フェアリー・エフェクト(完結)   作:ヒョロヒョロ

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毎度誤字報告ありがとうございます……本当、お手数をおかけします……

※今回、冒頭、虫描写注意です! ぞわってなる感じかもです。

【前回のあらすじ】
パンドラ「Lv30の人間状態……装備をしっかりしないと!」
ルイ(“聖遺物級”以上で全身を固められる)
アルベド「モモンガ様~(はぁと)」
モモンガ(妻に応える覚悟ができず酒で寝逃げ)

(追記:感想でご指摘いただいた描写ミスを修正しました)


ナザリック、浸透する

 ()()は人知れず、その耳目を増やし、手足を伸ばしていく。

 

 

 ──スレイン法国、という国がある。

 “神”とされた異邦人たちの遺した血統と秘宝でもって、影に日向に人類の守護のための活動を行う宗教国家だ。

 聖典の名を掲げた特殊部隊は、この国でも精鋭中の精鋭。しかし、そのうちの一つ、陽光聖典が突然失踪した。

 陽光聖典は、腐敗した王国の主要戦力を暗殺するため、囮部隊と連動して動いていたはずだった。

 しかし、暗殺は失敗し、囮部隊は捕縛され、陽光聖典は失踪した。

 陽光聖典の隊長に切り札として持たせた【魔封じの水晶】を目印に、儀式魔法による遠見も行ったが──それは失敗に終わり、それどころか悍ましい反撃(カウンター)をくらった。

 魔法を発動すると同時、術者の頭上に闇色の穴が空き、そこから無数の()()が湧き出てきたのである。

 ()()()()()()()の群に、魔道具によって自我を奪われた状態の巫女はともかく、その場にいた他の面々はパニックに陥った。

 虫自体は一切こちらに危害を加えてこなかったが、味方が乱発した魔法で結構な被害が出た。──死者が出なかったことだけが、不幸中の幸いである。

 乱発された魔法で湧き出た虫も少なからず死んだが、数が数だったため逃れて散っていったものも多い。

 放置すれば食害や疫病につながるため、法国は現在、総力を挙げての害虫駆除に必死である。

 

 ──彼らは知らない。

 その害虫は只の目くらましでしかなく、本命はその()にこそ潜んでおり──居合わせた者たちの影へと移った()()()によって、自国の情報が抜き取られているということを──

 

 

 ──トブの大森林と呼ばれる場所がある。

 アゼルリシア山脈の南端を包むように広がるこの大森林は、長らく“三大”と呼ばれる強大なモンスターたちの支配下にあった。

 しかし、それは、数日前までの──突如として、“三大”よりも恐ろしい存在が現れるまでの話。

 東に現れたのは、可憐にして凶悪な吸血鬼。

 西に現れたのは、巨大な黒狼を連れた子供の闇妖精。

 南に現れたのは、四腕に異なる武器を構えた蟲王。

 彼らはいずれも、「敵対するつもりはない、この辺りの情報が欲しい」と、“三大”へ対話を求めた。

 東の巨人は、吸血鬼の名を愚弄したせいで、さんざん惨たらしく嬲られたあげく、闇色の穴に飲みこまれて消えてしまった。

 西の魔蛇は、相手が従えた魔獣の強さを察し、素直に質問へ答えてその場をやり過ごした。

 南の大魔獣は、欲しいのならば勝ち取れと蟲王へ戦いを仕掛け、敗北。しかし、敗北後は従属を誓い、訊かれたことへ素直に答えたため、配下へ下ることを許された。

 その後、三者は合流すると北上し──途中、助けを求める森精霊に出会うと、自分たちの配下になることを対価にその懇願に応え、封じられていた()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 密かに一同の動向をうかがっていた魔蛇は、その神話の如き力に畏れをなし、慌ててその配下へと下った。

 その後、彼らは更に北上しようとして──そこで、何らかの報せを受けると、配下となった魔蛇と大魔獣へ大森林の支配と連絡手段のマジックアイテムを預け、森精霊だけ連れてどこかへ去っていった。

