ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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突撃部隊と迎撃機

 1996年 3月27日 1521時 ウェルヴァキア上空

 

「こちらクレーン1、敵機を排除した。これより上空警戒に移行する」

 

『クレーン2了解』

 

『ガーディアンよりクレーン1へ。攻撃部隊を突入させても良いか?』

 

「クレーン1よりガーディアンへ。突入させても構わん。しかし、SAMやAAガンがまだ残っている可能性はある。十分注意させろ」

 

『ガーディアン了解。攻撃部隊は各自、決められたターゲットに向かえ。戦闘機部隊は引き続き敵機に警戒せよ』

 

 1996年 3月27日 1523時 ウェルヴァキア

 

 先ほどまでよく晴れていた空であったが、北風に乗って鉛色の雲が流れてきた。それはこれから雨交じりの雪を降らせるだろう。ノルドランドに比べてウェルヴァキアはかなり温暖な気候ゆえ、空から見下ろしてみると、この時期だと殆ど白い雪や氷が見られない。溶けだした雪は山から流れ出し、川をかなり増水させる。そのため、この時期のウェルヴァキアは、しばしば水害が発生することもある。

 このような時期でありながら、ウェルヴァキア側からはノルドランドに対して、災害に伴う一時的な休戦を持ち掛けるようなそぶり見られない。

 

 4機のトーネードGR.4が低空で敵の駐屯地の近くへと飛んでいった。この編隊は駐屯地への最初の一撃を放つことになっており、胴体にはBL755というやや古いタイプのクラスター爆弾を吊り下げている。今ではCBU-87やその発展型のCBU-97に取って代わられている傾向にある古い兵器だが、威力としては申し分ないため未だに多くの軍や傭兵に使われている。

 

「バーバリアン1、ECM作動。全機、攻撃に備えよ」

 

 トーネードの可変後退翼に吊り下げられたスカイシャドウECMポッドが強力な妨害電波を発信し始めた。これで敵の地対空ミサイルの火器管制レーダーの画面には真っ白な靄のようなものが映り、ミサイルの照準を困難なものにしているはずだ。

 

 1996年 3月27日 1524時 ウェルヴァキア

 

 嫌な空だ、とキャノピーの外を見たウェルヴァキア空軍のパイロットは思った。迎撃に上がった第一波の戦闘機部隊が壊滅し、ノルドランドの侵攻部隊が国内に入ってきているらしい。

 

『クオッカ1からクオッカ隊各機へ。周囲を警戒しろ。奴らを逃がすな』

 

 ウェルヴァキア空軍の防空システムは、専ら地上のレーダーサイトによるものだ。それも、他国のものに比べたら一世代程古いものを使っており、ネットワークを利用した自動迎撃システムなんてものは搭載されていない。

 ベルカの連中に居場所を与えた時、このような装備も要求したのだが、南ベルカ兵器工廠の残党が示したのは、到底ウェルヴァキア軍に支払えるような値段では無かった。確かに、その分、高性能な防空システムなのだが、ベルカ人の連中は値引きをするのならば、提供する戦闘機と、それに付随する兵装の値段を吊り上げると言ってきた。

 

 当然の事ながら、主導権を握っているのはベルカ人の方だった。彼らの協力なしには、ウェルヴァキアはこの戦争を継続することはできない。ウェルヴァキア軍は渋々、やや古い世代の防空レーダーシステムで我慢することにした。それでも、全天候で問題無く使用でき、ある程度までは複数目標を同時探知、同時追尾することが可能なため、これまでウェルヴァキアが使用していた早期警戒レーダーに比べたら格段に物は良くなった。これが配備されるまで、ウェルヴァキアにあった防空レーダーは1960年代に設置された旧世代のもので、ジャミングに対して極めて脆弱であるばかりか、吹雪や大雨といった悪天候ではまともに機能しないなど、現代では常識である全天候作戦能力を全くもたないポンコツであった。

 防空司令部からしてみたら不満が残るシステムの更新ではあったが、それでもあのオンボロレーダーを使い続けるよりは遥かにマシであることは認めざるをえなかった。

 

