ACE COMBAT after story of the demon of the round table 作:F.Y
1996年 5月3日 1400時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地
作戦ブリーフィングが予定の時間になっても始まらない。いや。実のところ、これから始まるブリーフィングは、昨日の午後に行われるはずだった。しかし、昨日は5時間も待たされて、結局のところ、行われるはずだった作戦は全てキャンセルになった。
そして、夜になって今日の午前に延期になったと伝えられたが、これもまた延期。但し、その間に出撃の準備だけはしておくよう命じられた。
なかなか始まらないブリーフィングに、傭兵たちは苛立ち始めていた。また今日もミッションがキャンセイルになってしまうのだろうか。サイファーがそんなことを考え始めていると、傭兵の元締めであるロビン・リー大佐と、サイファーが見たことが無い将校がやって来た。
「諸君、では待たせてしまったな。ブリーフィングを開始する。今回は、海軍情報部のマリウス・ランプランド大佐。今回は海軍との共同作戦となる。では、ランプランド大佐、始めてくれ」
「ああ、では。つい先日、ケルンゼン海にて哨戒中の我が海軍の艦隊が壊滅し、対潜哨戒機が撃墜されるという事件が起きた。そして、その場にはウェルヴァキアの駆逐艦や戦闘機がいなかったことが、近くにいた巡洋艦ハーケリンナのレーダーの記録から判明している。そう駆逐艦や戦闘機、はな」
ランプランドはキーボードを操作した。スクリーンには巨大な葉巻のような形の3DCGモデルが表示された。
「こいつは、ウェルヴァキア海軍の戦略複合潜水艦、バレナだ。この分析の結果、この艦は、当初はベルカが製造を計画していたが、戦争の終結とともに、計画が破棄されたものと考えられていた。しかし、どうやらその設計図や開発に関わった技術者がウェルヴァキアに渡り、こいつを建造する手助けをしていたらしい。ウェルヴァキアで建造されていったのか、それともベルカから持ち込まれたのかはわかっていないが、それは大した問題ではない。こいつの装備は長魚雷を装備する魚雷発射管と対空ミサイル、対艦ミサイル、巡航ミサイルを搭載する垂直発射機、そして・・・・・艦載機のYak-38フォージャーとKa-32ヘリックスを載せている。問題は、こいつがケルンゼン海で我々の艦隊を壊滅させた犯人だということだ」
冗談だろ?こんな化け物を相手にするのか?傭兵のみならず、ノルドランド空軍のパイロットたちからも驚きの声が上がった。
「確かに無茶な作戦だというのは百も承知だ。だが、こいつを放っておいたら、ケルンゼン海は永久に飛行機も船も、一切入って行けない場所になってしまう。そこが我々の領海であるにもかかわらず、な」
その通りだった。今、ケルンゼン海の制海権を握っているのはバレナという怪物じみた潜水艦に他ならない。そうなると、遅かれ早かれ、ノルドランドの沿岸域の大部分の制海権をウェルヴァキアに握られてしまうことになる。
「さて、潜水艦を探すならば、勿論、海軍の仕事のなるだろう。しかしながら、先も伝えた通り、バレナには艦載機としてYak-38が搭載されている。そいつが飛び回っていたら、R-60空対空ミサイルで、オライオンも、シーホークも、あっという間に撃墜されてしまうだろう。そうなってしまわぬよう、諸君らの戦闘機が必要になるということだ。君たちの機体には空対空ミサイルの他、対艦攻撃兵器も搭載してもらう。そして傭兵諸君、朗報だ。あの怪獣に大きなダメージを与える、もしくは撃沈に至る損傷を与えた者の報酬に対して、多額のボーナスを出すという決定を海軍司令部が下した。勿論、対価に見合った活躍をして、無事、生還できたらという条件付きの話だ。だが、悪い話ではあるまい。諸君らが報酬を必要としているのと同じくらい、我々は諸君らの戦力を必要としている。では、リー少佐。後の説明を頼む」
ランプランドが壇上から降りて、椅子に座った。代わりにロビン・リーがいつものように壇上に上がる。
「それでは諸君。作戦の概要を説明する・・・・・・・」
