戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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編成完了

全員分の艤装メンテを終えて

改めて選抜メンバーを呼ぶ

 

「今回の作戦は輸送、給糧艦を持たない鎮守府という都合上、長い航続距離を持つ艦で編成するべきだ、というもの、航続距離の短い(燃費のいい)艦でピストン出撃を繰り返すべき、というもの

会議は紛糾したが

 

俺個人の見解としては、その場で補給すればいいんじゃないかな」

 

いや、だから補給ができないから

その話になってるんだろ

 

と総ツッコミが入る

しかし

「俺は艤装メンテのために同行する

今回は輝那を使えない為、戦力外となるが、資材補給も可能なはずだ…ただしそれを行うためには小型の避難艇ではなく定員15名の中型クルーザーが必要となる」

 

「っぽい?連合艦隊と提督でも13名っぽい。2名分あまりっぽい?」

テーブル周辺で言っていたため

ちょうど左側の隣から夕立が聞いてきた

 

「いや、あまりじゃなく

とある人物用の枠だ」

 

俺が夕立の頭を撫でながら言うと

駆逐艦勢から謎の視線が送られて来た

 

《……………》

俺の右手に集中する視線

 

なんだ?どうかしたのか?

「ん、っぽ〜い」

 

夕立が上機嫌な声を上げて

周囲の駆逐艦勢からの視線が強まる

 

「どうしたお前ら」「ううん!なんでも」

「そうだよ、なんでも」

「しれーかん撫で…なんでもないです」

 

霞、曙ら、古いツンデレ艦はダメだけど、優しい艦なら撫でることもできるんじゃないかなぁ?

なんて呟いてみると

 

「頑張るっぽーい!」

 

見事につられている…

この子の将来が心配だ

 

「…で、当たり前のように私達が編成されているのだけれど!?」

 

「空母棲鬼の実力を見せてくれ」

「……はぁ、

 

争いは好きではないのよ」

「何のために隠海棲艦になったのかしら」

 

「隠海?」

 

「そう、隠海

海より隠れ、深海の意思に逆らい

深海の使命を放棄した反逆者」

 

いくら戦いから逃げても、所詮戦いの中でしか生きられないのが私たちよ、と言いながら微笑う空母棲鬼

 

「そうか、、じゃあ再編成を…」

「やるわよ、私達だって戦える、戦うのが嫌だからといつまでも逃げている訳にはいかないでしょう?」

 

「……いいのか?せっかく戦いから離れていたのに、無理に引っ張り出される形になるが」

 

「言ったわよ、私達も深海出身であることに変わりはないわ、戦って、戦って、百戦を以って練磨の果てに

擦り切れてしまう定めなら

真金の刃のあるうちに、あらゆる敵を切り裂きましょう」

 

空母棲鬼は左手を軽く振り、その袖から

大型の刃を展開した

 

生物的な艤装の構造は未だ完全解明出来ていないが、それでも、深海棲艦の艤装の一部は解明されている

そのデータによると

 

艦娘よりも遥かに霊体的な存在が強く

物質的な存在の比率が低い、

そして、

体の大半が金属製であるという

 

体そのものを変形させるような無理すら可能なのか

 

「随分とポエミーな事だな鬼姉ちゃん」

俺が感心していると、横から

レ級が出てきた

 

「レ級…鬼ねぇちゃんって私の事?」

「おぉこわ、ツノ生えてるから怒ると怖えなぁ、な!提督!」

 

「俺に振るな!俺だって怖い!」

その瞬間

空母棲鬼の左袖から伸びていたブレードが細く薄く、布状に変形して、俺に伸びる

 

「うふふ、提督…私は

怖いかしら?」

「はい怖いです」「怖いかしら?」

あっこれエンドレスリピートや

 

「いえ、可愛いです」

「そう、ありがとう」

 

優しく、しかしどこか攻撃的な笑顔を見せて

俺を離し、

「私はどうすればいいの?

提督の敵は全て滅ぼしてあげるわ」

 

「言ってることがヤンデレ…いえなんでも」

再び謎の布がシュルシュル伸びてきたので慌てて回避して、

 

「今回の作戦は二つの艦隊を交互に出撃する運用で航続距離をカバーする

移送用のクルーザーは戦力外、武装は貧弱だが、装甲は一応のクリスタルコートを施してある

アルミ(ボーキ)の蒸着と鋼材の装甲に表面硬化処理、まぁそこそこ程度の防御は期待できるはずだ」

 

「連合じゃなくて交互出撃かぁ」

「戦闘回数が嵩むからな、周囲の警戒、急場の緊急出撃要員、出来ることは多いぞ」

 

笑いながら鬼畜宣言した俺は

メンバー全員の名前を記録したタグを作ることを伝えた

 

「前回は防衛の都合上、轟沈の可能性は低かったし、時間もなかったために作っていないが、今回は侵攻作戦、

誰かが助けられる体制を維持できるとは限らない

もしかすれば、轟沈、艤装完全破壊もありうるからな」

 

それはつまり、遺品を事前に作っておけ

という指示に他ならない

 

金剛のリボンしかり、初春の扇子しかり

形見になるものはあると言えばあるが

それはある意味でパーソナルアイテムだ

 

安易に渡しておくなんて出来ないだろう

 

「提督は、我々が沈むと思っているのか?」

 

長門が気色ばむが

「それは違いマース!提督は助けられない可能性があると言っているのデース!」

 

金剛が止めて

 

「万一を想定して言うことがそれか!

轟沈前提の遺品など誰が作るか!それではまるで逆修の墓、死んでも良いと気を緩める元になるぞ!」

 

長門が怒鳴る

 

しかし、

 

「それを想定しない訳じゃないがな」

 

俺も、そこまで言われては引っ込めない

 

「気を緩めるな、と言うのは簡単だ

しかし、どこかで休まねば人は破綻する

それは艦娘も同じだよ、

俺とて例外ではないし、長門も継戦時間はそうないだろう?万一、その可能性を排除するわけにはいかないのさ」

 

「しかし!」

「そも、油断などしなければいいだけの話

長門、その圧倒的火力は何のためにある?海域を支配する制圧能力は何のためにある?

それは長門が戦場を征くだけで

味方に《勝った》と思わせるほどに圧倒的だというのに」

 

俺は薄く笑いながら

最後の一言を告げた

「お前はもっと傲慢になっていいんだ」

 

獅子は兎を狩るにも全力を尽くし

しかし兎に怯えることはない

 

それは兎を脅威としていないからだ

長門の戦力を持ってすれば

たかが一艦隊ごとき雲霞の群れにも等しい

 

その状況で、何を恐れる

それこそ杞憂というものだ

 

「…そうか、私が…私自身が…最高戦力

私が最強…はは、はははは!

何を忘れていたのか私は!何を怯える必要があろうか

 

この身は長門型戦艦!日の本に燦然と輝く覇者なのだから!」

 

 

うん、自身を取り戻してくれたようで

何よりだ

 

[意外とあくどい?]

[提督の煽りスキルも結構育ってるわね]

 

「さぁ、出港するぞ!装備はいいか!

弾薬とボーキは持ったな?

燃料は満タンまで入っているぞ」

 

長門が意気揚々と離しているうちに

作戦を固めることにした結果

 

練り上げられ、

究極に達したその作戦は

『高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応せよ』

完璧だ

 

 




襲撃ならず…ごめんね

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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