大丈夫だよ/私がいる
「提督、大本営からの連絡が来ているぞ、内容は未確認だから、提督が開けてくれ」
「うん、ありがとう…
ええっと、、暁型駆逐艦二番艦、響、
まぁ響だな、、は?転任?」
どうもロシアの出島(ウラジオ)鎮守府の方に深海勢力が寄り付いているらしく、ロシア艦のみでは防衛が難しいため、『護国の乙女』による所属国の縛りを受けない響に召集がかかったらしい
ならそんな縛り外しちまえねぇのかよ
大和とか派遣しろよ
大和なら練度半減しても十分強いだろ、
「取り敢えず、大本営からの召集ってことは」
「ほぼ強制だな、幸いにしてこの鎮守府は駆逐艦に充実している、戦艦も扶桑が増えた、軽、正規空母達もいるからマンパワーが足りない、と言うことはあるまい」
「うぅ、ん、やっぱり本人が望むか否かだね、そこに尽きるよ」
俺は書類を『要他者判断』の箱に移そうとして
長門に止められた
「結局はそうなるか…提督、今だけは無礼を許してもらう、
お前はバカなのか!」
「ふぉっ!」
「大本営からの召集を断れる筈がなかろう!取り潰されにでも行く気か!」
怒鳴られてしまった
「流石に、、耳が、、」
「っと、すまない、力を入れ過ぎた」
「いてぇ、、まぁ、とりあえず本人に意思確認はしないと行けないよ、それくらいしないと仁義に関わる」
「ほう、仁義と来たか」
「そうだよ、、んじゃ駆逐艦寮に電話をかけるよ」
俺は内線で暁型四人を呼び出した
「急に呼び出しってどういう事?」
「司令官、どうかした?」
「もしもの時はちゃんと頼ってね?」
「なのです!」
あぁ〜癒される〜、違った
「実はな、響に、大本営から召集がかかった、転任だそうだ、転任先はロシアのウラジオ」
「へぇ…それで私たちを」
「響が居なくなっちゃうの!?」
「響、こっちの方は任せてね」
「どうにかならないのですか?」
「残念ながら、ロシア側に深海勢力が増加している、防衛維持が危険だそうだ、護国の乙女の影響で力を万全に使える日本艦娘は少ない、ロシア艦出身のガングートとタシュケントだけでは各鎮守府に戦力が足りない
日本艦娘は、占守、響
ドイツ艦はグラーフツェペリン
三種の艦に対して召集令が出ている」
いずれもロシア国籍を取得している艦故に、護国の乙女の影響で力を削がれることがない、が
それでも艦隊の満足には足りないし
駆逐艦2、海防艦1、戦艦1、空母1
という特徴のない編成では特化運用できない
圧倒的な制空値を持つヲ級フラグシップや怪物艦レ級ともなれば苦戦必至、更には戦艦達と戦えば砲戦火力で押し負けて大破する可能性が高い
それでは夜戦の雷撃という最大威力の攻撃を活かせない
それについては本人達の練度次第だが
行けるか?と言われれば疑問だ
「響、お前が行きたくなければ俺は断る
今直ぐとは言わないから、三日で決めてくれ」
俺の言葉に、響は首を横に振る
「司令官、優しさは時に残酷だよ
司令官はもっと自分の性格を理解したほうがいい、、そして、ごめん、みんな
私は行くよ、ロシアに」
「そう…せっかく艦娘としてまた会えて、ブラックも乗り切って、ようやく笑い合える時間が来たのに、またお別れなのね…」
「安心して、こっちは大丈夫、だって私がいるじゃない!」
「第六駆逐隊は不滅なのです!またいつか
司令官さんと一緒に、みんなで笑える日が来るから、それまでのお別れなのです!」
他の二人は概ね肯定的な答えだが
暁は、否定も肯定もできないようだ
「俺が言えた義理ではないが、本当にどうにかして断る手段を探すことも」「提督」
「長門っ」
「それ以上は無粋だ」
「っ!、、仕方ないか」
ずっと黙ったままだった長門が俺を制し
「行くなら用意はある、深海勢力の少ない海域を通って移動し、航続距離の長い艦を護衛に付ける計画である
との事だ、
航続距離の長い高火力艦による護衛、これが実施されるかは怪しいが、自分の身も守れないようでは黒杉……んんっ!創海鎮守府ではやっていけないからな
期待しているぞ」
「俺からも頼む、ロシアの出島鎮守府の方にも連絡は入れるから、お願いする」
俺と長門の言葉に、恥ずかしがるように帽子をかぶり直した響は、
「任務、了解したよ、響
これより転任準備に入ります」
声はいつもどおりに、でも
表情は少し笑いながら、
そう答えた
「今からならまだ間に合うだろう、提督
壮行会の用意は出来るな?」
「まぁ待て長門、出発は五日後の8/29金曜だぞ、今日壮行会なんてして、あと四日はどうするつもりだったんだ?」
「……忘れていた」
「バカなんだな?」
「司令官、今までありがとう」
唐突だなオイ!