1996年 5月3日 1513時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地
C-17AグローブマスターⅢ輸送機が轟音を鳴らしながら滑走路を走り、かなり重たそうに機首を上げながら空を目指していった。その様子を見ていたサイファーが、途中で離陸を取りやめるか、フェンスに機体の腹を擦るのでは、と思ってしまう程低い離陸だった。
出撃の準備をしている戦闘機は、全て対艦ミサイルを搭載してた。サイファーのSu-35BMもPJ-10ブラモス空対艦ミサイルを4発搭載してる。これはユークトバニア製の最新鋭の対艦ミサイルで、音速を超えるスピードで最大約300km先の艦船を攻撃することができる。その代わり、非常に高額で、おいそれと手に入れられるミサイルでは無かった。しかし、サイファーはこのミサイルを大金を叩いて闇商人から買った。どうせ、この作戦を成功させれば、このミサイルを数十発も買える程の報酬が手に入る。確かに死んでしまえば、報酬など意味がない。だが、サイファーには戦死するつもりはさらさら無い。死ぬのは敵の方だ。
搭載するブラモスは全部で4発。作戦の性質上、基地から遠いので再補給に戻る余裕は無いだろう。つまり、十分な"矢"を用意して出撃する必要があるのだ。今回は、途中で空中給油機による支援も受ける程、基地から離れた場所での作戦となるのだ。
サイファーはエプロンを見回した。増槽や対艦ミサイルを搭載した戦闘機にタンクローリーが取りつき、燃料を補給していた。今回はヨアキムロル以外の基地からも戦闘機が出撃する予定だ。
基地に配備されているMIM-23ホークやパトリオットPAC-2のランチャーやゲパルト自走対空機関砲が天を仰いでいる。今日は雲一つない青空で、絶好の作戦日和になりそうだ。
今日、出撃する戦闘機の数はかなり多い。ここヨアキムロルのみならず、トラムとケルシュタットの航空基地からも戦闘機や対潜哨戒機が出撃している。
エプロンでエンジンやAPUの音が響き渡る。ヘッドセットが無ければ、まともに会話もできないくらいだ。
『マングース隊、滑走路へ進入せよ』
Su-35BMとJAS-39Cが動き出したのを皮切りに、ゆっくりと戦闘機が誘導路へと向かう。サイファーの部隊が滑走路の端に到達した。
『マングース隊、離陸せよ』
戦闘機が管制官の指示通りに、整然と並び、離陸していく。ここからターゲットまではかなりの距離がある。よって、途中で空中給油をしなければならなかった。
1996年 5月3日 1622時 ノルドランド上空
『マングース隊、こちら空中給油機バルクヘッド。給油体制を取れ』
KC-10Aエクステンダーの機体後部からホースドローグユニットが伸びてきた。ドローグユニットは気流に乗って、かなり暴れていた。だんだん日が傾いてきて、ガンシップグレーに塗られた空中給油機がオレンジ色に照らされている。
サイファーは暴れるドローグユニットに難なくプローブを差し込んだ。ここに到達するまで、かなりの燃料を使ってしまっていた。毎分1.16キロリットルの勢いで燃料タンクへ航空燃料が押し込まれていく。ターゲットの近くに到達する頃には、日は沈んでいるだろう。
サイファーはMFDの表示を切り替え、残燃料を確認した。数字がどんどん増えていき、すぐに燃料が満タンになった。
サイファーは給油機から離れ、次の機体のためにドローグのすぐ前を空けた。周りを見ると、かなりの数の戦闘機が給油を待っている状況だった。
『こちらAWACSガーディアン。給油を終えた機体は、本官の指示に従い、ターゲットに向かえ』
ジャガーが乗るグリペンも給油を終え、サイファーの僚機の位置に入った。これから、海にいる怪魚を沈めに行く。そいつを沈めれば、物凄い額の報酬を得ることができる。逃すには余りにも惜しい獲物だ。その獲物がいるとされる海域まで、あと僅かだ。
『ガーディアンより作戦中の戦闘機へ。先ほど、海軍の駆逐艦レルハーマンから連絡が入った。バレナらしきスクリュー音を探知したらしい。奴はまだ当初の海域に留まっているらしい。ターゲットに向かい、海軍の支援を受けつつ撃破せよ』