ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

77 / 84
空爆と迎撃

 1996年 5月12日 1131時 ウェルヴァキア領内

 

 空戦を繰り広げる味方機と敵機を後目に、サイファーはターゲットに向かっていた。この重たいKAB-1500をとっととターゲットにぶちかまして、敵機を撃ち落としてやりたかった。ジャガーのJAS-39Cがサイファーを援護する位置に張り付き、上空に目を光らせている。F-4EやF-16CがMk82爆弾をぶら下げ、ゆっくりと高度を落としていった。爆撃コースに入ったのだ。最も戦闘機が敵に狙われやすくなる体勢だ。

 

『こちらポーク1、ターゲットにレーザーを照射する』

 

 サイファーのSu-35BMのすぐ後ろからついてきているトーネードIDSが、胴体下にぶら下げた照準器からレーザーを建物に照射した。このレーザーは不可視光線なので、映画のように赤や緑の光の線が伸びていくようなことは無い。KAB-1500のパッシブレーザーシーカーは、建物に当たって反射したレーザー光線を正確にとらえた。

 

「マングース1、投下」

 

 KAB-1500のシーカーがロックオンしたことを示す電子音がコックピットで鳴り、サイファーは操縦桿のウェポン・リリースボタンを押した。ガコン、という音と共に、機体がほんの少しだけ浮き上がる。サイファーは操縦桿を握る手で、後ろに引く力を掛けた。フランカーの機首が上がり、上昇する。このとき、サイファーはエンジンをミリタリーパワーにまで出力を上げた。

 僚機のジャガーが乗るグリペンはサイファーに追随して上昇したが、トーネードはそのまま真っすぐ飛行し、レーザーをターゲットに照射し続けた。

 

 やがて、レーザー誘導爆弾が建物を直撃し、凄まじい火の手が上がった。後には燃え上がる瓦礫が残るだけだった。

 

「マングース1、ターゲット破壊」

 

 KAB-1500は残り3発だ。1発たりとも無駄にしたくはない。兵装を使っておきながら、ターゲットを外すのは金をどぶに捨てていることに等しいからだ。

 

 1996年 5月12日 1134時 ウェルヴァキア領内

 

『ランス1、ターゲットまで残り18マイル』

 

 4機のF-16AMが高速でウェルヴァキア軍の施設へと接近した。このF-16は、1970年代後半に生産された初期型だったが、数年前にオーシア空軍とオーシア企業の支援を受けて電子装置の更新、機体構造の強化と新型エンジンへの換装といった改修を受け、F-16Cブロック40/42並みの性能になっていた。

 これらのF-16にはAGM-65Dマーヴェリック空対地ミサイルが三連ランチャーを介して、計6発ずつ搭載されている。このミサイルは射程はそれほど長くは無いが、画像赤外線誘導によって正確にターゲットを捉え、高性能爆薬によって戦車を含む、かなり強固なものでも破壊できる。

 

『ランス1からランス隊各機へ。間もなく攻撃ポイントに入る。敵機と対空兵器に注意せよ』

 

 ランス1のパイロットはHUDとレーダー警報装置に注意を向けた。今のところ、敵に捕らえられた様子は無い。

 

『AWACSガーディアンよりランス隊へ。そのままターゲットを破壊せよ。空への警戒はこっちでしておく』

 

 4機のF-16AMは1番機の合図でエンジン出力をミリタリーパワーにまで上昇させた。アフターバーナー推力まで上げると、燃料を大量に消費するだけでなく、排気ノズル部分が極めて高温になるため、敵の赤外線誘導ミサイルに捕まりやすくなってしまう。

 

『くそっ、Sバンドレーダーの照射を検知!』

 

 コックピットの中で断続的に電子音が鳴り始めた。敵の射撃管制レーダーが、こちらの戦闘機を捉え、追尾している。

 

『ECM作動!各機、警戒せよ!』

 

 F-16AMは胴体中心線に搭載したAN/ALQ-184電子妨害ポッドを作動させた。これはF-16やA-10といった航空機に搭載する外付けの電子妨害装置で、特に対空捜索に使われるレーダーが照射するSバンドやLバンド、地対空ミサイルの射撃指揮レーダーに使われるXバンドといった周波数に対応している。

 

 レーダー波が妨害電波によって途切れたのか、警報音が鳴りやんだが油断は禁物だ。特に、赤外線誘導ミサイルは、レーダーを使わずにいきなり放たれるのでこうした警報を事前に知るすべはミサイル警報装置に限られてしまうのだ。

 

『ランス1から各機へ。ターゲット確認・・・・・発射!』

 

 AGM-65が一斉に放たれた。ミサイルは中に大量の作りかけの戦闘機を収納した工場の建物に命中し、高性能爆薬を炸裂させた。凄まじい炎と黒煙が爆発と共に立ち上り、工場は完全に潰された。

 

『ガーディアンよりランス1へ。ターゲットの破壊を確認した。次のターゲットを指示する』

 

