たった今誕生日を迎えた僕は、生物兵器と踊らない 作:翠晶 秋
「良く来たな」
「あんまり来たくありませんでしたけど」
【黄昏】の外にいても、あの秘密基地に行くことはできた。
その日もファノレが迎えに来てくれたのだが……ファノレがポケットから取り出したカードキーを通すと、エレベーターは勝手に下に向かっていった。
めちゃくちゃに伸びている地下通路を通ってこの前と同じ部屋に来た訳だが……この人、どこまで知ってるんだろう。暇なのかな。
「今日はお前に武器を持たせる」
「武器?」
「ファノレの【ガンツァー】と同じようなものだ」
おお。
あのでっかいカッターか。
「まぁファノレはポイントを貯めてアレを手に入れたからお前はアレを使えないがな」
ポイント制なんだ、武器。
「リロード式押出釘」
「あ?」
「リロード式押出釘、ホチキリアス。ワン、用意しろ」
『すでにこちらに』
俺の足元のタイルが一つ、パカっと開いて台座が出てきた。
台座には小さなキューブ状の物がぶっ刺さっており、男……うん、ボス。ボスを見ると、視線で『手に取れ』と言ってきた。
キューブを鷲掴みにして引っこ抜く。
掴んだ部分が展開して俺の右腕に絡みつき、やがて硬質化して、なんか……でかいホッチキスみたいになった。
「それがホチキリアスだ……使い方はこれを読め」
「わっとと」
マニュアルが放り投げられる。
「
「12ページに書いてある」
「読めないって言ってるんですけどねぇ!?」
左手だけでめくろうと四苦八苦していると、不意に扉が開いた。
「アキ!」
「ファノレ!悪いんだけどこれの12ページ開いてくんない!?」
「指南役にワシが呼んだのだ。さっさとトレーニングルームにでも行って慣れてこい」
「いこ」
ファノレに左手を掴まれ、俺は換装状態のまま部屋を出たのだった。
◇
黒地に水色のラインが入ったパイロットスーツのようなぴっちりとした服に着替えたファノレが髪を結っている。
男の趣味だそうだ、体のラインが出る服。
……良い仕事をしたな。ファノレに胸は無いがそれもまた良きかな。
「ん、まずはそのホチキリアスを仕舞うこと」
「おう。どうするんだ?」
「はいこれ」
ファノレがページをめくってくれる。
えーと?中指のあたりを……?
カシュンと音がしてホチキリアスがぐんぐん小さきなっていき、キューブが埋まった腕輪になった。
「意外と簡単なんだな」
「ん。ホチキリアスもだけど、汎用種は操作が簡単」
マニュアルをめくりつつ、ファノレがガンツァーを出す。
「ガンツァーみたいな特別な機体は腕自体が変異するから、部位の操作感覚がまるきり変わる」
「そうなのか……って待て。お前の腕輪は?あと、このキューブってなんだ?」
「その四角いのはコア。あと、私たちのコアは体の中にある」
「……!?」
コアって、ディギーズが集めてるやつじゃん。
それに体の中って……。
ファノレは「んー」と首を傾げると、棚からナイフを取り出して自分の服を切り裂いた。
「ばっ……」
「ここみて」
「……ん?」
剥き出しにされたファノレの胸部。
その谷間あたりに、痣のようなものがあった。
「この内側にコアがある。あと少しすれば跡も消える」
見るも痛々しい……というほどでは無いけど、かと言って、見逃せるというものでも無い。
「触る?」
「捕まるから触らない」
とりあえずはもう確認したので、パーカーを被せて後ろを向く。
昂りはそう簡単に抑えられるものではないのだ。童貞舐めんな。
「まぁ事情は分かった。体内に埋め込まれてるから、腕輪みたいに一々取り外ししなくてもいつでも装備ができるってことだな」
「そういうこと。武装はコアを核に動くから、ディギーズを纏っているようなものと言っても過言じゃない」
「なるほどなぁ……」
「まぁまずはコアに慣れること。早めに戦闘に出ないとご飯が食べられない」
ご飯?
「ん……私たちはディギーズを倒すことでポイントを稼いでる。そのポイントで物を貰ったり、個室の設備が良くなったりする」
「で、ご飯もポイントを使うのか」
「朝、昼、晩の一食ずつなら無料。おかわりも2杯まで。でも、それから先はポイントが必要……」
「…………よく考えたなあいつ」
青ざめた顔でお腹を抑えるファノレ。
やっぱり戦ってるとお腹が空くんだろう。
となると、最初にあったときに空腹で倒れていたのも合点。
「わかった、頑張るよ」
「頑張って。月に一回模擬戦があって、その成績でもポイントが貰えるから鍛錬は怠らないこと」
……ここ、ホントに人類を人知れず救ってる秘密基地なんだよな?