フェアリー・エフェクト(完結)   作:ヒョロヒョロ

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誤字報告をくださった方々に、圧倒的感謝……! 感謝……!
ところで、お気に入り数のバグはどうやったら直せますか? なんか、四桁に見えるんですけど?
単に、私の目がついにバカになっただけですかね???

【前回のあらすじ】
“漆黒の剣”は生存して、“死を撒く剣団”は壊滅して、ブレインはナザリック所属になって、ルイが倒れた、以上!

Q.ルイが倒れた原因は?
A.今回のタイトル


小妖精、暴走する

 ルイは、モモン・アクト組が出立して以降、彼らが集めた《こちら》製の【巻物(スクロール)】を分解する仕事に勤しんでいた。

 目的は、“生活魔法”などと称される《こちら》特有の魔法、その【データクリスタル】の抽出である。

 一旦【データクリスタル】の状態にしてしまえば、《ユグドラシル》の技術でのアイテム化が可能になるというのだ。

 ルイが【データクリスタル】を抽出する横で、物作りに長けたナザリックのシモベたちが、それをどうアイテム化するか検討している。

「【妖精の悪戯(ノック・ノック・ノック)】でしたか。ルイ殿のこのスキルは大変素晴らしい! 我らも欲しいくらいです」

「私からしたら、色々作れちゃう皆さんの方がすごいですよ! でも、お役に立てて嬉しいです」

 そんな風に活気づく作成班を、珍しい顔が訪ねてきた。

「──忙しそうなところ申し訳ないのですが、ちょっとよろしいですか? ……あ、わん」

「あ、ペストーニャさん!」

「おや、メイド長。……ルイ殿にご用ですかな?」

「いえ、あなたたちに、ちょっと頼みたいことがあるのですわん」

 慈悲深い犬頭のメイドは、丁寧な仕草で、シモベへと一つの壷を差し出した。──中には、白っぽい灰が見える。

「……先日、ナザリックに()()()()された、現地の方のお母様です。蘇生がうまくいかず、灰になってしまったのです……わん」

「──ペストーニャさんの蘇生魔法でも、ダメだったんですか!?」

 思わず驚きの声を上げたルイに、ペストーニャは辛そうに頷いた。

「きちんと“保存”されていた遺体に、《真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)》を使用したのですが……それでも、デスペナルティ(レベルダウン)を0にはできませんし、そもそも病死だったそうなので、そのせいかもしれません……わん」

「……それで、その灰を、我らにどうしろと?」

「ああ、そうでした。──故郷に埋葬するのも難しい境遇だそうで、せめて息子さんが遺品として持ち続けられるよう、加工していただけませんか?……わん」

「ああ、なるほど。……なら、結晶化させたあと、ペンダントにでもしましょうか」

「では、そのようにお願いします、わん」

 シモベとペストーニャの会話をどこか遠くに聞きながら、ルイの意識はその“遺灰”へと向けられていた。

(──どうにかして、生き返らせてあげられないかな……)

 そう思った──()()()()()()()のだ。

 

 ──【妖精の悪戯(ノック・ノック・ノック)】というスキルがある。

 かつての世界(ユグドラシル)では、3回触れた装備やアイテムを、原材料に分解するという効果だった。

 しかし、“設定”上では『あらゆるモノのカタチを、過去まで巻き戻すスキル』なのだ。

 事実、このスキルはこの世界で、既に食まれて獣の皮と化した枝葉を、地に根を張れるほど活きた状態にまで戻した。

 ──ならば、同じように、彼女も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ──【最も尊きもの】というアクセサリーがある。

 実質的な効果としては、魔法・スキルの譲渡を可能とするだけのものだ。

 だが、“設定”曰く『これは、自身を削って他者に施す、献身の心そのものである』。

 【鉛の心臓(王子の心)】とは、自己犠牲による他者救済の具現。

 ──彼女が蘇生に対して支払うべき対価(レベル)を持ち合わせていないというなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ──ルイは、<小妖精(フェアリー)>だ。

 《こちら》への転移を機に、ただの人間から、透明な翅を有する小人のような種族へ生まれ変わった。

 “設定”上、『その行動を決定づけるものは、興味を引かれるか否か、それだけ』という、刹那的な種族に。

 人間として培った感性が、その方向性をある程度健全なものに限定してはいたが──

 一旦興味を持った(したいと願った)ことに関し、()()()()()()()()()()()()ほど、ルイは小妖精としての思考に染まりつつあった。

 

 ──そして、一つの奇跡のために、少女は自身の魂を削った。

 

 

「──瑠衣(るい)

 ──暗い昏い世界の中、懐かしい声がする。

「なんて無茶をするんだか。……ほら、戻りなさい」

 皺くちゃの手に、押し戻されるような感覚。

「──せっかく、私の理想が詰まったような場所に嫁いだんだ。長生きして、もっと土産話を集めてからきておくれ」

 ──お祖父ちゃん、と呼んだ声は、声にならず──視界が一転して、白く染まった。

 

