崩れゆく世界の片隅で   作:mikimiki

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二次創作を書くのは初めてですが、楽しんで頂ければ幸いです
とはいうものの、暗い話になる気しかしないのでご注意ください


プロローグ

 深海棲艦。人類の敵。

 深海から蘇った艦艇と予想されてはいるが、その正体は不明。

 

 そんな敵に後れを取ったのも遥か昔のことで、艦娘との共闘によって現在はその全てを撃滅するには至らないながらも、適宜防衛することは可能な状況が作り上げられている。

 とはいうものの、倒しても倒しても湧いて出てくるかのように出現するため、完全勝利するための目処は立っておらず、かれこれ6年以上は議論が行われている。

 

 一時は断絶しかけた国交も、艦娘による護衛を駆使すれば海上での輸送は可能であり――空路での輸送はまだ完全に危険が排除できたわけではないので行われていない――、以前とほぼ同じような交流は可能になっている。海外旅行や観光も少なからず行われるぐらいには回復していて、普通に暮らす分には平和と言って差し支えない程度であると断言できるだろう。

 

 そんな平和を取り戻しつつある日本で、問題になっていることがあった。

 緊迫した状態ではないものの、この先のことを鑑みると無視できない問題。

 それは、提督適正者の増加である。

 

 艦娘の発見当初、国は総力を挙げて“提督”として艦娘を指揮できる者を探していた。

 当時はまだ指針も定まっておらず、手探りだったことから、鎮守府を強襲されて亡くなってしまう志願者も少なくなかった。突然壊れた日常の中で、平和を享受するだけだった人間が、そんな死と隣り合わせの場所に行く事を望むなどできるはずもなかった。

 だが、いまはどうやって運営していけばいいか、こんな事態に陥った場合はどう対処すればいいかなど、多くのことが判明し、命の危機はほとんど無く給金は高い。

 そして何より国が思っていたより提督の適正を持つ者は老若男女問わず相当数いたのである。

 

 危険がほとんどなくなったと知ったとたん、皆一斉に適性を調べるテストを受け始めた。

 テストは至極簡単なもので、艦隊指揮に必要な妖精が全種類確認できるかどうかというモノだけ。当初の予定では大勢いるとは想定していなかったため、面接などはなくテストに合格すれば即採用というレベルだった。

 

 結果、全国に提督が20万人存在するという異常事態に陥った。

 

 提督適正者には艦娘一人を必ず充てると明言した以上、秘書官を宛がわないわけにはいかない。初期艦として最適だと判断された5人の艦娘の準備が間に合わなくなるのは予想に難くなかったため、最低値での建造を本人立ち会いのもとで行い、その建造で出会えた子を初期艦としてもらうことに決めたのである。

 その後に建造祭りとも呼ばれた秘書官建造のおかげで日本の資源は危機的な状況まで追い込まれた。

 

 最近では面接を行って人柄も見て、本当に提督としてふさわしいかを判断させるようにしてこそいるが、法律を改正するまでの3年間で異様な数の提督を増やしてしまった日本は、給金と資源の問題を抱えることになってしまったのである。

 加えて人数が多すぎるため、初の建造――つまり初期艦の建造――で軽巡級を出せた提督以外は着任する場所も限られているため自宅での待機命令が出ているだけ。

 ある程度の練度の向上を行っておくようにとの通達はあったものの、普通に暮らしている場所には演習をするスペースもなく、練度の向上などほぼ望めない。それは実質、ほぼ働きもしない提督“候補者”に金をばらまいているような状況なのである。

 

 

 かく言うこの物語の主人公である彼も、そうやって駆逐艦娘を引き当て、ただ待機しているだけの“候補者”の一人にすぎなかった。

 もっとも、田舎に住んでいた彼は河川敷などを利用してペイント弾を撃たせる射撃訓練をさせていた分、他の待機中の提督よりマシだと言えるのだろうが。

 

