ACE COMBAT after story of the demon of the round table   作:F.Y

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侵略者への反撃

 1996年 1月15日 1051時 ノルドランド南東部 グノヴァヘリム平原上空

 

 こんな筈では無かった。ウェルヴァキア空軍爆撃部隊の指揮官は、そう思った。護衛機があっという間に撃墜されていき、遂には、爆撃機も撃墜されつつあった。ベルカの水面下での支援により、ウェルヴァキアは、特に空軍戦力が短期間で飛躍的に向上しつつあった。ダミーカンパニーまでも利用して、ベルカ企業の工場を国内に建設し、更には、ベルカ空軍のパイロットを教官として軍に迎え入れもした。

 

 だが、今、ウェルヴァキアの最初の攻撃は、ノルドランド空軍に、あっという間に撃破されつつあった。敵を甘く見すぎていたのだろうか。

 

 爆撃機のコックピットの窓から上空の様子を見ると、1機のフランカーがグリペンを引き連れ、空を飛び回っているのが見えた。そのフランカーから、一筋の光―――機関砲の曳光弾―――が伸びると同時に、護衛機のJ-10Bが火を吹いて落ちていった。

 

「司令部に知らせろ。現在、我が部隊はノルドランド空軍部隊により、被害甚大とな」

 

「わかりました」

 

「それと、他の機を引き返させろ。これ以上、爆撃機に被害が出ると、今後の作戦に支障が出てくる」

 

「ECM作動!引き返すぞ!」

 

 その直後、再び護衛機が撃墜された。しかしながら、何とか一矢を報いた戦闘機もいるようだ。F-16やJAS-39が爆発、炎上するのも見えた。

 

 指揮官は、レーダーで他の爆撃機が飛行コースを変え、ウェルヴァキア方面へ引き返し始めるのを確認した。だが、その直後、耳障りな電子音がけたたましく鳴り始めた。

 

「ミサイルアラート!後ろからです!」

 

 

「畜生!チャフ!フレア!」

 

「ECM作動!デコイ放し・・・・・・」

 

 

 ジャガーのF-16Cが放ったAMRAAMが、爆撃機のエンジンの下に潜り込んだ直後、近接信管を作動させ、弾頭に仕込まれたTNTに着火させた。

 

 爆発したTNTは、自身を覆っていた金属の外殻と電子装置を爆風で破片として撒き散らし、H-6Kの機体とエンジンを切り裂いた。

 

 ミサイルの攻撃を受けたH-6Kは、機体のそこら中に穴が空き、亀裂が入った。その亀裂が段々の広がり、それと同時に、機体の外板が剥がれ、それをつなぎ合わせていたボルトやビスが弾けと飛ぶ。爆撃機は空中分解を起こし、グノヴァヘリム平原の無人の大地に散らばった。

 

『やったぞ!』

 

『ざまあ見やがれ!くそったれの侵略者どもめ!』

 

 傭兵パイロットたちが、大きな戦果に盛り上がり始めた。だが、敵機は全て落とした訳では無い。そこで、ノルドランド空軍の大尉が、司令部への問い合わせをした。

 

「こちらルースター1。ガーディアンへ。聞こえるか?」

 

『ルースター1、どうぞ』

 

「奴らを全部撃ち落とすか?それとも、放っておくのか?」

 

『こちらガーディアン、ちょっと待ってろ・・・・・・』

 

 ややあって、AWACSが答えた。

 

『ガーディアンより、迎撃に上がった戦闘機部隊へ。領空内の敵機は全て脅威と見做せ。繰り返す、領空内の敵機は、全て撃墜せよ』

 

 1996年 1月15日 1053時 ノルドランド南東部 グノヴァヘリム平原

 

 サイファーは、その言葉を待っていましたとばかりに敵機に猛然と襲いかかった。彼は、残りのR-77を全て撃った。その全てが敵機に命中し、燃え上がる金属と炭素繊維のスクラップへと変える。その様子は、正に鮮やかとしか言いようのない射撃であった。

 

「マングース1からマングース2へ。残りをやるぞ」

 

