるのだ。