味方がカタカナ
土曜日の昼下がりとは、女子高生にとっては至高の時間である。例を挙げるとすれば、土曜授業が終わって友達と遊び始める時間、皆で遅めのお昼を食べる時間、など。
友達が少ない私も、土曜の昼下がりは特に気に入っている。次の日はみんな大好き日曜日で、かといって明日のことを考えるような時間帯でもなし、さらにお昼ご飯はもう食べ終わっているとくれば。
何もすることがない、それが良いのだ。天気がよくて日差しが暖かいとさらに良い。
『眠くなるほどの暇』とは、私の思う、人生で最大の贅沢である。何でもできるし、何もしなくてもいい。あぁ、なんて贅沢。
そして今日は部屋でゴロゴロする日───のはずなのだが、なんだか様子がおかしい。
五分ほど前に急に電話で連絡してきた幼馴染の男子が、私の家に転がり込んできたのだ。何やら汗だくで、息が上がるほど疲弊していて、未だに事情を聞けていない。
バッサリと「メンドウゴト、ワタシキライ」なんて言って追い返したいところなのだが、なんだかんだ幼少期から今に至るまで、そこそこつるんでるご近所さんなので、私も甘くなってしまうらしい。
むむむ、自ら贅沢を手放してしまうなど、愚かな……。
とりあえず冷えたお茶とコップをお盆に乗せ、幼馴染を休ませている私の部屋まで持っていった。
部屋に入ると、腕で汗をぬぐいながら何やら思い詰めた表情の幼馴染が見えたので、たまらず「うわ」と声が出てしまった。やっぱ明らかに面倒ごとを抱えてるわコイツ。うぅ、面倒くさい。
「はい、とりあえずお茶」
彼の目の前にコップを置くと、すぐさま中のお茶を飲み干してしまった。むしろ、勢いよく飲んだせいで少しむせている。おちつけー、なんて言いながら背中をさすってやると、程なくして彼の呼吸は平常通りに戻った。
まず話を聞いて、それから適当なアドバイス言って、早々に帰っていただこう。私の贅沢は有限なのである。
「なんかあったの」
「……同じクラスのさ、三上まゆって分かるか?」
「そりゃあ、まぁ……席、となりだし」
悲痛な表情の彼から飛び出てきた名前は、現在私の隣に席を置いている、三上まゆという女子だった。
少し大人しいけど、私が筆箱を忘れた時とかに、私が声をかける前にシャーペンや消しゴムを貸してくれた優しい子である。たまに一緒にお昼も食べるぜ。
前も後ろも髪が長くてあんまり表情は見えないけど、素顔は結構かわいい。体育の時間とかでたまに見える。
「……で、まゆちゃんがどうしたって?」
「この前、アイツが学校の階段で蹴躓いて落ちそうなところを助けたんだけどさ」
「(なんだか古くさいシチュだな……)それで?」
「その日からなんつーか……あの、三上に尾行されてるような気がして」
なんだその具体的な勘。思わず突っ込みを入れそうになったが、喉まで出かかった言葉を何とか飲み込む。予想以上に彼の表情が真剣で、茶化せるような雰囲気ではないと感じた。
それよりも、先ほどの発言が気になる。
「まゆちゃん、結局いたの?」
私がそう言った瞬間、表情が強張った彼はごくりと生唾を飲んだ。
どうやら本当にストーカーされているらしい。マジかよまゆちゃん、あんまり褒められた趣味じゃないねぇ。
「それで私の家に逃げてきたと」
「い、いや、それだけじゃなくて……」
「マジ? ……うーん、とりあえず話してみなされ」
まだ何かあるのか。ぐぅ、私の贅沢な時間がぁ。
「篠宮りん先輩って分かるか? 三年で、サッカー部のマネージャーやってるんだけど」
「見たことはあるけど、話したことはないよ……」
疲れたような声音で返事をする私。これは明らかな私の「面倒くさい」アピールなのだが、そんなことにも気が付かない彼はどんどん話を広げていく。そんなんだからお前、鈍感なんて言われてるんだぞっ。
──篠宮りん。私たち二年生の一つ上の先輩。
幼馴染がサッカー部の大会に出ているときとかに見かけたことがある。あとは学校の帰りに幼馴染を迎えにいったときとか、グラウンド周辺に立っていたのも覚えている。
容姿端麗、という言葉がよく合う先輩だ。きれいな顔立ちはもちろんだが、彼女はサラサラで繊細なボブカットの髪や、引き締まっている身体、そして各方面の女子が嫉妬しそうなほどの……豊満な胸をお持ちなのである。決して大きすぎるというわけではなく、だがしっかりとその存在感をバッチリと放っている形の整ったそれは、嫉妬や羨望の眼差しを向けられるに相応しいものだと言えよう。
せ、制服の上からでも分かるくらいだぞ? ジャージだともっとヤバいし、正直言って私たち控えめ種族の敵である。それ少し譲ってください。
「それで、その先輩がなに?」
「えっと、この前なんだけど、篠宮先輩が学校の階段で蹴躓いて落ちそうなところを助けたんだ」
「は、はぁ?」
またかよ! なんでそんなに転びそうな人の近くに、いつも都合よくいるんだ……。てか助けすぎだろ。
──ま、待てよ、まさかとは思うが。
「先輩にストーカーされてんの?」
「い、いや、なんか最近、隠れて写真撮られてるみたいで……」
「(勘はするどいっつーか自分のことには敏感というか……)それで?」
「……なんかリアクション薄くね? いや、別にいいんだけど」
いちいち驚くのも面倒だからな。早く話したまえ、はりーあっぷ。
「今日は家に誰もいないからウチに来ないかって、午前中の練習が終わった後に篠宮先輩に誘われたんだ」
「人気者であんなに綺麗な先輩なんだから、行っちゃえばよかったのに」
そしたら私のゴロゴロタイムも侵略されることはなかったんだぞ、このモテ男め。
「む、無理だよ。なんていうか、先輩は笑顔だったんだけど、なんかスゲー怖かったっていうか」
先輩オーラ出すぎだな、家に誘うときくらいは隠さなきゃ駄目ですよ。
……うーん? ちょっと待て、なんかおかしいな。
「あんた、なんでウチに来たとき、あんなに息切れするほど疲れてたの?」
先輩が怖かったとはいえ、まっすぐ私の家に全速力で逃げてくるほどかな。それはさすがに過剰反応すぎる気がするけども。
「それなんだけど……」
「なに」
非常に嫌な予感がする。
「──えっと……相坂いろはって分かるか? 一つ下の後輩で、バイト先のコンビニでも一緒なんだけど……」
「もうええわ!!」
★ ★ ★
状況を要約すると、こうだ。
午前中の部活終わりに篠宮先輩に誘われるが危険を感じる → 先輩と話してる所を後輩の相坂さんに見つかる → 怖い顔になった相坂さんに追いかけられ、全力で逃げた後に後ろを振り返ったら、そこには相坂さんではなく笑顔のまゆちゃんが → 脳がオーバーヒートし、私の家に逃げ込む
こんなところかしらね。
うん、まあこの話聞いたら流石に同情するわ。少しくらい部屋を貸してやってもいいとも思える。
都合のいいことに今日は両親が泊まりに出かけているので、家には誰もいない。
もちろんいつまでも彼をウチに置いておくことは出来ないが、流石にこんなことがあった今日……一人で過ごさせるのは可哀想だ。
というわけで、本日は急遽お泊り会になりました。いやぁ、幼馴染二人でお泊りなんていつぶりだろうか。
とりあえず冷蔵庫が空っぽだったので今はスーパーで買い物中。彼を外に連れ出すかどうかは迷ったが、一人にする方が危ないかもしれないと考えたので連れてきた。
「なぁ」
「ん?」
後ろを歩く幼馴染に軽く袖を引かれた。ニット帽とウィンドブレイカ―に大きい伊達眼鏡、変装は完璧なはずだが……見つかったか?
