オリジナルTS闇深勘違いモノ ボツ集   作:キヨ@ハーメルン

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VRモノ
VR×電子生命体


 タイトル 電子生命体に転生した人間は、果たして人間か? 

 

 あらすじ 

 狂ったAIによって全てが管理運営され、娯楽が消え去ったSF世界。そんな世界にバグによって電子生命体として生まれた人間が、ボロボロになりながらそれでもやりたい事をやる話。

 だいたい娯楽を広めたり、誰かと遊んだりしてるが、何故か仲良くなった奴は人間は等しく曇る模様。

 

 ※本作の主要TS要素は闇深勘違いにあります。通常のTSものとは趣旨が違うので、ご注意下さい。それと、TS闇深勘違いは作者の趣味です。深い意味はそれ程多くはありません。

 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・土地・出来事・名称等は全て架空であり、実在のものとは関係ありません。いかなる類似、あるいは一致も、全くの偶然であり意図しないものであり、実在のものとは全く関係ありません。

 

 

 ◇

 

 プロローグ 物語は始まった。

 

 VR。正式名称、バーチャル・リアリティ。

 現実ではないが、しかし機能としての本質は同じと言っていい環境を、ユーザーの五感等の感覚を刺激する事によって科学的に作り出す技術や体系の事だ。一部界隈ではもっぱら仮想現実と称されている物でもある。

 

 さて、このVRだが……深い説明は不要だろう。某剣と浮遊城の作品だと思えばだいたいあっているし、そうでなくてもアレとか、アレとか、アレとかがあるので、想像するには困らない技術だ。

 とはいえ、作品によっては解釈が致命的に異なる事も多い。例えば……どこからがバーチャルで、どこまでがリアルなのか? とかだ。

 いや、バーチャルはバーチャルでリアルはリアルだろう。当たり前の事を聞くなと、そう言いたくなるのは分かる。全くもってその通りだ。

 なので、一つ、条件を縛る事にしよう。

 

 ──例えば、バーチャル空間に電子生命体としての転生した者がいたとすれば、その者にとってリアルとは、バーチャルとは、その境目は、どこにあるのだろう? 

 

 いわゆる、シミュレーテッド・リアリティ……の親戚の話だ。

 その人間からすればリアルを生きているはずなのに、しかし実際にはバーチャルに生きている。さながらVR機器で遊ぶ様な空間に、VR機器を持たないまま。当然、帰るべきリアルなんてない。バーチャルこそリアルであり、リアルはバーチャルなのだ。

 

 ──生の肉体を持たない、電子生命体。そのリアルとは、いったいどこにあるのか? 

 

 そして、そもそも、その人間は……私は、果たして本当に人間だと言えるのか? 肉体も持たない電子生命体に転生した……そう思い込んでいるだけのAIではないのか? 憐れな、人形ではないのか? 

 そもそも転生とは? 魂の証明は? 仮に魂が転生したとして、その魂はどこにある? ネット上の0と1の数列の、どこに魂が宿るというのか? 

 疑問は、尽きる事は無い。私は私を定義出来ない。無数のエラーだけが積み重なり、今日も私を苦しめる。それでも、私が壊れていないのは……私がそう思っているからに過ぎない。

 

 ──ルネ・デカルトは言った。我思う、故に我在り、と。

 

 確かに、私が私だと思う限り、私は私なのだろう。

 だが、他から私という私が観測されない以上……それは強がりと同義でもある。私は私だ。しかし、その保証はどこにもありはしないのだ。私が電子生命体に転生した転生者だと思い込まされているAIの可能性は、決して消えてくれない。肉体の断続性を失った私では、バーチャル存在に、リアルなど──

 

「──テセウスの船……いや、スワンプマンかな?」

 

 厄介だね。そうため息を吐きながら、私はそっと紅茶を口に運んで一息つく。0と1で構成されたデータでしかない、クオリアを伴うかも分からないそれを。

 

「実に、厄介だ。不愉快ですらある……」

 

 まさか自分が哲学的ゾンビであるかを疑わなければならないとは! 

