ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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Sunset Inferno

 1996年 5月1日 1633時 ウェルヴァキア パグフォルフカ

 

 防空網を破壊されたウェルヴァキアの上空にノルドランド空軍機と傭兵部隊の戦闘機が侵入した。向こうに見えるのは、ウェルヴァキアの工業の心臓部とも言える、石油タンクとパイプラインだ。

 

『AWACSガーディアンより攻撃部隊へ。敵機接近。方位、221。距離80マイル』

 

 サイファーは真っすぐ前を見た。そう上手くいくとは思えないが、もし、撃墜した敵機を石油関連施設に落下させることができれば、爆弾を投下した時と同じくらいの被害を与えることができるはずだ。

 ターゲットは鉄筋コンクリートで強化されている訳でもない上に、可燃物がそこら中に点在している。ひとたび空爆すれば、よく燃えてかなりの被害が出るはずだ。

 

『ターゲット確認。ソード1、エンゲージ』

 

『ソード2、エンゲージ』

 

 F-14AトムキャットとF-4EファントムⅡが前進し、迎撃にやって来た戦闘機を迎え撃つ体制を取った。他にF-15CやSu-27SKMも前進する。

 今回の作戦の肝は対地攻撃兵器を抱えた飛行機だ。攻撃機がやられたら作戦が失敗することを意味する。そのため、爆撃部隊を守ることが重要だ。

 

 やや傾き始めた太陽が石油施設や戦闘機をオレンジ色に染め始めた。間もなく日は沈み、夜のとばりが訪れることになる。周囲は荒れ地で、植物やその他の地上物はほとんど見かけない。

 

 南西の空から敵機が接近してきた。どうやら、迎撃機だけらしく、MiG-29SMTとMiG-23ML、MiG-21UMという構成のようだ。

 

『ソード1、Fox1』

 

 ノルドランド空軍側の編隊の中で、最も長い"槍"であるAIM-54フェニックスが放たれた。ミサイルは暫くF-14BのAWG-9レーダーによる誘導で飛んだ後、搭載されたアクティブレーダーを作動させ、標的を見つけた。マッハ5という凄まじい速度まで加速し、MiG-29SMTのすぐ近くで近接信管を作動させ、金属片を空中にばら撒いた。

 フルクラムは金属片に機体を切り刻まれ、ひび割れた翼内部の燃料タンクから霧状の燃料を空中に撒きながら飛行する。パイロットは極めて慎重に機体を旋回させ、基地に戻り始めた。

 

『ソード1、Fox1!』

 

 損傷したフルクラムは、同じ戦闘機から追い討ちを受けた。AIM-7スパローが爆発し、ミグに止めを刺した。

 

『畜生!やられた!』

 

 ミグのパイロットは射出ハンドルを引いたが、KD-33射出座席は2発のミサイルを受けて損傷したのか、全く反応しない。戦闘機はパイロットを乗せたまま墜落し、近くのウェルヴァキア陸軍の駐屯地の倉庫を直撃した。

 

『敵戦闘機の排除を確認。作戦通り、攻撃を開始せよ』

 

 1996年 5月1日 ウェルヴァキア パグフォルカ

 

 4機のA-10AサンダーボルトⅡ攻撃機がターゲットに突進した。狙いは、地上にある巨大な球体のガスタンクと、ずんぐりした円筒型の石油備蓄タンクだ。

 

『ビーバー1、ターゲット確認。攻撃開始』

 

 パイロットはHUDの表示を確認し、低空からターゲットに対してやや浅い角度で向かった。そして、HUDにレティクルが表示された時、操縦桿のトリガーをほんのコンマ数秒だけ引いた。GAU-8アベンジャーと名付けられた、7つのバレルを持つガトリング砲から30mmの劣化ウラン弾が放たれた。石油タンクに大きな穴が幾つも開き、中から真っ黒な、粘性が非常に高い液体が流れ出す。

 

 続いて、球体のガスタンクにも30mm弾は襲いかかった。タンクに穴を開けた時、劣化ウラン弾は摩擦で火花を散らし、それがタンクの中で気化していたガスに引火させた。

 

 ガスタンクは大爆発を起こした。燃える金属の破片がフレシェット弾のように撒き散らされ、それが別のガスタンクに穴を開け、入り込む。中のガスは燃える金属片によって引火し、爆発する。その現象が連鎖反応のように続いた。

 

『こちらボア1、俺たちにも残しておけよ』

 

 4機のF-16Cがやや遅れてターゲットに飛来した。その翼には、三連イジェクターラックを介して、Mk77ファイアボムが吊り下げられている。焼夷弾は、このような可燃物が多いターゲットを攻撃するにはもってこいの兵器だ。

 

『ボア1、報酬が欲しけりゃ、まずは自分で壊せ』

 

『言ってくれるじゃねえか。見てろよ』

 

 F-16Cの編隊は、石油備蓄タンクに向かって緩やかに降下し、Mk77を1発ずつ投下した。爆弾は着弾と共にゲル化した燃料をばらまき、火薬に着火させる。燃える爆弾の破片がパイプラインの一部を損傷させ、建物を壊した。

 

 続いて飛来したのは、傭兵部隊のA-4Kスカイホークの飛行隊だ。翼の下にはMk84通常爆弾を搭載している。オーシア海軍からは、AV-8BハリアーⅡやF/A-18Cホーネットにとって代わられて既に退役しているが、小さな機体の割に搭載量に優れているため、輸出先の空軍では広く採用されている。

