カルラ・イーターに憑依しました(凍結)   作:緋月 弥生

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第40話 疑惑

 無数の鉛玉によって吹き飛ばされたルイスの鮮血が、骨肉が、脳漿が未だに宙を舞い散るその最中、兵士達は身に纏う鉄の翼を以って空を翔け抜けた。

 その瞬間、調査兵団が壁内に潜んでいた『鎧』と『超大型』を退けたことで得た束の間の安寧を享受していた平和な街は、殺意渦巻く戦場へと姿を変える。

 

「一斉射撃! 残りの奴らの頭も派手にぶち撒けてやれ!」

 

「距離を開けるな! 奴らの装備は散弾だ、接近して引き金を引く前に素っ首を叩き斬ってやれ!」

 

 中央憲兵たちが指示に従って銃口を向けたことで反射的に身を引く仲間に、フォルカーもまた指示を発して突っ込んでいく。連続して左右にガスを吹かすことで、敵に的を絞らせないようジグザグの軌道を描くフォルカー。

 

「な――っ!?」

 

「遅ぇよノロマ!」

 

 銀光一閃。

 路地裏の闇を切り裂くようにフォルカーの握る剣が振られ、憲兵の1人の上半身と下半身が泣き別れとなった。再び鮮血が内臓と共に撒き散らされ、ルイスの血肉で赤く染まった路地裏に更なる赤を塗り重ねる。

 

「正気かコイツ!?」

 

「頭がイカれてやがる!!」

 

 仲間を殺したフォルカーに向けて、驚愕と罵声の入り混じる言葉と共に残る2人が散弾をぶち込む。至近距離で放たれた幾多の弾丸。死を齎すそれからフォルカーを救ったのは、ナナバとゲルガーの2人だった。

 彼らはアンカーを憲兵の握る銃に射出することで銃口を逸らし、迫る凶弾から仲間を救う。

 

「ぐ……ッ」

 

 だがそれでも、銃口を僅かに逸らす程度では広範囲を撃ち抜く散弾の脅威を、完全に取り除けるものではない。躱し切れなかった弾丸がフォルカーの肩、腕、脚の肉を抉り取っていく。

 撃たれた痛みに耐えながらトリガーを引き、フォルカーはアンカーも射出せずに強引にガスを噴出。壁に体を打ち付けながらも上昇し、射程圏外へ離脱に成功する。

 

「何考えてんだ!? 普通、銃を構えた相手に突っ込まねぇだろ!?」

 

「だからこそ突貫したんだっつーの! 結果的に敵を1人撃破できて、こっちは無事に済んだんだから良いだろ!」

 

 アンカーを打ち込み、姿勢制御を行いながら言うフォルカーにゲルガー達は頭を抱える。体の各所の肉を散弾で抉られ、少なくない量の血を流すその姿の一体どこが「無事」なのかと。

 急所や立体機動装置に着弾しなかったのは、単なる偶然に過ぎないというのに。

 

 調査兵団からすれば、中央憲兵の「対人用立体機動装置」は初見の代物だ。巨人を殺すための兵器がまさか対人間用に改良されているとは思わないだろうし、ましてや仲間の1人が頭をぶち抜かれた直後。

 そんな状態で銃口を突きつけられたら、誰だってまずは様子見しようと距離を取る。

 銃を突きつけた側である中央憲兵もそう考えていたからこそ、予想とは真反対のフォルカーの行動に不意を突かれて対応が遅れたのだ。

 

「無茶苦茶しやがって……! 俺とナナバの援護がなけりゃ、今ごろ木っ端微塵だったくせによぉ!」

 

「感謝してるぜ、これ終わったら酒奢ってやるよ!」

 

「おい、私は肉だからな!」

 

「お喋りはそこまでだ! 次が来るぞォ!」

 

 中央憲兵達が次の弾丸を装填したのを見て、軽口を叩き合う3人にフリードが警告を発した。

 それを皮切りに戦闘が再開する。

 

 中央憲兵が背中に背負う装置が石畳と擦れて火花を散らすほどの低空飛行を行い、真下から調査兵に向けて第2射を放った。4連して銃声が鳴り響き、しかし撒き散らされたそれらは、フォルカーたちがワイヤーを巻き取って身を翻したことで命中せずに終わる。

 