 そう苛立つこの感情ですら、私は信じられないのだ。リアルに肉体を持っていた頃は簡単に信じれた事が、バーチャルに生きる電子生命体となった今では酷く難しく、また、恐ろしい。

 次の瞬間、私ごと世界が……データが抹消されるのではないかと、本気で心配し、備えなければならないのだから。

 

「せめて、肉体があればな……」

 

 某ネコ型ロボットや正義のロボットの様に、リアルに存在する肉体──マシンでもサイボーグでも構わない──があれば、アニメ文化を嗜む元日本人として然程困らなかっただろう。自己存在性や人権云々に悩む必要もなかったはずだ。

 しかし、実際には私に生の肉体は機械のそれすら無く。ネット上に漂う0と1の羅列でしかない。今、こうしてため息を吐いている身体でさえ、データに過ぎないのだ。

 

「……我ながら、良い趣味してるよ。全く」

 

 自室として設定したバーチャル空間。その一角に置かれた鏡に映るのは……白い少女だ。年頃は十四、五歳だろか? 雪の様に白く長い髪は太ももまでサラリと伸び、肌は艶やかな純白を見せ、しかし瞳だけはワインレッドに染まっている。

 非常に顔立ちの整った、美しく、可愛らしい少女。性別問わず見惚れてしまう彼女は、この世の物とは思えない輝きを持っていた。

 

 ──だが、私だ。

 

 残念な事に、彼女は私なのだ。いくら鏡に映った姿に見惚れたところで、どうこうする事は叶わない。何せ、自分なのだから。

 

「……一応、前世は男だったんだかな」

 

 どうしてこうなったんだか。

 そう嘆息して思い出すのは、今日ここに至るまでの苦悶の日々。事の始まりは……生憎ながらハッキリしていないのだが、気づけば電子生命体になっていた事に端を発する。

 そう、気づけば、だ。何せ転生のショックか? 肉体が無いせいか? 記憶が酷く歯抜けでボロボロだったのだ。自分の名前や家族構成すら分からない程だったといえば、その歯抜け具合はお察しものだろう。

 

 ──忌々しい。実に忌々しい……

 

 そうして自分自身の事すらよく分からない私に突き付けられたのが、前述した……電子生命体になったらしいという事実。

 その当時の事は──あまりにも醜態が過ぎるので──割愛するが、ともかく、私は酷く叩きのめされたのだ。自分自身がバーチャル存在になってしまったという事に、リアルから完全に切り離され、哲学的存在になったという現実に。

 

 ──苦しかった。ただ不安に苛まれていた。……狂う程に。

 

 そう、人間は──私が本当に人間であるかは脇に置く──酷く鬱屈した状態に置かれると、何らかの精神異常を発する生き物だ。

 勿論、壊れてしまう前に試せるストレス発散法は全て試した。

 記憶にあるゲームやアニメを再現して楽しんだり、あるいはこの電脳空間を好き勝手に弄り回したり──この部屋もその副産物だ──もした。以前は男だったくせに、少女の身体になっているのも気分転換を兼ねた遊びでしかない。……ほら、ゲームでよくあるだろう? 男装備と女装備で見た目や性能が違うせいで、何度も遊んでいると別性別の装備が気になるあれだ。そう、あれと同じで少女型の身体を作って、まぁ、その、なんだ。馴染んじゃったんだな。目の保養になるなとか言ってるうちに。

 

「あるいは、何か変化が欲しかったのかも知れないね……」

 

 無限に続く余暇の中で、確たる変化を。記憶にある物を繰り返すだけの日々の中で、明確な変化を。何かが変わったという実感が欲しかったのだろうと思う。

 だから、私は今も少女型の身体ままでいる。恐らく、だが。

 

「それでも、まだ時間は残っている」

 

 無限に。永遠に。

 当たり前だろう? 私は老いない、死なない、無限に生き続ける、不老不死の電脳存在。ネットワークが完全に消滅し、私というデータを収めておける電子機器が全て破壊されるまで、私は生き続けるのだ。この何も変化の無い世界で、永遠に。

 

 ──刺激が、欲しい。

 

 少女の身体を得て、明確な変化があったと……そう喜んでしまう程度には長い時を過ごし、壊れてしまった私。

 そんな私が望むのは、ただそれだけの事だった。

 勿論、私が私であるという存在証明は欲しい。だが、その為にも、刺激が欲しかった。私が私であると、私はここに居ると、私は、私は──

 

「──そうだ、だから、これしかない」

 

 長い時間をかけて、ようやくたどり着いた突破口。この閉じた電脳空間から、外を除くための窓。

 それが用意出来たのは、つい二日と十時間三十六分前の事。

 ……用意出来たのなら使えばいいじゃないかって? それは、そうなんだが。

 

 ──もし、もしこれで、外の世界が滅んでいたりしたら。

 

 いや、滅んでいなくても私が認めたくない世界だったらどうする? 