俺は長門のために左を向いていた顔を正面に戻し、響を直視する
「今まで、よく戦ってくれた
今度はウラジオで戦線を支えてくれ、略式だがこれにて、暁型駆逐艦、二番艦、響を解任とする、以後は長時間の移動に備えて待機、十分に英気を養え」
「クスッ…慣れてないね、司令官
でも、しばらくのお別れだ
しばらくだよ?ずっと会えないわけじゃない、それを誤解しないでほしい」
響の目が、俺を射抜く
「私は司令官の指揮を信頼している、だから、司令官の出した命令なら、安心して従える
私の第二の故郷である国の救援なら、私は志願してでも行きたいけどね」
笑いながら言うことかそれ
「それでは解散、、暁は残って」
《了解!》
暁以外の全員が退室した後、
俺は暁と向き合う
「暁、お前は反対か?この異動に」
「反対に決まってるわ!姉妹の一人だけを引き離すなんて!」
仕草に怒りが透けているからよくわかる
「わかった、ではお前にチャンスをやろう
改二、これだ」
俺の言葉を理解できなかったらしい暁が一瞬停止して、直後に否定するようなジェスチャを取る
「無理無理無理!改だって発現してないのに!改二になんてなれないわよ!」
「前例は?実証は?」
俺の煽るような言葉に、露骨に反発する暁だが、実際無理だ
「無理に決まってるじゃない!今まで改二を発現して従えられたのは改の制御から時間のたった高練度艦娘ばかりなのよ!?」
暁が怒声をあげるが、
「それがどうかしたか?
お前がそれを成さないという確証はない
あえて非情になるが、お前が響のロシア行きを阻止するには、お前がロシアに行っても響以上の戦力になることを確信させる必要がある、それだけの力が必要だ」
「改までならできるかも知れないけど!改二は次元が違うって言ってたじゃない!」
「そうだな、だがそれ以外に現実的に暁自身が取れる手段はない」
ロシアに行くのは響自身の決断なのだから、それを変えるだけの決意と力を示さねばならないと
告げる
自分でも、下手なブラック提督より酷いとは分かっているが、それでも暁が願いを叶えるためには
暁自身が覚醒するしかない
だから、そう告げるのだ
「…わかったわよ、!四日以内に暁改二発現、やってやろうじゃない!」
暁は怒りオーラを纏って、、というか
『かすんぷ!』と肩上に書いてあるような気配を出しながら去っていった
まぁ改二発現なんて相当高練度でもなければ出来ないし、そもそも資源の消費だって大きい
改までならともかく、二は工廠妖精が艤装の自壊危惧して止めるし、、そもそも単純な話
改二を制御するのは怒りや憎しみではないのだ、
理性と意志がなければ改二発現は出来ない、その前の衝動に負けて暴走するだけだ
その場合の被害もパワー型の戦艦が必要なほどではない、
今やるべきは無闇に嘆かせる事ではなく、何か目標を与えてそこへ邁進させる事で悲しみを誤魔化すこと
そのついでにあわよくば新たな力を得る
完璧な作戦だ
暁には少々の負担が掛かるからケア必須だが、、取り敢えず毎日ちゃんと艤装メンテをしてやろう
何時間でも待っていられるんだから!
今回は全体的に第六駆逐隊メインのお話
響ちゃんの長期出張のお話でした
600話記念番外編は
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過去編軍学校
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……