戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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再会とお別れ

「自分、あきつ丸であります

艦隊にお世話になるであります…って言う事になるんですねぇ、私」

「その時にはもう君ではないんだけどな?あきつ丸の適性者が君だとはね」

 

「えぇ、わたしも間宮か伊良湖とばかり思っていました、巫女さん」「違うっての」

 

巫女さんじゃなく神巫さんだって

何回いってもミコさん呼びを変えない

 

頑固な事だなぁ

 

派遣されて来たのは

俺と同期卒業の艦娘候補生

飯島 明菜(イイジマ アキナ)

大本営の食堂勤務をやっていた嬢だ

 

彼女の作るご飯は料亭の様な雰囲気を持つ間宮とは趣が違う、鳳翔(家庭)寄りの味なんだとか

 

優しく、甘い性格に溶かされて

自分のところの艦娘をおいて薬指を狙う提督もいたとかなんとか

 

卒業が俺と同じ年ということは

つまり俺より一つ上の歳「こらっ!」

 

なんて察しのよさ

 

「もう!私は22です!」

「いやどう考えても」「飛び級です!」

 

「日本に飛び級制度は」「あります」「マジかよ」

ポニーテールの黒髪を揺らしながら自信満々に言い切る明菜

嘘くさい話だが、こうまで言い切られると信じるかと迷う

 

ちなみに、後で聞いた話によると

深海棲艦登場以後は人員の払底から規定の歳を待っていられない軍は学徒徴兵を始めたものの

 

提督達が頑張ってくれたためにそこまで逼迫した状況ではなくなり、優秀な人材を選ぶ余裕が生まれたため

教育機関に飛び級制度を導入し

優秀な人材ほど早く確保できるようにしたらしい

 

俺は知らなかったが

「飛び級なんて一年に一人いるかどうかですから、知らなくても無理はありませんよ」

 

[私は知らなかったなぁ〜]

[瑞鶴はどう?]

[私が知ってるはずないでしょ?]

[そうかぁ……]

 

[あの、私知ってました」

五月雨知ってんの?!

[私の適合者の方に、飛び級の方がいらっしゃって、23歳から15歳に戻ったーって仰ってました]

 

なんだその嫌や喜び方…

あと五月雨15歳だったのか

 

[私の年齢ですか?、正確には把握できていませんけど艦齢なら…][ストーップ!提督っ!純粋な五月雨ちゃん操って何言わせてんの!]

 

川内が五月雨を抑えて後ろから抱き込む

側から見ると物陰に引きずり込まれる少女という犯罪的絵面にしか見えない

 

[ちよっと提督ー?それは失礼じゃないかな〜?]

[お前が何を考えたのかは知らないが失礼とは心外だな]

 

[提督の心が…完全に閉じてる……]

閉心術!ならぬ限定リンク閉鎖で相互の感情をカットしたわけだ

これなら心を読まれることはない!

 

[川内さん離してください…]

五月雨が涙目になってる

 

流石に怖かったか?

[ほら、大丈夫だよ、落ち着いて…よし]

 

頭を撫でる、ついでに川内も撫でる

[ゆひぃ〜]

川内…?なんだその媚びるのが下手な猫より雑な鳴き声は

[えへへ…]

五月雨が頭上を見上げながらニッコニコになっている、雨上がったなこれ

 

「で、提督、私…どうしたら良いんでしょう、艦娘科でも間宮(非戦闘職)コースでしたから、あんまり戦闘は学んでいませんし」

「構わないですよ、あきつ丸は戦闘力の高い艦、適合すればある程度扱えるようになるのは道理です」

 

「なるほど!です」

可愛いなこの人、いやこの子

 

普段は歳下って舐められるのを防ぐために毅然とした態度なのに好感度高い人が来ると部屋の鍵とかまで開けてくれるとか

 

やめておいたほうがいいと思う

 

せめてもう少し警戒しようぜ

男なんてみんな狼、クズ、霞に踏まれてブヒブヒ鳴いている提督くらいしか安全な奴はいない

 

鳳翔さんのファンは属性的に新たな星として祭り上げそうだ、ロリ、という程ではないが若い母親属性持ち

これに目覚める人も多く

雷にダメにされていた提督が大本営に来て飯島にダメにされ直してた

なんてよく聞くおはなしである

 

つまりそれだけ大勢の提督が雷にダメにされてるという話でもあるんだけど……

 

まぁいいか

ダメにされてる側の提督は幸せだろうし、提督をドロドロに溶かして自分に依存させてる雷も幸せだろう

 

極論雷は『自分がいなきゃ何もできない生物を生産する事に生きがいを感じている』

と表現できると思う

 

提督もちゃーんと頼ってあげないと不安がって仕方がない辺り、共依存関係の構築が目的なのかもしれないが

 

 

雷にダメにされて艦隊に冷んやりした目を向けられる提督のその先の仕事は考えていないのか?

 

「んで、飯島さんの場合は

最後の晩餐、食べますか?作りますか?」

 

「私は最後まで、作る側で居たいですね

ほら、私『飯島』ですし」

 

にっこりと微笑んで髪を揺らす飯島さん

なぜかスーツや礼服よりエプロンや和装が似合うと思ってしまう彼女は

やはり、自分の最期も笑って過ごせるようだ

 

「記憶がなくなってしまうのは残念ですが、この時に対してはずっと覚悟してきましたから」

 

重々しい言葉を、しかし平然と放つ

「あきつ丸になっても、料理の腕は無くならないと良いですねー、わたしの半生を費やしてますから」

 

「いきなり空気が…重い…」

 

「うふふ……どうでしょう?

さぁ、ご命令を、提督」

 

こちらへ笑いかける彼女は

どこまでもまっすぐだった

 

「………はぁ、あきつ丸の艤装適合試験を行う

翌午前10:00に執務室に」

 

「了解しました、あきつ丸、艤装適合試験のため、翌午前10:00に執務室に再集合します」

「…以上、解散」

「はい」

 

彼女は最後まで笑って去っていった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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