Fate/Cinderella night. Encored Grail war ~ニュージェネ+αで聖杯戦争~ 作:藻介
必須タグさんたちがこの辺りから急に仕事し始めるので、あらかじめご了承のほどお願いします。まあ、百合タグは初めからちゃんと働いてましたが。
本当は、昼頃から様子がおかしいと思っていたらしいです。
「日に三度、午前零時、八時、十六時の八時間間隔で使い魔を送っていたんだ。今朝も言ったけど、これまでその全てが切り捨てられて、帰ってくることはなかった。なのにさっき、八時に放った分が帰ってきた」
バス停の前で待っていた未央ちゃんは、バスが来るまでの間に説明します。
「零時に送った分は帰ってこずに、八時に送った分は帰ってきた。どちらもうちから送ったもので、柳堂寺に着くまでにかかる時間は二、三十分。つまり零時二十分の間から八時三十分のあいだに、何かが起きていたことになる」
「何が、起きていたんですか?」
「……アーチャー、頼める?」
『諒解しました』
人目に付くのを避けるため、アーチャーさんは霊体化しているそうです。そのため念話と言う手段で、語り掛けてきています。頭に直接響くように聞こえてくるので、少し酔いそうです。
『八時の使い魔が帰ってきたのは午後二時ごろ、丁度皆さんが昼食を食べ終わり、ヴェルデで別れた直後のようですね。無論、アイコ殿と一緒にいるミオの下に向かっては混乱が生じます。よって一時的に、私の方へ戻るようになっていました。使い魔には伝書用の機能しか積んでいません。ミオとは感覚を一部共有しているので、どのように潰されたかは特定できますが、何を見たのかまでは機能として与えていませんでした。そこでミオの指示の下、私が直接行くことになったのです』
バスが到着しました。三人で乗り込みます。アーチャーさんもついて来ているみたいですが、まあ追加で払うこともないと思います。
全員が開いている席に座れたのを見計らって、アーチャーさんは現場の様子を表現しました。
『異様でした。魔術の痕跡が、いっさい見受けられなかった』
「アーチャー、それは」
『ええ、セイバー。それは本来おかしなことです。仮にもキャスターの拠点、主が失われていようと、少なくとも残り香くらいはするものです。それが、初めからなかったように、柳堂寺の空気は一般的な寺社仏閣のそれと何ら変わらなかった』
そうであるにも関わらず、とアーチャーさんは先を続けます。
『境内のいたるところに人が倒れていました』
「その人たちは……」
「今向かってる病院に搬送されたよ。全員外傷はなかったけど、意識不明で倒れてる。さ、次で降りよう」
冬木市にあるもっとも大きな病院、聖堂病院前のバス停で降りて、慌てて建物の入り口へと駆け込みます。
「しまむー、ちょっと止まって」
自動ドアの目前。未央ちゃんの制止にわたしたち二人は立ち止まりました。その間に未央ちゃんは何やら難しげな言葉をほんの少しつぶやいたかと思うと、
「もう大丈夫、行こう」
何事も無かったように自動ドアをくぐっていました。その後ろにわたしたちも続きます。
「あれ? 未央ちゃん、受付は?」
「今は急いでるからね。顔パスできるよう簡単な暗示をかけてる。一、二時間で効果が切れるから手短に行こう」
本当に便利だと感心しました。三日前、彼女の事情を聞いていなければ、うかつにも声に出してしまいそうです。
寝かされている病室についても調べがついていたみたいです。エレベーターで三階へと上がって、その迷いのない足取りのままで一つの部屋を訪ねました。入る前に利用者名を確認、ここに寝かされているのは『柳堂一成』と言う方だそうです。
「こちらの住職と呼ばれる方たちは、ずいぶんと規則正しい生活を送っていると聞きます。時間帯からして全員床に伏せっていたか、あるいは起き抜けか。いずれにしても、隙の大きいタイミングを狙われたことになりますね」
部屋のドアを閉めたと同時に、霊体化していたアーチャーさんが実体化しました。
「それからまだ、目覚めていないってこと?」
