ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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 1996年 3月8日 1236時 ノルドランド 森林地帯

 

『ガーディアンよりマングース隊へ。森林地帯に隠れている敵対空兵器を排除せよ』

 

「マングース1了解」

 

『マングース2了解』

 

 ジャガーが乗るJAS-39CにはMk82通常爆弾が、 サイファーのSu-35BMにはRBK-250-ZAB2.5焼夷弾が搭載されている。この焼夷弾は所謂"クラスター焼夷弾"で、弾体の中に48個のテルミット弾が収納されている。これが放たれると、子爆弾はそこらじゅうに散らばり、周囲のものを焼き尽くす。

 余りにも殺傷力が強く、一部では規制すべきだとの声が上がっている兵器だが、拳銃の弾だろうが焼夷弾だろうが、殺すことには変わらないし、死体になってしまえばみんな同じことである。

 

 サイファーはレーダー警戒画面を右側の多機能ディスプレイに表示させた。そして、周囲を注意深く確認する。もし、敵を見つけたら、狩りの犠牲者になってもらうだけだ。

 

 やがて、レーダー警戒装置がレーダーのSバンド波が機体を叩いていることを知らせる電子音が鳴り始めた。即座にECM装置を作動させ、妨害する。すぐに警告音は止まった。

 敵は近くにいるはずだ。だが、レーダー車輌とミサイルランチャーが同じ場所にいるとは限らない。ランチャーとは真逆の方位に目標追尾レーダーを設置し、予想外の場所から射撃してくるだなんて、防空部隊がよくやる手口だ。

 

 サイファーは周囲を見回した。そして、再びレーダー警報装置が警告音を鳴らす。サイファーは旋回しつつ、機体を傾けて地上の様子を伺った。

 ミサイルが放たれたことを知らせる電子音が聞こえてきた。森林から2つの煙のすじが立ち上る。サイファーはチャフとフレアをばら蒔き、滅茶苦茶な動きをしながら回避行動を取ってから爆撃体制に入った。ヨーヨー運動をしながらタイミングを見計らい、焼夷弾を2発、投下した。爆弾は着弾と同時にゲル状の燃料を撒き散らし、爆薬で着火させた。猛烈な火炎の嵐が針葉樹と一緒にミサイルランチャーを焼き払い、陸軍兵を消し炭にした。

 

 Su-35BMは一旦、急上昇してから急降下し、地面スレスレを飛行してから、再び上昇しながらチャフを撒いた。ミサイルは見事に空中を漂うアルミニウムにコーティングされたグラスファイバーの短冊やワイヤーに突っ込んでから爆発し、戦闘機には一切の被害を及ぼさなかった。

 

 一方、ジャガーは放たれたミサイルのランチャーを探していたが、緑色のカーペットに遮られ、全く見つからない。JAS-39Cのレーダーモードを対地に切り替えたが、樹木が電波を乱反射させるので上手くいかない。

 

『マングース2、無駄だ。奴らを殺したければ、森ごと焼き払うしか無い』

 

 ジャガーは下を見た。サイファーが先ほど焼夷弾を投下した場所を起点に森林火災が発生していた。黒煙が立ち上ぼり、視界を遮り始めている。そこに4機のF-4Eの編隊が飛んできた。ファントムはお上品にフィンガーチップの編隊を組んだままナパームを投下して、真っ直ぐ飛び去っていった。爆発の直後、激しい炎が一瞬、上に向かって伸びた後、油ぎった、真っ黒な煙がもくもくと上がっていく。向こう側に点在する森林地帯でも同じような光景が広がっていた。

 環境保護団体がこの光景を見たら、空軍に猛抗議するだろうな、とジャガーは一瞬だけ思った。しかしながら、領土を蹂躙し続けるウェルヴァキア軍を放置してしまえば、そんな抗議活動どころでは無くなってしまう。

 

 炎と黒煙でよく目視できないが、対地モードに設定したレーダーには標的が映った。

 

『サイファー、目標を発見しました。破壊します』

 

 グリペンが降下し、Mk82通常爆弾を2発、投下した。爆弾は見事に2台の2K12の自走ランチャーにそれぞれ1発ずつ命中した。

 

 サイファーは9K37の自走ランチャーを見つけた。ECMを作動させつつ、一旦離れてから滅茶苦茶な機動を描くようにして飛び、爆撃コースに入った時にレーダーに捉えられるのを避けるためにチャフを断続的に空中にばら蒔く。