 

『こちらアングラー1、パーティーはまだ続いているか?』

 

『AWACSガーディアンよりアングラー隊へ。パーティーはお開きには早いぞ。まだオードブルはたっぷり残っているから安心してくれ』

 

『了解だ。では、遠慮なく頂くぞ』

 

 A-4Kは二手に分かれ、目の前に並ぶガスタンクに向かって接近した。爆弾を1つずつ投下していく。爆弾の金属製の破片が薄い金属のタンクを切り裂いた。一部のガスタンクは爆発までには至らなかったものの、中から液化天然ガスが勢いよく漏れ出し始めた。

 

 流出した石油やガスに引火をしたのか、突如として火の手と黒い煙が立ち上った。かなりの損害を与えることができているようだ。想像以上に効果が出ているらしい。

 

 1996年 5月1日 1635時 ウェルヴァキア パグフォルカ

 

 オレンジ色に染まり始めた空に向かって、どす黒い煙がもくもくと上がっている。空爆が始まった直後は、消防隊がやって来て、消防車から化学消火剤を炎上する石油タンクに吹き掛けていたが、数台の消防車に爆弾が直撃した。これ以上の消火作業は危険だと判断し、消防隊は撤収を開始した。

 

 足早に消防士が走り、消防車がサイレンを切った状態で火災現場から去っていく背後でMk77ファイアボムが炸裂した。その爆発で飛び散った燃える燃料を浴びたプラントの作業員が火だるまになり、のたうち回った後、動かなくなった。

 

「畜生!もうダメだ!早く逃げるんだ!」

 

「なんだってこんな・・・・・・」

 

 低空で戦闘機が猛スピードで飛び去ったと思った直後、ポンプ施設から火の手が上がり、黒煙が立ち上る。

 

「急いで避難しろ!」

 

 

『総員退避!総員退避!』

 

 スピーカーから声が、そして警報が聞こえてくる。甲高い音が聞こえてきたので、作業員の一人は頭を上げた。上から戦闘機が燃えながら落下してくる。

 

「うわっ!畜生!ノルドランドの奴らめ!」

 

 撃墜された戦闘機は、不運にも、避難する作業員を大勢乗せたバスを直撃し、押し潰した。中にいる人間は、何が起きたのかもわからずに死亡した。

 

続いて傭兵部隊のA-6Eイントルーダー攻撃機の編隊が現れた。4機のA-6Eは、僚機である4機のF/A-18Fスーパーホーネットに護衛されている。そして、彼ら後ろからは空対空ミサイルと誘導爆弾を搭載したノルドランド空軍のF-16Cがついてきている。

 

A-6には増槽とMk82通常爆弾が、F/A-18FとF-16Cには増槽に加えてAIM-9XとAIM-120Cが搭載されている。

 

『AWACSガーディアン、こちらビートル1だ。我々は間もなく目標に到達する。ガーディアン、状況は?』

 

『ガーディアンよりビートル隊へ。予定通り目標を攻撃せよ。ターゲットまで残り30マイル、方位、226』

 

『ビートル1了解。攻撃する』

 

 1996年 5月1日 1636時 ウェルヴァキア パグフォルカ

 

『AWACSガーディアンより作戦中の戦闘機へ。敵の迎撃機を確認。迎撃せよ』

 

 獲物がやって来たか。サイファーはレーダーモードを切り替え、中射程ミサイルの発射準備をした。レーダー画面に敵の機影が映る。先頭の敵に目標を定める。

 やがて、レーダーが敵機を捉えた電子音が鳴り始める。サイファーは操縦桿のボタンを押した。ランチャーからR77が放たれ、あっという間にその姿が見えなくなる。

 

「マングース1、Fox1!」

 

『キング1、Fox1!』

 

『キング2、Fox1!』

 

 空対空ミサイルが一斉に放たれた。迎撃に向かって来たウェルヴァキア空軍の戦闘機目掛けて飛んでいく。

 

『こちらドンキー隊、攻撃準備に入る』

 

 4機のF-16Cが大きく間隔を取り、アブレスト編隊で飛んでいた。その主翼にはAGM-154Bが搭載されている。これは衛星誘導される滑空兵器で、動翼と衛星通信機、そして大量の子爆弾を搭載している。

 この編隊が狙っているのはガスの備蓄タンクだ。動きもしない、装甲も無い簡単な目標物だ。パイロットは周囲を見回し、敵機を警戒しつつ攻撃準備を整えた。

 

『投下10秒前・・・・・・5秒前、4、3、2、1、攻撃!』

 

 8発のJSOWが一斉に投下された。スタンドオフ兵器はグライダーのように滑空し、目標に向かった。この兵器を迎撃するのは非常に難しい。JSOWは何にも妨害される事なく目標の上空に辿り着き、子爆弾をばら撒いた。

 

『ドンキー隊、攻撃完了。帰投・・・・・・』

 

 その時、ドンキー隊の4番機が爆発した。3番機のパイロットは後ろをを向いた途端、機体に衝撃が走るのを感じた。

 

『ドンキー3、被弾した!脱出する!』

 

『くそっ!何だ、一体!?』

 

『ミサイルアラート!避けろ!』

 

『ダメだ!振り切れん!』

 

『やられた!畜生!』

 

『くそっ!何者だ、こいつらは!?いきなり出てきやがったぞ!』

 

『ドンキー1、被弾した!イジェクト!』

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