とセイバーさんが問いかけます。
「はい。ですが、彼だけではない。柳堂寺にいたすべての人間が、こちらの方と同じように全員気を失ったまま、今もこの病院の他の部屋で保護されています」
ベットの上で目を閉じ、まさに死んだように柳堂一成さんは眠っています。備え付けの心電図は心臓がゆっくりとではあるものの、動いていることを示していますが。その電子音が、今にも止まってしまうんじゃないか。そんな想像が頭をよぎります。
それ以上見ていられなくて、横に立っている未央ちゃんの顔を覗き見ました。
「…………まさか、ね……」
「未央ちゃん? 今」
「……そろそろ出よう。話の続きは、帰りながら」
行きと同じようにエレベーターを使い一階に降りて、誰とも顔を合わせることなく病院を出ました。
十といくつかのビルを後ろに置き去りにすると、冬樹大橋が見えてきます。橋を渡り始めたころで、再び霊体化していたアーチャーさんから話の続きが語られました。
『先ほど、柳堂寺の空気は正常そのものだったといいましたね。ですが、二か所、山門の前と柳堂寺の端、石庭を望む渡り廊下、その二つには血の匂いが残っていました。現代科学におけるルミノール溶液、それと同様の効果を発揮する魔術薬で調べてみたところ、この二か所の床一面に、かなり大きな血痕があったことが分かります』
「住職さんたちに目立った外傷もなくて、それ以外、柳堂寺におかしなところはなかった。たぶんその血は、キャスターとアサシンの物で間違いないと思う」
まるで狐に化かされたような話です。キャスターたちをおびき出すために自分たちを囮にしようと決めていた時には既に、この世界のどこにもいなかっただなんて。
「一体、誰が……」
そんな至極当然の疑問に誰も答えられず、黒い川面をわたしたちは眺めていました。
Interlude 2月4日(土) 午前1時過ぎ
卯月達が柳堂寺の異変に気付くその半日ほど前、柳堂時に来客があった。それを迎え撃つは山門を守るアサシンのサーヴァント。真名、佐々木小次郎。
彼と境内の奥で陣を構えるキャスターは、時を同じくしてこの柳堂寺に召喚された。マスターは見当たらない。けれど確かに、どこかからのパスによって、十分な量の魔力が供給されている。その謎を解くのに、キャスターが要した時間は二十分に満たない。
すなわち、キャスターとアサシンは二騎揃って、大聖杯の眠る円蔵山、その真上に位置する柳堂寺そのものの土地を
キャスターは知っていた。この冬木で召喚される聖杯が、持ち主の願いを叶えるなんていう生易しい幻想ではないことを。アレは、自分たちサーヴァントの魂を燃料にして『
それはこの二騎に、聖杯戦争の勝ち負けが何の意味も持たないことを示していた。負ければ燃料、勝っても最後に自害を命じられて燃料。なら、その前に術式の本体を見つけて、この聖杯戦争自体を自分の宝具で解体する。それがキャスターに残された、最後の希望だった。
御三家が施した隠蔽を破りに破ることすでに四日。
急ぐことはない、前回の聖杯戦争は終了まで十日以上を要していた。すでに八割が完了している。十分すぎるほどに間に合う。この調子なら、明日にでも。
そのようなことを考えながら、勝手に借りている柳堂寺の客間の一室で体を休ませていた時だった。
山門を守っていたはずの、アサシンの気配が消えたのである。
すぐに魔術師としての自分に戻る。寺中に仕掛けた自分の防衛術式も次々と潰されている。
「(いえ、この感じ、潰されているというよりは、食われている?)」
自分で用意した術式ゆえに、場所の把握は容易い。先回りして、不届き者の顔を正面から見据えられるように、進路上の廊下に立つ。曲がりなりにもここはキャスターの陣地内、外はともかくこの中でなら、キャスターは無敵だと自負していた。
「何よ、アレ」
その自信が一瞬だけ揺らいだ。来客がキャスターを仕留めるのに、それは十分すぎる隙だったらしい。
瞬きなんてしていない。魔術の発動に必要な詠唱も、何も聞こえなかった。なのに、いつの間にかそれは、自分の背後に立っていた。