 そして、9K37の列がHUDに表示された爆撃ピパーに重なった瞬間、RBK-250-ZAB2.5をリリースした。爆弾の外殻が空中で裂け、中から無数の焼夷徹甲弾が撒き散らされる。子爆弾はミサイルランチャー、予備のミサイルを搭載した装填装置、弾薬を積んだ大型トラックを直撃した。弾薬や燃料が二次爆発を起こし、周囲にいたウェルヴァキア軍兵士を皆殺しにする。サイファーはSu-35BMを上昇させ、他の場所に潜んでいるミサイルランチャーを警戒して、再び低空飛行を始めた。

 

「マングース1よりガーディアンへ。目標破壊。爆弾を使いきった。補給に戻る」

 

『こちらガーディアン了解。基地には何を用意させればいい?』

 

「RBK-250-ZAB2.5だ。それと、チャフとフレアのカートリッジも用意させてくれ」

 

『ガーディアン了解。それから、マングース1、ちょっと待ってくれ。敵機正面。方位015、距離250マイル、高度8500。マッハ0.8で4機が接近中だ』

 

「獲物が増えただけだ。ガーディアン、要擊コースへ誘導してくれ」

 

『全く、これでも足りないだなんて、信じられん奴だ。高度を9000まで上げて、方位90から回り込め』

 

「マングース1了解」

 

『2了解。迎擊します』

 

 1996年 3月8日 1241時 ノルドランド上空

 

 2機のSu-25TK"フロッグフット"が高空を飛行していた。Kh-25対地ミサイルやS-13ロケットポッド、SPPU-22ガンポッドで武装している。護衛機は2機のMiG-23MLだ。この中隊はノルドランド陸軍部隊を排除し、味方の戦車部隊を援護せよとの命令を受けていた。

 

 制空権は確保されているとは言い難い。そのため、少し距離を離した辺りにMiG-23ML"フロッガー"が2機、護衛機として飛行している。ノルドランド空軍のJAS-39CグリペンやF-16Cファイティング・ファルコン相手では少々分が悪いが、それらに対抗できるMiG-29SMT"フルクラム"はやや消耗が激しく、貴重品となっていた。現在、ベルカ人が新たに建設した工場でMiG-29SMTが急ピッチで生産されているが、飛行隊にある程度の数が行き渡るまでは、MiG-23MLで我慢する他無い。

 

 Su-25TKのパイロットは正面を見た。冬のノルドランドらしい、鉛色の雪雲が空いっぱいに広がっている。ノルドランドは春から夏にかけてはよく晴れるが、秋は雨が多く、冬は雪がどっさりと降る国土だ。一方、ウェルヴァキアは冬でも比較的温暖で、冬でも気温は高く、よく晴れる。隣国でも、これ程環境の差があるのも不思議なものだ。

 さて、たった2機で何とかしろというのも酷なものだ。とはいえ、Su-25TKには4両の戦車と、5両以上の非装甲車両を破壊するだけの兵装が搭載されている。仕方が無い。こいつを使い切ったら、一旦戻るとしよう。

 

 1996年 3月8日 1242時 ノルドランド上空

 

 Su-35BMとJAS-39Cが編隊を組み、森林が緑色の斑模様を作る雪原の上を飛行している。その後ろからはF-15CやタイフーンFGR.4、ラファールBといった戦闘機も続いている。この空域にいるF-16CやJAS-39Cは、血に飢えた傭兵たちに付き合わされている気の毒なノルドランド空軍兵たちが乗っている機体だ。

 

『ガーディアンからマングース隊へ。敵機は正面、距離50マイル』

 

 R-77の射程内に敵が入ってきた。サイファーはレーダーモードを切り替え、敵機を探した。空対空モードになったレーダー画面上に4つの標的のアイコンが表示される。全て獲物だ。

 レーダーはこれらの目標を同時に追尾し、続いてR-77の先端の小さなレーダーが敵機をロックオンした。レーダーが標的を捉えたことを知らせる音が聞こえてくる。

 

「レーダーロック・・・・・Fox1!」

 

 ミサイルは直進し、あっという間に低空に向かって敵機を撃ち落とした。だが、敵機はまだ残っている。

 

『ガーディアンから迎撃に向かう部隊へ。敵の護衛機が向かってきている。注意せよ』

 

 レーダースコープ上に輝点が増えた。他の、特に軍のパイロットからしてみたら、面倒なのがやってきたと感じるだろう。だが、サイファーは、自分に更なる報酬をもたらす獲物がのこのこやってきたと見なしていた。

 

「マングース1よりガーディアンへ。迎撃する」

 

 無線越しに、ピーター・ダールという管制官が嘆息するのが微かに聞こえた。

 

『マングース隊、迎撃を許可する』

 

 いくら作戦の責任者と言えど、血に飢えた傭兵の手綱を完全に操る術をダールは一切持たなかった。そんな司令官を尻目に、傭兵たちは新たな獲物に向かっていった。

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