たった今誕生日を迎えた僕は、生物兵器と踊らない 作:翠晶 秋
アンケートに参加してくださった皆様、誠にありがとうございます!
「ファレノ」
「ふぁれ……?」
「ファレノ。私の人形の名前」
リカちゃん人形みたいなもんか。
しかし、ファレノねぇ。
「じゃ、これからファレノって呼ぶ。いいか?」
「ん。ばっちこい」
「……」
「…………」
「………………」
「……………………呼ばないの?」
「はっ!?いやいや、呼ぶ時が来たら呼ぶし!?今呼ばなくてもいいんじゃないかなぁ……」
「そう。……残念」
いや、なんでそんな悲しそうな顔するんだよ。
なんか俺が悪いことしたみたいになるだろ……。
「……ホントに呼ばない?」
「だぁー、もう、わかったよ!……じゃ、呼ぶぞ」
「ん」
「……ふぁ、ファレノ」
「ん!」
花が咲いた。
いや、名前呼ばれて嬉しいとか、どこの激チョロ漫画だって話だよ。
「さてそろそろ大丈夫かな」
「なら行く。ここから先は警戒は無用」
少女がノーモーションで立ち上がったのを見て俺も立ち上がる。
地下には通路があって、なんというか……アニメの秘密基地を思わせる近代的な雰囲気だ。
『お帰りなさいませコード1850。本日の成果は』
「小さめの核が一つ。最近はディギーズがあまり現れないから警戒が必要と伝えて」
『了解致しました』
「それと【黄昏】の中でも動ける人を一人連れてきた」
『了解致しました。装備を回収します』
「ん」
ファノレが歩くその最中に、天井のスピーカーから声が流れる。
マジで秘密基地じゃねえか。
壁からロボットアームが出てきてファノレの腰に付いているポーチやら何やらを外していく。
ファノレは「ふぁ」と欠伸をもらすとそのシャツに手をかけ……ってちょっと待て!
「ここで着替えられたらまずい!」
「どうして?」
「いや、だって、着替えって」
「アキになら見られても構わない」
「その信頼はどこで築かれたんだ……?」
とにかく、ここで着替えるのはやめて頂きたい。
『アキ様、アキ様』
「え、俺」
『コード1850は生体兵器です。どうかお気遣いなく』
「できないですって。コイツ、見た目は普通の女の子ですもん」
『……コード1850の周りにホログラムによるカーテンを投影致します』
ファノレの周囲にオーロラ状のカーテンが出来上がる。
ファノレは我関せずとぐんぐん突き進んでいるが、その動きに合わせて投影しているのか?
『コード1850の装備の回収を再開します』
「ん……」
ファノレがシャツを脱ぎ、ロボットアームに手渡していく。
考えて見れば、ディギーズの油まみれディギーズ内にあった血まみれ臓物まみれだったから、本人からすれば早く着替えたいのは当然か。
『コード1850は湯床でボディのクリーニングを。アキ様はそのまま直進ください』
「ん」
「え、あ、はい」
『ご用があればなんなりと』
分かれ道でファノレがどこかに消え、俺一人で歩く。
せっかくなのだから色んな事を試してみたいものだが……。
「あの、AIさん」
『それは私のことでしょうか?私はコード1。お気軽にワンとお呼びください』
「じゃあワンさん」
『はい』
「ディギーズってなんなんだ?」
『マスターに会えば、現在アキ様が思案されているであろう【ディギーズの正体】【ガンツァーの正体】【黄昏とは】【戦う義務】の項目は全て明白となります』
ここでもか……!
マスターって、ファノレたちを造ったってことかな。
そういう設定多いけど。
「じゃあワンさん」
『はい』
「オレンジジュースちょうだい」
『どうぞ』
うーむ、行動の自由は許されているけど情報は得られないってことか。
コップで出されたオレンジジュースを流し込みながら考える。
そういえばファノレは1850番なんだったか。
少なくとも1000はファノレのような者がいると。
それが全員、世界各地でディギーズを狩ってる。
にわかには信じられんけどなぁ。
『アキ様』
「はい?」
『通り過ぎました。少しお戻りください』
「あ、はい」
ロボットアームが指し示す扉の前に立つと自動ドアが開き、広めの間に通される。
自動ドアが閉められると照明が一気に明るくなり、部屋の全体が見渡せるようになる。
奥の玉座に座っている男が言った。
「君がアキ君かね?どうでもいいが、取り敢えず近くに来なさい」
とても面倒ごとの予感がした。