「……ッア、が」
首を容赦なく握りつぶされる。神代の魔術を操るキャスターと言えど、その高速神言を発する喉を潰されては、魔術の発動はままならない。床に伏せる。その段階になってようやく気付いた。来客の歩いてきた廊下、その道中、点々と人が倒れている。
見たところでは外傷はない。けれど、中身は比べ物にならぬほど酷い有様になっているだろう。
「(これもどうせ、私のせいになるのでしょうね。だって私は、魔女、ですもの)」
「……タリ、ナイ」
「…………え、…………?」
来客の発した、うめきにも似た声。それに返す自分の声もひどくかすれていて、思わず自嘲しそうになる。
「タリナイ」
もっとも。顔を動かす暇さえ与えられなかったのだが。
心臓をえぐり取られた。
サーヴァントは心臓を潰された程度では、すぐには死ねない。致命傷にはなるが、それでもすぐに消えられるわけじゃない。
未だ働く視覚が、来客が自分の心臓を丸のみにするのを知覚した。
「タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ」
次にハラワタをすべて抜き取られて、片端から同様に食われた。
「タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ」
それでも不十分だったらしい。今度は四肢をもがれた。それでもまだ死ねず、脳に来客の声が響く。
「タリナイ、タリナイ、タリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイタリナイ。モット、アツメナイト。コノママジャ、ダメ」
「…………な、にが」
その先を聞く前に、頭から飲まれた。
Interlude out
Interlude 2月5日(日) 早朝
「よし。朝ごはんの準備完了! セイバー。しまむー起こしてきて」
未央の借家。珍しく早くに起きていた未央は、四人分のスクランブルエッグとウィンナーを皿に乗せるかたわら、ダイニングでお茶を飲んでいたセイバーに声をかけた。
「分かってる。それと未央、藍子は」
「大丈夫。連絡貰ってる。今日も用事が入ったみたい」
昨晩、アイドルの仕事に出かけた藍子は、夕飯を作りに戻らずそのまま自宅に帰ったらしい。少なくとも、セイバーは未央からそう聞いていた。
それ以上のことは、どう聞かれても答えない。セイバーもそれ以上聞く気はなかった。ただ一言。
「メールの一つくらい、送っときなよ」
「……うん。そうしとくよ」
それだけ言って、セイバーはダイニングを後にした。
未央はセイバーの方を見ていなかった。ボウルからサラダを人数分に分けていたからだ。とりあえず、そのせいにした。
「よろしいのですか、ミオ。セイバーは貴女を案じていたようですが」
全員分の茶器を用意していたアーチャーが主人に声をかけた。
「いいんだ。セイバーだって、いろいろと精一杯みたいだからさ。それに、バーサーカーさえ倒せば敵同士になる。そのときにやりにくくする方が面倒だよ」
「それもそうですが」
未央の言い分には理がある。けれど、未央が理屈でモノを語るとき、それは大概、理屈によらない何かを抱えているときだと、アーチャーはこの数日で見抜いていた。
それは、果たしてこの場で暴くべきことなのか。状況によるだろう。そして、昨日の病院での未央の反応、アレは何か思うところがあったことを示している。
未央の抱えるものと、聖杯戦争に何か関係がある。その可能性があるのなら。
早めに問いただしておくべきだろうとアーチャーは判断した。
「ミオ。悩みがあるのならば聞きましょう」
「アーチャー……でも、これは」
「サーヴァントの耳に入れるにはふさわしくない。そう考えていますね?」
「なっ…………! どうして」
「教師の観察眼を甘く見ない方がいい。生徒の考えていることならば、半分は知っているものです」
