戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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終戦、そして戦後処理

「心の力…ついに顕現したか!」

 

某イーター2の金髪隊長のようなセリフを吐きながら

微笑う

 

「天龍ちゃん…こんなに立派になって…」

 

龍田、それは感想が違うと思う

「俺は最初から立派だぞ、

それはそれとして、天龍様の攻撃だ!」

 

「ダガァ!目覚メタバカリノ力デハ!」

 

「残念だったな」

天龍は、改二に伴う艤装再構成で

再度取得した刀を構えて

 

「オレは最初から、

この姿の全力を使えるんだ」

 

突進、反射的に繰り出される攻撃を

見事な水上ステップで回避する

 

そう、天龍は過剰適合の艦娘

艦側に蓄積された技能を全て把握している

 

そして、その中には

『改二を発現した状態での身体制御』

ももちろん含まれている

 

「ナンダトォォ!」

「だから、天龍様の攻撃だってんだよ!」

 

艤装と融合した半身から砲弾が放たれ

絶望的な火力が天龍に迫る

 

「効くか!」

シュァン、と鋭い擦過音と共に

天龍が大口径主砲を斬りとばす

 

「オラオラオラァッ!!」

 

繰り返し響く、擦過音

それは、砲を刻み、艤装の装甲を切り裂き、深海の鎧を砕く音

 

「これで…終わりだァッ!」

「ここで…死ネルかァッ!」

 

タ級は砕かれた装甲から漆黒の剣を生成

乱雑に振りかざして

 

天龍は新たな刀を正眼に構え、

互いの一撃が交差する

 

「………オレの…勝ちだ」

「…クソが…」

 

天龍の刀が先を行き

タ級の艤装、そのコアを破壊した

 

力を失い、

黒い煙となって艤装が消滅していく

 

「…マタナ…天龍…」

 

「おう、いつでも受けて立つぜ!」

崩れ落ち、消滅する艤装

四肢を侵食していた艤装が消滅したからか、解放されたタ級が倒れこむ

 

タ級の体も漂白されたような白から

色味が差している、

 

やがてその外装が白い帯のように解け

内側で眠っていた艦娘が出現した

 

「提督、重巡一隻確認

ドロップは鈴谷だ、確保するぞ」

 

「こっちに乗せてくれ、後は運ぶ」

「了解だ」

 

 

まだ不服げな目で俺を見上げる龍田を一旦眠らせて、輸送の手はずを整えることにした

 

まずは大淀に無線連絡、

続いて夕張と明石に連絡だ

うちには重巡が今までいなかったし

寮の掃除もしないとなぁ

 

女の子を長期間放置されていた建屋に放り込むなんてできない、それが現代っ子の鈴谷なら

なおさら反抗を買うだろう

 

流石にそれは避けたい、

 

艦娘に対しての総体的な態度は

あくまで『提督』として接して

管理官側の立場でいなくてはならない

そのためには反感を募らせない事が重要だ、鈴谷一人のために特殊処置は贔屓と取られる可能性も無くはない

 

だが、初重巡であり、強力な航巡、軽空母に成長する有望な艦である鈴谷のために配慮しないのは問題外だ

 

重巡って戦艦用の一部装備積めたよなぁ

比較的軽いやつならたしか積めたはず

基礎設計が同タイプだからか?

 

要は省エネ、コスト化した小型戦艦が

重巡に分類されるんだから同じ装備でもいいのかね?

 

「おい提督!おーい!」

 

「ん、ん!?」

「おい提督!ボサッとすんな

載せんぞ、片側支えてくれ」

 

「あっ、あぁすまん、ごめん鈴谷

最初の一回だけだから許せ」

 

許可もなく触れるのは正直気がひける

のだが、これは必要悪…落ち着け

 

「おらよっ」

「のわっ、ちょっ、危ないだろ!?」

 

片側支えろと言われていきなり全部預けるとか落とすから止せよ

 

「オレも乗せろよ」

俺がそっと鈴谷を降ろして

龍田の反対側に寝かせているうちに

主機を止めて天龍も乗り込み、

 

「鎮守府帰んぞ、、正直…眠てぇ…」

 

言ってる内に勢いが弱まってきている

まさか寝る気か

 

「オレはとまらねぇからよ、

提督も、止まるんじゃねえぞ…」

 

「不安だからやめろ!死ぬな天龍!」

どこかで聞いたセリフに

一瞬最悪の未来を幻視して慌てた俺が

声をかけるが

 

帰ってきたのは

 

「すぅ、、すぅ、」

 

静かな寝息だった

 

定員四人で四分の三が寝てるってどういう艇だよ、間違っても避難艇じゃねえよ

 

天龍、龍田の艤装と

二人本人+俺と鈴谷の重量は流石に艇がキツいようで、あまり高速では動かないが、

 

モーターをうるさく回すより、

この三人を起こさない方が優先かな?

 

ゆっくり帰れば良いだろう

 

轟沈者、ゼロ

大破、1、龍田

中破、ほぼ全員

 

まぁ、A勝利と言えるだろう

 

「おつかれさま、みんな」

 

そのしばらくあと、俺は鎮守府に帰投し

鈴谷を明石に任せて

大淀に消費資材の額を聞いて顔面蒼白になったり、鈴谷の着任挨拶に笑わされたり、

天龍の嬉しそうな表情に見入ったり

龍田に後ろからさっくりされたりした

 

あれだけの大規模艦隊

そうそう簡単には揃わない、

 

今後、あれが標準化する

なんて事は流石にないだろう

 

そんなことを考えている内に

すっかり夜になってしまった

 

戦闘海域に展開されるエリアの夜のように

不自然な暗さではない

 

全てを包み込むような

穏やかな闇

 

「あぁ、こんな日は

星を眺めるのも悪くないかもしれない」

 

一人、呟く

[あはは、なんかポエミーな事言ってるね

星見より夜戦しようよ!]

 

「お前には分からん感情かね?」

[さぁね、私は月や星を眺めて

綺麗だと思うことくらいはあるよ

でも、それ以上に夜戦が好きなだけ]

 

いつもの声とともに

俺は緩やかな夜を過ごすのだった

 

 

明日の修羅場に備えて

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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