ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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襲い掛かる猛禽たち

 1996年 5月21日 1011時 ウェルヴァキア ラドープツァ補給厰

 

 警戒態勢が敷かれたのに、援軍らしき部隊はやって来ない。駐屯地に元から配備されていたZSU-23-4や9K33といった対空兵器が稼働し、鉛色の空を向いている。

 

 後方支援部隊が慌ただしく動き周り、ガスタンクからタンクローリーへ燃料を、倉庫からトラックへ機材や弾薬を載せ換えている。

 バタバタと大きな羽音を立て、Ka-26が離陸した。機体からスリングでコンテナを吊り下げている。この補給厰には滑走路が無いため、物資を航空輸送するにはヘリコプターに頼らざるを得ない。

 

「それを先に積み込め!そっちは後でいい!」

 

「A31倉庫のものはトラックに入れろ!ヘリにはB14倉庫の中身を優先するんだ!」

 

「防空部隊から連絡が入った!既に奴らの一部が防空網を突破してきたみたいだ!早いところ・・・・」

 

 凄まじい轟音が兵士たちの会話を遮った。空を見上げると、空軍のMiG-23MLとMiG-21SMのシルエットがあわせて10機、通過していくのが見えた。

 

 戦闘機が飛び去ると、ウェルヴァキア陸軍兵たちは行動を開始した。大きな段ボール箱や強化プラスチックでできた箱をトラックやヘリに積み込んでいく。まだこの駐屯地にある物質のうち、1割も退避させることができていないのだ。

 

 1996年 5月21日 1013時 ウェルヴァキア

 

「こちらキャメル1、ターゲット確認。攻撃する」

 

『キャメル2、スタンバイ』

 

『ガーディアンよりキャメル隊へ。敵が接近している。注意せよ』

 

「キャメル1了解」

 

 4機のF-16Cで構成されたキャメル隊が、一番乗りの編隊となった。戦闘機にはAMRAAMとサイドワインダー、そしてデリラ巡航ミサイルが2発ずつと、増槽が2つ、更に機体のセンターパイロンには、巡航ミサイル管制用のデータリンクポッドが、エンジンの吸気口のすぐ下にはスナイパーXRターゲティングポッドが搭載されている。

 

『こちらジラフ隊、敵の排除は任せてくれ』

 

 ジラフ隊は、2機のF-4EファントムⅡと2機のF-15Cイーグルで構成されている。

 

『任せたぞ!こっちは攻撃コースに入って無防備なんだ!』

 

 F-16の丸いキャノピーに無数の雨粒が当たり、後ろへと流れていく。かなり曇っているせいで肉眼での視界はやや悪いが、レーダーとスナイパーXRによる赤外線映像のおかげで、作戦に支障は無い。

 

 やがて、デリラ巡航ミサイルの射程内に標的を捕えた。戦術マップで標的を指定し、発射ボタンを押す。

 

「キャメル1、発射!」

 

『キャメル2、発射!』

 

 F-16が巡航ミサイルの射撃を終えた直後、ミサイル警報装置がけたたましい音を鳴らし始めた。

 

「ミサイルアラート!回避!」

 

 1996年 5月21日 1016時 ウェルヴァキア

 

 サイファーとジャガーは目の前で飛び回るMiG-29Sを追跡していた。途中、他のフルクラムの編隊に傭兵部隊のA-4Kスカイホークとノルドランド空軍のF-4EファントムⅡが追われているのを見かけたが、サイファーは無視した。

 

 僚機であるジャガーは、サイファーと一緒に飛ぶうちに、"円卓の鬼神"の精神とも言うべきものに段々と侵食されつつあるようだった。以前のジャガーであれば、先ほどのファントムとスカイホークを援護しに行かないのか、と呼び掛けたであろう。

 だが、ジャガーには"円卓の鬼神"の魂の一部が乗り移ったらしい。最近はサイファーの援護のみに徹して、他の戦闘機乗りのことに構うことが無い。

 

 やがてサイファーは目の前のフルクラムをHUDのボアサイトの中心に捉えた。R73のシーカーが敵機のエンジンノズルの熱を捉え、特徴的な電子音を鳴らす。

 

 サイファーは操縦桿の発射ボタンを押した。Su-35BMの翼端のレールランチャーから放たれたR73はすぐに目の前のミグを捉え、弾頭を炸裂させる。ウェルヴァキア空軍機は黒煙を引きながら地面に向かって落下していった。

 

 サイファーは獲物を探して周囲を見渡す。やがて、ターゲットがある方向から幾つか黒煙が立ち上るのが見えた。誰かがナパームかファイアボムで燃料タンクを破壊して火を点けたらしい。

 

『AWACSガーディアンよりマングース隊へ。敵機確認。方位223、高度11000、距離323マイル』

 

「了解だ。迎撃する」

 

 サイファーにとっては全ての敵は単なる獲物だ。レーダーで敵の機影を捉える距離には達していないが、AWACSからのデータリンクによって敵の動きを把握することはできる。そして、ここは敵地だ。地上に配備されているAAガンやSAMにも気を配らねばならない。

 サイファーはレーダーを一度対地モードにして地上の目標を探した。この辺りには敵の戦車や対空兵器は配備されていないようだ。

 円卓の鬼神は目の前の敵機に集中した。もうすぐ敵がこっちのレーダーの覆域に入る。やがて、レーダー画面を表示している多機能ディスプレイに2つの機影が映り込んだ。

 

「マングース1、敵機確認。交戦する」

 

『マングース2、エンゲージ』

 

 サイファーはコックピットの多機能ディスプレイに兵器選択画面を表示させ、R77を選択した。このユークトバニア製のミサイルの誘導性能は素晴らしく、最大射程で撃っても驚異的な命中性能を誇っている。

