思い付きと暇つぶしに作ったヒロアカと禁書のクロスオーバーです。
続きを書こうとは思っていません。
後悔はしていない。
あとがきにて詳細設定記入
「うわー、でっかいヴィラン。」
始業式に向かおうと思った矢先にこれだ。
電車も遅れてまともに学校に着くのは不可能だと悟った御坂美琴は軽くため息を吐いた。
自宅の最寄駅には巨大化した異形系の体の男が暴れていた。
小さくため息を吐きながら美琴は今日は学校をサボってゲームセンターでも行こうか、と思考を巡らせる。
辺りには野次馬をしに来た通行人や避難させられた駅の利用者で溢れかえっていた。
人々から聞こえてくる会話に耳を傾けてみれば、どうやら引ったくり犯が追い詰められて暴れているとのこと。
美琴の『個性』を使えば制圧することなど簡単だろうが、残念ながら公共の場で個性を使うことは禁止されている。
変な輩に絡まれた時は容赦使っているが、辺りに人がいなかったからというのがある。
更にもうヒーローがちゃんと対応している。
これだけ派手に暴れればすぐに増援も来るだろうし、捕まるのも時間の問題だろう。
あまり首を突っ込み過ぎれば口うるさい後輩に文句を言われるのは目に見えている。
「ほんっと、退屈しないわねー。」
ふと視線を動かすと自分と同じほどの年齢の緑色のモジャモジャ髪の毛の少年が戦っているヒーローのことをテンション上げながら説明している。
どうやら現在ヴィランと対峙しているのは『シンリンカムイ』というヒーローだそうだ。
あまり興味ない情報を聞き流しながら美琴は今回の目的地のゲームセンターに向けて歩を進めた。
後ろの方で爆音が聞こえたと思えばカメラを持った少し太った男性たちが「キタコレ」と言いながら走っていったのを美琴は横目に思う。
「アレすら『日常』って思っちゃうところがこの世界の面白いところよね。」
事の始まりは中国で『発光する赤子』が生まれた、というニュースから始まった。
以降、各地でそういった類の『超常』は発見され、原因も判然としないまま、時が流れた。
いつしか『超常』は『日常』に・・・・『架空』は『現実』へと変わっていった。
世界人口の約八割がなんらかの『特異体質』である超人社会になった現在。
ヒーローたる職業が公的な職務として定められていた。
そして、それは誰もが憧れる職業なのだ。
「・・・・はぁ。」
美琴は深いため息をついた後に机の上に置かれた一枚のプリントを見つめる。
「どぉしたのかしらぁ?そんな深いため息ついたら幸運力が離れていくわよ?御坂さん?」
ふと顔を上げるとそこには唯一の同級生で友達?と言えるかもしれない食蜂操祈が微笑みを浮かべていた。
その笑みは美琴の神経を少し逆撫でするがあまり気にしていると胸部についた脂肪を砂鉄の剣で削ぎ落としたくなってくるので素直に受け答えをする。
「志望校に迷ってるのよ。・・・・黒子は雄英に行ったほうがいいっていうんだけど。」
今日は不幸なことばかりだ。
登校しようと思えばヴィランが暴れて電車は止まるし、学校に行くのを諦めてゲームセンターに遊びに行こうと思えば後輩の白井黒子が『転移』の個性で迎えに来て結局遊びには行けなかった。
そして、HRの後に配られた進路希望調査の紙。
「まぁこの学校なら雄英への推薦力はあるわけだしぃ、ヒーロー志望の御坂さんにはぴったりじゃないのぉ?」
「・・・・っつてもね、推薦なんて取れるかどうか。」
数多の有名ヒーローを輩出した日本の中でも最高峰のヒーロー科がある雄英高校。
美琴が所属する私立常盤台女子中学校は毎年1人は推薦を出している。
しかし、問題があるのだ。
「・・・・確かにぃ、御坂さんは頭は良いけど素行力が悪いからねぇ。」
常盤台の御坂美琴、といえばお嬢様学校所属とは思えないほどの素行の悪さだ。
授業は耽ってゲームセンターにいって遊んだり、絡んできた(もといいナンパしてきた)不良を返り討ちにしたりと・・・・とにかく、学校からの評価は低い。
「でも、ヒーロー志望なんでしょう?一般入試でもいいから受けてみればいいじゃない?」
