戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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最後の晩餐……

「やっと、たどり着いた」

 

時間は19:00、夕食前だ

 

そして場所は食堂、一応だが着任挨拶も込みということを考えて装飾は控えている

 

今日のメニューはなんだろな!

と子供のように期待する自分と、これが最後か…と重く受け止める自分の乖離に悩みながらも

大本営にいた頃、士官学校でも、毎日のように食えた食事が今日で食べ納めという事で

 

存分に食べる気の俺は、腹を空かして

食堂の扉を開いた

 

大本営所属だった隼鷹も、赤城も

というか、ここに昔から居た艦娘も

みんな大本営第二食堂の覇者には期待しているようで、みんな食欲をのぞかせていた

 

ちなみに隼鷹は

合う酒を見極める、とかほざいて酒瓶を持ち込もうとした為、瓶は取り上げた

 

その酒?俺の手元に転がってるよ

もう空っぽでな

 

「ひっく、提督さん提督さんっぽい」

 

「まさか俺にまで無理やり飲ませたりはしない…よな?」

「っぽ〜い」

「たよって〜〜ねぇたよって〜」

 

雷が俺の腰あたり(身長差)に抱きついて来る、

 

俺の抱えていた酒瓶を、何考えてたんだかわからないが夕立が奪い取り、雷に飲ませたのだった、雷は無理矢理口に突っ込まれた酒を気道に詰まらせかけて慌てて飲み込み…この結果だ

 

一瞬でこれとは雷が余程酒に弱かったのか

それとも隼鷹の持ち込んだ酒が(少なくとも一本は)めちゃくちゃ強くてそれに当たったのか

 

三本中一本がなかなかの強さだったらしいのだが、雷が一瓶、夕立が一瓶、最後に俺を狙っているらしいのか一瓶

 

おそらく雷が当たったのがそれだったのだろう

 

「私がたよってあげるーぎゅー!」

「………!!」

 

「っぽ〜い〜っぽい!

ぽい、ぽい、ぽいぬ」

 

待て待て待て!おまえそれバイバイ、バイドの流れやめろ!危険だから!視界が琥珀色になっちゃうから!

「ねぇねえ、たよってくれないの〜?

もーっと私にたよってくれていいのよ?」

 

俺にすがりつきながら言う言葉かそれ

 

「今のお前に頼ったら危なっかしいからな、落ち着いてから出直せ」

 

とりあえずいつものように誤解されそうなので雷を引き剥がし、

 

「…ふぇ、、しれいかんー!」

 

あぁまたこの流れか、

「泣くな泣くな泣くな、ほら落ち着いて

せっかくの夕食なんだから、満足できるように笑顔で食べたいだろ?」

「頼ってくれなきゃやだー!

いなくならないで!私を捨てないでー!」

 

きゃあきゃあと喚き始めた雷

………大丈夫じゃないなこいつ

 

「大丈夫だって、おい夕立逃げんな

俺は雷を捨てたりはしない、いいか?

おいそこで待ってろ、

雷は大事な俺の預かる鎮守府の一員

つまりは俺の家族も同然だ、

俺は艦娘を一戦力単位としては見ない、一人の人間として見ている、だから捨てたりはしない」

 

夕立を捕まえておき、雷の目を見る

酒で淀み、濁ったその目には

失うことに対する恐怖が見えた

 

「でも…頼ってくれなきゃ…私は頼られなきゃ…いけないの!…私の実在証明は…頼られることなの!」

 

「………はぁ、いいか雷、お前の実在証明なんてどうだっていい」

 

「……ひっ」

また雷の目に涙が浮かび

「お前はここにいる、外部から客観的に観察して判断された『結果』としてここにいる、だから、証明の『内容』に意味はない」

 

ギュッ、と雷を抱きしめて

ささやく

「雷、お前はここに存在している、俺がそれを証明した、だから、お前はここに確かに存在しているんだよ」

 

「ぁ………ぁぁ…し、しれいかんー!」

 

ぎゅうっ!と抱きついて来る雷、

今度は俺の側が身を寄せている為

ちゃんと抱きついている

 

「落ち着いて、まずは泣き止もうか」

「…うん」

 

「っぽい」「お前は黙れ」

この混乱の元凶は許さん、あとで説教してやる

 

「………青葉、見ちゃいました……」

 

その声が聞こえた瞬間!俺は輝那を抜き放ち…

「クソッ!ドックに置きっぱなしか!」

 

その手は虚しく空を掻くだけだった

 

「ってこの鎮守府に青葉はいねぇっ!」

 

誰だ…誰が言った!

正体によっては口止めで済むがもし煩い艦や面倒な艦であればちょーっとばかり()()()()が必要だ

 

「…残念、私です」

 

厨房からでてきたのは、飯島さん

「声変えてたな?」「特技ですから!」

にっこりと笑う彼女につられて笑いそうになるが、腕の中で俺にくっついて来る雷が泣きそうになる気配を感じたので真顔に保ち、夕立を改めて捕まえ

 

「こいつらに酔い覚ましをやってくれ」

 

「…駆逐艦ですか?…まさか」

 

「俺が飲ませたわけじゃない、夕立が俺の預ってた酒を奪ってな」

 

ワタワタしながら弁解する俺に

苦笑した飯島さん、

 

「えぇ、分かりますよ、そんなアルハラ紛いの事をするわけないですもんね」

 

いつものようににっこりと笑って

「それじゃお食事会、始めましょ?」

 

配膳の手伝いをしているうちに

いつのまにか、随分と艦娘が増えていたようだ、

 

全員揃ったところで

 

「…んじゃー、とりあえず

着席!」

 

号令をかけた俺は、

手を合わせて……

「いただきます!」

《いただきまーす!》

 

目の前の山菜サラダから食べ始めるのだった

 

「うふふー、美味しそうに食べてくれると嬉しいです、たとえ直接言ってくれなくても」

 

こちらを見ながら何か言っているようなので、飯島さんの方に意識を集中した結果、

 

何も聞こえなかった

「ごちそうさまでした!」

《ごちそーさまでした!》

 

ゆっくり食べていたもの、早めに食べ終わるもの、つまみを要求するバカ、それに真面目に応える飯島さんと間宮さん、

食べ終わるのは、結局21:00くらいになってしまった

 

「皿洗いは俺がやるよ」

「えっ?提督が!?」

 

一部軽巡以上の艦娘が『できるのか?』と言わんばかりの顔になるが、俺も自活民、家事スキルに不備はない

むしろ

 

「何から何まで間宮さんや飯島さんにやらせる訳にも行かないでしょ」

 

笑って厨房に入り、

 

「じゃあ飯島さん、挨拶の方を」

あきつ丸(飯島明菜)を着任挨拶に回す

 

「っ!了解しました」

 

しずしずと歩み行く飯島さんの後ろ姿を見送り、俺は皿洗いを始めた…

 

 

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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