戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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心の火

「…台風も行き過ぎた、あとは陽炎たちの帰りを待つだけだ」

 

俺はずっと同じ姿勢でいた為に

固まった体を無理に起こしながら

呟く

 

そろそろ隼鷹ともお別れ、天龍たちも出立が近いというのに

なんでこんな時に災害などに邪魔をされなくてはならないのか

 

「全く…やっていられない」

 

執務室の外側、窓の方から海を見渡し

晴れ上がった空を憎々しげに睨む

 

[提督ー?どうしたの?]

「なんでもない、晴れた日は気温が上がる

気温が上がれば当然体力と水分を消耗する、十分な補給物資を持っていないだろう遠征部隊の死亡確率がそれだけ上がるということだが

 

俺が介入できることなど

せいぜいが周辺の徹底捜索だけだ

艦娘にそんな事させれば『艦娘運用に関する内規』

第8条一項、

『内地における艦娘の運用』

に引っかかってしまう」

 

俺が行こうにも俺は『身分ある人物』であるため(といっても艦娘を統制できるという意味でだが)

外出も制限されている

 

外に出ることさえできないとは

全く……全く

 

どうしようもない現状に憤っていると

控えめなノックが聞こえた

 

「司令官、良い?」

「……神風か、わかった入ってくれ」

「失礼します」

「あたしもいいかな?」

「隼鷹まで?…まぁ良いけど」

 

どうせやることもないんだ、と

二人を迎え入れる

 

「暗くなってんじゃないよ、提督」

突然隼鷹に背中を叩かれた

 

「いってぇっ!艦娘のパワーだとシャレにならないんだから気をつけてくれ…」

「ごめんよ、提督」

 

半笑いで隼鷹が応じる

そのあとすぐに表情を改めて

真剣な声音で語り出す

 

「でもさ、お別れってのは誰にでもあるものなんだ、提督の立場は、それを繰り返し体験する

だから、言い方は悪いけど重要性の低い(代わりのいる)『艦娘との別れ』には慣れなきゃいけないよ」

 

「だが!そんな事は…出来ない!

轟沈するもの!病に倒れるもの!

解体されるもの!それらをゼロには出来ないだろう!だけど、俺はそれを容認なんて出来ない!」

「……」

 

「俺は受け入れはしない、絶対に

犠牲ゼロを掲げて、俺は鎮守府に着任したんだ!」

「いい加減にしろよ!」

 

響く破裂音、何が起きたかの理解が遅れた

俺は数秒の間立ち尽くし

隼鷹にひっぱたかれたのだと悟った

 

「死ぬ奴はどうあがいても死ぬ!

それはアタシも、あんたも同じ!

いつまでもウジウジ言って理想ばっかり見てちゃダメなんだよ!」

 

「理想を見て何が悪い!

理想無くして人は成長しないんだ!

なりたい理想があって、近づきたいと欲するからこそ人は努力する!成長する!

俺はあの頃(ゲーム)のような鎮守府の為に!理想を諦める訳にはいかないんだ!」

 

俺は思わず叫んでいた

 

「二人とも熱くなりすぎよ、落ち着いて」

「「っ!」」

 

神風に引き離される

いつのまにか額がぶつかるレベルで

至近距離から睨み合っていたのだ

 

「っ!すまない…これが実戦経験の差か」

「…そっちこそ、提督の理念って奴かね」

 

「はぁ、二人とも、いつまでもケンカしてないでちょっとは良い所見せなさいよ、特に提督」

 

「俺かよっ!しかし今の俺は儀装も使えない、輝那の一発が限界の状態だ

こんな無様な状態では、戦力にならない」

 

「何言ってんのよ、司令官は立派な戦力だわ、いい?鎮守府の戦力の総基準は提督の階級と司令部レベル、これはわかってるわよね?

他にも細分化された基準はあるけど

主流派この二つ、でも大本営の基準では

魂が問題になるの

 

艦娘として接続してわかった、『心柱』の支え、絆から伝わってくる司令官の魂は、火傷するくらい熱くて、芯が通っていて、深海の意思なんて比じゃないくらいあったかくて、とっても安心できるの」

うっとりとした目でそんなこと言われてもわからん…

 

 

「まずは落ち着いてくれるかい?

あとそれの何が戦力なのかわからん」

俺は徐々に迫ってくる神風を押さえ込みながら再度質問する

 

「艦娘は提督との間に、精神的な接続を形成するんだ、それが一方的なものか双方向かは人によるけど、そのリンクが心柱による出力制限を緩和、さらに一定レベルを超えると出力向上に影響する

つまり、提督の魂は接続するだけで

信頼しあえる艦娘を強化するって訳だ

 

これで補足出来たかな?」

 

隼鷹は神風に両手を掴まれて押し込まれている俺を離れたところから悠々と眺めながら

ケラケラと笑う

 

「つまり……愛されてんね〜」

「…………きぁぁぁぁっ!

何にも言ってない!私そんな事言ってないっ!」

 

[二股?何又かよくわかんないけど

提督はそろそろ身を固める算段を立てた方がいいと思うよ?…まぁいつでも良いけどさ]

 

こちらも苦笑しながら川内の声

ジタバタしながら必死に隼鷹に突っかかる神風…さっきまでの風格はどこへ言ったのかわからん

 

まぁ可愛いから良いか

 

「まぁ、ごちゃごちゃ言ったけどさ

あたしは死ぬ時、辛気臭い顔で見送られるのは嫌……まぁそもそも死にたか無いけど

死んだ時、周りに悲しみを振りまいちゃうなんて、自分も悲しくなるじゃん

どうせ最後に見るみんなの顔なんだ

ちょっとでも明るい表情で送られたい

 

私たちは死を形にした存在『軍艦』

なんだからさ、どうせ行くなら地獄巡りだよ、それなら悲しい顔より、笑顔を覚えていたいじゃない」

 

「…そうか、わかった」

 

俺に寄りかかって座り込んで来た

神風を立たせると同時に

 

陽炎が執務室に飛び込んで来た

 

「先輩司令っ作戦完了よ!帰投したわ!」

 

「!!お疲れ様、迎えに行かなくてごめんよ…良く生きて帰って来てくれた、ありがとう」

 

思わず、陽炎を抱きしめる

「よかった、帰ってきてくれた」

 

「……先輩…」

 

陽炎は俺の帽子を取って

ゆっくりと、俺の髪をなでる

「心配してくれて、ありがとう

…艦隊指揮任務、お疲れ様でした」

 

「帰投を確認した…お疲れ様」

 

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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