「アンタねぇ・・・・簡単に言ってくれるけど雄英の一般入試って倍率300倍よ?雄英行かなくたってヒーローにはなれる訳だし・・・・。」
「もしかしてぇ〜、まさか御坂さん、自信がないとかぁ?」
「は?」
美琴はその発言を聞き逃すことが出来なかった。
努力で手に入れた強い個性を持ち、勉強だってこの常盤台女子中学校で首席を取るレベルの頭脳だってある。
「・・・・いいわよ!やったるわよ!これくらい余裕だわ!」
「相変わらず、単純よねぇ〜。」
簡単な挑発に乗る友人を苦笑いしながら眺める操祈。
ただうだうだ言っている友人の背中を押してやろうと思って発言したのだが・・・・まぁ最初の一言で決まるとは思っていなかった。
「とにかく、頑張ってぇ〜。」
ピピピピッピピピピッ
一定のリズムを刻み、限定のゲコ太携帯からアラームが聞こえる。
布団の中から美琴はもそもそと手を伸ばし、携帯を取ると軽く操作をしてアラームを止める。
布団から身体を出し、軽く背を伸ばして凝り固まった身体を引き延ばす。
「・・・・よし!」
時刻は早めの午前5時半。
雄英に行くと決めてから彼女は早速、試験に向けて個性の強化と体力の強化を始めた。
ヒーローとは身体が資本である。その為の一歩だ。
軽くジョギングして、誰もいない海辺で個性の練習をする、それが今の彼女の日課だ。
一般的に個性は許可なく使うことは許されていない。
だが、元々素行不良な美琴はそんなことは気にすることはせず、近くの海辺で個性の練習をしている。
もちろん、そこは人気がなく、それ故かゴミの不法投棄が曲がり通っている場所の1つだ。
そこで多少の練習をしても誰の迷惑にもならない上に人が来ないので咎められることはない。
軽くストレッチをして動きやすい短パンとTシャツに着替えた美琴は玄関に行き、ランニング用の靴を履く。
すると後ろから物音が聞こえたので振り返る。
「・・・・朝早くからご苦労様です、お姉様。とミサカは寝ぼけながら朝の挨拶をします。」
「・・・・おはよう。アンタも軽く運動はしたほうがいいわよ?」
そこにはパジャマ姿で眠たそうに目を擦る、美琴と瓜二つの姿の女の子・・・・御坂琴羽が居た。
彼女は諸事情により御坂美琴のDNAマップを利用して作られたクローンである。
肉体年齢的には美琴の一つ下になるが、実年齢は1歳になってもいない。
「・・・・ミサカはまだ激しい運動はできないのです、とまだ寝たい欲求を満たすために最もらしい言い訳をミサカはツラツラと述べてみます。」
「・・・・アンタねぇ・・・・んで、琴音は?」
「あの生意気な上位個体・・・・いや、妹はまだぐっすりと寝ています。」
まぁ・・・・仕方ないか。
美琴は軽く挨拶をすませると外に出て、走り出す。
走っている間に美琴の頭の中では彼女らのことを考えていた。
現在、自宅にいる2人の妹達についてだ。
自分と肉体年齢があまり変わらない方は御坂琴羽。
先程は姿が見えなかったがあと1人、小学生のほどの肉体年齢を持つ、御坂琴音が居る。
この2人は美琴の妹のようで実は違う。
彼女らはとあるヴィランの実験により作られた軍用クローンなのだ。
彼女らが生まれたキッカケは美琴がヒーローになろうと思い立ったオリジン・・・・原点でもある。
そんなことを考えながら走っていると軽く体も温まり、目的地でもある海岸に到着した。
「・・・・ん?」
海岸に到着するとそこにはジャージ姿の緑色のモジャモジャの髪の毛の少年がロープを使って凄い顔をしながら冷蔵庫を引っ張っていた。
そして、冷蔵庫の上にはムキムキのゴツいおっさんがいる。
「・・・・なにあれ?」
個性という超人体質が一般化したこの世界ではムキムキのおっさんなんてものは珍しいものではないが、目の前の光景は少し苦笑いを浮かべてしまうのような光景。
ゆっくり歩いてその場に向かうとよく見れば冷蔵庫の上に座っているムキムキのおっさんは見たことある人だった。
軽く溜息を吐き、美琴は呆れたように声をかけた。
「・・・・なにやってんのよ?オールマイト?」
「むむ!!?これは御坂少女じゃないか!!」
彼の名はオールマイト。
