ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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残党狩り

 1996年 4月16日 1211時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地

 

 燃料の補給と弾薬の搭載を終えたSu-35BMとJAS-39Cがタキシングを開始した。誘導路では、F-16CやF/A-18F、タイフーン、F-2Aといった戦闘機が列を成し、離陸に備えていた。

 この基地の管制チームの離発着の捌き方は、更に磨きがかかってきた。長い列があっという間に短くなり、すぐにサイファーとジャガーの編隊が離陸する番が来た。サイファーは一度、滑走路の端でフラップ、ラダー、エレベーター、推力偏向ノズルの状態を確認し、管制官から離陸の許可が出るのを待った。各地を移動しているときは、管制官が常駐しない飛行場を利用することもある。その時は、自分の判断で離着陸を行うが、傭兵として雇い主であるノルドランド空軍の指揮下で戦うと契約している以上、ルールには従わねばならない。

 

『マングース隊、離陸せよ。離陸後は周波数112.44でAWACSとコンタクトし、指示に従え』

 

 フランカーがアフターバーナーに点火させ、猛牛のような勢いで滑走路で加速し、鉛色の空へと標的を求めて飛び去った。僚機のグリペンは、軽い機体をふわりと浮かせ、一番機の後を追う。その後ろでは、F-15EとF-16Cがエンジンの推力を僅かに上げ、待機していた誘導路から滑走路のエンドへと転がった。

 

 かつては滑走路をを除いた基地の敷地の大部分を真っ白に覆っていた雪は、いつの間にか半分ほどの面積に減少していた。気温も上昇しているので、ついこの間のように、飛行服の下に防寒着を着ることも少なくなってきた。

 

 1996年 4月16日 1213時 ノルドランド上空

 

 サイファーは無線の周波数をヨアキムロルのタワーの132.45からAWACSとコンタクトする112.44に切り替えた。

 

「マングース1よりガーディアン、聞こえるか?」

 

『こちらAWACSガーディアン。状況を伝える。敵の数は減っているが、まだ駆逐したわけでは無い。レーダーサイトからの情報では敵は方位228から接近中。迎撃せよ』

 

 サイファーは機体の状態を確認した。エンジンは適切な推力を保ち、操縦桿を動かした時の反応も上々、電子機器にも不調は見られない。空は青く晴れ渡り、所々に薄い雲が見える。狩りには絶好のコンディションだ。

 

『ガーディアンからマングース隊へ。敵機接近中、攻撃せよ』

 

 サイファーとジャガーはこれまでも、かなり良いコンビとして敵と戦い、生き残ってきた。しかしながら、この二人には、目的は同じであっても、決定的に戦う理由を異としていた。

 サイファーの目的は敵を倒し、資金を稼ぐこと。その為だったら、破損して戦闘を続けることができなくなった機体でも容赦なく撃墜し、破壊する。これが軍の戦闘機乗りであれば、既に戦闘不能となった機体に追い打ちをかけることはしない。ミサイルや機関砲の弾丸の無駄になるからだ。しかしながら、傭兵は違う。受け取ることができる報酬の額は、単純に破壊した敵の航空機や地上目標の数や規模によって左右される。その決定的な証拠となるのがHUDカメラやフライトレコーダーの情報だ。そのため、撃墜された傭兵の中には、緊急脱出をしたのち、血眼になって自分が乗っていた戦闘機のフライトレコーダーを探し回る連中も少なくない。

 だが、勿論、生還するに越したことは無い。サイファーは自身の戦闘機のレーダーが捉えた敵機の位置と、AWACSから得られた情報をもとに、敵機に向かうための最適なコースを頭の中で思い描いた。それが具体的なイメージ画像となって、サイファーの頭の中に描かれる。

 

 サイファーはスロットルレバーに力を込め、エンジンの出力をミリタリーパワーまで上昇させた。その動きにジャガーが追随する。

 レーダーで確認すると、敵機の数はかなり減っていた。そろそろパーティーはお開きが近づいてきているようだ。

 

「マングース1よりガーディアンへ。敵の増援が来ている様子はあるか?」

 

『ガーディアンよりマングース隊へ。一部の敵が引き返し始めている。ここを守り切るまであと少しだ』

 

「了解だガーディアン」

 