 決着は、拍子抜けするほどに一瞬だった。

 

「今だ、やれ!!」

 

 3回目の装填が行われるより早く。

 フォルカーの指示で一気に距離を詰めたゲルガーとナナバが、残る2人の中央憲兵を斬り伏せる。脱力した彼らは街路へと墜落し、平和を謳歌していた市民たちが一斉に悲鳴を上げて我先にと逃げ出した。

 

「1人は即死。もう1人は……頑丈だなァ、まだ息がある」

 

 そう言って、フリードが痛みで呻く憲兵をつま先で転がす。それを見たナナバは仰向けにされた憲兵に慌てて駆け寄り、懐から取り出した布で止血を行った。

 

「アンタにはまだ死んでもらっては困る。色々と聞きたいことが山ほどあるからね」

 

「それにしても、ご大層なモン作りやがって。何だこりゃァ? 凄えことは凄えが、弱点が目立ちまくってんぜ。銃は2つあるが両方とも撃っちまえば、装填に時間がかかるせいで隙を晒しちまう。しかもワイヤーは銃の向いてる方向にしか発射出来ねぇんだろ? おかげで、お前らの動きは分かり易かったぜェ? 練度は高いらしいが、実戦慣れしてねぇのが丸分かりだ」

 

「……ふは……はは。もう……勝者気取りか、調査兵団……」

 

 対人用立体機動装置を小突きながら喋るフリードに、敗者である筈の憲兵は口から血を吐きながらも嗤う。

 

「殺し合いは……お前らの、勝ちだ。だが……最終的に、目的を達成するのは……我々だ……っ!」

 

「――っ!? 止めろ、ナナバ!」

 

 いち早くに中央憲兵の意図に気づいたゲルガーが叫び、即座にナナバも反応するが、それでも僅かに間に合わない。予め奥歯に毒物か何かを仕込んでいたのか、喉を鳴らした憲兵は大きく痙攣して泡を吹くと、ピクリとも動かなくなった。

 

「クソッ、拷問にかけられて情報を吐いちまう前に自害しやがった」

 

 屍と化した憲兵を見下ろしてゲルガーが舌打ちし、ナナバも意味がなくなった止血をやめる。

 

「んで、コイツらは一体なにが目的だったんだァ?」

 

「……色々と仮説は浮かぶけど、まずはエルヴィン団長に報告しようか。ゲルガー、コイツの立体機動装置も回収してくれ」

 

「了解。……そう言えば、フォルカーはどこ行った?」

 

 今やっと1人足りないことに気づいたと、ゲルガーは周囲を見渡す。同じようにナナバとフリードも辺りに視線を巡らせて首を傾げたその時、少し離れた場所から絶叫が聞こえてきた。

 それが探していた仲間のものだと理解すると同時に、3人は声がした方向へと一斉に駆け出していく。

 

 声がした場所は、ダイナが入った店から僅か数十メートルのところだった。街路の端で血の海に沈む女性の脇で、フォルカーが崩れ落ちている。

 

「おい、どうし――」

 

 フォルカーの肩に手を置き、遺体の顔を覗き込んだゲルガーが言葉を失う。続いて駆け寄った面々も、ゲルガーと同じく驚愕の表情を浮かべた。

 血で汚れた長い金髪に、光を失った瞳。白のドレスワンピースに包まれた美しい四肢からは完全に力が抜け、動く気配が全くない。

 それは、自分たちと共に数多の脅威を退けた調査兵団の切り札だった女性。

 人間の最強がリヴァイ兵長であるならば、巨人の最強は彼女とまで称されていたほどの存在。

 女型の継承者ダイナ・フリッツが、死んでいた。

 

「……少し考えれば、分かっていたのに」

 

 項垂れたまま、フォルカーは拳を握りしめて掠れた声を出す。

 

「おかしな点はいくつもあったんだ。ルイスを殺った直後に、奴らは俺たちを「護衛」と呼んだ。何故だ? 決まってる、奴らの狙いがダイナだったからだ。奴らからすれば、俺たちが抹殺対象の護衛に見えたんだろうな。それに加えて、人数。本気で俺たちを殺す気なら、3人なんてあり得ない。数の有利を取るために、少なくとも6人以上は送り込む筈だ。あの3人はただの足止めで、別働隊がいやがった」

