ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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第3219号作戦

 1996年 5月21日 1001時 ノルドランド ヨアキムロル航空基地

 

 掩体壕の中から一斉に戦闘機のAPUが起動する特徴的な音が鳴り響いた。その音は一旦、パワーが落ちたかのように静かになったが、すぐにエンジンが回転する音が鳴り始める。

 整備員たちは戦闘機のアクセスパネルを開閉して状態を確認し、翼や胴体の下にぶら下がっているミサイルや爆弾の安全ピンを抜き、パイロットに向けて掲げて見せた。

 

 サイファーはSu-35BMのコックピットの中で、デジタル計器の表示を一つ一つ注意深く確認していった。電子装置、エンジン、操縦系統、全てが問題無く作動してるようだ。例によって、兵装を多く搭載しているため、離陸重量を減らすために燃料は少なめに入れられている。離陸したら、指定された空域で空中給油を受ける予定だ。

 

 最初に滑走路への進入を許可された戦闘機が動き始めた。最初に動き出したのはF/A-18EとF-4Eだ。どちらも空対空ミサイルと爆弾で重武装し、増槽も搭載されている。続いて、F-16CやSu-33、Su-30MK、F-15Eといった雑多な機体も滑走路へ向けて移動を開始した。

 

『タワーよりゴーゴン隊へ。離陸を許可する』

 

『ゴーゴン1、離陸』

 

『ゴーゴン2、離陸』

 

 アフターバーナーの轟音を響かせ、F-4EとSu-27SKMが離陸した。管制官の指示に従い、F-16AとラファールCが滑走路のエンドへと進入する。

 

『タワーよりマングース隊へ。誘導路へ向かえ』

 

 サイファーはエンジンの出力を確認し、整備員に向かって敬礼してからブレーキを解放した。Su-35BMがゆっくりと前進する。左隣に駐機していた、JAS-39Cも低速で誘導路へと向かう。 

 

「マングース1了解」

 

『マングース2了解』

 

 戦闘機が管制官の指示を受けて動き始める。兵器類や増槽の搭載、燃料の補給、機体の整備を行っていた空軍兵たちが大きく手を降りながら見送る。

 

 先に滑走路で待機していたF-15EとF-4Eが離陸する。サイファーは管制官の指示を受けてブレーキを解放し、ゆっくりと滑走路の端で戦闘機を一旦停止させた。斜め後ろでJAS-39Cも待機している。誘導路ではミサイル、爆弾、増槽を満載した戦闘機が列を成している。

 

『マングース隊、離陸せよ』

 

 サイファーはスロットルを押し、アフターバーナー推力まで上げた。そして、すぐにブレーキを解放する。Su-35BMはあっという間に浮き上がった。後ろからJAS-39Cが続く。

 

『マングース1、方位213に向かいつつ、13000フィートまで上昇せよ。そして周波数132.33でAWACSガーディアンと交信せよ』

 

「マングース1了解」

 

『マングース2了解』

 

 サイファーは周囲を見回した。多くの味方戦闘機が編隊を組んでいるのがわかる。東の方からどす黒い雲の塊が流れてきて、その中で青白い稲光が瞬いているのが見える。気候は極めて不安定で、機体が時折揺れる。気流もかなり乱れているようだ。

 

『離陸した戦闘機へ、こちらAWACSガーディアンだ。敵の防空網はかなり強固だ。例によって、先遣隊が防空網を制圧する。対空兵器の排除が完了次第、攻撃を開始せよ』

 

 戦闘機乗りたちが一斉に"ジッパー・コマンド"で返事をした。編隊は一斉に南西を目指す。国境地帯に配備されている部隊が対レーダーミサイルで防空陣地の破壊に向かうはずだ。

 

 1996年 5月21日 1032時 ノルドランド上空

 

『バラクーダ2よりマングース1、空中給油の体勢を取れ』

 

「マングース1了解」

 

 サイファーの真正面にはKC-135Rストラトタンカー空中給油機が浮かんでいるのが見えた。両翼にはホースドローグ・ユニットが取り付けられ、そのうちの右側からホースドローグが伸びているのが見える。

 サイファーは戦闘機をゆっくりと前進させ、気流にのって不規則に動くドローグを観察した。フランカーの機首からプローブが伸び、燃料を受け取る準備が整った。しかし、これからが問題だ。経験の浅いパイロットは、ドローグとプローブに接続させるだけでも精いっぱいだ。なので、F-15やF-16など、フライングブーム式の空中給油が可能な戦闘機を選ぶ者も多い。

 "円卓の鬼神"は燃料計の表示を確認した。メーターがあっという間に"F"に到達する。やがて、燃料タンクが満タンになったのを確認した。

 

「マングース1、給油完了」

 

『マングース2、給油完了』

 

 Su-35BMとJAS-39Cは2機で同時に空中給油を受けていた。このような芸当ができるパイロットはそう多くは無い。だが、サイファーとジャガーはあっさりとそれをやってのけた。

 

『こちらバラクーダ2。マングース隊給油完了、行ってこい!』

 

 1996年 5月21日 1043時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯上空

 

『ターゲット確認・・・・・発射!』

 

 F-16CとF-4Eが対レーダーミサイルを放った。F-16が搭載していたのはAGM-88Dだが、ファントムが搭載していたのは旧式のAGM-78Dスタンダードだ。

 この2機は、ミサイルを放つと、今度はやや高度を上げ、ECMポッドを作動させた。敵のレーダー画面には、白い靄のようなものが映り、機影や放たれたミサイルを隠してくれる。

 

 防空網の制圧を担当しているのはこれらの機体だけではなかった。EA-18GグラウラーやEA-6Bプラウラーが妨害電波を放ちながら飛び、敵のレーダー波の発信源を検知した。

