たった今誕生日を迎えた僕は、生物兵器と踊らない 作:翠晶 秋
弾ける轟音。
目の前の鉄塊がスクラップと化す。
機械が唸りを上げ、排熱を始める。
「ふう。これで終わりか?」
「油断しないで。まだ気配がある」
「無機物に気配とかあるのか……?」
ピンク色の髪をなびかせながら、少女がガレキの山から飛び降りてくる。
───右腕を無骨なショッキングピンクの装甲に覆われて。
先端からキリキリと吐き出された刃はポキリと折られ、代わりに折られた下の部分が新たな刃となる。
【
彼女のソレはありとあらゆるディギーズの首を斬って来た。
ディギーズのコアを摘出し作られた、対ディギーズ用の彼女専用の武器。
俺の腕を覆っている汎用型もその一つ。
【
上装部分を開き、針をリロードする。
ガチャン、と硬質的な音がホチキリアスのと同時に鳴る。
ディギーズだ。
耳障りな音を立てながら飛びかかってくるディギーズの首にホチキリアスの照準を当て───
───鋼鉄の牙が、噛み砕いた。
◇
『一年前に失踪した幼馴染が異世界から帰ってきた件。の次話を投稿しました。』
ディスプレイに表示された文面を見て一息つく。
ふう。これで明日の分を予約投稿できた。
───俺の名前は
ハーメルンで小説を投稿しているネット小説家。
ゆくゆくはなろうへ進出、書籍化、アニメ化を目指している。
「───ってやば!しまった、約束に遅れる!」
『他人の関わることは最優先』を座右の銘にしている俺としては、私情で相手の機嫌をそこねるのは勘弁したいところだ。
所変わって友人宅。
「ドロー……。チャージアンドドロー。うぬぬ、これはやられたか?」
「アキ、いい加減にロスト買えば良いのに」
「うん、ロストは普通に使えるぞ?」
友人宅。
俺たち三人は共通のカードゲームで遊び、大乱闘ぶっ飛ばし兄弟、
遊んでいる時間はとても楽しいのだが、ふと、友人の時計が目に入る。
「あ、俺、今日部活あるから帰るわ」
「そっか、休日もやるとか大変だな」
「こればかりは過去の自分を恨む……」
せこせことスニーカーを履き、友人宅を飛び出す。
……俺は高校生なのだが、学力が低くて頭の悪い高校を受験した。
もっと頑張れば良い高校に行けるという微妙な学力で、楽な方を選んだせいだ。
結果は、『ウザい』『エグい』などの低俗で語彙力の無い言葉の飛び交う底辺学校。
……それこそ、
まあ、中学校が上の階級の学校だったおかげで作法、学力共に良好、先生からの信頼も厚く、『お前は将来政治家になれる』なんて言われてる。
この学力で政治ができたら日本のお偉いさんはどれだけ頭が悪いんだ。
と、話がそれたが、その厚い信頼とやればできる才能のお陰で俺は色んな仕事をやることになり、部活の演劇部でも一年生で役者をやるという偉業を成し遂げているのだ。
……厄介事を押し付けられることも多々ある。
「こんにちわ!」
「「こんにちわー」」
私立
その体育館で、俺の演劇部はやっている。
演劇部の志望理由は脚本が書きたかったから。
一年前に小説を書き始めて、以来、こういう文面事に興味を持ち始めたのだ。
発声や筋トレをやって最後に台本の練習、夜の7時になった所で家に帰る。
ここ最近で慣れてきたような気もするが、やっぱり肉体的な疲労が絶えないな……。
自販機を通りすぎ、昔通っていた塾を通りすぎ、工事現場の前に倒れている女の子を通りすぎ───
───は?女の子?
足を止め、振り替える。
確かにいる。
……人が、倒れている!
