戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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テイルスネイク

さて、買い物を終えた俺は執務室の『隠しもの机』(無駄においてあるテーブル)の下に追加のテープなどを隠し

 

さっさと執務室を出る

 

行き先は、トレーニングルーム

という名目で使っていた本棟2階多目的室、多目的というだけあって何もない部屋だが、一応会議室や机上演習室としても使用される事がある

 

「…今日は誰もいないな」

 

俺は第一種軍装を脱ぎ

Tシャツの状態になり

 

「ふぅ、、はぁ、」

 

深呼吸したのち、柔軟体操を行い

 

体力トレーニングを開始した

 

目的としては腹を減らすという

これだけだが、そのためには体を動かすことが先決であり、どうせなら艤装を扱うために必要な体力トレーニングもやってしまおう

という判断である

 

「ふぅ………………」

肺をギリギリまで空にして、

深く息を吸い込む

 

意識を切り替え、雑念を消す

 

「…………」

 

無言で拳や脚を繰り、仮想敵に攻撃を加えていく

 

とはいえ所詮仮想であり

実体がない的に攻撃を加えてもリアクションが無い、実体がないのはともかくリアクションが無いのは追撃の想定が取れないのと同義、想定外の動きをされないように訓練しているのに想定ができないのは意味がない

 

早々に切り上げて、今度は鉄の棒を用意する

使い道のない古材であり、錆びかけているが、しっかりした鉄の棒材なため、強度は期待できる

 

「し、、オラァッ!」

 

死ねと叫びそうになって慌てて変える

発音は癖になるからな

艦娘が聞いていたら

 

なんらかのストレス発散と勘違いされて心配される可能性もありうる、

それが疑念として残れば

後々において信頼の崩壊を招きかねない

 

そんな恐ろしいことはできない

 

ビビるのかって?俺は安全志向なんだ

すまんな

 

鉄の棒に拳を叩き込み

掴んで投げ、落ちて来たところを飛び蹴り

派手に吹き飛んだ鉄棒がガランガランと音を立てているうちに拾い

再度殴りつける

 

床を傷付けないように空中コンボを決めて、折れたので捨てる

 

正直、鉄材の消費期限が過ぎたものはこんな使い道か、廃材しかないので少しでも有効活用しているのだが

 

なかなか悲しくなってくるなぁ

[それは明らかに重力を無視した空中5連キック叩き込んで言う言葉?]

[当然だろ六連蹴りでも無いんだし]

ちなみに、空中六連蹴りとは

初代戦隊モノであるゴレンジャーのブルーが得意とした技で

敵の体を蹴り飛ばして反動で別方向に飛んでそちらの敵を蹴るという対多数技

 

俺の地上で蹴って吹き飛んだ棒にジャンプで追いついて蹴って

反動で体を反転させて逆足で蹴り上げ地面に足を付けずに一回転して左右連続で再度蹴る

という技とは少し近いが、対多数技である六連蹴りとは違う

 

[ライダーとかならもっと蹴れるし、全然常人技だから]

 

[…その発想はおかしいと思います]

[提督はおかしい提督ズイ…]

[瑞鶴さん言語崩壊し過ぎです]

 

五月雨と瑞鶴まで来たようだ

 

ちなみに艤装は置いて来たので戦艦二人と最速はいない

 

「………………………」

 

再び鉄材の折れた棒を手にして

太鼓でも叩くように構える

 

何を叫ぶかは決まっている

「………音撃打!爆裂強打の型!」

 

左右の棒を音撃棒、烈火の阿吽に見立てて

リズム感をイメージしながら振る

物理的限界ほどでは無いが

かなりのスピードでブンブン振っていると

かなり疲れる

 

ひとしきり振ったあと

最後の両方突きを終えて止まった俺に

声がかけられる

 

「あひゃひゃ……っていうのもやめようか?」

 

「レ級か、どうした?」

 

俺はこんな所に来たレ級が気になったので、とりあえず聞いてみるが

レ級から帰って来たのは

 

「いんやなんでも?普段静かなところが喧しいから来たってだけ」

 

特になんでも無い、という答えだけだった

 

「そうか、すまなかったな」

「気にすんなっての…探してたしな」

 

「…?何を?」「提督に決まってるだろ」

 

「そうか」

なんのために探していたのかは聞かないが

「………提督は知ってるか?

自分が壊れて、沈んでいく感覚を」

 

 

 

「そぅか、知らないか

実は私も知らない、私には記憶がないんだ」

 

「記憶が?」

 

「あぁ、そんなのはとうの昔に艤装に食わせちまった、要らねえ、今要るのは力だってな、今思えばバカな話だけど」

 

カラカラと笑いながら

レ級は語り出した

 

「…私は、艦娘の頃の記憶が無い

私は、人間の頃の記憶が無い、あるのはただ

深海から、全てを滅ぼせと言われた記憶

 

全てを滅ぼす破壊の使者として、戦い続ける記憶だけだ」

 

「そうか…」

「おっと同情はいらないよ?

私はたしかに戦った、その記憶がある、ならそれで満足なんだ、その結果なんでか改フラグシップなんて覚醒したけど

戦い続けたってだけの話だからね」

 

俺は、そうだな

そんな事になったら…俺はどうするのだろうか

 

「でも最近、鎮守府に来て、いや久し振りに帰って、記憶が無いってのが嫌になった

 

自分の姉妹の顔もわからない

自分と仲が良かった艦の顔も思い出せないんだ、朧げな影絵を追い求める事しかできない

 

それを悲しく思うことがあるなんて、思いもしなかった」

 

「………」

 

俺は逢えないだけで

友の名前も顔も、声も性格も知っている

そう考えると、レ級よりも

俺の方が幸せなのかもしれないな

 

「湿っぽい話になっちまったな

提督!なんか明るい話ねぇか?!」

 

「………なら、オレと一戦どうだい?」

 

部屋に入って来たのは

天龍

 

「へぇ…仮にも戦艦最強クラスに対して改二無しで相手になると?」

「やってやるさ…存分に!」

 

天龍が木刀(おそらく調整済みの練習用)

を抜き、レ級に突進する

 

「おせぇな」

 

レ級はそう吐き捨てながらその場で一回転、自ら曲がりくねった尻尾が天龍を襲い…はしなかった

 

「あ、尻尾(艤装)無いんだった」

 

ベシィッ!といい音をたてて頭に木刀がブチ当たり

しかし

 

「提督…こりゃ有効か?」

「…………せいぜい技ありだな」

 

木刀はレ級にまるでダメージを与えられていない、天龍とて、全力では無いだけで

手加減はしていない程度のスピードはあったし、剣道に疎い俺でも分かるほどの見事な一撃であった

なにより面、すなわち頭に当たっている

 

が、しかし、まるで足りていない

ダメージを与えるに値していない

 

それでは攻撃にならない、有効とは言えない

 

「チッ!強過ぎんのも考え物だな!」

 

「私に言われても困るんだが」

 

ガンガンと木刀と肉体を打ち合いながら叫び合う二人が床を破壊する前に止めて、さりげなく注意する

 

「君たち、床が危ないから」「うるっせぇ!」

「つっ!」

 

怒鳴りつけられた

その瞬間に、俺は自重をやめた

「艤装完全破壊するよ?」

 

「うっ!」「!オーボーだぜ!」

 

大丈夫、君はもっと資材に対して横暴な一人だから

 

「わかったならやめてくれ、というか静音性と床強度的に外でどーぞ…おやつ前だからちょっと食堂にでも行って落ち着いてこいよ」

 

俺は二人に、謝る意味も込めて間宮券を渡した




レ級の尻尾ですwww

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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