 サイファーは内心、残念だ、と思った。ウェルヴァキア側が更に兵力を投入してくれば、更に稼ぐことができたのだから。確かに、戦闘機に乗って戦うということは、体力も集中力も大きく消耗し、現実的に、長時間続けるのは非常に難しい。

 

 サイファーのSu-35BMのレーダーが敵機を捉えた。敵の数はかなり減っているようだ。だが、まだ幾つか攻撃を諦めていない

 

「ターゲット捕捉。攻撃する」

 

 Su-35BMのランチャーレールからR77が滑り出し、敵機目掛けて飛翔した。他のノルドランド空軍機や傭兵部隊の戦闘機もミサイルを放ち、残った敵の掃討を開始する。

 ウェルヴァキア空軍のMiG-23MLやSu-24SM、Tu-95SMがチャフやフレアをばら撒き、ミサイルの妨害を試みた。

 幾つかのミサイルはそれに騙されて、明後日の方向に飛んで行ったり、地面に向かって落下していった。しかしながら、大部分は命中し、ウェルヴァキア空軍機を金属の破片で切り裂く。

 

『クソッ!やられた!脱出する!』

 

『ダメだ!コントロールが!』

 

 サイファーはすかさず第二の目標に狙いを定めた。目標は前方をノロノロと飛ぶTu-95SMだ。R77のアクティブレーダーが大きく、のろまな戦略爆撃機を捉える。目標をロックオンしたことを知らせる電子音がコックピットの中で鳴る。

 

「マングース1、Fox1」

 

 R77が猛烈な勢いで飛び出し、爆撃機に向かった。旧式の電子妨害装置しか搭載していない爆撃機は簡単に新鋭のミサイルの餌食となった。無数の金属片を浴びたベアは翼がへし折れ、炎上しながら落下していく。

 

『マングース1、標的の破壊を確認』

 

 一方、ジャガーはその爆撃機を護衛していたMiG-23MLに狙いを定めていた。そいつは反転し、サイファーに向かってどんどん近づいてきていた。

 

 ジャガーは被っているヘルメットのコブラ・ヘルメット搭載式照準装置のバイザー越しにそのミグを睨んだ。緑色の目標指示キューが敵機と重なり、赤色に変色する。HMDと連動しているIRIS-Tのシーカーが敵機のエンジンノズルの排気熱を捉えた。

 

『マングース2、Fox2』

 

 IRIS-Tがランチャーから滑り出し、急カーブしてミグに迫った。ミグは紺碧の空を背景に赤く燃えるフレアを断続的に放出しながらバレルロールを続け、ミサイルを回避しようとした。ところが、運動性に優れ、対妨害性能に優れる新鋭のミサイルはあらゆる妨害をものともせず、ターゲットに追いつき、近接信管を作動させた。

 

『やられた!畜生!』

 

 ミグのコックピットのキャノピーから射出座席が飛び出した。その直後、戦闘機が炎に包まれ、流星のように落下していく。パイロットはそのままパラシュートで空中を漂いながら、ゆっくりとノルドランドの大地を目指した。陸軍の兵士が捕虜としてそいつを拘束するだろう。勿論、パイロットの近くを掠めるように飛んでいく戦闘機の乱気流でパラシュートがもつれたり、爆発した機体やミサイルの破片でその体を切り裂かれたりしなければの話であるが。

 

『AWACSガーディアンより作戦中の戦闘機へ。残りのターゲットは僅かだ。このまま押し切って、排除せよ』

 

 ピーター・ダール中佐がE-3Cからそう言っているそばから、サイファーは3機の敵機を立て続けに撃墜した。他の傭兵やノルドランド空軍パイロットの奮闘もあり、残る敵機はTu-95SMが1機となった。

 

 サイファーは最後の獲物を逃さなかった。2発のR77を放ち、更に1発、追い打ちをかけるように発射した。他の傭兵たちもそいつ目掛けてミサイルを放ったが、最初に標的に肉迫したのはサイファーが放ったミサイルだった。この標的については、多くの傭兵たちが撃墜判定を主張したが、結局のところ、フライトレコーダーやAWACSの記録の解析により、サイファーの撃墜という判定をノルドランド空軍司令部は認めることとなった。  

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