ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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黄昏の進軍

 1996年 5月1日 1500時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地

 

 ようやくノルドランドにも春の訪れがやって来たような気候になってきた。日中の平均気温は20度前後となり、非常に過ごしやすい状況となった。

 それにも関わらず、戦争は続いていた。ノルドランド政府首脳部は、ウェルヴァキア側に対して中立国での和平交渉を改めて提案していたが、相手側に拒否される結果となった。その代わりと言わんばかりに、ウェルヴァキア政府は側は、どう考えてもおおよそ飲み込むことが不可能な要求をノルドランド政府側に突き付けてきた。

 

 そんな訳で、戦闘は続くとこになった。ノルドランド軍中央司令部は、ウェルヴァキア軍の継戦能力を削ぐ作戦を行い、戦争を短期に終わらせる方法を検討していた。そして、その作戦がようやくまとまり、国防省とノルドランド共和国大統領府に提出され、承認されることとなった。

 

「それでは諸君、続いての作戦だが・・・・・これを見てくれ」

 

 スクリーンにはウェルヴァキア南部の区域の地図が映し出された。その一部が拡大され、大写しになるそこが今回のターゲットらしい。

 

「我々はウェルヴァキア軍の継戦能力を低下させる作戦を行うことにした。ターゲットはここ。パグフォルフカの工業地帯だ。ここは・・・・・・」

 

 ロビン・リーがキーボードを操作した。様々なデータが画面上に表示される。

 

「石油の精製施設と備蓄施設、そして、兵器工場が併設されていることが判明した。航空偵察による情報によると、多くの対空兵器が配備され、おまけに付近には戦闘機が配備された航空基地まである。ここを防衛するための設備だろう。ここを破壊することができれば、ウェルヴァキア軍は更なる苦境に立つことになるだろう。それと、情報によれば、ここには軍事目標以外は確認されていないから、コラテラルダメージの事はあまり気にせず攻撃しても構わんとのことだ」

 

 スクリーンの表示が切り替わり、ターゲットに関する情報が表示された。

 

「それでは、各部隊の役割をここで知らせる。まず、最初に突撃する部隊は対レーダーミサイルによる攻撃により、敵の防空網を破壊する。それに続く編隊が離陸してきた敵の迎撃機を排除。そして、攻撃本隊がターゲットを破壊する。以上だ」

 

 この作戦立案をした人間はプロだ、とサイファーは直感で思った。単純明快でわかりやすい。その方が、作戦中におけるあらゆる不確定要素を排除しやすくなる。問題は、自分がどの役割をする部隊に振り分けられるのか、ということだ。それによって、考えるべきことや戦闘機に搭載すべき兵装が変わってくるからだ。

 

 1996年 5月1日 1601時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地

 

 やや傾いた太陽に照らされた戦闘機が一斉にAPUを作動させた。それを機内に搭載していないF-4Eファントムの隣には起動車両が並び、そのコンプレッサーから送られる高圧縮された空気によってJ79エンジンをスタートさせる。整備員が機体の周囲を歩き回り、ミサイルや爆弾から安全ピンを抜いて、それをコックピットにいるパイロットに掲げて見せた。

 

 工場への爆撃。サイファーはベルカ戦争に参戦していた時、深夜にホフヌングの工業地帯を爆撃した作戦を思い出していた。

 当時、非軍事目標も攻撃されたと一部では報道されたりもした。そんな事は、後になっていくらでも言うことができる。

 じゃあ、何だ。あの暗闇の中、ろくに暗視装置も無い中で、軍事目標と非軍事目標をきっちり線引きをするように区別して攻撃しろだって?そんなのは無理な話だ。それに、ベルカ人の連中は、非軍事目標の建物の敷地の中に、地対空ミサイルや対空砲を設置していた。まるで、一般市民を巻き添えにしてくださいと言わんばかりに。

 

 それに、勝てば官軍なのだ。事実、ベルカ戦争における戦後処理では、戦勝国であるオーシアは同盟国を守った正義の大国として、ウスティオとサピンは、理不尽な侵略に耐え、連携して独立を勝ち取った抵抗者として、世間の人々の記憶に刻まれることになった。

