転生先はアベンジャーズ!?生き残れる自信がありません!! 作:断空我
はい、決まり。
「はぁ」
あの後、やってきた特殊警察に逮捕された。
バーンズさんには逃げる様に伝えて、俺は大人しく拘束される。
俺が国王を殺したわけじゃない。
だが、殺した犯人と思われる俺が逃げ続けるという事はテイ・チャラがどこまでも追いかけてくる。
あのブラックパンサースーツをきて、それはつまるところ、ソコヴィア協定可決をより加速させることになってしまうのではないかと考えてしまった。
冤罪になるとしても、とにかく、あの王子が落ち着いてくれるのならそれでいいと。
「って、どこまで俺はお人好しなんだぁ?」
自分が嫌になりながら机に突っ伏す。
「寝るな、起きろ」
突っ伏したタイミングで誰かがやってくる。
頭を小突かれて顔を上げた。
「私は対テロ共同対策本部のエヴァレット・ロスだ。私の質問に答えてもらう」
「答えられる範囲なら」
「真面目にしろ」
無言で頷く。
「名前を確認する。シンジ・ジャッカー、テロ組織“レギオン”に所属している。間違いないな?」
「一つ訂正、その組織は十年くらい前に抜けている」
「ウソをつくな、お前がその組織に所属していることはわかっている。二年前に行ったオズコープ社襲撃テロに貴様が関与している。証拠写真もある」
ロスという人が俺の前に資料を置く。
オズコープ、という会社が確かニューヨークにあったことは記憶にある。
だが、襲撃したことなどない。そもそも、俺はあの組織を壊滅させて抜けている。活動しているという事自体あり得ない。
何もかも、俺の記憶と違う事ばかり。
「これは!」
ロスが机の上に置いた写真の一枚。
俺は食い入るように写真をみた。
ウソだと言葉が漏れる。
「自分が殺した相手のことすら忘れていたのか?お前が襲撃した際にたまたまオズコープへ見学に来ていた少女だ。お前の放った銃弾が心臓を撃ちぬいて即死、可愛そうにまだ十代でありながら……この、シノ・レインズワースという少女は命を落としたんだ!」
ドンと机をたたく音が聞こえたがそれは酷く、遠くなものに感じた。
机に置かれている一枚の写真。
物言わぬ死体になっているシノの姿が写されているソレをみて、俺の頭は真っ白になってしまう。
「どうするか」
テロ共同対策本部の施設。
それを離れたところでバーンズは眺めていた。
自ら投降したシンジが心配だった。
記憶のない自分へ手を差し伸べてくれた恩というものもあるが、バーンズは彼が放っておけなかった。
大人しい性格でありながら、決めたことは曲げず、大事なところで諦めない人物。
シンジを誰かと重ねてしまう。
故にバッキーは何か起こればすぐに対処しようとしていた。
「っ!」
気配に気づいてバーンズは振り返る。
「動くな」
金縛りにあったように体が動かなくなった。
「なん……」
「喋るな」
口に猿轡でも巻きつけられたように声を発することもできない。
指一つ動かせないバーンズの前に立っているのはどこにでもいるような初老の男性。
彼の手には赤いノートのようなものが開かれていた。
誰だ、と言葉を発しようとしたが口は全く動かない。
バーンズの表情から察したのか男はため息を吐く。
「この男の体のことは知らんよ。まったく、貴様のような奴さえ、完全な拘束ができんとは本当に最悪としかいいようがない。だが、これも全ては娯楽のためと思えば我慢できることだ」
何を言っているのかバーンズはわからない。
だが、このままではよくないことが起こるという事を察したバーンズは見えない拘束から逃れようとする。
動けない彼に男はノートを開きながらある言葉を囁き。
その結果、バーンズは非情な殺し屋、ウィンター・ソルジャーとなった。
「どうしたら、いいんだろうか」
ロスは悪態をつきながら出ていく。
シノが死んでいる。
その事実に俺が無反応になったことで尋問は中断となっていた。
戦場で俺はシノを拾い、兵士として育ててしまった。俺が育てたことで思考が歪み、戦闘狂みたいなことはあったけれど、素直なところもある良い子。
そんな子が俺の記憶にない出来事で命を落としている。
わけがわからない。
俺がアベンジャーズに所属していない。