No. 1ヒーローにして、平和の象徴。
美琴自身、ある事件の一件により関わることとなったヒーローの1人だ。
「はぁっ・・・・はぁっ、オールマイト、し、知り合いで、すか?」
「あぁ!昔、私が助けた子供の1人さ!」
「・・・・助けてもらった、ってのは微妙だけど。」
美琴の言うことは間違ってはない。
確かに間接的には助けてもらったかもしれないが、直接的に美琴を、妹達を助けたのはあのツンツン頭のヒーローだ。
「HAHAHAHA!確かにそうだね!あの時君を助けたのは彼だったね!」
「まぁそんなことはとにかく、何してんのよ?私はこれから個性の練習をしたいんだけど?」
「む?公の場で個性を使うのは感心しないが・・・・まぁ、ここなら大丈夫だろう。・・・・今はね、私が彼の教育をしているところだよ!」
そう言ってオールマイトは緑色のモジャモジャの髪の毛の少年を指差す。
「なるほどね。初めまして、御坂美琴よ。」
そう言って初対面である少年に対して美琴は微笑みながら自己紹介をする。
「み、みみみみ緑谷出久ですすす!!」
顔を真っ赤にしてぎこちない体の動きを見せて自己紹介する出久。
美琴は女子と話したことないのか?と思いながらよろしく、と呟いた。
美琴自身、女子校に通っているため同年代の男子と話すことなど皆無なのだがよく身の程を知らない輩にナンパされることがあるので男子との会話に戸惑うことはない。
なんやかんやあったが、オールマイト曰く出久はオールマイトの師事を受けることになり、とりあえず身体を鍛えているとのこと。
「脳筋な考えね。」
「HAHAHAHA!そう言われても仕方がないけど、これからの彼には必要なことなのさ!」
「ま、とにかく私の邪魔をしないでね?」
そう言って海辺に行くと美琴は意識を集中させていく。
美琴の個性はすごく単純なもので電気を扱える、だけなのだが彼女はこの個性を鍛える際に一つの結論にたどり着いた。
大体の人が個性は感覚的に使っていることが多い。
しかし、逆に個性を計算するように使えばどうなるだろう?と美琴は考えた。
まず、個性を安定して使うためには自身の意識を明確にし、冷静にならなければならない。
怒りや憎しみなどで威力が向上することもあるが高出力する度に怒っていたりするのは非効率的すぎる。
そこで美琴は自身の心理的領域の中で個性が1番効率的に発動する心理パターンを解析。
それを『自分だけの現実』と名付け、固定化させた。
次に美琴が行ったのは個性をただ無闇に使うのではなく、一つの物理現象として捉え、その現象を最大限に行使できるように個性を制御すること。
そうすることによって能力の幅が広がり、最大限の威力を行使することができる。
科学的な現象を再現するためには物理的な演算能力はとても重要になってくる。
美琴は個性をただ無闇に発動するのではなく、個性を発動することにより発生するであろう現象を予測演算し、それに合う出力と力の方向性を示す。
バチバチバチッ!!!
美琴の付近に紫電が走ると地面から黒い物体が水のように湧き出てくる。
電気を利用した電磁力を発生、砂鉄を自由自在に動かすのだ。
イメージも重要になってくるため、それに沿わせるように手を前に振りかざす。
バチバチバチッ!!
激しい発電音と共に命令されたかのように砂鉄が動き、砂鉄の刃が海を破る。
手を横に振り、近くにあった不法投棄された粗大ゴミを切り裂く。
砂鉄は細かく振動させているため、鉄製品であろうと紙のように軽く切ることができる。
「・・・・よし。」
砂鉄の動きにタイムラグはあまりない。
今までの練習の成果だ。
美琴は短パンのポッケに手を入れ、中から1枚のコインを取り出す。
よく行くゲームセンターで使われるコインゲーム用のコインだ。
これは拝しゃ・・・・貸していただいているため替えもそれなりにある。
指にコインを乗せ、ピンっと力強く弾く。
放物線を描いてコインは予測した地点に落ちていく。
美琴は器用にそれをもう一度指で弾くと一筋の光となって海面へぶつかる。
そして、遅れて轟音が鳴り響く。
ドガァァァァンッ!!!!