 

 そう、考えれば考えるほど今回の襲撃は不明瞭な点が出てくる。

 もしも本当に中央憲兵の狙い調査兵団であるなら、フォルカーたちを狙ったりはしないだろう。下っ端を何人殺しても、組織に対して大きなダメージは与えられないのだから。

 本気で調査兵団を潰すのなら、エルヴィン・スミス、リヴァイ、ハンジ・ゾエ、ミケ・ザカリアスといった上官の面々に刺客を差し向けるべきだ。

 

「中央憲兵による急襲と、新型の立体機動装置に意識を奪われすぎて気付かなかった……! すまねぇ、ダイナ……!」

 

「……そう思ってるなら、これからは寝室と浴室に忍び込むのは控えてください……」

 

「「「――――ッ!?」」」

 

 4人全員が、上体を起こしたダイナに幽霊でも見たかのような視線を向けて息を呑む。夢か幻覚でも見ているのかと何度も瞬きしても、目の前の光景は変わらない。

 確かに心臓が停止し、脈が無かった人間が動いている。

 

「……刺された直後に巨人の再生力を負傷箇所に注ぎ込んで応急再生を行い、ひとまず命の危険が去ったタイミングで自分で自分の心臓を止めて仮死状態になったんですよ。とにかく、死んでないのでそのお化けを見るような視線を向けないでください」

 

 少しフラつきながらも立ち上がり、解説まで行ったダイナにゲルガーは思わず額に手を当てて言う。

 

「お前、どうやったら死ぬんだよ」

 

 それは、この場にいる4人全員の思いをして見事に代弁していた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 中央憲兵らによる暗殺を何とか凌ぎ、無事に仮死状態からの蘇生にも成功できた。

 仮死状態からの蘇生は試したことが無かったのでぶっちゃけ不安だったが、幸運の女神は微笑んでくれたようだ。

 まぁ、暗殺されかけた時点で幸運もクソもねぇけど。

 心臓が完全に再生しているのを確認した後、俺はフォルカーから意識がなかった間に何があったのかの説明を受けていた。

 俺が店の中で聞いたあの重低音は、どうやら中央憲兵の対人立体機動部隊が使う散弾の発砲音だったらしい。

 レイス家、そしてケニー・アッカーマンも初手からやってくれるな。

 

 『原作知識』と現在の状況を擦り合わせながら全力で頭を動かし、思考を纏めていく。

 まず、何で俺が狙われた?

 そんなもん「壁外の世界」と「真の王家」の情報を調査兵団にバラしたからに決まってるが、それを知ってるのはエルヴィン団長を始めとした、一部の人物のみ。

 つーか、俺が壁外から来た存在かつ巨人化能力者ってことを知ってんのも、調査兵団に所属している兵士だけだ。あ、それとナイル師団長か。それ以外の部外者から見れば、ただの兵士の1人にしか見えない筈だし。

 なのに、中央憲兵は俺を狙った。

 つまり――……

 

「クソッタレ!」

 

 と、そこでフリードの発した罵声で思考が断ち切られる。

 通称「ダイナ監視班」と合流を果たした俺は彼らと共に、戦死したルイスと中央憲兵の遺体、そして対人用立体機動装置を回収するべく戦場となった場所へと向かっていたのだが、何やら問題が発生したみたいだ。

 皆が視線を向ける先には、夥しい量の血痕が残る石畳の地面。

 

「目を離した隙に、遺体ごとあの立体機動装置が回収されてやがる……!」

 

「路地裏の遺体も回収されてたよ。残ってたのは、ルイスの遺体だけだ」

 

 血痕の前で地団駄を踏むフリードと俺の元に、近くの路地裏に入って行ったナナバさんとフォルカーが、ルイスの遺体を担いで戻ってきた。

 ……これは、酷いな。

 運ばれてきたルイスの遺体は、思わずそんな感想を抱いてしまうほど損傷が激しかった。死者への手向けにもならないが、ショールで首から上を隠してやる。

 俺が死者に出来ることなど、この程度だ。

 

「急いで旧本部に戻ろう。一刻も早くリヴァイ兵長に今回の襲撃について報告しないと」

 

「それと、エルヴィン団長にも報告だな。俺は団長の方へ向かうぜ。……お前ら、ルイスとダイナは任せたからなァ」

 