『こちらジラフ隊、爆弾を使い切った。基地に帰還して搭載する』

 

『ガーディアンより作戦中の各機へ。敵機の掃除はほぼ完了したが、ターゲットの破壊はまだ終わっていない。弾薬を持っている機体は攻撃を続行せよ』

 

 1996年 5月12日 1137時 ウェルヴァキア領内

 

 サイファーは次の獲物に狙いを定めた。レーザーデジグネーターでターゲティングをするトーネードは三番機と四番機の位置についている。

 

『こちらポーク1、ターゲットを確認した。レーザーを照射する』

 

 サイファーは対地攻撃モードに切り替え、HUDのピパーの中心点がターゲットに重なるように操縦した。やがて、ピパーが移動し、レーザーが照射されている建物に重なり、電子音が鳴る。ターゲットにKAB-1500が狙いを定めた。

 

「マングース1、爆弾投下」

 

 ガコン、という音とともに重たい爆弾が投下される。これで誘導爆弾の残りは2発。KAB-1500は誘導用のフィンを動かしながら滑空し、見事にターゲットを直撃した。

 

『マングース1、ターゲットを破壊』

 

 続いて、2番機のグリペンがGBU-15を2発続けて投下した。この2発も不可視光レーザーに誘導され、建物に真っすぐ向かう。2度の連続した爆発によって標的は瓦礫の山となった。

 

『マングース2、ターゲット撃破』

 

 グリペンが搭載している爆弾は無くなった。

 

『サイファー、爆弾を使いきりました。援護します』

 

『AWACSガーディアンより作戦中の各機へ。高速で接近するターゲットを8つ確認した。敵の迎撃機だ。返り討ちにしてやれ』

 

 空対空ミサイルを装備したF-14DやF-4Eがブレイクし、敵機へと向かう。敵はMiG-21とMiG-29のようだ。

 

『グリズリー1、攻撃開始』

 

『グリズリー2了解』

 

 MiG-21は旧式で、電子装備は貧弱だが軽量で機動性が良く、接近戦では侮れない相手だ。MiG-29の方は言うまでもない。だが、行儀よくドッグファイトをするつもりは無い。

 

『かなりの数だな。一気にやるか?』

 

『ガーディアンより戦闘機部隊へ。敵を射程に入れた機から攻撃せよ』

 

 先に敵を射程内に捉えたのは、傭兵が乗っているF-14Bトムキャットだ。AN/AWG-9レーダーが同時に10機もの敵機を追跡し、AIM-54フェニックス空対空ミサイルが発射準備状態になる。

 

『ターキー1、敵をレーダーで捉えた。攻撃する』

 

 F-14Aの胴体下ランチャーから巨大なAIM-54フェニックスがリリースされた。ミサイルは激しく炎と煙を吐き出しながら敵機に向かう。暫くはF-14から照射されるレーダー波によって誘導されていたが、途中で自身の先端に搭載されているアクティブレーダーを作動させた。ミサイルは猛烈な勢いで敵機に追いつき、大量の火薬が充填された重たい弾頭を炸裂させた。

 

『ターキー1、敵機撃墜』

 

『ターキー2、攻撃する』

 

 二番機のF-14AからはAIM-7Fスパローが放たれた。ミサイルはAWG-9から放たれ、敵機に当たって反射される電波を目印に飛ぶ。

 

 スパローはMiG-21を正確に追尾し、弾頭を炸裂させた。破片を食らった小さな戦闘機は、機体にできた裂け目から煙や燃料を流出させながら地面に向かっていく。そんな中、キャノピーが弾け飛び、射出座席がパイロットを空中に打ち出した。

 

 1996年 5月12日 1142時 ウェルヴァキア領内

 

 爆弾が複数発、地上で爆発し、建物を破壊する。戦いの流れは、完全にノルドランド側に有利な方向になってしまっていた。ウェルヴァキアは、この基地を放棄せざるを得なくなるだろう。

 

『こちらAWACSガーディアン、目標の破壊を確認した。全機、帰投せよ』

 

 ウェルヴァキアの迎撃機は撃墜され、後は防空システムに注意しつつ、ノルドランドに帰るだけだ。

 

 戦闘機パイロットたちは、半分警戒、半分リラックスした様子で帰路につこうとした。そのはずだった。

 

『警告!高速で新たな目標が接近!数、6機!警戒・・・・・』

 

『くそっ!ケツにつかれた!援護してくれ!』

 

『ヴァイパー4!ミサイル!避けろ!』

 

『やられた!脱出する!』

 

『くそっ!フォーメーションを組み直せ!奴らを囲め!』

 

『ガーディアンより各機へ!新たな目標を撃墜せよ!繰り返す!新たな目標が6機現れた!攻撃せよ!』

 

 ややあって、ピーター・ダール中佐は、ノルドランド空軍・傭兵連合部隊の全員の頭の中を代弁した。

 

『くそっ!こいつら何者だ!?どこから来やがった!』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。