これがこの1年で美琴が身につけることができた必殺技。
大切な妹達を守るために編み出した技だ。
超電磁砲だ。
ローレンツ力で加速して音速の三倍以上のスピードで撃ち出す。
50メートルほどでコインが溶けて無くなってしまうため射程は短めだがそれですら爆音を鳴らすほどの威力を持つ。
「み、みみみ御坂少女!?そんな爆発をこんな所でしてはダメだよ!?」
後ろで見守っていたのか、オールマイトが焦った表情で言う。
「大丈夫よ。この辺に民家は無いし、毎日ここでこれやってるけどなんか言われたことはないし。」
いや、一度だけ面倒な後輩が怒りに来たことがある。
しかし、美琴にとってあれは『何か言われた』という部類には入らないのであろう。
すると美琴の視界に1人の少年がブツブツと呟くのが目に入る。
「最初は磁力を使う個性だと思ってたけど実は電気を自在に操れる個性なのかな?ってなると汎用性はとても高くなるし、鉄分が含まれてる物ならなんでも自由に扱えるってことになるのかな?・・・・まてよ、そうなると現代社会においてはある意味最強の個性とも言えるのか?まさか、パソコンなんかの電子機器にも有効ならハッキングとかも出来るってこともあるのか?こうなると対策が難しいぞ。いや、そうなると専門的な知識も必要になってくるのか?それにさっきのを見る限りだと――――ブツブツブツ」
「(っこわ!?)」
尋常じゃない集中力でブツブツと呟きながら美琴の個性を解析する様は少し不気味に見えた。
それより、美琴が恐れたことは数秒しか見せてない個性を粗方把握している分析能力だ。
――――いや、ブツブツ呟く出久の姿にも若干の恐怖を覚えたが。
「んんんっ!!緑谷少年!怖い!怖いよ!?」
「――――あぁ!?ご、ごめんなさい!ぼ、僕の癖みたいなものなんです!!」
癖でこんなに容易く個性について解析されると少し恐ろしいものを感じてしまった美琴であったがあまり気にしていると疲れてしまいそうだ。
「いい癖とは思えないけど・・・・ま、アンタはアンタで自分のやらないといけないことしないでいいの?」
そう言って運ばなければならないであろう冷蔵庫を指差して美琴は苦笑いを浮かべる。
「あ!?す、すみません、オールマイト!」
「とにかく、御坂少女の言う通り!緑谷少年にはやらなければならないことがある!さぁ!修行の続きだ!」
そう言われて、出久は粗大ゴミを運ぶのを再開する。
美琴は美琴でそれを横目に個性の鍛錬に励むことにした。
この日を境に美琴と出久はよく出会うようになった。
といっても美琴が海岸を訪れれば必ずそこにオールマイトと緑谷出久は居たからでもあるのも理由の一つだ。
しかし、美琴は少し緑谷出久という少年に対してなんとも言えない感情が湧いた。
彼は必死なのだ。
一度、大雨が降り流石にランニングは止めておこうと思い足を止めたがあの少年は来ているのだろうか、と脳裏をよぎり、思い付きで海岸へと向かった。
そこにはびしょ濡れになりながらもゴミを運ぶ出久の姿があった。
それからというもの例え雨が降ろうと雪が降ろうと台風が来ようと彼は鍛錬を止めることをしない。
必死に何かに縋るように、なにかを掴み取ろうと、身体がボロボロになろうと死ぬ気で鍛錬する彼の姿があった。
その足掻く様はまるであのツンツン頭のヒーローを見ているようで。
「(――――あぁ。そうか、似てるんだ。)」
美琴の目標でもあるあのヒーローは諦めることをしない。
右手にしか個性が宿ってないのにも関わらず、それ以外は普通の人間だというのに諦めることをしない。
必ず、救いを求める人を救う。
そんな、必死に人を救う彼に出久は似ている。
正義感もそうかもしれないが必死さが、似ていたのだ。
「バカ、そんな持ち方したら手首痛めるわよ?」
「え?あ、そうか・・・・じゃあこうすれば・・・・」
いつしか美琴は目を離せなくなってしまった。
彼はいつか無茶をして身体を壊す。
そんな彼をほって置くなどなんだかんだ言ってお人好しの美琴が見過ごせるわけがなかった。
気づけば彼の勉強でさえ面倒をみることになっていた。
「ここにこの公式を持って来ればいいのよ。」
「なるほど!さすが名門の常盤台の生徒だね!」
