崩れゆく世界の片隅で   作:mikimiki

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イベント楽しんでて遅れました。
なんでE1にあの子いるの?(困惑)


7、負けてやるつもりはないぴょん

 敵編成を見て、満潮は自分の攻撃がなかなか当たらないことにようやく合点が行った。

 牽制しつつ、回避に重きを置きつつだったから当たらないものだと思っていたが、現実はそう甘くない。

 

 動き回りながらようやく把握した敵編成は、戦艦棲姫改、戦艦ル級flagship(フラグシップ)、駆逐二級改後期型flagship(フラグシップ)6隻、駆逐ハ級後期型elite(エリート)2隻の6隻。

 後期型駆逐の回避能力は高いことは満潮の脳内に知識として叩き込まれていた。いずれ来る囮としての出撃のときのためと言って、彼女の提督はどこから引っ張ってきているのか分からない写真付きの敵艦の資料を満潮に覚えさせたからだ。

 

 しかし、その知識を持っていたとしても、いざ戦ってみなければその厄介さには気が付くことができない。

 この戦場を切り抜けるのが思っていたよりも難しいかもしれない。満潮は自分に向けて砲と魚雷を放ち続ける敵駆逐艦の攻撃をギリギリでかわしながら、そんなことを思っていた。

 

 ちらりと戦艦棲姫改を相手取る卯月の方をみやる。

 その一瞬だけ見た視界の隅で、卯月が砲弾に直撃して弾き飛ばされていく姿が見えた。

 

「卯月?」

 

 その光景に呆然としている隙を、敵が見逃すはずもない。

 動きを固めた満潮の懐に、至近弾を撃ち込まんとする駆逐二級改が入り込んできていた。

 

 

 

 切り取られた卯月の意識を現世に張り付けたのは、圧倒的な悪寒だった。

 ほんの刹那の間の気絶だが、意識を取り戻した卯月は瞬時に状況を思い出し、頭を働かせる。

 

 まずは体勢を整え、両の足でしっかりと着水する。ダメージは咄嗟に後ろに回避行動をして、その上で砲弾に当たる表面積を増やして圧力を減らした。その分全身が叩きつけられたかのように痛みが走っているが、幸い小破することもなくどうにかうまくいなせたようだ。

 

 着水してすぐに卯月はまた相手の懐に向かって突き進む。

 向こうの砲撃精度が上がっているせいで慎重にならざるを得ないが、後期型駆逐4隻の相手をしている満潮の助力に入るためにも、早々に戦闘不能状態まで追い込まなければならない。

 しかし、そもそも卯月が戦艦棲姫改に勝てる保証などどこにもない。普通に考えれば早々に大破して航行不能、死を待つだけの状態になってもおかしくは無いのだ。最初の時点で間違っているのだが、卯月にとってはそんなことは関係ない。

 

 彼女はただ仲間(満潮)と共に助かるために戦っているのだ。もともとが囮である以上、相手など気にしていられない。ただ自分たちの安全を確保するだけ。叩ける相手は叩く。勝てない相手からは逃げる。この戦闘はもう逃げるには厳しい距離にいたから始まっただけで、遠目で確認できていたのなら確実に避けていたはずの戦いである。

 だからと言って、手を抜いたり離脱したりする選択肢は無い。手を抜く余裕などないし、離脱しようとしても向こうはどこまでも追ってくるだろう。

 

「負けてやるつもりはないぴょん」

 

 卯月は砲撃を避けつつ、魚雷を数本まとめて放り投げる。

 その魚雷に気付いた戦艦棲姫改がそれを躱したところで、戦艦棲姫改の体が爆ぜる。

 右手で魚雷を派手に投げつつ、左の手で静かに魚雷をそこへ()()()いたのだ。これまでの戦いで培った技術は、間違いなく卯月を成長させている。それを慢心でなく自信に変え、しかし注意深く敵を屠らんとしている。

 

 

 

「まず一匹だぴょん」

 

 戦艦棲姫改の背後で轟音が鳴り響き、黒煙が上がる。

 何事かと振り向いた戦艦棲姫改の隙を見逃さず、卯月はその懐へと飛び込んでいく。

 

 戦艦棲姫改の視線の先には、沈んでいく戦艦ル級の姿があった。自分の避けたあの魚雷が、戦艦ル級flagship(フラグシップ)に炸裂したのである。

 交戦していた旧型の駆逐艦が侮れない相手だと悟った戦艦棲姫改はその姿を視界に収めんと彼女の方に視線を戻すが、見ればその姿は視界から消えている。どこへ行ったのかと辺りを見回せば、チャキンと砲を構える音が足元から届く。

 

「とっとと沈むぴょん」

 