 

『プラズマ1、ライフル!』

 

『プラズマ2、ライフル!』

 

 EA-18Gが一斉にAGM-88Dを放った。このミサイルはマッハ2.9という極めて高速で飛ぶので、迎撃するのが困難だ。防ぐには、レーダーのスイッチを切る他ない。しかしながら、レーダーサイトからそこそこ近いポイントから放たれたのと、妨害電波の効果も相まってウェルヴァキアの防空部隊に反応するチャンスは無いに等しかった。ミサイルは防空レーダーの丸いアンテナに到達して炸裂し、鋭い金属片で繊細な電子機器をズタズタに切り裂いた。

 

『プラズマ1、防空サイトの破壊を完了』

 

『ガーディアンより攻撃部隊へ。敵の歓迎委員会だ。方位176よりマッハ2で接近する4つの機影を確認。予定通りに迎撃せよ』

 

 この指示に合わせ、F-15CとF-4E、Su-33とF-16AMが一斉に攻撃体勢を取った。まずは、中射程ミサイルで先手を取る。スパローやAMRAAM、R-27が雲霞のごとく敵編隊に襲い掛かった。

 

 1996年 5月21日 1045時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯上空

 

 ウェルヴァキア空軍のMiG-29SMとMiG-29SMT、MiG-23MLが迎撃に向かっていた。これらは、防空サイトが破壊された直後に離陸していた部隊だ。

 

『ショプーラ1よりショプーラ隊各機へ。侵入した敵機を排除せよ』

 

 恐らく敵の狙いは、ここから南西にある陸軍の補給廠だ。そこには、弾薬や燃料といった補給物資が大量に備蓄されている。勿論、ウェルヴァキア軍はそういった物資を国内の各地に分散させて配置している。

 ところが、ノルドランド空軍による先日の兵器工場の破壊作戦により、軍は兵器のパーツや弾薬の調達にかなり苦労していた。とはいえ、ベルカに対して国内での兵器の試験を提供することによって、その見返りとして格安で武器の提供を受けることができていた。

 しかしながら、こうした補給物資に対する攻撃は確実にウェルヴァキア軍を疲弊させていた。そのため、ウェルヴァキア軍は補給物資を守るように部隊の配置を変更していた。

 

『ラツァ1よりラツァ2へ。敵戦闘機の侵入を確認した。射程内に捉え次第攻撃せよ』

 

『ショプーラ1、敵機を捉えた・・・・・・Fox1!』

 

 MiG-29SMからR27が放たれた。同じミサイルがMiG-23からも発射される。ミサイルはレーダーの電波に乗って敵機に向かって飛ぶ。しかし、これはセミアクティブレーダーホーミング式のため、命中するまで敵機にレーダーを当て続けなければならないという欠点がある。

 

 しかしながら、一部のMiG-29SMとMiG-29SMTにはアクティブホーミング誘導の空対空ミサイル、R77が搭載されていた。ウェルヴァキアはベルカからこのミサイルを密かに入手し、配備していた。

 

 1996年 5月21日 1046時 ノルドランド・ウェルヴァキア国境地帯上空

 

 空対空ミサイルの撃ち合いにより、双方に大きな損害が出た。ノルドランド空軍のF-4Eファントムがミサイルの破片を食らって損傷した。機体の完全な破壊には至らなかったものの、これ以上の作戦の継続は不可能となり、基地へ帰還せざるを得なくなった。

 

『グリズリー3、機体損傷!帰還する!』

 

『ボア2やられた!ダメだ、脱出する!』

 

 機体後部を炎上させていたF/A-18Eスーパーホーネットのキャノピーが飛び、射出座席がパイロットを撃ち出した。戦闘機は炎と煙を吐き出しながら、重力に倣って地面を目指す。

 

 一方で、ウェルヴァキア空軍のも戦闘機も被害を受けた。ミサイルの爆発をもろに食らったMiG-23MLの右翼がピボット部分から外れて落下した。勿論、当のフロッガーも墜落していく。

 

 高空でお互いを追いかけ回しあっている戦闘機をよそに、低空を飛びながらこっそりと攻撃目標に向かってる機体があった。傭兵部隊のA-10AサンダーボルトⅡ攻撃機だ。AGM-65マーヴェリック空対地ミサイルやGBU-10ぺイヴウェイレーザー誘導爆弾、自衛用のAIM-9Mサイドワインダー空対空ミサイルなど多彩な兵装に加えて増槽を搭載して飛行している。その周囲をノルドランド空軍のF-16AMがぐるりと囲むように護衛していた。

 

『ゼブラ1、護衛頼んだぞ。こっちは爆弾にミサイルで素早く動けないんだ』

 

『任せときな。それに、あんたらがやられたら殆ど作戦は失敗したようなものだからな』

 

 F-16AMのパイロットはレーダーを確認した。この機体は、レーダーがオリジナルのAN/APG-66からAN/APG-68(v)9にアップグレードされており、多彩な対地誘導兵器の他、AMRAAM中射程空対空ミサイルの運用能力も追加されていた。

 

『AWACSガーディアンより作戦中の部隊へ。敵戦闘機の編隊を確認した。排除せよ』

 

 ノルドランド空軍がウェルヴァキア空軍に対して大きなアドバンテージになっているのが、このAWACSの存在だ。ノルドランド空軍がE-3BセントリーやE-2Cホークアイを利用して戦場を監視・指揮しているのに対して、ウェルヴァキア空軍にはそれが無く、空戦の指揮を地上のレーダーサイトに完全に頼り切っていた。そのため、戦闘の度に破壊されるレーダーサイトの修復にウェルヴァキア空軍はかなりの人員や資材をつぎ込まざるを得なくなり、それが戦力の大きな消耗を生んでいたのであった。     

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