ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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迫りくる敵の編隊

 1996年 3月27日 1531時 ウェルヴァキア

 

 上空に向かって曳光弾の列が幾つも伸びていく。これは2K22ツングースカやZSU-23シルカから放たれたものだ。しかし、これらの高射機関砲は殆ど役に立たなかった。AGM-65やKh-59といった空対地ミサイルは曳光弾の射程外から飛んできて、基地の施設や車両を破壊する。そんなさなか、9K37地対空ミサイルや9K33、2K12といったミサイルが放たれた。

 

『シャーク3!ミサイルだ!避けろ!』

 

『畜生!』

 

 爆撃機動に入っていたAV-8BハリアーⅡの編隊がチャフとフレアをばら撒きながら左右に散らばり、上昇を始めた。フレアの白い光が、煙の尾を引きながら地面に落下していく。ミサイルの赤外線シーカーはより温度の高いフレアの方に向かって進路を変え、地面の近くで爆発した。

 

『ふう!今のはやばかった!』

 

『対空兵器がまだ残っているな。シャーク1からガーディアンへ。まだ対空兵器が残っている。誰かに掃除させてくれ』

 

『ガーディアンからシャーク1へ。了解だ。対地兵装を持った機体へ。こちらAWACSガーディアンだ。まだ敵の対空兵器が残っている。ターゲットの情報を更新する。各自、目標を選んで攻撃せよ』

 

 1996年 3月27日 1534時 ウェルヴァキア

 

『ガーディアン、こちらディア1、了解した。対空兵器を掃除する』

 

 傭兵のF-15Eストライクイーグルとノルドランド空軍のF-16Cファイティングファルコンがそれぞれ4機ずつという組み合わせで編成されたディア隊が動いた。F-15EにはGBU-39という最新鋭の小型精密誘導爆弾が多数搭載されていた。この戦闘機にはGBU-39を最大で16発、搭載することができる。この爆弾は精密誘導装置と滑空用のカナードが取り付けられており、高高度から投下された場合はかなりの距離を滑空しながらGPS誘導によって正確に目標に命中する。そのため、かなり射程の長い地対空ミサイルの射程外から攻撃することが可能だ。

 

『ガーディアンよりディア隊へ。偵察機がデータリンクで目標まで誘導する。それに従え。コールサインはオウル1とオウル2だ。周波数121.22で交信せよ』

 

『了解だ。121.22だな』

 

 ストライクイーグルを操縦するパイロットは無線の周波数を切り替えた。

 

『オウル1、こちらディア1だ。聞こえるか?ガーディアンに君と交信するよう指示された』

 

『ディア1、オウル1だ。これより目標まで誘導する。ターゲットの座標はゴルフ・ジュリエット442だ。繰り返す。ターゲットの座標はゴルフ・ジュリエット442だ確認しろ』

 

『ゴルフ・ジュリエット442。確認した。これより排除に向かう』

 

『ガーディアンよりディア1へ。そちらに敵機が向かっている。注意せよ』

 

『ガーディアン、護衛機を寄越してくれ。こっちはサイドワインダーとAMRAAMを2ずつっきり積んでいないんだ。敵が大勢やって来たら対処しきれん』

 

『了解した。手が空いている編隊がいないかどうか確認しよう』

 

 1996年 3月27日 1535時 ウェルヴァキア上空

 

 白い雪が斑状に残る地面の上をMiG-29SMTが2機とMiG-29UBTが2機、編隊を組んで飛行している。先ほど、侵入してきたノルドランド空軍機を迎撃するように命令されて離陸した機体だ。

 

 実は、この複座型のフルクラムに乗っているのは操縦教育課程卒業間近の訓練生と教官パイロットであった。本来ならば、操縦資格と戦技資格を持たないパイロット候補生を前線に投入するような事は決してしないのだが、ウェルヴァキア空軍の戦闘機パイロットの人材不足はもうそのような状況になっていた。現場のパイロットはこの方針に反対している者も少なくなかった。まともな戦技を身に着けていないパイロットを戦場に送り込むのは、無駄死にをさせに行かせるようなものである。

 とはいえ、ウェルヴァキア空軍の戦闘機パイロットの人材不足は深刻だった。出撃の度に戦死もしくは戦闘中行方不明になったり、撃墜されて、無事に救助されたとしても、体に深刻なダメージを負って、パイロットとして復帰不可能になる者も少なくない。ウェルヴァキア空軍は、既に疲弊を始めていた。

 

 しかしながら、ウェルヴァキアの最高指導者である人民評議会議長、ラズヴァン・メリンテは全くノルドランド侵攻を諦める様子は無かった。今のメリンテ議長は、何かにとりつかれたかのようにノルドランドへの侵攻を強行していた。ベルカの技術者連中から提供された兵器を次から次に配備していき、更には、先の戦争で戦犯として訴追され、逃亡中の身であるベルカ人パイロットまで空軍に引き入れ、戦場に送り出していた。

 とはいえ、戦犯扱いのベルカ人からしてみたら、新しい雇い主が見つかったとこれを歓迎する者が少なくなかった。恐らくは、祖国に帰ることは永久に望めなくなるが、それでもオーシアやウスティオの判事によって裁かれる国際法廷に引きずり出されるよりは遥かにマシだ。風の噂では、訴追され、裁判に出された結果、死刑や終身刑の判決を下された者も少なくないという。特に、1995年、6月6日の"ベルカの7つの核"に関わった政治家や軍の上級将校たちには、例外なく死刑や終身刑になっているという。

 一方で、逃亡したベルカの軍人たちは、ここウェルヴァキアのような紛争国に入り込み、軍人に対する教育・訓練を行ったり、実際に戦闘に参加したりしていた。

 

 MiG-29UBTの後席に乗るウェルヴァキア空軍の教官パイロットはちらりと後ろを見た。彼らの後ろからは4機のMiG-23MLが編隊を組んでついてきている。これらのミグに乗っているのは、ウェルヴァキア空軍のパイロットでは無い。ベルカ人の奴らだ。

 

 このベルカ人は、昨年のベルカとオーシアとの戦争で生き残った連中らしい。こいつらは突然、空中戦の教官として基地に派遣されてきた。何故、ベルカ人がここにやって来たのかはわからない。しかしながら、こいつらの腕前は確かだった。何せ、模擬空戦訓練であっという間にウェルヴァキア空軍のベテランパイロットを簡単に打ち負かしたのだから。

 こいつらが教官として招聘されたおかげで、空軍のパイロットの全体のレベルが上がったのは確かだ。しかしながら、ベルカは昨年の戦争でオーシアに敗北した後、オーシアとウスティオによって軍の規模をかなり制限されたのではなかったか。しかしながら、軍人にとっては、そんな事はどうでも良い話であった。パイロットである自分は、更に空戦の腕前に磨きがかかるのであれば、それで構わなかった。さあ、狩りの時間だ。

 

 1996年 3月27日 1536時 ウェルヴァキア上空

 

 E-3Bセントリー空中管制機の機内で、ピーター・ダール中佐はレーダーに新たな輝点が表示されるのを確認した。全部で4つ。新たな敵機だ。どうやら、迎撃機を向かわせてきたらしい。ダール中佐は頭の中で、どの飛行隊に迎撃に向かわせるのが最適か考え、判断した。

 

「こちらAWACSガーディアン。新たな敵機が方位211、高度12000、マッハ0.9で接近中。今から指示する部隊は迎撃に向かえ・・・・・・・」

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