「えっ、あっ、ちょ、大丈夫っすか?」
駆け寄り、声をかける。
反応は無い。
脈を測り、胸に耳を当てて生きているか確認───なんて能力と強靭なメンタルは持ち合わせていないので、普通に口元に手を近づける。
「息は、ある」
微かだが、一定のリズムで俺の手に息がかかった。
寝ているのか……こんなところで。
「あの、起きてください」
「んん……?」
「大丈夫ですか?」
少女の肩を揺らし、意識を覚醒させようと試みる。
薄いピンクの長髪───余談だが、穂織は髪色がカラフルなやつが多い。他ならぬ俺も深緑だ───の少女は、やがてその瞳をゆっくりと開く。
「えと、大丈夫ですか?」
何度目か分からない言葉をかける。
少女は話さなかった。代わりに、
くるるるるる…………
腹の音で返事をした。
◇
「はむ、はむ、はむ……」
「…………」
俺の隣に、近くのコンビニのチキンを旨そうに食べる少女が座っている。
肉をその小さな口で噛み締め、胃の府に落とす。
……この子すげえ旨そうに食うなあ……。
やがてチキンを食べ終えた少女はナプキンで口元をぬぐうと、
「連れてきてくれてありがとう」
と、深々とお辞儀をした。
「本当にお腹が空いてた。もう少しで食べ物があると思って歩いてたけど、ソレを考えたら余計にお腹が空いてしまった」
「そ、そうなの……」
倒れるほどの空腹って、それ大丈夫なのか。
「チキンのお代を払う。いくら?」
「それくらいは良いよ」
「それはダメ。何がなんでも払う」
「いや、別に───」
「ダメ」
なんでそこまで頑固なんだ。
「お金が嫌なら体で払う」
「ぶっ!?おま、年頃の乙女がそんなこと言っちゃダメ!何されるか分からないよ!」
「あなたはいい人」
「……そう思う理由は?」
「そんなことを考えるような悪い人なら倒れている時に襲う。食べ物を食べさせたりしない」
ぐ。
確かに、理にかなってはいるが……。
「じゃあ、君が倒れた理由を教えてよ」
「?空腹で」
「そうじゃなくって、空腹で倒れるくらいに疲れた理由ってこと」
「………………」
少女は黙りこくる。
まさかそんな質問がくるとは思わなかったのか、返答に迷っている様子だ。
「…………ごめんなさい。言えない」
「そっか。……よし、じゃあこれでチャラだ」
「ちゃら?」
「俺は、君が空腹で倒れるくらい疲れた理由を聞く代償として、君にチキンを奢った。貸し借りは無しってこと」
「それはおかしい。私は何も教えてあげられていない」
ううむ……。
少女にお金を払われるのは何故かいい気がしない。
どうにか出来ないものか……。
「じゃあ、君の名前を教えてよ」
「名前?」
「そ、名前」
さっきから愛想のない少女。
感情が読み取れない。
まるでボイスロイドか何かのようだな、そう考えつつカフェオレをすすると。
「コード1850」
「……は?」
「名前。コード1850。正式名称は───」
「いや、いい。もう言わないで。」
ちょっと待て。
じゃあ彼女はロボットか何かだと言うのか?
そんなはずがあるわけないだろう。
現に彼女は、息をして、体温もあって……。
「つまるところ、生き物ではない?」
「当たりで間違い。私は通常の人間と同じように作られた摸倣体。命はあるけど、生きてはいない」
「じゃあ、なんだって言うんだ?まさか、生物兵器とでも言うの?」
少女はあろうことか「うん」と頷いて見せ、すくっと立ち上がった。
「証拠、見せる」
「証拠?」
「ガンツァー」
彼女が虚空に手をつき出すと、パリッと頬をなにかが通っていった。
紫電一閃。
彼女からバリバリと電撃が放たれ、その瞬間には、彼女の右肩から先はショッキングピンクの装甲に包まれていた。
「信じて、もらえた?」
夜風に薄桃色の髪をなびかせ、彼女は言った。
尚、この小説の地名や高校は現実に存在しません。
本名、学校名、住所などは空想の物とさせていただきますが、血液型、誕生日などのネット上に出しても良い情報などはリアルのワタシと同じ情報を執筆させていただきます。