壊滅させたはずのテロ組織が当たり前のように動いている。
俺がテロリストとしてシノを殺していた。
頭がぐるぐると混乱という文字が支配している。
このまま尋問を受け続けていても事態は変わらないだろう。
いや、それどころか身に覚えのない罪をきせられたまま、投獄の可能性もある。
ため息を零す。
「まぁ、罪が増えるけれど、こればっかりは」
音を立てて、ドアが吹き飛んだ。
「……?」
突然の事態に呆然としていると目の前に現れたのは武装をしているバーンズさん。
しかし、その目は一切の感情を宿していない。
目の前の標的を殺すための存在、ウィンター・ソルジャーになっている。
「っ!」
自動で発動したATフィールドによって撃たれた弾丸を防ぐ。
効かないことわかっているのか手榴弾を取り出した。
「バーンズさん!」
俺の叫びに動じることなく手榴弾が投げられる。
爆発と土ぼこりが舞う中で俺は駆け出す。
追撃しようと駆け出してくるウィンター・ソルジャー。
その眼前に俺は立つ。
目の前に突然、現れたことで相手の反応が遅れた。
「ごめん、よ」
謝罪しながら拳をATフィールドで包みながらアッパーを繰り出す。
攻撃を受けたバーンズさんの体は数メートルほど宙に浮いて、大の字で倒れる。
彼の意識が無くなったことを確認すると壊れた壁から外へ逃げ出す。
これが最悪の事態になることは容易に想像できた。
けれど、俺にはこれしか選択肢が用意されていない。
最悪の道だ。
アベンジャーズ本部。
「先ほど、シンジ・ジャッカーが脱走したと連絡が入った」
施設の中で投影されているスクリーンにはシンジ・ジャッカーのプロフィールが表示されている。
「世界各国で手配されている最悪のテロリストだ。CIAやFBIも要注意人物としてマークしている」
ローディは表示されている犯罪歴を指さす。
「邪魔する者なら子供だろうと女だろうと殺す、非情な男だ」
「まぁ、今までに現れた空からの怪物やヒドラの兵士たちと比べるとさほど、脅威ではない。何よりソコヴィア協定の話があるため、アベンジャーズは動けない」
「いや、彼を捕まえるべきだ」
「まだ、そんなことをいっているのか?」
立ち上がったスティーブへトニー・スタークが詰め寄る。
アベンジャーズはソコヴィア協定のために表立って活動することができない。
調印式がテロによって無茶苦茶になったとはいえ、世界が見ている中で不用意なことはできないのだ。
大人しくしていようと提案するトニーだが、スティーブは首を振る。
「一度、我々は彼を捕えた。脱走してしまったのなら捕まえるべきだ……そうする責任が我々にはあるはずだ」
「いいや、ないね。何より相手はただのテロリストだ。光線を放つわけでも、特殊スーツを纏っているわけでもない。そんな相手は政府や普通の人間に任せておけばいい」
スタークの言葉にほとんどが納得していた。
だが、何かがスティーブの中で引っかかっている。
「後は私の目の前にいる頑固者が協定に署名してくれれば、全てが丸く収まる」
パンと手を叩くスタークだが、スティーブは出口に向かう。
「どこへいくつもりだ?」
「少し休みたい。すまないが調停の話は後だ」
出ていったスティーブにスタークはため息を零す。
「仕方ない、少し休憩だ……小僧、お前は話を聞いていたのか?」
「勿論ですよ~、だから僕だって署名に同意したんじゃないですか」
カチカチとゲーム機を弄りながら答えるドール・セイマカヌ。
アベンジャーズにおいてはヴィジョンを除くと最年少の参加者だ。
しかし、ところどころ不真面目な人物だ。
会議において、ゲームをしていて目を合わせないし、任務中も勝手に突っ走る。
「(これなら、まだボーイの方が……)」
スタークは小さな頭痛がして頭を抑えた。
何かノイズが走ったような感覚。
「どうしましたぁ?スタークさん」
「何でもない、机に足を乗せるんじゃない」
注意しても足を戻さない彼にスタークだけでなく、ローディもため息を零す。
「(何かがおかしい)」
アベンジャーズ本部の通路を歩きながらスティーブは考えていた。
此処のところ、己の中でくすぶる疑問のようなものが日に日に大きくなっている。