「今更だけど、この格好怪しすぎないか?」
「しょうがないじゃん、家にある変装できそうな物、それしかなかったんだから」
「そ、そうだけど……! なんか悪目立ちしてるだけっていうか」
不安そうな幼馴染の顔をみて、少し笑ってしまった。まぁ確かに悪目立ちしているかもしれない。いろいろ着せるのが楽しくてあれこれくっ付けたのは内緒だ。
まぁパッと見て誰かわからないなら、変装としてはまぁまぁ良いだろ。外に長居するわけでもないし、あまり気にしすぎない方がいい。
「麻婆豆腐でもつくろっか。……あ、そこのネギとって」
「ほい」
幼馴染から受け取ったネギを買い物カゴに放り込み、あと飲み物をいくつか見繕ってレジに並ぶ。
すると、レジ担当のおばさんがにこやかな笑顔を浮かべて「えらいねぇ」などと小声で私に伝えてきた。
……幼馴染の彼は平均より少し身長が高い程度なので、所謂普通の男子だ。
しかし私はというと、控えめに言えば小柄、言葉を選ばなければチビ助である。
どうやらレジ担当のおばさんには買い物に来た兄妹に見えたらしい。同い年なんだけどね、おかしいね。
「いてっ、な、なんだよ……!」
「うるさいっ」
何だかムカついたので幼馴染の足を蹴ってやった。デカいやつには分からない悩みだよ、ばーかばーか。
そんなくだらないやり取りをしながら会計を済まし───視線を感じた。ドアの向こうをみると、制服を着た女子が真っ直ぐとこちらを見つめている。
あ、あれは……。
「ちょ、ちょっと、マサトっ」
「なんだよムツミ」
「あれっ、あそこ」
「ん? ───ぁっ」
幼馴染……マサトの袖を引き、あちらからは見えないようにドアの向こうを指さす。
指の先に見えるその人物を見た瞬間、マサトは僅かに身体が震えた。
あれは───篠宮先輩だ。なんか笑顔だけど、そこはかとなく恐怖を感じる。ていうか眼に光が無い。
まずい、非常にまずいぞ、これは。
「い、いくよ」
私は買った商品を順番を考えずにレジ袋に全て放り込み、マサトの手を引き、先輩が待ち構えている出入り口とは反対の方から店を出た。
★ ★ ★
走る、走る。彼を引っ張っていたはずが、いつの間にか私がマサトに手を引かれながら、家に向かって一心不乱に走り続ける。
まずい、早く家に身を隠さなきゃ。多分だけど篠宮先輩は私の住所なんか知らないはずだし、とにかく帰宅できればひとまずは大丈夫なはずだ。
……ふと気になり、マサトの顔を見てみた。
「はぁ、ハっ……!」
汗をかきながら、明らかに焦燥した表情で走っている。よほど彼女を警戒しているということが、見てとれる。
「マサト、変装完璧だったのに、何でバレちゃったのかなっ」
「わっかんねぇ! もしかしたら……つけられてた可能性も──っ!?」
言葉の途中で、マサトは曲がり角に身を隠した。
「ちょっと、私の家はまだまっすぐ……」
「いいからこっちこい!」
「わわっ」
強引に手を引かれ、マサトに後ろから抱かれる形で曲がり角に隠れた。まだ私は状況が掴めていないが、マサトは角からそっと顔だけ出し、私の家の様子を窺っている。
「なに、なんなの」
「……ムツミの家の前に、いろはが立ってる」
「は、はぁ!?」
「静かにしろって……!」
思わず声を上げてしまい、マサトが私の口に手を当て、強制的に黙らされてしまった。むぐぐ、傍から見たら事案だぞ、捕まりたくなければ、即刻離したまえ!
「ぷはっ」
「わ、わり」
「別にいいけど、どうすんの。この様子だと、マサトの家も抑えられてそうだけど」
私がそう言うと、マサトは俯いて黙ってしまった。私を後ろから抱いている形で顔を俯かせたから、頭の上にマサトの鼻息が当たっている。ち、近い近い! 匂い嗅いでるっぽくて変態みたいだぞ!
