※主人公視点の語り口書きです。苦手な方はお気をつけください。
君は本当に変な人だ。
君はいつも俺がしている表情と真逆の表情をするんだ。
まるでピエロのように。
君に出会ったのは幼稚園入りたての時。
親から離れるのが怖くて寂しくて、みんながいる教室には入らずに玄関で泣いていた俺のもとに君は寄ってきた。
泣きじゃくってて寄ってきていたことに全く気付かなかった俺の頭を君は急に叩いてきたね。
俺はびっくりして泣き止んだ。そしたら君はたった今俺の頭を叩いてた手をこちらに差し出しながら笑って
「私が一緒にいてあげる」
って言ってくれた。衝撃的だったよ。今でも覚えてる。
人と話すのが苦手だった僕はいつも園庭の端っこの、誰も見つけられないような場所で一人で遊んでいた。
それなのに君はいつも俺を必ず探し出す。頼んでもいないのにどこにいても必ず見つけるんだ。
遊具の陰で砂の山を作っていても、うさぎ小屋の死角でうさぎとお話していても、園庭のはずれの階段で小石を転がして遊んでいても。
俺を見つけた君は目が合うと満面の笑顔で「みぃつけた」っていう。
その時から俺は君の笑顔が大好きだった。見た人を幸せに出来るんじゃないかって思うくらい素敵なその笑顔が。
幼稚園最後の日、俺は君の前で大泣きしたね。覚えているかな。
俺と君の住んでいる学区が少し違くて、別々の小学校に通うことになるって分かったとき、俺は寂しくて泣いた。
俺の母親と君の母親は「中学生になれば同じ中学に通えるよ」って言ってくれたけど俺には少し難しくてよく分からなかった。
泣いてる俺を見ていた君は、初めて出会ったときの様にまた頭を叩いてきたね。
「絶対遊びに行くから、また会えるから泣くな」
って笑いながら言ってた。君の笑顔を見たら自然に涙が乾いていったよ。
君は約束通り、小学校になっても一緒に遊んでくれた。
お互いの家の中間位にある公園に自転車で集合して、17時の鐘が鳴るまで夢中で遊んだ。いろんな話をした。
小学校で友達が出来ないって相談したとき君はたくさんのアドバイスをくれて、数日後に君の助言のおかげで友達が出来たって報告をしたとき君はどんな表情をしてたか覚えてる?
「よかった」って言いながら泣いてたよ。初めて見る君の涙だったし、俺は笑顔だったのに君は泣いているっていう状態がたまらなくくすぐたかった。
いじめっ子にいじめられて泣きながら公園に向かったときには君は笑顔で迎えてくれた。俺が泣き止むまで頭を撫でてくれていたね。
中学に上がるとき、学区の関係で俺と君はまた同じ場所に通えることになった。
残念ながら同じクラスには1度もなれなかったけど、放課後は毎日一緒に喋ったり勉強したりして過ごしたね。
あまりに一緒にいすぎて同級生には付き合ってると思われたりして。でも俺達にはこの距離感がとても心地よいものだった。
でも君はやっぱり不思議な人だ。俺が泣きながら相談すると必ず笑うんだ。笑って相談にのってくれるんだ。でも逆にすごくうれしいことがあって笑顔で報告すると君は嬉し涙を流すくらい喜んでくれる。
高校の合格発表の時、同じ高校を受験していた俺たちは一緒に合格発表を見に行った。
二人とも合格だって分かったとき俺たちは珍しく二人とも泣いていたよね。
その時の涙が、俺の見た最後の涙になるとは思ってもいなかったけどね。
高校に入る前の三月の春休み、君は一人で遠方に住む祖父母の家に電車で向かうんだって嬉しそうに言ってたね。
俺は「楽しんでおいで」って笑顔で送り出した。君も「お土産話楽しみにしといて」って笑顔だった。
でも君が出発してから二日後、君の母親から俺の携帯に電話が来たんだ。
「君が事故にあった」と。
祖父母の家の最寄り駅から君は歩いていたこと、その時居眠り運転の車が歩道に一直線に突っ込んできたこと。
そして、周囲の状況や目撃者の証言から、君が自分の少し前を歩いていた小学生の女の子をかばってひどい傷を負ったらしいということも聞かされた。
俺はすぐに教えてもらった病院へ自転車を飛ばした。生きてる心地がしなかったし、信号待ちの15秒すらすごく長く感じた。
「少しけがをしただけです」「安静にしてれば治りますよ」「女の子も彼女も無事です」
そんな言葉を期待して、そんな言葉以外は聞きたくなくて。そんなことを考えながら病室に駆け込んだとき、君はもう本当に危ない状態だった。
ベッドの上に横たう君の手を握り締めて、まわりに人がいることも忘れて恥ずかしいくらい泣いた。君がいなくなるのが怖かった。待ってって叫んだ。
でも君は待ってくれなかったんだ。
俺が到着した数分後、君は息を引き取った。
ねえ、君には今僕の声が聞こえている?
今君のお葬式が終わったよ。君の遺影は笑顔だった。俺の大好きな笑顔だ。逆に俺はすごく泣いちゃったよ。いつもみたいに逆の表情だね。
君がいないっていう現実にまだ慣れることは出来なさそうだけど、君との思い出は絶対忘れない。
ああそうだ、君に言いたいことがあるんだ。俺が泣いていると笑っていて、俺が嬉しそうにしていると泣いていた、そして俺を必ず笑顔にさせてくれた、素敵なピエロのような君へ。
「最高の