一度めんどくさい後輩が「お姉様が逢引をおおおお!!?」とか言って出久にドロップキックを喰らわしていたがなんてない表情で「ないない〜」って言うとそれはそれで出久は傷ついた。
そして、なんやかんやあったがついに来た雄英入試当日。
美琴は1人で雄英高校の校門前まで来ていた。
仲良くなり、一緒に受験勉強をした出久と一緒に来るのも考えたが今日もギリギリまで身体をしごいているとの事なので一緒に来ることは諦めた。
「さてと、軽く首席でもとってみますか。」
自身と周りの個性の性能が違うのは美琴自身理解している。
個性の使い方がそもそも違うのだ。
入試に関しても常盤台の教育方針の一つである『卒業までに世界に通用する人材を育成する』というのを掲げている常盤台中学を卒業するだけの知識はあるため、自信はある。
しかし、何があるかわからないのが雄英高校の入試だ。
少し緩んだ気を引き締めるため軽く頬を叩き、精神を集中する。
「さてと、やったるわよ!」
筆記の方の試験に関しては楽勝だった、と美琴は感じた。
もちろん、普通の中学生から見ると途轍もなく難しいものになっているのだが、美琴の学力はそれすら余裕に思ってしまうほどだった。
見直しも完璧、100点を取れたと言うほどではないが確実に合格ラインは超えているだろう。
問題は実技試験の方だ。
内心ドキドキしながら配られたプリントを確認すると美琴は呆気を取られてしまった。
「はぁ?」
実技試験の相手はロボットだと記載されている。
美琴の合格が決まったようなものだった。
「さてとっ。やったりますか。」
美琴は軽くストレッチをし、筆記試験で凝り固まった身体をほぐしていく。
実技試験では動きやすい格好で、と言われていつもの短パンTシャツで行こうと思っていたのだが、流石常盤台と言うべきか・・・・体操服での受験を強制させられた。
休日であろうと外出時は制服着用を義務付けするような中学校だ。なんとなくそんな気はしていた。
とはいえ、美琴は律儀に守っていたわけではないが。
『はい、スタート!』
間の抜けたスタート合図。
美琴とその他大勢の受験者は「え?」とポカンとした表情を浮かべ固まってしまう。
『どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんてねえんだよ!賽は投げられてんぞ!』
プレゼントマイクがの言葉が響き、状況を理解した受験生たちが一斉にスタートを切る。
人混みに一瞬圧倒された美琴であったが持ち前の情報処理能力でなんとか立て直す。
「――――っ!」
磁力を使い、先頭集団に並ぶように空を飛ぶ。
美琴は早速1Pのヴィランロボットを見つけるとロボットの上に迷わず乗る。
「・・・・プロテクトが雑ね。」
バチバチバチッ!
ロボットに軽く紫電が流れるとロボットは動きを止める。
AIのプログラムを変更するためだ。
最高峰の雄英高校の技術力を持ってしても日本政府の機密情報にアクセスできるレベルのハッキング能力を持った美琴には乗取ることなど容易いこと。
生徒を襲うように設定したプログラムをヴィランロボットを攻撃するように再設定。
更に他の受験者を援護するように設定し直す。
他の受験者のポイントまで全て奪ってしまうのは快く思われないとの判断だ。
設定をし終えると次のロボットに向かって跳躍する。
「流石にこの量はキツイからね。」
目の前にはどこにそんな金があるんだよ、と思わせるようなヴィランロボット数々。
美琴の個性は機械類には強いが一つ一つ相手にしていれば文字通りの電池切れになる確率が高くなっていく。
電池切れになれば動けなくなるのも当たり前で出来る限り個性を節約しながら戦うしかない。
すでに五体ほどハッキングし終え、次は自らポイントを取りに行く。
このハッキングによる攻撃が美琴のポイントになるか微妙なためだ。
側から見ればヴィランロボットの故障にも見える。
「んな!?コイツら味方してくれるぞ!?」
どっかの受験者が勘違いしたのか、ヴィランロボットについて周りのロボットたちを駆逐していく。
こっちからすれば雑魚狩りしてくれるだけで助かる。
「――――っし!」
