戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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貴重な時間を

「最近はレ級といい空母棲鬼といいあきつ丸といい新入が多いな…」

一回親睦会や教習でもやるか?

練度の確認や実戦形式演習

 

やりたいことは多い

 

戦力の確認は急務だな、自衛できるかどうか、戦力としてカウントできるか

性格によってはだが、ステータスとしての数値評価は低くても強い艦や

逆に焦りすぎの気があったり、攻撃に忌避感を覚えるなどの理由で戦力としての運用が難しい艦娘もいる

 

そういう艦娘は基本的に評価と実際数値との乖離を無視される傾向にあるため、大きな負荷がかかっていたり、戦力として過小評価されたりと非効率的な環境にあることが多い

 

それを避けるためには

実験、演習、実戦の三つを繰り返すしかない

環境を変えて評価を繰り返し、近似値を取る、それができなくては評価値の乖離や環境の偏りに騙されてしまう

 

艦娘の能力は正当に評価しなくては

提督側が危険にさらされることもある

 

まぁ一旦それは置いておいて

 

「今日が最後になるのか…大本営第二食堂の覇者の飯が食える日の……」

 

第二食堂は業務的な保存食や軽食、家庭料理がラインナップにある士官食堂のなかでは異色の場所だ

 

ちなみに第一は高級料亭のような綺麗な品を、第三は弁当や惣菜の取り扱いをそれぞれ行っている

 

将官や外来は第一、一般士官や提督は第二で食事をとり、第三で弁当などを買って帰る、という流れがある

 

ちなみに、居酒屋『鳳翔』本店は大本営の外であり、第二食堂ではないが、たまに鳳翔さんも第二食堂にいるため、鳳翔食堂と呼ばれることもある

 

「何考え込んでんのー?提督ー」

後ろから突然話しかけられる

 

このゆるゆるとした声は……

北上、だよな?

 

「ん?北上か………あきつ丸の艤装が建造された事は知ってるか?」

「あ、それ?聞いたよ〜…で?」

 

「で?って…まぁいい、それで大本営から送られてきた適合者が、なんと大本営第二食堂の覇者、飯島明菜さん」

 

「え…ここ二年くらい前に来たっていう?一般職員じゃなかったの?」

「彼女は艦娘候補の卒業生、俺と同じ年の卒業だ、ちなみに彼女は非戦闘職コース」

 

北上の方に向き直り、

驚いた

 

彼女の格好はノーマル北上様が緑+濃緑

スーパーも同じだが、ハイパー北上様(仮称)になるとクリーム色?を中核としてラインや重ね部分に緑

という明るい色に変わるのだが

 

わざわざ艤装を装備して来たその外見は

改二では惜しげも無く晒されていた健康的なお腹を黒い上着で隠して、スカートを膝丈に変えたオリジナルらしき服装、だが

 

原則として制服艤装を使わずに武装のみをつける事はできない、ジョイントとかではなく、艤装の構造的に人体にモロに響くショックブラスト等の反動を軽減するためにそうせざるを得ないのだが

 

しかし、今の北上は制服以外に艤装をつけている

私服で艤装をつける時は秋刀魚漁やクリスマスなどの戦闘をあまり目的としていない時か空間に満ちるエネルギーが非常に高い時だけ

 

環境が揃えば限定的に可能ではあるが

時期が一致しない

 

「前に深海の駆逐艦がくっついて来たでしょー?」

「………あぁ」

「あの後ね、ずっとくっついて離れないからむりやり引き剥がそうとしたらこうなったの」

 

「………………意味不明」

「多分服に融合してんだねー」

 

俺は理解を諦めた

 

(何があったら駆逐艦が艤装になるのか…

なぜその艤装を平然と装備しているのか

なぜ北上はもう改二なのか

 

その答えはただ一つ

北上が世界で初めて深海に適合した艦娘だからだ!)

