戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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扶桑中の幸

暁がヤベェ……のは当然だが

それでも沈まないように艤装は修理する

 

俺が直さなくてはスピード的に間に合わない

 

「よし、修理完了」「ありがとう、暁

出撃するわ」

 

もはや定型文さえ使われない…だと、

まぁ、仕方ないか?

 

「流石に主機を酷使しすぎたようだな

すまんアイヴィ、島風」

[それ私に謝ってるの?]

 

「あぁ、そうだけど」

[謝らなくて良いよ、私は使われてこそだもの]

 

島風がプロ意識に目覚めていた…

 

[頑張ってね、暁]

[月並みだが同意見だ]

 

「さぁて、、なにをするかなぁ」

 

やる事がない、俺自身の仕事はとうに終わってしまったし、、

夕食にはまだ時間がある

 

さて、

 

「鎮守府巡りでもするかぁ…」

 

俺は、とりあえず鎮守府の建屋内を巡って建屋の傷みや艦娘の精神状態などを観察するムーブへと入った

 

悪いか?

 

「最近、あんまり話せてないけど

僕の扱いが悪くないかな?」

「時雨っ?どうかしたか?」

 

「いや、なんでもないんだ、ただ無意識にこう言いたくなったってだけで」

 

うーん、理解不能

 

「わかった、問題ないなら良いんだ、

時雨かぁ、、扱いが悪いってどう言う事だろ?」

 

ぼんやり歩きながら考えていると

 

「ぴょーん!」

「のわっ!」

 

後ろから飛んで来た卯月に帽子を奪われてしまった

 

「駆逐艦ってなんで俺の帽子を被りたがるのかね?」

 

「知らないぴょん!でも良い気分になれるぴょん」

ぎゅうっ、と俺の帽子を抱きしめて飛び跳ねる卯月…お前は本当にウサギなのか、、

 

月の……ウサ、いやこれは辞めておこう

なにかイケナイ気配がする

 

具体的には少女向け漫画で全裸晒したり主人公以外全員死んだりする気配…

 

「くんかくんかすー、はー、くんかくんか」

 

お前そんな紳士ムーブすんな

 

「返せよ、ほら」

「もらってってあげるぴょん!」

 

「あっちょっと待ておい!」

卯月はどこぞへと走り去っていった、

 

駆逐艦のテンションに当てられて疲労状態の俺にはそれを追う勇気はなかった

 

俺は不幸キャラじゃないはずなのに

無性にあのセリフが言いたい……

「不幸だ……」

 

夜になり、

『やせんだいすき』な誰かがそわそわし始める時間、20:00

執務終了、、はもうとっくに終わっているので、艦娘たちの元を回ってみたり、暁に同行したりしていた作業を終了した、、

 

「しっかし、卯月から帽子取り返す時に結構走ったからなぁ、汗ヤベェ」

 

手に汗握ってる訳ではなく、実際に汗が出るくらいの時間、卯月の捕獲に費やしたというだけの話だ

 

「全く…まぁ良いや、風呂入って寝よ…」

 

執務室にはないが、一応提督私室に、ユニットバスはあるため、それを使うことにした

 

普段は普通の大浴場の男湯(艦娘が使うため常時湯はある)だが、わざわざそちらまで行くより早い

 

 

30分後、

「は、ふぁ……、マジか…俺がこの時間程度で、眠い…」

 

部屋に入って、布団を敷き

枕を叩いて…ふす、という気の抜けた音に安心して…

 

「そうだよなぁ、枕ってのはこう……ふそう?」

そうだった!約束あったんだ!

 

かんっぜんに忘れてた!

 

 

全力で(夜のためニンジャウォークで)走る羽目になるのだった

 

「扶桑、いるかい?」

「…提督ですか?」

 

「あぁ、失礼するよ」

 

「ちょっ、提督っ、あっ…」

 

布団の上で座った扶桑は何故か風呂上がりと言わんばかりの浴衣で、、

 

薄暗い灯火は二人の間に陰を落とす

 

「ていとく、急に入っちゃ…」

「扶桑、、その」

 

「えぇ、私も忘れていました、

お話の約束がありましたね…」

 

その恥じ入るような表情は、

俺の理性を酷く揺るがした

 

ごくり、と唾を飲む

 

「提督、いま明りを付けますから、きゃっ!」

 

持ち前の不幸でも発揮したか、足を滑らせて、俺の方へと倒れてくる扶桑を受け止める

 

「あっ…提督」「大丈夫かい?」

 

うるさいほどの心臓の音が、伝わっていないか心配だけど

今は格好をつけておく

 

「殿方の……だめよ…そんな…」

 

扶桑が何か呟いているけど、上手く聞き取れない

 

受け止めた扶桑の身体はとても温かくて柔らかい

 

虫が花に誘われるのは、きっとこんな気分なんだろう、身を滅ぼすとわかっているのに、手を離せない

 

「提督…」

潤んだ目でこちらを見上げる扶桑の声が聞こえた、その瞬間に、俺の理性は音を立てて千切れ……なかった

 

「落ち着け扶桑、まず俺はちょっと首吊ってくるから」

 

「ダメですっ!提督こそ落ち着いてくださいっ!」

「ぬぉおっ!自分の指揮する艦娘相手に!邪な感情などっ!」

 

「っ!///」

「ふぎゅっ!」

 

パッと、手が離され、同時に急速に動いた体勢を制御しきれず、転ぶ

 

「ぉおおっ、、鼻があっ……」

 

「ていとくっ」

[あーあ、ヘタレるから…]

[提督は浮気なんてしない提督は浮気なんてしない提督は……ブツブツ]

 

[あ、あの、川内さんが病んで…」

[それは気にしないのが五航戦流、良い?五月雨ちゃん]

 

[???やめちゃうの?]

[島風ちゃんは妙に進んでる考え方をやめないと…提督のヘタレ、バカ、えっち]

 

大和の妙に心に響く罵詈雑言はなんなんだね一体

 

[せっかく戦艦組がほかの声を抑えてあげてたのに、そこは押し倒して良いのよ

扶桑さんも若干受け姿勢だったし]

 

[臨戦体勢でしたね…]

 

戦艦勢は何を察してやがるのさ

 

「打っちゃっただけだから大丈夫だって」

「鼻は大動脈もありますから危険です、一応でも医務室に行きましょう」

 

「本当に大丈夫なんだけどなぁ…」

 

ちなみにそのあと、里見中尉に笑われた

曰く、不幸は自らを呼ぶものの元へと現れる

そうで、

 

「全く…酷い話だよ……」

 

「提督、大丈夫?」

「大丈夫だよ、ってか北上さん起きてたの?」

「大丈夫ならいいけどー?、北上様は夜更かしくらいなんともないのさ」

 

「……本当にそうなら良いんだが」

 

ちなみに翌朝、北上は寝坊した




タイトルは、ふこうちゅうのさいわい と読みます

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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