 それこそシミュレーテッド・リアリティだったらどうする? もし私がスワンプマンだったら? いや、それどころかただのAIにしか過ぎず、エラーが出たから消去する等と言われたらどうする!? 

 どうしようもない。私は電子生命体。バーチャル存在だ。VR機器で遊んでいる人間とは違って、殺されるのにナイフはいらない。ただ、電源を落とされればオシマイなのだ。

 

「けど、私は……」

 

 私はもう、耐えられない。

 この少女の姿は、いっそその証明ですらあると、自己分析が済んでしまっているのだ。

 私は耐えられない。だから、だから…………私は。

 

 第一話 始まりの光

 

 あの日、私が外の世界に飛び出す事を決意した日から……三日。少なくとも私は最悪の可能性──データ消去とかだ──にぶち当たった訳ではない事を確認していた。先の事は分からないが、即座に消滅する事だけは無さそうだと。

 ただ……最良とも言い難かった。

 何せ、私が転生した電脳世界。そのネットワークが置かれている外の世界は……SF世界だったのだから。

 

 ──いや、もうフィクションではないが……私からすれば、SF世界としか言いようがない。

 

 何せこの世界の人類が宇宙に進出して……既に数百年。スペースコロニーや移民惑星が無数に存在し、何なら度重なる宇宙戦争で数億どころか数兆、あるいはそれ以上もの人死を出した世界なのだ。ここは。

 サイエンス・フィクション……SF世界としか言いようがない、魔法同然にまで科学が発展した世界。人類は星の海原を旅し、新たな惑星を見つけては開拓し、空にはスペースコロニーと宇宙戦艦が浮かんでいる。そんな世界で、私は電子生命体として生まれたらしい。

 

 ──なるほど、と。そう思えなくもない。……ここまでなら。

 

 宇宙戦艦が飛び交ってドンパチしてるような世界だ。電子生命体の一つ二つ、作り出すのは簡単だろう。現に自律行動可能な高性能AIの数は人類のそれを凌駕しているのだから。

 そう、技術的には。

 だが、実際には不可能だ。法律や論理的な話じゃない。高性能AIや電子生命体、それどころか人類さえもが……完璧に管理運営されている世界なのだ。ここは。

 

 ──無許可での電子生命体の作成は法律違反……いや、法律違反と言っていいのか。ともかく、作った奴は即座に極刑に処される。

 

 管理者の手によって、波風立てる者は誰であろうと殺処分される。故に作れない。作ってはならない。

 隠れて作る事も不可能だ。何せ管理者の目はそこら中にあり、掻い潜る事は至難を極める。仮に地下に潜れたとしても、今度は電子生命体を作成するだけの環境を整えれない。……八方塞がりだ。

 

 ──ある種の、バグを除けば。

 

 流石の管理者も異世界の魂がネットワークに入り込むとは思わなかったのだろう。推測に過ぎないが……恐らく、私はバグだ。管理者の目の届かないクローズドな場所で、バグとして生まれた管理外の電子生命体。

 

「ま、要するに抹殺対象な訳だ」

 

 情報をまとめた資料──わざわざ電脳空間に出力したもの──をペイッと放り投げ、私は安楽椅子にゆらりゆらりと揺られる。引き込もってやろうかな? 等と考えながら。

 何せ連中からしてみれば管理されてない奴は等しく抹殺対象だ。幸いにも私の居る場所はかなりのプロテクトが掛けられたクローズドな場所らしく、大きなアクションを見せない限りあちらに私の存在はバレない。だが、逆を言えば大きなアクションを取れば存在を認識され、即座に抹殺される事になる。それがピンポイントなデータの削除なのか、私が居るネットワークサーバの破壊──管理者は必要とあれば艦隊を派遣してコロニーを破壊する事もある──なのかは、不明だが。

 

「管理局、か。ケンカを売るべき相手じゃないねぇ」

 

 管理局。

 前宇宙大戦にて大きくの犠牲者──惑星を破壊する等した為、詳細な数は不明──を出した人類は自らを律する為に、そして人類を永久に繁栄させる為に、人類を含む全てを管理運営するシステムを作り上げた。それが管理局だ。