鋭く息を吐き、移動しながら美琴は確実に高得点ロボットを電撃の槍で射抜いていく。
低ポイントのロボットはハッキング、高ポイントのロボットは一撃で破壊。
これで十分な成果なはず。
すると、爆音を立ててビルの一部が倒壊する。
音に驚き、その方向に視線を向ける。
「うわっ、あんなの国家予算レベルじゃないと作れないでしょ。」
地響きを鳴らしながらビルほどの背丈を持つ巨大なロボットが仮想訓練場を闊歩している。
付近にいる受験生たちは「逃げろー!」「雄英は俺らを殺す気かぁ!?」など喚きながら逃げ回っている。
圧倒的な存在に誰もが尻込む。
何よりあのデカイロボットは0Pのハズレだ。
誰も相手することなく逃げていく。
「無駄な力を使うこともないわね――――っ!?」
美琴も相手にするだけ無駄だと判断して逃走ルートを確認しようとした刹那、何人か腰が抜けて動けないであろう受験生たちが視界に入る。
「(――――雄英の事だから、死人が無いように設定してあるのは理解できる。頭では理解してる。でも――――!)」
そう、こんな無茶苦茶な試験でもあくまで試験だ。
見捨てたって死にはしないし、受験生の彼らだってそれは承知の上だ。ここで何かするのは余計なお世話だ。
力を無駄に使うことなんてない。
だが――――
――――これは私の問題でっ!アンタには関係ないでしょ!?余計なお世話なのよ!!!
――――いいか、ビリビリ。余計なお世話ってのはヒーローの本質なんだよ。
――――思い出せ。私の、原点・・・・オリジンを――――
気付いた時には身体が勝手に動いていた。
この行動が正しかどうかなんて考えていない。
今持てる、自身の最大限の力を、ありったけを。
美琴は咄嗟に近くにあってロボットの破片を引き寄せる。
今はゲームセンターのコインを持ってない上にこの距離ではどの道届かない。
磁力で浮かせた鉄の塊を美琴は戸惑うそぶりを見せず、殴りつけた。
「――――おんどりゃあああああ!!!」
女子として相応しくない掛け声と共に破片が真っ赤に染まって音速を超える。
遅れて爆音と衝撃波が辺りを包み、光線となった一筋の光が巨大なロボットを貫く。
「――――はぁ、はぁ。」
激しい爆音の後のせいか、辺りがしんっと静寂に包まれる。
思いのほか無茶して個性を使ったせいか力が抜け、地面に尻餅をつく美琴。
『試験終了ー!!』
そんな合図と共に美琴の試験が終わった。
「――――ねえさ――――お姉様?」
「はっ!?」
「さっきからぼーっとしてるけど大丈夫?ってミサカはミサカはお姉様の精神状態を案じてみたり!」
「あ、ご、ごめん。試験で疲れたのかも。」
試験から1週間後。
美琴は自宅でぼーっとする日々が続いていた。
合格した、という自信はあるのだがやはり、実技の方で若干の不安を隠しきれない美琴はこの1週間上の空であった。
理由としては自分がハッキングしたロボットたちが倒したポイントは加算しているのだろうか、という点が大きい。
「心配かけてごめんね。」
そう言って美琴は妹の1人、小学生ほどの肉体を持った自分と瓜二つな御坂琴音の頭を撫でる。
どれだけ撫でようがアホ毛は重力に逆らいぴょこぴょこしているがこれに関してはよく分からない。
美琴自身、幼少期にはこのアホ毛に悩まされていたが中学に上がる頃には自然と治っていたので気にしないことにしよう。
「あ、そう言えば雄英高校から手紙が来てたよ!ってミサカはミサカはお姉様に手紙を渡してみる!」
「え?ほんと?」
琴音から手紙を受け取り、早速自室に戻って中身を確認する。
そこにはプロジェクターのような機械と一枚の用紙が入っている。
恐る恐るプロジェクターの機動スイッチを押すと――――
『――――私が投影された!!!』
「うわぁ!?」
画風の違うガチムチのおっさんが出てきてしまい思わず放り投げてしまう。
『HAHAHAHA!久しぶりだね御坂少女!今年は私が合格発表を任されるようになってね!こうやって来た!という訳さ!』
地面で軽快に笑うガチムチのおっさんを見て苦笑いをしながらプロジェクターを拾い、机の上に置く。
『君には色々と話したいことがあるんだが、先程から巻きでと言われててね!早速本題に入らせてもらおう!!』