 

突然艤装から現れたスーツ姿の妖精が私が神だ!と言わんばかりのポーズで叫ぶ内容も理解できない…

 

「提督?おーい……おりゃ」

「ぬおわっ!」

 

いきなり抱きついて来た北上からむりやり離れる

「あっ、もう…失礼だよー?」

「お前のが失礼だわ!いきなりそんな…不適切な接触はよろしくない!」

 

「…嬉しくなかった?」

「………ノーコメント」

 

流石に最近のイベントラッシュで慣れたのか、川内や瑞鶴もいちいちぎゃあぎゃあと騒いでこない

 

「まぁ、いいや

とりあえず提督、コレどうにかならない?」

 

シンプルながらに生地の良さげな黒いカーディガンを軽く引っ張りながら、北上が笑う

「いや〜、コレどうも制服にくっ付いてるせいか脱げないんだよね、あ!単品で脱げないってだけだからねー」

 

ゆるゆるとした口調で釘を刺してくる北上、実際に脱がなかったら色々困るだろうから解るよそのくらい

 

「制服ごとなら脱げるのか…ってかそれ

もう制服艤装って事で登録偽装しとけよ」

「えぇー?外してくれないのー?

せっかくあの子がくれたのに」

 

「ん?今」

「お願い聞かなかった事にしてなんでもしますから」

「なんでもするって」「言ってない」

 

「じゃあこっち来て」

「だからなんでも」「しなくていいから」「はーい」

北上ってこの会話のテンポが良いよね、ゆるゆるしてるのに調子よく会話が進む

 

俺の方に寄ってくる北上、を

「よーし…ゲット!」

左手で抱きかかえて、右手で背中を押さえる

「わっ!提督?」

「………外せないか」

 

左手の機能が発動したりしないかと期待したんだが…今考えたら俺単なる変態や

 

「提督、なんで大本…営……の」

 

そして、事件は起こった

時雨が入ってくると同時に、空気が固まる

「…………提督、君には失望したよ…」

とてつもなく冷え切った目でこちらを見てくる時雨、

同時に時雨に同じくらい冷たい視線を叩きつける北上

 

「何?どうかした?」

 

「いや、なんでもないよ北上さん

ただ公序良俗に反する行為があるなら僕はそれを注意せざるを得ないだけさ」

 

「公序良俗…ねぇ?風紀を乱すと?

提督にそれを言うならお門違いとしか言いようが無いよ、自分の妹にでも言ってみたら?」

 

2015年の水着のことを思い出したか

嘲るような調子で調子よく良い切る北上

 

おそらく駆逐艦らしからぬ色気の持ち主である村雨と夕立を引き合いに出しているのだろう

 

「僕の妹を…バカにするな…」

 

怒りを前面に出してまで北上を黙らせようとしてきた時雨、その先は地獄なので一旦とめる

「ハイハイ二人ともー、一旦ストップだ」

 

「提督ー?」「提督…」

 

「殺気立つの止めにしようぜ?

艦娘同士で撃ち合うのはミーティングと演習弾だけで十分だ」

 

二人を引き離し、北上を部屋に置いて

時雨と一緒に出る

 

「で?何があったのかな?」

「……なんであの人がいるんだい?」

 

「あの人?…あぁ、飯島さんか

彼女はね」

 

「彼女は?」

 

「あきつ丸の艤装適性者なんだよ」

 

何回この話をすれば良いんだろうか

「………………そうか…わかったよ」

 

静かに目を伏せる時雨、

彼女も察したのだろう

あきつ丸の建造、それは別れを意味すると

 

「じゃあ、僕はもう帰るね」

 

さっさと行ってしまった…いいのか時雨、まだ時間はあるのだが

 

「提督ー?」

ガチャ…と控えめな音と共に、ドアが開き、北上が顔を出す

「ん?どうした?」

 

「もう行った?」「あぁ」

俺の答えを聞くと、そーっと出てきた北上は

 

「んじゃあー私も帰るねー」

 

とだけ言い残して超高速で歩き去って行った

なんだアレ?競歩?

 

[提督は無防備なんだよねー]

[バカバカバカバカバカ]

 

[革に包むと書いて?][カバン!]

[正解」

 

こんな時でもアンサー能力は失わないのか

流石だな川内……

 

「何が正解なんですか?」

頭の中に集中して会話を始めようとした瞬間、後ろから唐突に声をかけられて驚く

 

「?ビックリしました?」

 

そこに立っていたのは、飯島さん

まさしく話題の中心だった

 

今昼だから、明日の朝まで12時間+10時間で22時間の残りしかない人生をエンジョイしているらしく

鎮守府を回ってきたのだそうだ

 

まぁ、エンジョイしなきゃ勿体無いよな?

だって(相当な例外(転生案件)でも無い限り)人生は一回だし

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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