戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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オータムステイ

「さぁ、、デイリー任務だ

建造を行うぞ!」

「りょうかい!」

 

俺の命令で妖精たちが動き始める

ドックの建造スペースでガチャガチャと何やら組み立て始める音、

 

「どうするー?深海からもきてるよー?」

「いれちゃうー?」

「やめとこーよー」

「おもしろそう!」

「でもでもー!こっちの方がすごいよー!」

 

なにやら騒がしいが…なにが起こるのやら

 

しばらく待って

「出来たよー!」

妖精が呼びにきたのでドックに行く

そこにあったのは

 

「マジかよ…あきつ丸の制服と艤装じゃねえか」

 

灰色の独特な制服

陸軍装備だ、間違いない

 

モノクロ迷彩が由来らしいが、彩度がないのは年頃の少女の服装としてどうなのかとは思う

 

いや、本人がそれで良いなら良いが

とにかく陸軍系の艦娘、正確には船娘(あきつ丸は陸軍特殊船、丙型船であるため)の艤装が出た以上、大本営を通して陸軍に連絡を取らねばなるまい

 

「大淀!大淀を呼べ!陸軍に連絡だ!」

 

俺は艤装を出撃ドッグにおいて工廠を離れ、執務室へ移動した

 

「大淀!」

「はい、ここに」

 

「本営に連絡だ、本日のデイリー建造

あきつ丸の艤装が出た」

「!陸軍の艦娘…了解しました、」

 

大淀は早速報告書の内容を考え始めたようだ、左手のボールペンと右手のダイヤルが全く別の動きをしているあたり素晴らしい

やっぱり器用な娘なんだな

 

大淀が大本営に連絡している間

俺はあきつ丸の艤装を把握するために工具を準備していた

 

ちゃんとユニットメイクを作らないといけないし、作例の少ない陸娘の艤装故に満足なメンテができない、なんてなったら艤装技師の名折れ

完璧に仕上げてみせる

 

「提督!報告完了しました、

大本営から、『至急適合者一名を派遣する、実機でのデータを収集されたし』との事です」

 

「えっ、あきつ丸の適合者くんの?

マジか、ついに建造配備か…」

 

建造配備は普通の人間を素材にするというなかなか業の深いものだ、ドロップのような

どこからか現れる

というような物でもなく、ちゃんとした過去と現在と未来を持った人間を『艦娘』という概念に押し込んで潰してしまう行為に他ならない

 

だから俺はできるだけ避けていたのだが

 

大本営から送られてきた『あきつ丸』適性者についてはどうしようもない、あきつ丸の艤装を適合してあきつ丸を建造する、それをしなければ背任になってしまう

それは俺にとっても、適性者側にとっても同じだ、こちらの一存でどうこうはできない

 

「俺のメンタル…持てよ…」

 

大淀は明日にでも送られてくるというが、明日に送られるはずはない、大本営とてちゃんとした組織だし、なにより人間としての最初にして最後の任務なのだ、艦娘となれば解体か轟沈まで終わらない戦いに巻き込まれてしまう

その前に悔いを晴らすための時間は与えられる筈だ

 

こちらとしてもあきつ丸の歓迎会と、人間としての適性者のお別れ会を準備しなくてはならない

艦娘の建造とは、出会いとは

別れと常に表裏一体なのだから

 

「資材は十分だが、 勲章、設計図は不足

ネジは余裕がある、

バケツとバーナーはあるが売れない

さて、どう費用を捻出するか」

 

多分俺がポケットマネーで補う事になるのだが、それはまた別の話、最終的にポケットマネーでも

それ以外のルートを確保しておかないと、いざという時に監査で不当に私財を投じていた、と言われてしまう可能性も拭えないからだ

 

さて、こんな時に軽巡以上の艦娘は出払っているし、駆逐に策が出せるとは思わない

 

いや頭の回る駆逐も否定はしないが

 

あきつ丸かぁ、、陸軍系の艦娘は

俺鎮守府ではあんまり重視していなかったなぁ

大発動艇結構積めるし

艦種のせいで東京行けないし

 

弾薬燃費悪いし……

 

いかん、辛いことを考えてた仕方がない

明るいことを考えよう

 

秋津洲が喜ぶかな

それとも名前が被るって嫌がるかな?

まるゆの方が喜びそうだが

 

陸軍属は頭が筋肉で出来ている

とはよく聞く話だが、

あきつ丸もまるゆもそこまでオカシイとは思えない

 

なぜかと言うと、彼女らは協調性があるから、話し合い、わかりあい、手を取り合えるから

そこに相互理解の壁があったとしても、それは回り込むなり、掘り進むなりで越えられる壁に過ぎない

 

政府高官や各軍の偉い方のように自分の腹の肉と手元の金だけで物事を考えず

先を見据えた決断、仕事ができるし

手元の資料の数値だけで優劣を見比べるのではなく、場合に合う武器(たいおう)を躊躇なく使()える理性もある

 

政府高官のシェルター潜りは潜水艦の素潜りより上手だとよく言われるが、まるゆの潜水はお世辞にも上手いとは言えない

連中もモグラ輸送に参加してくれれば

運べる資材も大幅に増える

とはとある提督の言葉である

 

実際に参加したら一切動かずに安全地帯への退避を命じるばかりで働かないだろう

と、ここまででワンセットのジョークである

 

まぁ偉い方をディスるのはここまでにして

今はあきつ丸の使い方を考えよう

データ取りである以上、実験出撃は行う、しかし練度が低いあきつ丸では望ましい結果は出ないだろう

 

つまり、練度上げ

しかし、それには燃料消費を増やすという諸刃の剣が付いている、俺の額が剃り上げられる前に

練度限界になってくれることを期待する

 

「さぁ、宴会の準備…とはいかないか

横断幕でも作ってあげようぜ」

 

俺は、隣の大淀に笑いかけた




あきつ丸が来るまで待つ
がタイトルの意味になりますね
(例によって超訳)

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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