 一方で、ベルカは周辺地域の平和を乱した国として断罪された。当時の政権指導者の多くはA級戦犯として。戦争に参加した軍人のうち何名かがB級戦犯やC級戦犯として、オーシアで開かれた軍事法廷で裁かれた。

 

 噂では、起訴されていながら未だに逃亡を続けているベルカの元軍人や当時の政治家もいるとの噂を聞いたことがあった。そして、そいつらには多額の賞金がオーシア政府によって掛けられており、オーシアやサピン、ウスティオの軍の憲兵隊や国家警察が行方を追っている。

 

 サイファーは目の前のHUDやMFD、HMDの表示に注意を戻した。APUによって動力を得た2基のリューリカ・サチュルン117Sエンジンは極めて良好な調子で回転している。ブレーキをかけたまま操縦桿とラダーペダルに力をかけ、フラップ、ラダー、エレベーター、ベクタードスラストノズルの動きを確認した。目の前にいるノルドランド空軍の整備兵が両手で大きな丸印を作る。機体の調子は良好だ。

 

 やがて、タキシングの許可を得たF-15EやF-16C、F-4E、Su-27SKMなどが動きだし、誘導路に長い列を作り始めた。

 

 最初に滑走路に入った戦闘爆撃機がアフターバーナーに点火させ、空へと舞い上がった。傭兵が乗るF-111Bアードヴァーク。この機体はオーシアで艦載機として開発されたものの、その大きすぎる機体と重すぎる重量により、オーシア海軍はこの機体の装備を諦めた。しかしながら、オーシア空軍はその搭載能力に目を付け、改めて陸上運用の戦闘攻撃機として採用している。

 だが、可変後退翼という複雑な機構による整備の煩わしさ、機体の老朽化、高額な運用コスト、そして何より、F-15Eストライクイーグルという、同じ兵器搭載量を持ちながら、運動性、電子機器、夜間攻撃能力、整備性などが拡大に進歩した戦闘爆撃機の登場によって、このF-111Bはあっという間にオーシア空軍から姿を消した。

 

 あんな手間も金もかかる機体を、よく飛ばす物好きな傭兵もいたもんだ、と思いながら、サイファーはキャノピー越しにその怪鳥が空に舞い上がるのを見送り、再び自分の機体の多機能ディスプレイの表示に注意を戻した。

 

 機体は問題無い。このまま離陸しても問題無さそうだ。目の前に広がる滑走路から、F-16Cが2機、飛び立った。続いて、このF-16Cの3番機と4番機をつとめるF-14Dトムキャットが離陸していく。

 

『タワーよりマングース隊。滑走路に進入せよ』

 

 管制官の指示に従い、サイファーは滑走路にフランカーを向かわせ、エンドで停止させた。左側にジャガーのグリペンが並ぶ。2機はエンジン出力と翼の状態を確認した。

 

『タワーよりマングース隊、12000フィートまで上昇した後、周波数123.22でガーディアンとコンタクトせよ』

 

「了解だタワー」

 

 サイファーはエンジンの出力をミリタリーパワーにまで落とし、指定された高度へ上昇するために機首にやや角度を付けた。

 

『離陸した攻撃部隊へ。こちらAWACSガーディアンだ。このまま予定通り南西に向かって飛行し、ターゲットに向かえ。護衛部隊は先導し、上がってきた敵の迎撃機を排除せよ』

 

 予定通り、先鋒を務め、敵の防空網を破壊する部隊が前に出た。F-16Cで構成され、翼にはAGM-88Dが搭載されている。

 その周囲を護衛するのは、やや旧式のF-4Fファントムだ。機体は古いものの、火器管制装置とレーダー、ミサイルランチャー、電子防御装置はF-16Cと同じものに換装され、AIM-120Bを運用することができる。戦闘機の編隊は傾き始めた太陽に向かって飛行し、ターゲットに向かって行った。 

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