 

 ──仮初めの支配者たちは、知ってしまった。

 己たちが、絶対的な強者などではないということを。

 そして、あの恐ろしい三者が、共通の主に仕える同輩だということを。

 つまりは、あの三者よりも強大な者がこの世に存在しているという、何より恐ろしい真実を──

 

 

『蟲の御仁! なんか変な人間たちが来てるでござるよ~! 魔蛇どのが、ただの冒険者には見えないというのでござる! どうすればいいでござるか!?』

「──森ノ賢王カ。ソノ人間達ニツイテハ、コチラデ把握シテイル。丁度コチラカラ連絡シヨウトシテイタ所ダ」

 古めかしい口調を紡ぐ愛嬌のある声に、音の塊を無理に人の言葉に整えたような奇妙な声音が応える。

『おお、さすがでござる!』

「其奴等ノ相手ハ、オ前達ニハ荷ガ勝ツ。手ヲ出サズ、見ツカラヌヨウニ隠レテイロ」

『そ、そんなに強いのでござるか!?』

「強イトイウヨリ、装備ノ特殊能力ガ厄介ラシイ。──例ノ魔樹ガ封ジラレテイタ辺リデ、コチラノ手勢ヲ仕掛ケル。危険ナノデ近寄ラヌヨウ、リュラリュース達ニモ伝エテオケ」

『了解でござる!』

「デハ、片ガ付イタラ、此方カラ連絡スル」

 

 

 漆黒聖典は、トブの大森林の奥、辺り一帯が荒れ果てたその場所で、その恐ろしい魔物を発見した。

 これこそが予言にあった“破滅の竜王”に違いないと、支配の秘宝である【ケイ・セケ・コゥク】を使用。

 途端、どこからともなく現れた()()()()によって、せっかく支配した魔物は瞬殺されてしまった。

 それが“白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)”の()()だと察した漆黒聖典は、【ケイ・セケ・コゥク】も通用しないと判断し、即座に撤退する。

 白金の鎧はそれを追うことはなく、静かに辺りを窺った。

 ──辺りに感じるのは、森に住まうだろう小さな生き物達の気配だけ。少し離れた所に、それなりに力のありそうなモンスターの気配も感じたが、おそらくはこの辺りの主だろう。力量も()()の範囲内だ。

 この森の()()な存在は、先ほど消し去った魔物だけだと判断した白金の鎧は、それ以上その場に留まることなく、いずこかへと帰って行った。

 

 ──彼らは知らない。

 彼らが“破滅の竜王”と信じたものは、本物の“破滅の竜王”を撃破した陣営が、代わりにと用意した()()()()()()()()()()でしかないということを。

 既に、この大森林の支配図は、この世界にとって()()な存在によって塗り替えられているのだということを。

 辺りにいる無数の小さな気配の中に、その()()の耳目というべき眷属が多数紛れていたことを──

 




※時系列は、ルイ昏倒前~ルイ昏倒中
ルイが昏倒中、ナザリックは厳戒態勢。状況からしてルイ自身が何かやらかしたのだろうとは思われていましたが、原因が確定するまでは、外出していた守護者も全員呼び戻し、外部からの攻撃も視野に入れて警戒していたのです。

某悪魔「覗いてきた相手を殺すより、此方が情報を獲得するのを優先しました。恐怖公の眷属は、相手にもたらす衝撃が強みですよね」(にっこり)
法国「」(白目)
ピニスン「いきなり本体引っこ抜かれて連れてかれるとは思わなかった。いや、回復してもらったし、より環境のいいことに来れたからいいけどさ」(灌木育てつつ)
グ「」(ひと思いに殺されるより酷い目にあってる)

グはね……ナザリック勢の地雷、全力で踏むから……創造主(おや)からもらった大事な名前、馬鹿にされたらどのNPCでもキレるし、至高の御方やルイが相手でも確実にお供がキレるもの……

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