戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ランチタイムは華やかに

「それで、わざわざ昼食の時間を伝えにきてくれた、と」

「自分が楽しんでやっていることですから」

 

にっこりと微笑みながら

そう言い切る飯島さん

 

「それに、私は艦娘科を卒業した後も

なかなか適合する艤装がありませんでしたから、間宮さんも空きがありませんでしたし、鳳翔さんは適合できませんでした、伊良湖さんは…艤装も建造されてませんし

 

あっ、でも戦いたい訳じゃないんですよ、蒼羅君?」

 

「いやそれ学校」「あっ…もう」

 

「蒼羅君、とは久方振りな呼ばれ方だ

巫女さん以外では

いつも提督、や技師、と呼ばれていたから」

 

「じゃあ私は何でしょうね?調理師かしら?」

「それはどうかな?」

 

二人で笑い合いながら、廊下を歩く

「間宮さん、炒飯とワンタンスープ、サラダはおまかせで」

「はーい、じゃあすぐ作っちゃいますね」

 

「私は……そうですね

ここのメニューはどれも美味しそうで、迷っちゃいますね」

 

「間宮さん頑張ってくれるからな」

 

いつも美味しいと言われているし

そんな時の間宮さんの笑顔は素敵だし

むしろそこまで含めて美味しい

 

「技術だけじゃありません、艦娘にも、提督にも、味わって食べてもらいたい、美味しいって言って欲しい、って感情や愛が伝わってきます」

 

あぁ、なるほど……

同じ技能持ち故の理解ってやつか

 

「………」

 

間宮さん恥ずかしがって隠れてるし

 

「すいません、私は……サンドイッチと紅茶で」

なんかいつだかを思い出すチョイス来た

 

「…はい、承りました」

 

間宮さん目が泳いでるよ

 

「うふふ、巫女さんにバレたくなかったみたいですねー」

 

「?なんで俺?」

「………鈍感は罪です」

 

「???」

 

[[バカバカバカ]][鈍感…ヘタレ…]

[頭の回転おっそーい!][[提督…]]

 

[ええい騒がしい!数が多いんだから静かになさい!]

 

とりあえず駆逐艦二人と川内を黙らせて、瑞鶴には空気を読ませ、睦奥と大和は勝手に黙った

 

「巫女さんはみんなに好かれてるんですよ?一周して来ただけの鎮守府ですけど、みんなに提督のことを聞かれました、みんな提督のことが大好きなんです」

 

「………」

「提督の昔のお話聞かせてー、とか

提督の学生時代の写真ない?とか、声をかけられるたびに『愛されてるなぁ』って思えます」

 

「……些か以上に衝撃的だ」

 

初耳である

もちろん、俺に直接言いに来るわけはないのだが

 

「うふふ…実は学校の頃も人気高かったんですよ?わざわざ声に出しはしてませんでしたけど、チラチラ見てる子も多かったですし」

 

「…………なぜ?」

「理由ですか?…ほら、自分で言うのも恥ずかしいですけど、艦娘科には美少女が多いですから、提督科の皆さんとかにも、結構その、エッチな目で見られるが多くて

でも、巫女さんはみんなを

『一人の人間』として平等に見てくれてましたから」

 

ええい!そんな記憶消してしまえ!

桑島にアレされた後は人間も艦娘もどうでもよくなって全部木石を見る目で見ていただけだ!

 

世捨て人化してる奴がモテてどうしろと言うんだ!

 

「かく言う私も、その一因でしたよ?

よくコンビニ弁当を食べていたのを見て、お料理始めましたし」

 

「差し入れだか何だかをよく持って来てくれたのはそれだったのか…」

 

階が同じと言うだけで、少し離れている技師科の教室までわざわざ昼食頃に弁当や一品モノのおかずなどを配りに来るのは何故かと思ったものだが

 

技師科以外にも提督科や艦娘科、事務科などにも届けていたようなので、あまり俺が原因という感じはしなかったが…

 

提督科の連中が『間宮食堂のメニューに』なんて言い出したのは俺が原因…ん?もしかして

飯島さんの進路歪めてないか?」

 

「いいえ?お料理を学び始めたのはたしかに巫女さんが源にありますけど、その先は全部私自身が選んだことです」

 

「しかし」

「だって、みなさんが美味しいって言ってくれると、とっても嬉しかったから

だから、ありがとうございます

私に生きがいをくれて、私に楽しみを教えてくれて」

 

「………っ!」

 

真っ直ぐに見つめられてたじろぐ

 

俺の背中に声が掛かる

「提督ーどうぞ」

「…あっ!すまん」

 

結局カウンター前でずっと話していた為

間宮さんの料理の方が先にできてしまったらしい、

俺はトレーを受け取って、

 

「礼を言うのはこっちの方だよ、毎日同じような時間を過ごしていた俺達技師科に、毎日違う彩りをくれた

君のくれた希望が、先輩方の理不尽な命令や居残りにも耐える力をくれたんだ……ってこれはみんなまとめての話か」

 

少なくともビニ弁組には共通だろうな

「提督っ!…って抱きつく流れですよね?

今は無理ですけど」

 

「たしかに、両手塞がってるしな」

 

そのまま空気を流して席をとり

二人で昼食をいただく

 

炒飯を飲むようにがっつく俺を微笑みながら注意して、軽く指を振る明菜

 

自分はサンドイッチを楚々と

どうやってか楚々と食しながらである

 

「「ごちそうさまでした」」

追加で頼んだコーヒーと紅茶を飲み切って

二人でご馳走さまをいう

 

「夕食は私が作りますね、楽しみにしておいてください」

「あぁ、楽しみにしておく

……こりゃ間食できないな」

 

腹はできるだけ空けておかないと…

久しぶりにトレーニングルームのお世話になるか?いや執務あるし…どうしようかな?

 

「よし、じゃあ俺は執務室に戻るよ」

「そうですか、私は艦娘の皆さんとお話ししてきますね」

 

軽く手を振って別れる

 

「……っぁ〜執務だぁ〜」

 

「ふぅ……今日も元気に頑張るずい!」

 

執務室にいたのは…

「赤城……?」

「はっ!提督っ!……見ました?」

「見てないがそこはぞいだと思う」

 

「見てるじゃないですか!それに後輩の瑞鶴にかけてのネタなんです!解説させないでください!」

 

「…………お前はアルトより笑いの才能があるな」

 

「誰ですかアルトって」

「最新の仮面ライダーさ」

 

軽く笑いながら書類を取り出す…ん?

間違って処理済の箱から出してしまったようだ

今度こそ確認して、未処理の箱から

 

これ、もう終わってね?

 

「提督?どうしましたか?」

 

「いや、これ、もう今日の分処理終わってる」

「…あぁ、提督がお話中にすませておきました」

 

「………oh」

 

赤城さんもう事務艦じゃね?

 

「事務艦じゃありません、早く出撃したいからです!」

「なら演習に参加申請とかしようぜ」

 

「したんですぅ〜」

「ガキか」

 

「ガキじゃありません!それは断固否定します!」

 

ムキになる赤城も可愛い

でもそれを言ったらさらに騒がしくなりそうなので黙る

 

「昼食はもうとったか?俺は今からちょっと外出するが」

 

それだけ言って答えは聞かず

そのまま部屋を出た

 

さて、食材と紙テープ…あったとは思うが

横断幕用のクロースも買わないとな

 

龍田ナイス、金銭援助マジ助かる

この人生龍田がいなきゃ早々に詰んでたな

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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