少し間を置き、1秒ほどだが静寂が訪れる。
緊張した美琴には少し長く感じていた。
『まずは筆記試験!これは文句なしの合格だ!2箇所ほどのケアレスミスがあっただけでほぼ満点だよ!流石、名門の常盤台中学をトップクラスで卒業する実力者と言ったところだね!』
「(・・・・ありゃ、満点だと思ってたけど変なミスしちゃったみたいね。)」
『続いて実技試験だ!・・・・君の場合は少し特殊でね、教師陣もまさかヴィランロボットをハッキングして戦わせるなんて思ってもなかったみたいだ。出来る限りわかる範囲で採点したところ・・・・64点だったよ!!手当たり次第ハッキングしたおかげで見逃しているところもあるかもしれない!許してくれ!』
まぁ妥当な判断だろう、と美琴は思った。
なんなら触れていないロボットにすらハッキングしているのだ。見た目でわからない以上仕方がないと言ったところだろう。
『しかし!!我々が見ていたところはそれだけではない!!どんな状況下でも人助けをするのがヒーローのお仕事!!人助けをして排斥するヒーロー科があってたまるか!!偽善上等!我々が見ていたもう一つのポイントは救助ポイント!!君の救助ポイントは35点!!君の場合は最後のどデカイ一撃が高得点だったよ!!君のポイント合計は99ポイント!!文句なしの首席合格だ!!』
美琴はグッと拳を握りしめる。
――――これで、またアイツに一歩近づくことができた。
『御坂少女!!これで君も文句なしのヒーローの卵だ!!――――ここが君のヒーローアカデミアだ!!』
プツンと音を立ててプロジェクターのスイッチが切れる。
美琴はおもむろに部屋にある窓の方に行き、空を見上げて笑みをこぼす。
――――これでアンタに一歩近づくことができる。
「私は、アンタの隣に立てるような、そんなヒーローになる。」
美琴は拳を握りしめて、誓う。
あの、どうしようもなくバカで真っ直ぐで――――誰よりもヒーローな彼に近づいて、隣に立ってみせると。
詳細設定
御坂妹は2人しか作られていません。
御坂琴羽=御坂妹
御坂琴音=ラストオーダー
って感じです。
名前はこの世界観に名前がなかったら不便だと思って付けました。
琴を付けただけで特に深い意味はない。
え?クローンなんて誰が作ったって?そんなのオールフォーワン先生しかいないじゃないですかぁ〜。
オールマイトとはこの関係で知り合っている。
まぁオールフォーワン先生の起こした事件なんだから関わらないと不自然っていう理由。
『自分だけの現実』
これに関しては勝手な自己解釈が入ってます。
本来はなんかもっと本来の現実を能力が発現するチガウ現実に認識するとかどうとかよくわかんねぇ。
設定上、上条さんは美琴の5〜6歳ほど年上。
だってすでにプロヒーローとして活躍させとかないと話が成り立たないでごわす。
個性は『幻想殺し』
現れたヴィランに対して説教して更生させる様から民衆からは『説教ヒーロー』と呼ばれている。
一部ではいろんな事件に巻き込まれるから『被害者ヒーロー』だったり、『不幸ヒーロー』だったり呼ばれてる。可哀想。
認知度は低いけど一部からは大人気。
食蜂操祈さん
同じ年で禁書原作とは違って仲は良さげ。
とは言っても強固性同士なため、必然的に絡む回数も多くなっただけ。
個性は『心理掌握』
心操くんの完全な上位互換。
本人は全然ヒーローなんかになる気はない。
だって運動音痴なんだもん。
白井黒子さん
一緒に住んでないだけで一応美琴を慕っている友人?後輩?の1人。
個性『転移』
制限は原作とほぼ同じ。
佐天さんと初春さん
何も考えていない。妄想膨らませばどこかで絡みがあればいいなぁ。
誰か描いてよ(他力本願)
もち佐天さんは無個性でお願いします。
最後にこんなくだらない思い付きの短編2次小説読んでくれた人。
ありがとうございます。
禁書の能力者たちってヒロアカの個性の上位互換が多いですよね。
特に今回の主人公である美琴なんて上鳴くんの上位互換なわけだし。
御坂美琴感が出せてたかは不安で仕方ないですが暇つぶしついでに描いた作品です。深く掘り下げないでくれぇ
もし、続きを書きたい!って方がいたら全然パクってください。
読みたいんで。(他力本願)