疑問が浮かぶようになった切欠は、シンジ・ジャッカーと対峙した時、アベンジャーズとして活動し始めた時から彼の悪評は耳にしていた。
「なのに、なぜ、疑問を抱くんだ?」
「キャプテン」
呼ばれて振り返ると会議に参加していなかったワンダとヴィジョンがやってくる。
ワンダは体調が悪いということで会議に参加せず、ヴィジョンは付き添いだった。
「体調は良いのか?」
「話があるの、来て」
彼女に手を引かれてある部屋に足を踏み入れるスティーブ達。
「話というのは」
振り返るスティーブへワンダが自身の能力を発動させた。
同時にヴィジョンの額にあるマインド・ストーンも輝きを放つ。
脳裏に流れていくのはスティーブの記憶、
アベンジャーズとして戦ったニューヨークの出来事からインサイト計画、ウルトロン事件まで。
自分と共に戦ってくれた仲間の記憶。
「っはぁ、はぁ!」
荒い息を吐くスティーブ。
しばらくして落ち着きをみせるとワンダをみる。
「何を、したんだ?」
「記憶を戻しました」
ヴィジョンが答える。
「貴方には偽りの記憶が植え込まれていました。それを私と彼女の力で打ち消し、本来の記憶を呼び戻しました」
「……呼び戻した、じゃあ」
自分の記憶が確かならシンジ・ジャッカーはテロリストではない。むしろ、彼は。
「シンジは私達の仲間よ。テロリストじゃない」
ワンダの言葉にスティーブの中で生まれていたわだかまりが消えていく。
最後のピースが嵌ったような感覚だ。
「だが、一体」
「疑問はもう一つあるぞ?キャプテン」
「サム?」
室内には三人だけと思っていたらサムがいた。
「記憶を」
「キャプテンの少し前に、ね……話を戻すけれど、シンジのいた場所に別の奴がいる……あれはなんだと思う?」
「ドール・セイマカヌ……」
「アレは信用できない」
ワンダは顔をしかめながら自分の体を抱きしめるようにしていた。
「キャプテン、どうする?あのドールとかいう奴も気になるが、記憶を取り戻した俺達のこれからについてだが……」
「シンジを探そう……それと、ヴィジョン」
「はい」
「キミはトニー達の傍にいてほしい」
「どうして!?」
「ドールが我々の記憶を消したかどうかはわからない。だが、不審な人物を仲間の傍に置いたままにはできない。ヴィジョンがいれば少なくともトニー達の心配をする必要はなくなる。我々はシンジの追跡に全力を注げるという事だ……」
「でも、ヴィジョンが抜けるとなると私達、三人だけということになる」
「キャプテン」
悩むスティーブとワンダにサムはある提案をした。
「俺に提案がある」
「駄目だ、どうすればいいのかわからない」
抜け出した俺を待っていたかのようにライノが襲撃してきたが警察部隊へ押し付けてある町の路地裏まで逃げてきた。
手の中にあるのはハンドガンが一つ。
「このまま、自殺すればって考えるのは阿呆だな」
ハンドガンを懐に仕舞って立ち上がった時。
「どうやらまだ絶望はしていないようですね?」
銃口を向ける。
「落ち着いてください。私は貴方の敵ではありません」
目の前に現れたのは黄色いフードで顔を包んだ人物。
作務衣のようなものを身に纏い、首から年季の入ったペンダントのようなものを下げている。
落ち着いた声で性別の判断はつきにくいが、おそらく女性だろう。
「敵ではないという証拠は?」
「今のあなたの現状を私は知っています。そして、今のままでは貴方に待ち受けるのは破滅しかありません」
女性の言葉は事実だ。
今のままでは史上最大のテロリストとして各国の捜査機関に追いかけられる。そして、ブラックパンサースーツをきたワカンダ王国王子も追いかけてくる。もしかしたらアベンジャーズも出てくるるだろう。
逃げ続ける毎日など疲弊しか生まない。いずれ限界がきて捕まるか死ぬだろう。
それを回避できる術があるのなら藁にも縋る思いだが、目の前の相手が信用に足る人物がどうかがわからない。
「アンタなら俺を助けられると?」
「それは貴方次第です。動くのであれば、この最悪の状態を抜け出すことは出来るでしょう。ですが、最大の苦しみが貴方を待つでしょう。しかし、失われた温もりを取り戻すことは出来る」
――それでも行きますか?
