フェアリー・エフェクト(完結)   作:ヒョロヒョロ

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眼球疲労をなめてはいけない……(頭痛だけでなく、刺激で胃が痙攣するレベルまで悪化して、食事どころか水分も薬も受け付けない状態に陥ったアホからの戒め)
ブルーライトカットは、眼球疲労を軽減するだけで無効化する訳じゃない……限界までのタイムリミットを引き延ばすだけなんじゃ……

【前回のあらすじ】
ルイ「お祖父ちゃんの知恵袋で、【巻物】問題解決!」


パンドラ、戦慄する

「──野盗のアジトの捜索?」

 誘われた仕事の内容に、(モモン)が首を傾げる。

「はい。どうも、街道を行く馬車などが、何度か被害に遭っているようで……」

 ペテル──“漆黒の剣”という冒険者チームのリーダーは頷いた。

「なるほど、モンスターだけでなく、人間を相手にするような依頼もあるんですね」

「人を食い物にするような連中なんて、モンスターと変わりませんよ。……そう、あの貴族(ブタ)どもだって……」

「やべぇ、いつものアレが始まった」

「ニニャ、落ち着くのである!」

 ──エ・ランテルに来てから数日。モモンとアクトは地道に冒険者として活動し、それなりの人脈を築きつつある。

 ついた翌日、開拓村襲撃犯を護送するため都市を発ったガゼフには、「是非、共に王都へ」と誘われていたのだが、モモンの体調を理由に同行を断り、エ・ランテルに残った。

 実際の理由は、これ以上ガゼフと行動を共にすると、国家がらみの要らない(しがらみ)に巻き込まれる予感がしたからだ。ガゼフ自身は気のいい好漢でも、王国戦士長という微妙な立場は無視できない。

 いつか王都へ向かった際には頼りにさせて貰うが、現時点では一旦距離をおこう、という結論になった訳である。

 エ・ランテルに残った父子は、その翌日から冒険者として活動することにした。

 冒険者組合は、情報が集まってくる場所でもある。情報収集活動にはうってつけだったのだ。

 その活動の中で懇意になったのが、“漆黒の剣”というチームである。

 リーダーで剣士のペテル、レンジャーで弓使いのルクルット、森祭司(ドルイド)でメイス使いのダイン、“タレント”持ち魔法詠唱者のニニャ。

 彼らはまだ未熟な面はあるが、連携力のあるチームであり、人となりも申し分なかった。

 冒険者は仕事柄癖の強い人間が多いようで、彼らのようなチームと人脈をもてたのは、それだけで一つの収穫といえる。

 そして、それ以上に、ニニャの【魔法適正】という“タレント”は興味深かった。魔法の習熟を早める能力らしく、常人なら4年かかるところが2年ですむ、という具合らしい。

 “タレント”──《ユグドラシル》にはなかった《こちら》特有のそれは、つまりは生まれ持っての特殊能力であるらしい。

 この都市一の薬師の孫であるンフィーレア少年は、【あらゆるマジックアイテムを使用可能】という破格の“タレント”を有しているという。

 一度その薬師の店に行ったのだが、薬草採取の関係でカルネ村と懇意らしく、こちらへの好感度は初期からマックスだった。うまくして身内へと取り込めないか、目下画策中である。

 他にも、《こちら》特有の特殊能力に、戦士系統が修得する“武技”というものもあるようで、新たな未知に父はたいそう心躍らせている様子である。

 パンドラズ・アクター自身も、デミウルゴス主導で捕らえた邪教集団が未知のマジックアイテムを有していたと聞いて、ついついはしゃいでしまったので、気持ちはよくわかる。

(……今度の仕事でも、何か新しい発見があればよいのですが)

 父と共に、アクトとして“漆黒の剣”たちの話を聞きながら、そんな期待を抱く。

 ナザリックから出るのが難しいルイへの土産になるような何かなら、なおいい──そんな風に思う自分を自覚して、少し愉快に思った。

(父上以外の存在に、ここまで気を傾けるようになるとは……我ながら、変われば変わるものですね)