 冷え切った声だ。しかし、その声には怒りの色も混じっている。

 その一撃はいくら未改造の駆逐艦と言えど重い。主砲と魚雷を交えた夜戦特殊攻撃だ。通常の何倍もの威力を有するそれを超至近距離で直撃させられ、加えて機関部を狙ったそれは大爆発を起こし、主砲までもを誘爆させる。

 

「もう一発行くぴょん」

 

 少しも浮足立たない声音が背後から聞こえてくる。

 その声に恐怖を覚えるより先に、自身の背がひどく熱くなっていくのを感じて、戦艦棲姫改の意識は落ちて行った。

 

 

 

 空中で卯月が身を(よじ)ったのを見た瞬間、満潮は本能的に目の前に魚雷を放っていた。

 それが目の前で轟音を鳴らしたことを受け、満潮の意識は一気に自分の戦場へと引き戻される。

 目の前で駆逐二級後期型が爆ぜていた。先程満潮が投げた魚雷が至近距離で命中してしまったのだ。満潮は自分の運に感謝しつつ、自分を囲むように動く敵艦を睨む。

 

「ああ、もう、いい加減うざいのよ!」

 

 痺れを切らしたかのように乱射する。だが、その一発一発が敵を屠らんと放たれた凶弾である。

 牽制かつ攻撃。乱射しながら包囲網を抜け、引きつけるようにその海域からゆっくりと離脱する動きをみせる。

 

 満潮を逃がさんと追ってきた駆逐艦たちが単縦陣の構えを取った。

 それを見た満潮は足を止めて反転し、反攻戦の交戦隊形を取る。向かうまま魚雷を放り投げ、すれ違いざまに敵の主砲の発射口めがけて砲を放った。満潮に向かって砲を撃とうとした敵艦は彼女の砲撃精度に驚く間もなく主砲が暴発してその身を襲う。

 

 その間に満潮は距離を取り、ダメージに悶える敵に魚雷を放り投げる。

 それを受けても残ったのは駆逐二級改後期型一隻のみ。上手くいなしたのか、大きなダメージを受けているようには見えない。

 

「さすが、深海の駆逐二番手だけあるわね」

 

 駆逐二級改は現在発見されている量産型深海駆逐艦の中では二番目に能力値が高い。トップは駆逐ナ級という規格外の駆逐艦なのだが、二級改もこちらの二段階目の改装艦とほぼ同じかそれ以上の性能を有していて、十二分に脅威足りうる。

 そんな相手をここまで翻弄できているのだから、満潮はよくやれている方だ。

 

 音を聞き、魚雷の接近に気付いた満潮はその場を飛び退く。が、その先にも接近音が響いている。どうしようかと頭を悩まし、満潮は宙を舞うことにした。以前卯月がやっていたような芸当である。

 満潮の跳躍に、ニ級は見慣れた光景なのか、満潮の着水予想地に魚雷を放った。

 それを見た満潮は体勢を崩し、左手から不安定な体勢で着水することになる。

 

 魚雷の爆ぜる音がし、血滴(ちしずく)が海に落ちる。

 一人の少女から滴るそれが、藍に染まった夜の海を鮮烈な(あか)に染めて行く。

 その(あか)を生み出した少女は、肩で息をしながら立っていた。

 

「まあ、これが最小限ってところね」

 

 左腕が見るに堪えない損傷をしており、何とか原形をとどめているものの、黒く焦げており、鮮烈な(あか)を纏っている。力が入らないのか、ぶらりと垂れさがっており、動かすことは難しそうだ。

 なぜ彼女がそんな状態になったのかと言えば、満潮は自身に直撃するはずだった魚雷を左手で受けてそれを起点に跳ね跳び、攻撃をいなしたからである。爆発の直撃を受けた左腕は使えなくなるものの、自身が動けなくなるよりはマシだという判断である。

 

 これからどうしようかと考えている間に、ドゴンという大きな爆発音が轟いた。

 音の方に視線を向ければ、戦艦棲姫改の機関部が爆発して炎を上げていた。ハッとしてみれば、二級改もその光景を見て動きを止めている。

 

「よそ見は厳禁よ」

 

 片腕で支えるには心もとない主砲を、満潮は体で支えて発射する。

 その攻撃はニ級改の機関部に吸いこまれ、異音を上げながらその動きを停止させた。主砲を放り投げ、魚雷を手に取った満潮は、動けない敵に向かって魚雷をお見舞いした。

 

 炸裂音が鳴り響く。煙が晴れた先には、物言わぬ躯となった敵艦の姿があった。

 ふぅっと満潮は一つ息を吐く。

 

 

 

 交戦結果:敵旗艦戦艦棲姫改、戦闘不能。戦艦ル級flagship(フラグシップ)撃沈。駆逐二級改後期型flagship(フラグシップ)二隻及び駆逐ハ級後期型elite(エリート)二隻撃沈。

 味方損害:卯月小破未満、満潮中破。

 

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