問われた言葉に俺は頷いた。
「どこへ行けばいい?」
「シベリア」
「……ごめん、俺の聞き間違いでなければ、シベリアと聞こえたんだけど?」
「えぇ、シベリアです。そこに解決の糸口があります。貴方ともう一人の」
「……もう一人?」
「それ以上は貴方の目で確認してください。私ができるのもここまでです」
「あぁ、待って」
去ろうとした女性へ俺は声をかける。
「また、会えるかな?」
「どうでしょうね。貴方が私のみた未来を辿らなければ、可能性はあるかもしれません」
「頑張るよ」
「ええ、頑張ってください」
瞬きしていると女性の姿が消えた。
「あー、俺、かなりヤバいのかな?」
頭をコンコンと叩きながら首を振る。
「まぁ、でも、やることは決まったか……しかし」
ここからシベリアに行くにしても車、いや、飛行機とかが必要だなぁ。
「はぁ、罪を重ねることに抵抗はあるけれど、仕方ないよね」
目的地は決まった。
空港だ。
「これは、まぁ、罠だよなぁ」
空港へ向かうと驚くことに人の気配が全くない。
おそらく警察組織が封鎖したのだろう。
中に突入したら目的のものを即、奪取のちにシベリアへ向かうしかない。
道中で武器商人らしき連中から強奪した武器を背負う。
どこの組織かは知らないが“やたらハイテクな武器”をトラックをトラックに載せていたので失敬した。
チタウリの兵士が持っていたようなものから、妙に覚えがあるような武器をみた気もしたが、とりあえず、使い方を確認して連中には静かにお帰りいただいている。
これならアベンジャーズとまともにやりあえるだろう。
こういう時にエヴァがいないのは悲しいかな。
ようやく慣れてきたというタイミングだったからなぁ。
「誰だ」
近未来的なデザインの銃を向ける。
通路の角に誰かがいた。
気配からして複数。
「出てこないなら撃つぞ」
「……キミは撃てない」
角から出てきたのはスーツを纏ったスティーブ・ロジャース、いや、キャプテン・アメリカだ。
俺を捕まえに来たのだろう。
「悪いけど、ここで捕まるつもりはない。邪魔をするなら攻撃する」
「シンジ、僕達はキミの敵ではない」
「……警告する。そこを、退け」
両手を上げるキャプテン・アメリカ。
それは敵意がないという意味だろう、だが、油断してはいけない。
「シンジ、キミはシベリアへ渡ろうとしている。ここにあるクインジェットを使って」
「だったら?」
「シベリアには俺以外のウィンター・ソルジャーが冷凍保存されている」
角から姿を見せたのはバーンズ。
もう片方の手にハンドガンを取り出して構える。
「それは驚きだ」
「シンジ、一緒に」
「悪いけれどさ、キャプテン・アメリカさん」
銃口を突き付けたまま、俺は冷徹にふるまう。
感情を悟られないようにしながら。
「俺はアンタ達を信じない。アンタ達は俺に攻撃してきた……味方だと思っていたアンタにも」
バーンズへ銃口を向けて睨む。
「あれは、キミのことを忘れてしまっていて」
「理由はどうあれ、俺は武器を向けてきた相手に背中を預ける事なんてできない。それに、裏でこそこそしているような人たち、とはねぇ!」
ある方向に隠し持っていた催涙弾を投げる。
そして、キャプテンたちの前に照明弾を叩きつけた。
視界が塞がれる彼らの横を通過して空港の外へ飛び出す。
あとは、そのままクインジェットが保管されている場所へ向かえばよかったんだけど。
「最悪だよ」
目の前にアイアンマンとウォーマシンがいた。
神様は俺のことがとことん嫌いらしい。
バーンズをウィンター・ソルジャーへ洗脳しなおしたのは本来ならシビル・ウォーで黒幕であったジモです。
ただし、中身は別物。