 ちょっと前までユークにはR27というセミアクティブ誘導または赤外線誘導の中射程ミサイルしか無かった。だが、このR77はオーシア製のAIM-120Cに匹敵する射程と命中性能を誇っている。値段だけで見たら決して安くは無いが、空中戦で生き残るという目的だけを考えると、極めてコストパフォーマンスに優れたミサイルと言えよう。

 

 レーダーが敵機を捉えるとサイファーは少し敵機が接近してくるのを待ってから操縦桿のミサイル発射ボタンを押した。R77は撃ち出されると、やや上昇気味の角度を付けながら前方に向かって飛翔する。

 R77は見事にMiG-29SMの胴体の真下で炸裂した。無数のフラグメントを浴びたフルクラムは機体の至るところから霧状の燃料を噴出させ、コントロールを失う。パイロットは射出したが、上手くパラシュートが開かず、そのまま地面へと急速に落下していった。

 

 サイファーはそんな光景に目もくれず、次の標的に狙いを定めた。レーダーで機影を捉え、IFFで質問信号を送る。質問信号への応答が無いことを確認し、ロックオンする。その途中、ジャガーが乗るJAS-39Cがミーティアを発射した。そのミサイルは猛スピードでウェルヴァキア空軍のMiG-23MLに追い付き、近接信管を作動させた。無数の金属片に切り裂かれた可変後退翼の戦闘機が煙を上げ、真っ逆さまに墜落していく。

 

『AWACSガーディアンより交戦中の戦闘機部隊へ。間もなく攻撃部隊が空爆を開始する。敵機の排除を続けよ』

 

 1996年 5月21日 1017時 ウェルヴァキア ラドープツァ補給廠

 

『ターゲット確認。攻撃する』

 

 4機のA-4Kスカイホーク攻撃機が機首を下げ、爆撃体勢に入った。胴体と翼の下には2つの増槽と、大量のMk84通常爆弾が吊り下げられている。他にも、Su-25KフロッグフットやトーネードIDS、AMXなどといった攻撃機の姿が見える。

 

『ターゲット確認・・・・・投下!』

 

 Mk84やFAB250といった通常爆弾が連続して投下された。それらの爆弾が地上で炸裂し、無数の金属片を巻き散らして周囲の建物、車両を破壊し、兵士を殺傷する。

 

 しかしながら、ウェルヴァキア軍側もやられっぱなしでは無かった。基地に設置された移動式ランチャーから9K33や9K37が放たれ、2K22、ZSU-23-4が機関砲弾を空に向けてばら撒く。

 

 ミサイルの1発が、傭兵パイロットが乗るAV-8BハリアーⅡのすぐ近くで弾頭を炸裂させた。ハリアーはエンジンを引き裂かれてコントロールを失い、落下する。

 

『ホエール3、イジェクト!』

 

 ハリアーのキャノピーに取り付けられている爆砕コードが作動し、その直後に射出座席がパイロットを撃ち出した。機体は火を噴きながら地上にあるウェルヴァキア軍の燃料タンクに上から突入した。

 

 ウェルヴァキア軍の補給廠のガソリンタンクに炎上するハリアーがめり込んだ。攻撃機の重みでタンクが大きく裂け、気化した燃料に引火する。燃料タンクが大爆発を起こし、周囲のものを爆風と火焔で破壊する。

 

 23mm機関砲から放たれた砲弾がA-10AサンダーボルトⅡの機体に数発当たった。だが、機体下部を頑丈な装甲板に覆われた攻撃機はびくともせず、お返しとばかりに30mmアベンジャー機関砲から劣化ウラン弾を数回に渡って断続的に放ち、ZSU-23や9k33のランチャーを破壊する。

 次に攻撃に加わったのはノルドランド空軍の4機のF-4EファントムⅡの編隊だ。BL755クラスター爆弾をそれぞれ6発、合計で24発搭載している。ファントムはターゲット上空に差し掛かると、全ての爆弾を投下する。BL755の1つのキャニスターには147個の小さなボムレットが搭載されている。合計で3528発もの小さな爆弾がウェルヴァキア軍の陣地に襲い掛かる。4機のファントムは爆弾を投下すると同時にエンジンのパワーを上げ、上昇したが最後尾の4番機がレーダーに捉えられてしまった。

 

 ファントムに向けて9K33が放たれる。パイロットは懸命にエンジン推力を増加させ、WSOはECMを作動、チャフをばら撒いたがあっさりとミサイルに追いつかれ、撃墜されてしまった。

 

 続いて、ミサイルがウェルヴァキア軍施設に降り注いだ。飛んできたのは、AGM-142ハブナップとAGM-88E SLAMだ。それぞれ、ノルドランド空軍のF-16AM、傭兵部隊のF/A-18Cから放たれたものだ。

 

『こちらビートル隊、ターゲット破壊完了。帰投する』

 

 1996年 5月21日 1022時 ウェルヴァキア上空

 

 サイファーは上空で燃料の残量を確認した。ここで半径350nm、2時間の制空戦闘をしてもお釣りが来るくらいの燃料が残っている。とはいえ突発的な事態に備え、可能な限り燃料を節約する飛行を心がけ、空戦に備えている。そして、すぐにその時がやってきた。

 

『こちらAWACSガーディアン。敵機がこちらに向かってきている。方位、087、高度12000、距離200。マングース隊、ドンキー隊、迎撃せよ』

 

「マングース1了解」

 

『2了解。迎撃します』

 

 ようやく獲物がやって来た。サイファーはレーダーを長距離探知モードに切り替え、AWACSとのデータリンクを更新する。そして、すぐにターゲットを確認した。さあ、狩りの時間だ。   

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