 まあ、その父によって“自身の妻”と定められたからと言えば、それだけとも言えるが──ルイの存在そのものが、いっそ驚くほどパンドラズ・アクターにとって好ましいのも、事実なのだ。

 素直で聞き上手な性格、真っ直ぐに父を慕う様、自身へと向けられる純粋な信頼、稀有で有益な能力の方向性──嫌悪する要素が一切ない。

(彼女を選んだ父上の目に狂いはなかった、ということなんでしょうね)

 ──まあ、結局、そういう結論に着地するあたり、父至上主義にかわりはないのだが。

 

 

 その晩、幾つかの冒険者チーム合同の探索により、野盗──“死を撒く剣団”の塒は発見された。

 エ・ランテルから徒歩で3時間ほどの場所にある洞窟である。

 相手の規模が不明ということで、まず小数でちょっかいをかけ、別働隊が用意した罠まで誘き出すという作戦になったのだが──

「……本当に大丈夫ですか、お二人とも」

「やっぱり、ボクたちも一緒に……」

「だ、大丈夫です。無理はしませんから」

 ──その突入班に、モモンとアクトの二人が選ばれたのである。

 メンバーの中で最も新人で、ランクの低い二人が、一番危険な役に選抜されたのは──指揮をとる冒険者曰く、「戦士長ご推薦ともなれば、これくらい余裕だろう?」とのこと。

 実力を評価してというより、やっかみが理由のようだが──むしろ、願ったり叶ったりである。

 侮りではなく、純粋な心配からついて来ようとする“漆黒の剣”の面々を何とか説得して、二人だけで行動を開始した。

「相手の実力が不明だし、せっかく仲良くなった“漆黒の剣”に何かあったら嫌だしな。俺らだけで、ぱぱっと片づけちゃおう」

「そうですね。……今回は人間の犯罪者相手ですが、殲滅でなく、生かして無力化の方向がよろしいでしょうか?」

「う~ん、そうだな……そうしとくか。タレント持ちや、武技持ちがいたら、うっかり逃がしたことにして()()()()たい」

「了解しました。──では、たっち・みー様の外装を使用させていただいても?」

「ああ、許可する」

 許可を受け、パンドラズ・アクターは全身鎧の中で、アクトから最強の剣士(たっち・みー)へと変身した。──この外装は()()()の性格によるものか、ガチな性能の割に、非殺での無力化を可能とするスキルも持ち合わせている。