まあ、未央が建前としてマスターの理屈を持ち出したのだから、本音はその逆、マスターの理屈に合わないことだろうと、当たりをつけただけなのだが。何も知らない未央にとっては魔術以上の奇蹟に見えたことだろう。
未央自身がいつも、当たり前にしていることにも関わらず。
「本当に、私はとんでもないサーヴァントを引き当てちゃったんだなぁ」
「ええ。そして、その私を十全に運用できているあなたも、立派なマスターです。その上で、最低限の礼儀を持って接してくれている。及第点には十分すぎると私は判断します。ですので、少しくらいの減点であれば、赤点をつけたりはしませんよ」
「……なんか、うまく乗せられている気がするんだけど」
笑ってごまかすアーチャー。けれど、どれも本心からの言葉なので心は全く痛まなかった。
一つ、息をついて、未央は吐き出すように言った。
「私、魔術師向いてないんだなって、改めて思っちゃって」
「そうですね。私も同様に考えています」
「……ずいぶんあっさり即答してくれるね」
「ええ。この手の生徒を受け持つのも、初めてではありませんので」
「? アーチャーの生徒、魔術師なんていたっけ?」
「さあ、どうでしょうね。もう顔も思い出せませんから、おそらく生前のことではないのでしょう」
「…………私とは別の、アーチャーのマスター」
英霊はあらゆる時代に呼び出される。なら、未央と同じ悩みを持った魔術師と召喚先で出会っていたとしても、不思議ではない。
「ええ。惜しむらくは、彼女を最後の教え子とする約束を守れなかったことでしょうか」
「アーチャー」
「ですが、私はサーヴァントである前に、教師です。その在り方に誇りを抱いているし、迷える若者がいるのなら、教え導きたいという業も受け入れている。同様に、ミオ、貴女も魔術師としての道を選択したはず。そこに向き不向きは、関係ないのでは?」
「うん。だけど……」
思ったよりも、これは根の深い問題なのかもしれない。言い淀む未央を前に、アーチャーは考えを改める。今日はここまでだろう。機が熟せば、あるいは何度でも、選択の機会があるかもしれない。
なぜなら、未央はまだ若いのだから。それでいて、幼いわけではないのだから。だからその時が来たら、きっと正しい道を選べるだろう。
「選んだ道が間違いだったと気づくことは、よくあることです。引き返すことも、また全く別のスタート地点に立つことも、時には必要でしょう。進路変更の際は、どうか早めの相談をお願いします、マスター」
「そうするよ。ありがとう、アーチャー」
「いえ、教師として、当たり前のことを言ったまでです」
「だろうね。さ、そろそろ朝食にしようか。せっかくアーチャーの分まで作ったのに、冷めちゃったら」
どばたん、と派手な音を立てて、ダイニングのドアが押し開けられた。
そこにはセイバーが立っていた。
「卯月が……」
「しまむーが?」
険しい顔を崩さずに、セイバーは言う。
「卯月が、攫われた」
Interlude out
サーヴァントのステータスが更新されました
(読み飛ばし可)
・キャスター/メディア
・紫のローブで顔を隠した妖しげな女性。ライダーとキャラが微妙にかぶっているとか言ってはいけない。
・——————のため、アサシンともども寺の土地を依り代に召喚される。二度も自分たちを弄ぶ御三家の業に憤るも、聖杯そのものともいえる円蔵山に召喚されてしまった以上、どうにもならないと半ば諦めながらも、聖杯戦争解体のため術式を探していた。
・中立・悪・地
・ステータス
筋力E 耐久D 敏捷C 魔力A+ 幸運B 宝具C
・宝具
・破戒すべき全ての符(ルール・ブレイカー) C 対魔術宝具
・スキル
・陣地作成A
・道具作成A
・高速神言A
・金羊の皮EX
・アサシン/佐々木小次郎
・身の丈を越える長刀を振るう風雅な雰囲気の侍。寺を訪れた■■■■に三分の二燕返しを繰り出すも躱され、霊核を食われる。
・中立・悪・人
・ステータス
筋力C 耐久E 敏捷A+ 魔力E 幸運E 宝具ー
・宝具
・なし
・スキル
・燕返し
・心眼(偽)A
・透化B+
・宗和の心得B