「マサトっ、とりあえず駅の近くまで行こ! 隠れる場所とか多いと思うし。……と、とりあえず離し──」
「そ、そうだな、今すぐ行こう!」
「うわっ」
再びマサトに手を引かれる形で、その場を走り出した。気が動転しているのか、マサトはどこに隠れるかも言わないまま、無我夢中で走っている。
……あ、あのなー、幼馴染とはいえ、私も一人の女子だぞ。自分で走れるし、そろそろ手ぇ離してくれてもいいんだけどなー?
(繋いでる手の汗がすごいんだよ、もうマサトのなのか私の汗かもわかんない……!)
そんなことを考えながら走っていると、いつの間にか私たちはビル街の路地裏に腰を下ろしていた。
店の中は逃げ場が無いし、かといって人混みを歩き続けるのも疲れてしまう。とりあえず隠れる場所としてはそこそこだろうか。右にも左にも前にも道はあるため、どこから来られても逃げられるはず。
しっかし、疲れた。500のペットボトルのジュースを買ったはずだし、それ飲もうかな。
「あったあった」
オレンジジュース、疲れてる時に飲んでもいいのか分からないが、これしか飲み物がない。
キャップを開け、一気に半分ほど喉に流し込んだ。うまい。
「マサトも飲む?」
「へ? ……あ、うん」
ペットボトルをマサトに渡し、軽く伸びをした。ようやく少しは落ち着けそうだ。
ふと隣を見ると、マサトがペットボトルを見つめたまま動いていない。……どうした。
「オレンジジュース嫌いなんだっけ」
「えっ、いや、そんなことはない。飲む、頂きますよ?」
「う、うん」
なんだよ、急にかしこまっちゃって。……あ、そういうことか。
「私はもう半分もらったから、残り全部飲んでいいよ?」
「サンキュー……」
そう言いながら、意を決したかのようにジュースを一気飲みするマサト。相当疲れてたのかしらね、はは、こやつめ。
それにしても、どうしたものか。
出先で篠宮先輩に遭遇したり、私の家の前に相坂さんがいたり……ハードモードな日だなぁ。
それもこれもマサトが悪いぞ、女の子助けすぎなんだよ本当に。
まさか三回も階段から落ちそうな女子を助けるなんて想像できないでしょ。ていうかうちの学校の階段どうなってんだ……! もう怖くて階段使えないぞマジで。
「マサトー、ずっとここに居るわけにもいかないし、次の場所決めない?」
「ふふふ、マサトさん……もう一回言ってください♡」
「まゆすき」
「───うぇっ」
(なんだぁ!?)
隣を見た瞬間、思わず条件反射で声が出てしまった。
いつの間にか私の隣に座っているマサトの隣に───まゆちゃんがいる。しかもいかにも「催眠術で使いますよ~」みたいな紐を括りつけた五円玉を持って。
一瞬で身の危険を感知し、マサトの肩を掴んで揺らした。
「マサト、逃げないと!」
「ダメですよぅ、わたしと一緒に居ないと、運命の赤い糸が切れちゃいますもの。ね、マサトさんっ」
「まゆすき」
だ、駄目だコイツ、まじで、マジで言ってるのか。本当にこんな五円玉で催眠術かかってんのか……!
「しっかりしろぉー!」
「はい、マサトさんもう一回」
「まゆすき」
「コントか!?」
思わず突っ込みを入れてしまうほどには、目の前の光景がアホらしい。
肩を揺らしても頬を引っ張っても「まゆすき」しか言わねぇ……!
催眠術の解き方とか知らないし、控えめに言って詰んでいる。
どうしようもなくて私が尻餅をつくと、まゆちゃんはマサトの顔を自分の方に向けた。
頬を赤く染め、明らかに恍惚な、うっとりした瞳でマサトを見つめている。
まさか。
(だめだぞ、キスはだめだぞー! 催眠術でキスとかエロゲみたいなことしちゃダメだぞまゆちゃぁぁ!!)