 

「──ルイさん!!!」

「きゃぁっ!?」

 視界いっぱいに映る白い頭蓋骨に、思わず悲鳴を上げ──それが、見慣れた相手の顔だと気づいて、ルイはぱちぱちと目を瞬いた。

「……モ、モモンガさん? いつ戻られて……あれ? 私、いつの間にか寝ちゃってました?」

 寝付いた記憶がないのに、寝起きのような現状に首を傾げる。

「……ルイさん、自分が何したのか覚えてないんですか?」

「何って──あ!」

 モモンガの硬い声に、意識を失う直前にしたことをやっと思い出し、

「あの人、ちゃんと生き返りましたか!?」

「──生き返りましたか、じゃないっ!」

 聞いたこともないようなモモンガの本気の怒声に、びくんっと身体が跳ねた。

「生き返ったか? ええ、生き返りましたよ、完全な健康体でね! ──あんな無茶を叶えるなんて、一体何をしたんだ!? あんた、三日も意識不明だったんだぞ!」

「──えっ……えぇ!? 三日!?」

 モモンガが心配の余りに怒鳴るのも納得な日数だった。

「そ、そんなことになるなんて……単に、レベルの肩替わりをしただけのつもりだったんですけど」

「──わかるように、ちゃんと説明しなさい」

 低いモモンガの声に、慌てて自分が何をしたのか説明する。

 【鉛の心臓】によるフレーバー効果(自己犠牲)でデスペナルティを肩替わりし、【妖精の悪戯(ノック・ノック・ノック)】のフレーバー効果(過去への巻き戻し)による蘇生を──

「…………って、私、すごい無茶しましたね!? うわぁ、ごめんなさい! お騒がせしました!」

 説明しているうちに、とてつもなく危うい橋を渡ったのだと自覚して、ルイは愕然となった。

「……今更気づいたんですか?」

「は、はい……というか、助けたいと思った次の瞬間には、()()()()()って感じで……」

 ルイのその言葉に、モモンガが怒気とはまた別の剣呑さをまとう。

「……種族の影響? ……身体に引きずられて……だとしたら、それを止めるには……」

 ぶつぶつと何かを呟いてから、

「──ルイさん、とりあえず【鉛の心臓】は没収です」

「えっ、でも、それだとモモンガさんのお仕事に支障が」

「没 収 で す」

「……は、はい」

 有無をいわさぬモモンガの言葉に負けて、ペンダントを外して渡す──ルイの手にあるうちは小さいのに、モモンガの手に渡った瞬間、普通のサイズに戻るのは、何度見ても不思議な感じだ。

「……それと、しばらく人化して養生していてください。妖精の姿だと小さすぎて、看病する方が困るようなので」

「え、大丈夫です、ひとりで──」

「黙 っ て 看 病 さ れ な さ い」

「……わかりました……」

 モモンガは怒らせると怖い──さすがはナザリックの魔王様である。

 よし、と頷いて下がったモモンガと入れ替わりに、黄色い姿が視界を塞ぐ。

「──ルイ殿」

 彼の声も、いつもより低い。

「パ、パンドラさん……」

「……心配しました。自分でも驚くくらい心配して動揺しました。きっと、貴女に万一のことがあったら、私は原因となったあの女と、その息子──それどころか、その仲間全員を惨たらしく殺していましたよ」

「えっ」

 温厚な彼らしからぬ物騒極まりない発言に、ルイは目をむいた。

「そんなことはやめて欲しい、というなら──貴女は、もっと自分を大事にしてください」

「……はい」

 そう釘を刺すための言葉なのだとわかってしまえば、ルイは頷くことしかできなかった。

 男性二人が退室した後、控えていたペストーニャとシズに促されて人化し──途端、布で身を清められたり、着替えさせられたり、実に甲斐甲斐しく世話を焼かれてしまった。

(──今度からは、もっとちゃんと考えてから行動しよう……)

 ぐったりと寝台に横たわりながら、ルイは心からそう反省するのだった。

 




ルイの現在のレベル:47(=52-5)

“食べきれないお菓子を無駄にしない方法”に気が行ってたから、間接ちゅーは気にならなかった。
“ちょうど入れそうな大きさだな”って思ったから、ポケットに入った。
“寝袋ってこんな感じなのかな”って思ったから、そのまま寝ちゃった。
見た目がほのぼのすぎて誰も異常と認識できなかったけど、既にルイの思考回路はだいぶ小妖精に浸食されたっていう。

カジットは、【死の宝玉】にそそのかされてやらかす前に止めてもらって、母の復活まで叶って大勝利。
まあ、ルイが昏倒してた三日間は、色んな意味で生きた心地しなかったでしょうが。
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