文章の荒さはお許しを
「さて、朝起きて見れば…」
「大雨だね、提督」
時雨、毎度思うけどお前はなぜ提督私室に入ってこられるのだ
「台風の影響だと言う話だね、
土砂災害とか、道路冠水とか、川の氾濫とか…無いといいんだけど」
「どこかでは起きるだろうな、
地盤もそこまで安定している土地ばかりでは無いんだ、ただでさえ先行きの暗い日本経済に暗雲が影を落とさない事を祈るほか無い」
「時雨…今日の出撃は無しだ、
遠征隊に伝えてくれ、あと遠征中の艦隊はあるか?」
布団の中で上体を起こし、霞む頭を必死に回して
時雨に問う
「えっと、陽炎、不知火、秋雲
暁、雷、電の六人が遠征中だね」
「うん、緊急連絡だ
深海棲艦は無視しても良い、目標再設定『遠征隊の全員生還』帰還までが遠征だ
海上では雨風の影響を直接受ける分危険だ
即時、近隣の風雨を凌げる陸地へ移動
雨が上がるまで、あるいは待機限界まで旗艦判断のもと待機せよ」
「了解、電報を送信するよ」
時雨は走って放送室へ向かった
あそこにある大型の装置なら
ハイパワーな分、長距離まで送信可能だ
この悪天候で届くかどうかわからんが
まぁ送らないよりマシだろう
繰り返し再送信のコードでの送信
断片的にでも伝わればつなぎ合わせて全文を読み取ることも可能なはず
「帰還するまでが遠征だ、というなら
可哀想な話だがバイドに侵食されて
限界を超えてしまった以上、もはやそれは帰還の試みさえ許されない敵でしかない
それは、深海棲艦も同じかもしれないが
「海に隣する鎮守府の立地上、防災、排水施設は強力だ
津波に対するマニュアルまである
鎮守府にいる以上、この台風による被害を直接受けることはない、艦娘達にはそう伝えなくてはな」
俺も階級章の変わった制服を纏い
放送室へと赴いた
「さて、コードO-全館放送-で通達する
時雨、良いか?」
「うん、これで大丈夫」
時雨に回線をつないでもらい
回線を開く
「館内放送、館内放送、
全艦に通達、本日は台風の影響により
暴風雨となっている
風雨の影響を受けて、本日予定されていた全出撃は中止とする、ならびに現在遠征中の部隊に於いても目的再設定を発令、全員の生還を目標とした」
息を一つ付き、軽く間を開けて
「悪天候中の移動、および戦闘は非常に危険である故の処置である
これを聞いて、鎮守府の被害を危険視するだろうが、狼狽えるな
鎮守府は立地上、極めて水に強い構造で建てられている、
排水路の確保は万全である
また激しい風に対応する措置として
対砲撃を想定した三重のハニカム構造を持つ外壁の強度は完璧だ
飛来物の窓への衝突は
防割フィルム多重貼付、クリアコートによる強度上昇を施した強化アクリルガラスの防御があれば
鉄骨が時速60キロで飛来しても防御しきる」
再び息をつき
声の調子を変える
「安心したまえ、鎮守府に於いては
諸君の安全は約束されている」
ふぅ、これで一応ながら不安の押さえ込みもできただろう、もとより長門、摩耶、鈴谷のような強烈なリーダーシップを発揮する艦娘もいるし
聡明な大型艦達は駆逐、潜水艦の不安を抑えるのに力を貸してくれるとも思う
良い方向に進むと良いが
続いて近場にある安内鎮守府、狗邪韓鎮守府、網走鎮守府、原霧鎮守府および影響力の大きいラバウル第一、呉第一、柱島第一に無線で一斉送信する
内容は全て同じ
『此方創海鎮守府、神巫中佐より発信
現在台風暴風圏にあるため、出撃自粛中、
そちらも荒天に気を付けられたし、
なお、遠征中部隊の不時着があった場合には保護を願う』
一方的かつ届くかどうかの通信であるため、無駄な礼取りや文の伸びる要因はできる限り排除した要点のみの連絡
それだけ切羽詰まっている
と察してくれれば良いが
「…返信はやくね?」
早速返信がきたようだ
『原霧鎮守府より発信、予想以上の暴風であり、此方も出撃自粛中なり、
「嫁自慢かよ!」
ツッコミを入れながら通信の解読を再開
『遠征部隊の保護は了解した、受け入れ体制は十分である
神巫中佐の幸運を祈る』
最後に返信不要の符丁で無線は締められていた
『原霧提督が翔鶴好きであることはわかった、此方網走鎮守府、村野少佐
此方は現在、遠方海域出撃を避け
鎮守府周辺のみを警戒中、
遭難があった場合の保護は約束する
神巫中佐の幸運を祈る』
遭難すれば、二度と帰れない可能性だってある、陽炎にはまだ周辺の土地勘もない
そもそも交友半径の広い艦娘とて
嵐の中で方向を見失い、陸地に着けずに燃料切れに陥る可能性もある、そういう意味では
彼女達の命はまさに幸運に委ねられるわけだ
助かってくれよ、
後輩が
とにかく、他にできることはない
今日の執務もストップ、というか
出撃に付随するものや金銭、資材支出関係の書類ばかりであるため、書く理由そのものが無くなった
俺にできることは、こうして近場にある鎮守府や影響力の大きい鎮守府に受け入れ体制の用意を頼むことだけだ
あとは、艦娘達に顔見せにでも行くか
提督がいつまでも出てこないのでは
もしや逃げたのでは?
なんて妄想の種になりかねない
「提督、朝食を摂りに行かないかい?
そろそろ9:30になってしまうから
かなり遅いけど、食事を欠かすのは良くないよ」
考え込んでいた俺に
時雨の声が掛かる
「あぁ、わかった…ちょうど今考えていた所なんだ、一緒に行くかい?」
リップサービス程度に誘ってみる
まぁ、社交辞令だと察してくれ
「お言葉に甘えて、一緒に食べよう
僕も、この雨は少し嫌いだ」
「おや?雨は好きなんじゃなかったのか?」
「雨にも種類くらいあるさ
この雨は…良くないよ」
俺の後ろに立って、腕を取る時雨は
俺の服の袖をくいくい引きながら
はやく行こう
と目で訴えてくる
「わかったわかった、じゃあ朝食を摂りに行こう」
「うん、一緒にね」
結局、間宮さんに遅いと怒られ
駆逐艦や球磨型に絡まれ
執務室に戻ったのは12時過ぎだった
600話記念番外編は
-
過去編軍学校
-
過去編深海勢
-
裏山とかの話を
-
テンプレ転生者(ヘイト)
-
ストーリーを進めよう
-
戦争が終わった後の話を!
-
しぐ……しぐ……