「マサトさん、質問をしますね?」
「……」
何も言わずに頷くマサト。
「あなたの好きな人の……名前の頭文字を、アルファベットで教えてください」
「……
そう言った瞬間、まゆちゃんは身震いをした。んふふふっ……と声が漏れてしまっている。確かにMならまゆちゃんが該当する、だけどもここまで興奮するほどヤバイ子だとは思っていなかった。
「ま、まどろっこしいことをしてすみません。じゃあ、じゃあ!!」
まゆちゃんの荒い鼻息がマサトの顔に当たっている。近い、距離が近すぎる。あと一押しすれば唇も触れてしまいそうだ。
「好きな人のっ! キスしたい人の名前を教えてください!!」
「……それ、は」
言ったらまゆちゃんにキスされてしまう。催眠状態なのだから、別の事を言えるわけがない。まゆちゃん、卑怯なり……。
うわぁー! 無理ぃー!
(ぅぅ……っ!)
思わず目を閉じて、耳を両手で塞いだ。
見たくない聞きたくない、幼馴染のキスシーンとか誰得ですかぁ!?
「俺の……好きな人は───」
まだ聞こえてしまう、もっと、もっと耳を強く塞いだ。
「───」
(お、終わったかな……?)
ふさぎ込んでからどの程度時間が経過したかは分からないが、多分ヤッてしまったのだとすれば、もう終わっててもいい頃合いのはず。
そーっと
「……ま、マサトさん? さっき、なんと言ったのですか?」
「二度は、言わない」
(えっ、なに、何が起こったの)
目の前にはキスを終えてお互いに恍惚とした表情をしている二人───ではなく、目に見えて動揺しているまゆちゃんと、真剣な眼差しでまゆちゃんを睨みつけているマサトの姿があった。
な、なにごと。
「ムツミ、行こう」
「え? ……あ、う、うん」
マサトに呼びかけられ、思わず気の抜けた返事をしてしまった。
手を引かれ、その場から駆け出す私達。まゆちゃんはその場でなにやらブツブツ呟いていて、私たちを追いかけてくる気配は無い。
路地裏を走っていると、少し先に光が見える。よし、このまま行けば大通りに出られ──
「後輩くん、みーっけ♪」
「いた……先輩、いた」
「ひぃっ!」
悲鳴を上げたのは私だ。
気がつけば、目と鼻の先には篠宮先輩が立ちふさがっており、振り返るとこちらに向かって相坂さんが歩いてきている。二人とも、その手にスタンガンや何かを染み込ませているであろうハンカチを握っており、恐怖心が一層駆り立てられる。
このままでは、明らかに邪魔そうな私まで襲われてしまうに違いない。
すると、震えだした私の手を、マサトはより一層強く握った。
「大丈夫だ、ムツミ」
「な、なにがっ」
「必ず……お前のことは守って見せる」
そんな事を言って、マサトは私に微笑んだ。
勇気づけられるような、そんな笑顔。まるで動揺していない、凛とした瞳。
───でも、でもねマサト。
「もとはといえばお前のせいだろ──ッ!!!」
★ ★ ★
「──ハッ!?」
勢いよく上半身を起こし、疲れたような呼吸を繰り返す。……あれ。
辺りを見渡すと、そこは見慣れた、私の部屋だった。
「……そ、そっか、そっか、ははは」
乾いた笑いが口から出る。いつの間にか汗もかいてるし、寝転がっていたベッドも少し湿っている。
腕で額の汗をぬぐい、ホッと胸を撫で下ろした。なんだ、そっかそっか。
夢オチかぁー! いやー、よかった、危ないあぶない。あのままじゃどうなってたか分かんなかったぜ。
まったく、焦らせてくれるなぁ、もう。
そうだよな、土曜の昼下がりだもんね、お昼寝ぐらいするわよね。いやぁ、いつの間に寝てたんだか。
マジで最悪な展開だったけど、夢ならまぁ、スリリングで面白かったって思えるよ。
なんだか喉乾いたな、一階におりて冷蔵庫の中のお茶でも飲もう。
───ん、チャイムの音。なにかネットで頼んでたっけな。
「はーい」
「ムツミ!! かくまってくれ!!!」
……やばい(確信)
ムツミ:まさかの特殊能力持ち 寝ると無意識に未来予知する
マサト:昔から好きな子に告白が出来ない、普通の男の子
り ん:デカい
いろは:いろはす
ま ゆ:まゆすき