「了解」

 

 フリードはもう一度だけルイスを見ると、立体機動装置で王都へと向かっていく。

 ……あれでウォールシーナに入ったら、軍法会議にかけられるんじゃねぇの? 例え兵士でも、理由もなく壁内で立体機動装置を使うのはダメだった気がするんだが。

 いや、俺の監視任務って明確な理由があるんだが、それは調査兵団外の人間には言えねぇし。

 

 ……まぁ、暫くしたらクーデター起きて政権変わるし大丈夫か。

 

 中央憲兵との戦いで遠ざかっていた市民が徐々に戻ってきたので、俺たちも慌てて愛馬を繋いでいた場所へと走る。

 フォルカー、ナナバさん、ゲルガーさんは兵服で立体機動装置を装備してて、しかもフォルカーは首無し遺体を担いでる訳で。さらに俺は真っ白なドレスワンピースや髪の毛を血で真っ赤に染めてるときた。

 もういつ憲兵を呼ばれてもおかしくない風体。

 逃げるべし、逃げるべし。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「……以上が、ほんの数時間前に街で起きた出来事です」

 

 馬にかなり無理をさせてスピードを出しまくり、最短時間で旧本部へと戻った俺と「ダイナ監視班」。

 出迎えてくれたアリーセやペトラさんが帰宅した俺たちの姿を見て大慌てとなり、ペトラさんは兵長とハンジさんを呼びに地下室へと猛ダッシュ。アリーセは俺の部屋へ連行すると血に塗れたワンピースを奪い取り、素っ裸になった俺を浴室へと叩き込んだ。

 

 湯浴みで血を洗い流し、今度は兵服に着替える。

 織物で濡れた髪も拭きながら浴室を出ると、会議室には既に城内にいる殆ど全員が集まっていた。

 ちょうど、フォルカーとナナバさんが兵長たちに事情を説明し終えたところか。タイミング完璧だな。

 

 俺が入室した瞬間に一斉に視線を向けてきた、大広間に集まっている面々を見渡す。

 まずは第3期リヴァイ班のリヴァイ兵長、ペトラさん、オルオさん、エレン、ミカサ、アルミンだ。因みに第1期は俺が所属していた時の班で、第2期が進撃ファン大好きの旧リヴァイ班だ。

 続いてハンジさん、モブリットさん、ミケ分隊長、ナナバさん、ゲルガーさん、コニー、サシャ、ジャン、フォルカー、アリーセ、リーナ。

 そして俺への抑止力としてこの城に常駐してる調査兵たち。何人か欠けているのは、地下に幽閉しているライナーとユミルの監視に当たっているからだろう。

 

「あれ? アベルはもう帰ったんですか?」

 

「アイツなら、お前が買い物に出かけた後すぐにここから出て行ったぜ?」

 

 ゲルガーさんの言葉に俺は首をかしげる。

 俺が買い物に出た直後ってことは、あの優男はラウラのお見舞いに行かなかったのか? わざわざこんな辺境まで来たのに、何ですぐに帰ったんだ? 今ここにいないって事は、忘れ物して取りに帰ったとかじゃなさそうだけど。

 

「おいダイナ、この緊急時に関係のない話はするな。本題に入るぞ」

 

「了解です」

 

 兵長からお叱りの言葉を貰ったので、そこで思考を中断。

 アリーセの隣に並び、会議を仕切っているハンジさんへと視線を向ける。

 

「それじゃあ、全員揃ったし情報を整理しよう」

 

 そう切り出したハンジさんはチョークを手に取ると、黒板に今回の襲撃事件の要点をまとめていく。

 一通り書き終えると、ハンジさんは振り向いて俺を見た。

 

「ダイナ、君を襲ったのも中央憲兵で間違い無いんだよね?」

 

「はい。咄嗟に兵服を見て確認したので、間違い無いと思います」

 

「分かった。次に、相手の顔とか人数とかは覚えてるかな?」

 

「正確な数は分かりませんが、恐らく4人以上はいたかと。顔の方は……えっと」

 

 出来る限り正確に、俺を刺した男の特徴を述べる。

 『原作』に出てきた人物なら名前まで言えたんだが、襲ってきた奴らの中で顔を確認できたのは脈を確認しに近づいてきた1人だけ。

 そして、残念ながらソイツは原作キャラじゃなかった。

 