「何か面白いアイテムでもあればいいのですが……そっちは望み薄ですかねぇ」

「はは、案外、珍しいお宝を貯め込んでるかもしれないぞ」

 そんな暢気な会話をしつつ、無造作にアジトへと向かっていく。

 洞窟の入り口で見張りをしていた数人の男たちは、あまりに無防備によってくる二人組の姿に、脳が一瞬理解を拒んだのか、見事な二度見を披露してくれた。

「──なっ……なんだ、てめぇら!?」

「襲撃者さ」

 裏返った誰何の声に、短くそう答え──父はモモンの姿のまま、種族スキルを発動させた。

 【絶望のオーラⅠ】──相手に“恐怖”のバッドステータスを与え、行動を阻害するスキルだ。

 それを受け、びくんっ、と身体を跳ねさせた男たちは、そのままその場でひっくり返った。

「──あれっ!? 死んだ!?」

「……いえ、生きてます、気絶しただけのようです」

 白目をむいて泡も吹いているが、確かめてみれば、息はしてるし心臓も動いている。

「えぇー……? ちょっと怯ますくらいのつもりだったんだけど……まあ、結果オーライだし、いいか」

 想定していた以上の効果だったようだが、父はすぐに気を取り直したらしい。

「弱い奴は【絶望のオーラⅠ(これ)】だけで無力化できるみたいだし、このまま行こう」

「気絶しないのは、()()()()候補ですかね」

 そうして、二人は無遠慮にアジトの中へと足を進め──

「……気絶しなかったのは、一人だけかー」

「《こちら》にも刀があるんですねぇ! 私としては、これだけでも結構な収穫です」

 たった一人の男を除き、【絶望のオーラⅠ】だけで片づいてしまった。

 その唯一の例外は、がくがくと全身を震わせながらも、刀の柄に手をかけ、必死の形相でこちらを睨んでいる。

「──なっ、何なんだ……お前らっ……!?」

「冒険者だよ。この通り、“(カッパー)”の、な」

「お前らみたいな“(カッパー)”がいてたまるかぁっ!」

 胸の冒険者プレートを指して答えた父に、男は渾身のツッコミを叫んだ。

「まあ、実力と釣り合ってないのは自覚してますがね。でも、登録したてなら、誰だって最低ランクでしょう?」

「……そんなになるまで、一体どこで何してたっつーんだよ……」

 蒼褪めて脂汗を垂らしながらも、いちいちこちらの言葉に反応してくるあたり、なかなか見所があるかもしれない。

「ああ、名乗るのが遅れました。私は遠方より参りました、剣士のアクトと申します。こちらは、我が敬愛する父上──」

「──魔法詠唱者のモモンだ。……お前の名は?」

「……聞いて、どうする」

「いや、何ならスカウトしようかと」

「──は?」

 男の顔から、ぽかんと表情が消えた。

「……何のために? ……俺なんざ、あんたらからしたら、雑魚もいいとこだろうがよ」

「“武技”が使えるなら、こいつに教えて欲しい」

「──見るからにヤベェ剣客のくせに、お前“武技”持ちじゃねぇのかよ!?」

「我らの地元に、“武技”という技術はなかったんですよ」

「…………なるほど……そりゃあ、随分な遠方だ……」

 何がおかしいのか、くくく、と喉の奥で笑う。──その表情からは、恐怖は消えていた。

 スカウトを言い出した時点で、父は【絶望のオーラⅠ】を切っていたようだが、それでも随分立ち直りが早い。──やはり、なかなか見込みがある。

「それで? それを受けたなら、どんな報酬がもらえるんだ?」

「──まずは、お前の命の保証を。そして、優れた武具と、更なる高みに至るチャンスも、くれてやろう」

 途端、男の目の色が変わった。

「……俺も、強くなれるのか……? そこの剣士みたいに?」

「ここまでは……難しいかもしれんが、まあ、お前の努力次第か。……ただし、裏切った場合は、死が救いとなるような、悍ましい地獄をくれてやることになる」

「──ははははは! 問題ねぇよ! あんたたちが何者だろうと、今より強くなれるってんなら、俺は絶対にあんたたちを裏切らねぇ!」

 そう、高らかに大笑して──一転して真顔になり、名乗りを上げた。

「──ブレイン・アングラウスだ。よろしく頼むぜ、新しい主殿」

「……契約成立だな。では、さっそく──」

 父は、ブレインの返答に満足げな笑みを浮かべ──不意に眉を寄せて額へと指を添える。

「……なんだ?」

「《伝言(メッセージ)》のようですね」

「ああ、魔法か」

 不思議そうな顔をする男に短く答えてやれば、納得の表情で頷いた。

「──何だって!?」

 と、小声でやりとりしていた父が、唐突に声を荒げる。

 こわばった表情でこちらに向き直った父は、硬い声で告げた。

「パンドラ、《転移門(ゲート)》を繋ぐから、お前はそいつと先にナザリックへ戻れ。私も、ここを片づけたらすぐに戻る」

「──何事ですか?」

 只ならぬ父の様子に嫌な予感がして思わず問えば、一瞬の間の後に、その答えは与えられた。

 

「──ルイさんが、意識不明だ」

 

 




急展開じゃないよ。ちゃんとフラグは立ててた(つもり)。

モモン「一人だけ妙に強いのがいて、アクトは逃げたそいつを追って行ってしまった……」
ペテル「な、なんですって! 大変だ! 後のことは任せて、モモンさんはアクトさんを探しに行って下さい!」
モモン「ありがとう!」
ブレイン、いいように言い訳に利用される。
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