 いつものように彼が秘書官のために夕食の材料を買って戻ってくると、玄関でピンク色の髪を下ろした少女が出迎える。三日月のバレッタをしていないところを見るに、風呂から上がったばかりなのだろう。

 腰より長く伸びた髪をタオルでまとめている最中だったようで、その右手にはタオルが握られていた。

 

 しかしいつもは出迎えるまではせず、脱衣所にいる場合はそこから声をかけてくる程度だったはずである。一体どうしたというのだろうか。

 その疑問は彼が言葉を発するまでもなく、少女が自身の左手に握られた紙を彼に差し出したことで氷解する。

 少女が彼に手渡した髪、それは艦隊司令部からの司令書だった。

 それを見て、ハッとして彼は少女の方を見た。その瞳には恐怖や不安の色が滲んでいて、その目尻には涙が溜まっているのがわかる。

 二人の間を沈黙が支配する。

 先に言葉を発したのは、少女の方だった。

 

「うーちゃん、怖いぴょん。戦うために生まれて来たはずなのに、戦ったことがないのが怖いぴょん。この生活が壊れて、死んじゃうかもしれないと思うと、怖くて怖くて堪らないっぴょん」

 

 なんとも気の抜ける語尾で話す少女だが、その声は震えている。

 語尾を保つことで精一杯“普段通り”でいようとしているのだ。自分がその感情に飲み込まれないようにするために。溢れ出そうな感情を押さえるために。

 

 彼は沈痛な面持ちで瞑目する。

 力なく垂れる彼の手から、司令書が落ちる。

 そこには横須賀鎮守府に出頭せよという指示の他に、その後囮として出撃する旨が記されていた。

 

 ◇

 

 いつもの食卓。だがそこにはいつもよりも豪勢な食事が並べられている。

 にもかかわらず箸を動かす二人の表情は暗い。

 沈黙する場に耐えきれなくなったのか、少女がゆっくりと口を開いた。

 

「しれいかぁーん。心中でもする気ぴょん?」

「まさか。うーちゃんの初めての出撃だからちょっと気張っただけだ」

「初めて? 最期の出撃の間違いじゃないぴょん?」

 

 冗談めかして言っているものの、声のトーンはそれが起こり得ることだと知ってのもの。

 彼はどう返していいかと迷ったが、一つ味噌汁に口を付けて飲み込んだ後、少女に真っ直ぐ目を向ける。

 

「本格的に演習とかがやれてる鎮守府所属の艦娘ほどじゃないにしろ、お前は他の子よりは訓練できてる。生き残れる可能性はゼロじゃないだろうよ」

「そう言ってもらえると少しだけ元気が出るぴょん」

 

 その少女の心を表すかのように、少女の頭頂部にあった癖っ毛がぴょこっと少しだけ持ち直した。

 一つ大きく息をした少女はいつもの悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

 

 彼が取ろうとしていたコロッケに素早く箸を伸ばし、それを横から奪い去る。

 続けて彼が手を伸ばしたソースをもかっさらい、どうだと言わんばかりの顔を見せつける。

 

「それでいいよ、うーちゃんは」

 

 彼は呆れたような嬉しいような笑みでそれを受け入れ、美味しそうにコロッケを頬張る少女を見る。

 建造の不具合か、本来生まれないはずの駆逐艦、卯月が彼の秘書官として着任することになったのは、かれこれ五年以上も前の話。卯月が建造されると知った司令部はすぐに調査するが、原因は判明せず、加えてそれ以降卯月が出ることは無くなってしまったらしい。未だ建造や海上救出の艦娘出現については謎が多く、もはや提督の運なのではないかと言われる始末だ。

 彼の目の前にいる卯月は本来出会えるはずではなかった艦娘なのだ。

 たとえそれが旧型の艦だとしても、彼はその出会いを運命だと信じて疑っていない。




ちなみにゲームはうーちゃんとみっちー提督です
艦これサービス終了時に一緒にいたいのはみっちー、いま一番好きなのはうーちゃん。そんな感じ
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