 4機のMiG-21MFはエンジンを蒸かし、敵機がいる空域を目指した。アフターバーナーを使用して敵機がいる空域に向かい、かつ空中戦を挑むとなると、この小さな戦闘機の小さな燃料タンクがあっという間に空になってしまうため、ミリタリー推力で飛行している。近代化改修されているとはいえ、このような機体自体に起因する弱点はどうすることもできなかった。それにしても、防空司令部の連中、またフルクラムをケチっているな、とフィッシュベッドの編隊長は思った。MiG-29SMTやMiG-29Sは比較的新しく、ノルドランド空軍の主力機であるF-16に十分対抗可能だが、この戦闘機はここ最近、前線から下げられ、現在は空軍司令部や首都、あるいは主要大都市の防空のための配置換えが行われ、前線にはMiG-21MFやMiG-23MLの飛行隊が回されてきている。

 とはいえ、フロッガーやフィッシュベッドに乗るのは、若手のひよっこばかりでなく、それらの機体の特性を知り尽くしたベテラン揃いでもある。そのため、連中は模擬演習においては、若手が乗るフルクラムを古い機体で打ち負かすこともあった。

 

 あれこれ考えていても仕方が無い。まずは、目の前の敵に集中しなければならない。周囲を見回してみると、南の方からどす黒い、嫌な雲が流れ込んできていた。まだ遠くにあるその雲の中が時折、光を放っているのが見える。これから天気は荒れてくるだろう。しかしながら、自分は侵略者どもを排除しなければならない。向こうにある、雷雲に無暗に入ってしまったりしないように注意しながら。

 

 1996年 3月27日 1525時 ウェルヴァキア

 

『ガーディアンより作戦中の各機へ。お客さんだ。方位191、高度8900、数4、速度マッハ1.1で接近中』

 

 E-3Bのオペレーターである、ピーター・ダール中佐の声が無線から聞こえてきた。ノルドランド空軍のパイロットからしてみたら、厄介事を告げるものであるが、傭兵パイロットからしてみたら、獲物がノコノコやって来たのと同義である。この声を聞いた傭兵たちは、戦闘機のマスターアームスイッチを一斉にオンにした。そして、戦闘機の機首の向きを一斉に南西に変え、迎え撃つ用意をした。

 

『キャメル1、戦闘準備完了』

 

『リザード1、攻撃準備完了』

 

『イエローテイル1、交戦する』

 

『マンティス1、攻撃する』

 

「マングース1、エンゲージ」

 

 10機以上の戦闘機が一斉に南に向かって旋回し、敵機とヘッドオンする体制に入った。あと数秒もすれば、敵機は中射程ミサイルの交戦距離に入ってくるはずだ。

 サイファーは中距離交戦モードに切り替え、敵機を探索した。電子走査式レーダーが複数の敵機を補足し、距離と高度、速度を表示する。目標はそれほどレーダー断面積が大きい訳ではないが、レーダー画面上にははっきりと映っている。どうやらMiG-21のようだ。全部で4機。

 敵は、恐らくはR-27やR-77を装備していないだろう。搭載しているのは、R-73か、もしくは古い世代のR-60空対空ミサイルだろう。R-73はかなり性能が高いので、放たれたら厄介だ。

 

 敵に反撃する暇を与えるというルールは無い。サイファーはR-77を選び、先頭の敵機をターゲットに選んだ。暫くそのまま飛び続けると、ミサイルの先端部のシーカーが敵機に跳ね返って戻ってきたレーダーの電波を捉えた事を知らせる電子音が聞こえてきた。

 

「マングース1、Fox1!」

 

『マングース2、Fox1!』

 

 R-77とAIM-120Bが前方に向かって飛んでいった。この2発はほんの数秒だけ飛んだ後、敵機のすぐそばで近接信管を作動させた。金属の破片を食らった小さな戦闘機はコントロールを失い、コックピットからパラシュートごとパイロットを撃ち出した後、地面に向かって真っ逆さまに落ちていった。

 

『マングース隊が敵機撃墜!』

 

 勿論、敵を撃ち落としたのはサイファーたちだけでは無い。貪欲な傭兵たちが乗るF-14DトムキャットやMiG-25MフォックスバットからAIM-54フェニックスやR-33といった巨大なミサイルが撃ち出され、敵を撃墜する。しかしながら、ウェルヴァキア空軍側もただ黙ってやられているだけでは無かった。MiG-23MLが放ったR-27を食らったF-16Cやミラージュ2000-5がズタズタになる。

 

『やられた!脱出する!』

 

 サイファーは視界の端で、コックピットからパラシュートに引っ張られたパイロットが、炎上する戦闘機から運よく脱出するのを見た。奴の事は、後で空軍の救助部隊がピックアップしてくれるだろう。勿論、そいつが今の緊急脱出で今日の運を使い切っていなければの話だが。

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