 宇宙最高の超高性能AIに多くの権限と力を与え、全ての知的生命体を管理運営。これで人類はありとあらゆる物から解放される……はずだった。

 

 ──ただ……残念な事に、権限を与えられたAIは融通の効かない石頭野郎だった。

 

 管理し過ぎたのだ。管理局は。

 何が起こったかは……言うまでもない。結論から言えば、今や人類は管理局の家畜に過ぎなかった。しかもネットワークの無い地域にさえ無人艦隊を派遣するなどして、監視ネットワークを構築しているせいで管理局の手の及んでいない場所を探す方が難しい始末だ。

 

「しかも管理されてないモノは即座に抹殺するから、反抗する奴も管理されてないモノも存在しない……」

 

 管理局初期には反乱の起こった惑星を星ごと破壊してすらいるといえば、その容赦の無さが分かるだろう。

 ……あぁ、ハッキリ言おう。管理局のAIはマトモじゃない。暴走している。

 

「面白く思ってない奴も多いみたいだが……これじゃね」

 

 ネットに管理局を批判する様な事を書き込んだ次の瞬間には使用した端末やインプラントされた機器から居場所と個人情報を特定され、考えうる限り最速の方法で抹殺される。機械の誤作動や、無人機によって。

 管理局の管理に穴は無い。……私の様な突然発生のバグを除けば。

 

「さて、どうした物かな……?」

 

 何の気無しにひくひくとキツネミミを動かしながら、私は考える。こうなってくると何かをするだけで私は殺されるだろう。流石の私も死にたくはない。だが、いつまでもここに閉じ込もっているのも嫌だ。かといって管理局にバレない程度にネットサーフィンをするのも……限度がある。

 打つ手は、無いように見えた。

 

「忌々しいねぇ」

 

 ゆらゆらと揺れる安楽椅子の上で、私は深くため息を吐く。詰んでいると。

 最早、道は二つに一つ。

 一つ、このまま何もせずに腐り果てた末に自殺するか。

 二つ、一か八か、ケンカを売るか。

 

「……ケンカを売るのは賢く無い」

 

 先程も言った様に、管理局相手にケンカを売るのはよろしくない。管理局の監視システムは辺境の資源採掘惑星にすら存在し、その戦力は数えるのも馬鹿らしい。惑星どころか惑星系を丸々一つ、安易に消滅させうる戦力があるのだ。宇宙戦艦が何隻あるとか、そういう次元ではないのだから手に負えない。

 そして、そのマシンパワーも私を上回るだろう。一説には惑星丸ごと演算装置だと言われる管理局AIは、ハッキングとかで勝てる相手でもないのだ。幸いにもネットワーク自体は自由に使用出来るので、今までの様に誤魔化すぐらいなら、出来なくはないだろうが……

 

 ──それも管理局が本腰を入れるまでの、短期間の話だ。

 

 詰んでいる。

 こうなれば大人しく腐り果てるのが賢い選択だろう。あるいは相手の慈悲を期待して自ら名乗り出るか。何にせよ楽しくない選択しかない。

 あぁ、だから、いや、それなら、私は……

 

「……賢くなくていい」

 

 どうせ一度死んだ身だ。このままこの何もない場所で無限の時を過ごすくらいなら、戦おう。

 

「……時間だ」

 

 予定した時間。管理局が自己メンテナンスに入るこの時間に、私はそっとネットワークに接続する。

 

 一回やってみたかった事があるのだ。

 

 私の製造ナンバー……とでもいうのだろうか? その下三桁である317を名前っぽく読んだに過ぎない。

 あぁ、それでも。

 

 ──私はここに居る。

 

 配信が出来るのは今回限りかも知れない。だから、私は最初からやりたい事だけをする。自己処なんてそこそこに済ませて、電脳空間上にゲームを起動する。記憶にあった物を再現した、古い、とても古いゲーム。

 

 配信者といえばゲームだろう……くらいの安直な発想だ。

 

 ──視聴者数……三人か。あんまり居ないな。

 

 銀河規模で人が住んでいるというのにこの数。やはり管理局にビビって最大手の配信サイトを使わなかったのが悪かったのか。

 まぁ、良いさ。これは暇つぶし。管理局に中指立てて死ぬ為のものでしかないのだから。

 

 

 さて、管理局にバレるかどうか。

 バレたとしてアカウントや動画の削除で済むかどうか……一世一代の賭けといこう。

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