 サイファーは、ミサイルを全部撃ち尽くすまで敵を狩るつもりだ。ジャガーは、そう思い、そして悟った。この男にとっては、戦闘機に乗って、敵を撃ち落とすことが、この男の人生にとって全てなのだと。そこには、慈悲や情けが入り込む余地は、まるで存在しない。そんな概念が、この男の頭でも心でもどこかの片隅に存在でもしていたら、この男は、ここまで生き残っていなかっただろう、と。

 

 正規軍と違い、交戦法規やルールというものが、一切存在しない、傭兵の世界。その中で、この男は戦ってきたのだと。無法には無法で。無慈悲には無慈悲で。そうすることで生き残ってきた。それができない人間は、死ぬだけだ。

 

『マングース2了解。援護します』

 

 ジャガーは、JAS-39Cの操縦桿を倒し、下降するSu-35BMを追った。ミサイルは、まだIRIS-Tが2発とミーティアが1発、残っている。サイファーのフランカーは、R-73を4発残しているようだ。

 

「マングース2、遠くの敵は任せる。R-77を全部撃ってしまったもんでね」

 

『わかっています。しかし、こっちもミーティアは1発しか残っていないのですよ』

 

「なあに、ミサイルが無くなったら、機関砲で撃てばいいからな」

 

 簡単に言ってくれるな、この人は、とジャガーは思った。そりゃ、"円卓の鬼神"やベルカの"凶鳥フッケバイン"のような英雄的な凄腕パイロットからしてみたら、機関砲さえ使えれば、敵機を撃ち落とすのには何ら問題は無いかも知れないが、みんながみんなそうでは無いのだ。

 

「マングース2、補給に戻る暇は無い。1機でも爆撃機を逃したら、こっちの負けだ。もし、補給に戻るなら、機関砲の弾も無くなってからにしろ」

 

 だが、サイファーの言うことは正しい。爆撃機が市街地に到達し、爆弾倉の扉を開いた時点で、こっちの負けになるのだ。

 

『わかりました。やってやりましょう!』

 

 サイファーのフランカーが、断続的に機関砲を短く撃つと、爆撃機の近くにいた2機のJ-10Bが瞬く間に落ちていった。そして、続いて放ったR-73がH-6Kの下で炸裂する。爆撃機は、煙を胴体から立ち上らせながらも、暫く飛行していたが、火が燃料か爆弾に引火したのか、突然、爆発、炎上して落ちていった。

 

 無双。ジャガーの頭に浮かんだ言葉がそれだった。戦果は、フライトレコーダーに記録されるため、誤魔化す事はできない。他の傭兵たちも奮闘していたが、間違いなく、この戦いのエースはサイファーのものだ。サイファーのフランカーが飛び抜けて行った後には、燃えながら落ちていく敵機しか残らない。ノルドランド空軍は、どうやらとんでもない男を雇ってしまったようだ。

 

 1996年 1月15日 1457時 ウェルヴァキア モキノ空軍基地

 

 モキノ空軍基地司令官は訝しんだ。いつまで経っても爆撃機が戻ってこない。更に、部隊からは、国境を超えてこれから無線を封鎖すると連絡があって以降、何も音沙汰が無かった。

 

 まさか、全滅したのだろうか。あり得ない。いくら傭兵を雇ったとは言え、こっちの調べでは、その傭兵の戦力など、たかが知れいている程度だという報告が上がっていた。それに、金だけで動き、何の信念も持たない傭兵風情に、国家の正規軍が相手になる訳が無い。奴らはチームプレーというものを、基本的には何も知らない。そんな奴らに、強化され、復讐に燃えるウェルヴァキア空軍が負ける筈が無い。そんな事を考えていると、作戦司令部の連絡将校である大尉がやって来て、敬礼した。

 

「大佐、報告があります。先程、攻撃部隊のパイロットと連絡が取れました。爆撃部隊は全て撃墜された模様です」

 

「何だと!?どういう事だ!」

 

「敵戦闘機部隊に、護衛機をあっという間に撃墜され、爆撃機は全滅した模様です。脱出したと言う、戦闘機パイロットが無線で報告してきました」

 

「それで、そのパイロットは、今、どこにいるのだ?」

 

 だが、大佐には、何となくだが、想像はついた。

 

「大佐。彼は今、ノルドランド領土内の雪山にいるそうです」

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