 特徴を全て言い終えると、ほぼ同時にモブリットさんが俺の証言を元に描いたイラストを黒板に貼る。

 うっま!? え、何それ凄え。もはや写真じゃねぇか。しかも俺が言った特徴を全て完璧に捉えている。

 

「モブリットさん、こんな特技があったんですね。私が頭の中で思い描いていた顔と全く同じです」

 

 素直に絶賛すると、モブリットさんは少し照れたように微笑み、そしてすぐにハンジさんに続きを促した。

 『車力』のピークもデタラメに優秀だが、こっちも負けてねぇな。

 

 しきりに感心しているうちに会議の議題は対人用立体機動装置へ移っていた。これに関しては実際に戦ったナナバさん、ゲルガーさん、フォルカーへと質問が集中し、俺は特に話すことなし。

 口を閉じたまま会議を静観する。

 余談だが、対人用立体機動装置に関しても交戦した3人の証言を元にモブリットさんが精巧なイラストを描き上げた。

 

「……で、次が最大の問題だね」

 

「ああ。何よりの問題は、中央憲兵が狙った相手がダイナってことだ」

 

 ハンジさんの言葉に兵長が頷き、室内の空気が張り詰める。

 勘付いた人たちが互いに疑惑の視線を向け合い、俺も無意識のうちにアリーセの肩を抱いて引き寄せた。

 もしかすると、この部屋の中にいる可能性もあるからな。

 ……いいや、むしろこの中にいる可能性が最も高いだろう。

 

「なぁ、アルミン。何で皆、仲間同士で睨み合ってるんだ?」

 

 どうやらこの事態をよく理解出来ていなかったらしいコニーが、小声でアルミンへと話しかけていた。同じようにサシャも疑問の視線をアルミンへと向けている。

 ……待て、エレンも聞き耳立ててないか?

 何でだ主人公、お前はそれなりに頭が回る方だろ。

 公式ファンブックで、エレンとコニーの頭脳戦のステータスが同数値なのを見た時はそんな馬鹿なと思ったが、まさか間違ってない?

 

「ダイナさんが巨人化能力者であることや、壁の外の世界についての情報を持っていることを知っているのは調査兵団だけなんだ。ナイル師団長は知ってるけど、あのエルヴィン団長が裏切るような相手に自ら秘密を開示するとは思えない。つまり、調査兵団の中にダイナさんのことを中央憲兵に話した裏切り者がいる」

 

 俺でも察せられるんだから、調査兵団の頭脳を担うハンジさんやアルミンは一瞬で気づくよな。兵長も言わずもがな。

 そう、調査兵団の中に中央憲兵のスパイがいる。

 それも特に俺の行動に詳しい、監視役としてこの城に常駐している面々――今まさにこの部屋にいる奴らが特に怪しい。

 

 何せ、城にいる時じゃなくて俺が買い物のために街へ出たタイミングだからな。俺が今日、買い物に出かけると予め伝えていた相手はリヴァイ兵長とハンジさん、そしてアリーセの3人だけだ。

 この3人がスパイの可能性はゼロなので、即座に除外。そうすると、前日から俺が外出すると知っている人物はいなくなる。

 しかし、俺は実際に街で襲われてしまった。

 中央憲兵がウォールローゼ内の街で常に俺を待ち伏せしてる可能性も無しではないが、奴らもそんなに暇じゃないだろう。

 

 以上のことから、スパイは俺が今日出かけるのを見てから中央憲兵にそのことを伝えに行ったのだろう。

 行きはそんなに馬を飛ばしてないから、先回りして街に中央憲兵を配置するのは十分に可能だ。それに乗っていたのは調査兵団のサラブレッドじゃない普通の馬だったから、それこそスパイがサラブレッドの方を使えば簡単に先回りできる。

 そしてこんな行動が出来るのは、今日の朝にこの城にいた奴らだけという訳だ。

 

「エレンとヒストリア、そしてダイナはすぐに別の場所に隠す。俺とハンジ、ダイナ、アリーセ、エレン以外は全員外に出ろ。3人を隠す場所が決まった後、俺とハンジが信頼できると判断した奴にだけ隠れ家の場所を伝える」

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