戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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私の名前は

「…黙れ」

 

《っ!》

 

取り敢えずカオスになっていた話を強制的に止める、あとは

「できることをする、対策はこれだけだ

創海鎮守府(俺たちの家)は取らせないし、向こうの提督のに対する抗議はする…差し当たって

監視カメラが必要と判断する」

 

「…我々の方は残念ながら、この問題には介入できない、彼女達側の鎮守府の問題だ

よって戦艦以下、大人達による継続的な警戒、及びコトに及びそうになるのなら介入する」

 

長門が代表として答える

 

結局、具体的な対策は

高速戦艦に押し倒されるより早く

別の戦艦が引っ張る、というそれだけの話になった…まぁシンプルイズベスト

こういうのは単純な方がわかりやすい

 

雷と鳳翔の二人による足止めも

そこまで長くは保たないだろう

「…よし、対策の方針は決まったな

①榛名の研修期間中、提督を襲わせない事

②他の艦娘と同等に扱い、ここでは虐待はされないと教えておく事

③榛名を裏切らせて相手の鎮守府に帰し、内面から反逆を起こさせる事

 

大筋はこれで良いだろう」

 

「はい、私達出張研修艦はもう出発してしまうので、対策を講じた後には何も

出来る事はありませんが、それでも

ご無事を祈っております」

 

扶桑さんが儚げな笑顔を見せる

「所詮1ヶ月の研修期間だよ

すぐにまた会えるさ」

 

「…はいっ!」

扶桑さんの手を取って、笑顔を見せる

手、ちょっと冷たいなぁ

 

「あ…提督」

 

手を離した瞬間、

どこか残念そうな声が聞こえる

 

「抜け駆け発見デース」

「扶桑さん…」

 

「…提督、この二人は何を言っているのだろうか、私には理解できない」

「ははは、俺にも理解なんてできないよ

はぁ……」

 

扶桑さんの手を握ったくらいで

なぜ抜け駆けと呼ばれるのか

 

扶桑さんの手はスベスベで、

柔らかくて、ちょっと冷たかったけど

それのどこが抜け駆けに該当するのかわからない…

 

提督sideout

榛名side in

 

「あなたが提督なの?

よろしくお願い致します(ごめんなさい)

 

私は貴方に、ひどいことを強いてしまう

 

初めて会った提督は

私のことを、『榛名』とは呼んでくださりませんでした、私はただ『高速戦艦』として戦力の一単位として計算するだけの数値でした

 

『私』は存在としてカウントされず

『金剛型高速戦艦・3番艦』として常に扱われて、戦力として運用されていました

 

それは、ある面では正しいのだと思います

なぜなら私達は艦娘であり

私は『金剛型高速戦艦・3番艦』である事に間違いは無いからです

私達は常に必要十分量の補給、休養を与えられ、そしてスペックから期待されるだけの戦果を出し続けました

 

それが、いけなかったのでしょう

私達は常に兵器として存在して

力として振る舞うことに慣れすぎてしまったのです…私達の提督は

私達を兵器として扱い

私達は自身を兵器として認識していた

 

そこに齟齬はありませんでした

 

そうして、私達は出撃を繰り返し

深海棲艦を撃破しつつけて

心を摩耗させていきました

 

「出撃だ、行け」

「はい、榛名は…大丈夫です」

 

「もう一度だ」

「榛名 出撃します」

 

戦闘を繰り返して、

大切な何かを削り続けて

 

そして、その果てに命じられたのは

 

「…色仕掛け、ですか?」

「あぁ、お前ならきっと上手くいく

研修を名目として創海の提督に近づけ」

 

「はい、榛名…了解しました」

 

そうして、研修と偽って元黒杉、現創海鎮守府に着任した私は

まずは命令書通りに野郎に(Y)勘違いさせる(K)シチュエーション (S)

No.1『初対面で突然のキス』を狙い

 

「提督!大人しくしてください!」

「できるかっ!」

 

提督は私の出力に10秒程度とはいえど抗い、その目には…仄かな青い光が灯っていました

 

それは、深海棲艦の

空母ヲ級の光

 

「ひっ!」

 

私はとっさに体を引いて攻撃に備え

その追撃が来ない事に惚けて…

「ふぅ…」

 

「も、申し訳ございませんでした!」

提督に失礼を働いていた事に気付いて

慌ててお詫びを入れました

 

提督なら、こんな時は確実に

姉妹艦か仲の良い艦の解体をチラつかせてくる、それを学習していた私に

かけられた声は

 

「落ち着け榛名、別に責めはしない」

そんな、優しい声でした

 

全てを見透かしているような、全てを知っていて、あえて受けているかのような

落ち着き払った、余裕ある

とても、優しい声でした

 

榛名side out

提督side in

 

「さぁ、て…今の問題は榛名だよなぁ」

 

「テートクー!my sisterも

出来れば助けて欲しいデース!」

 

金剛が訴えてくるのはもっともなんだが

 

あの目は…大丈夫かなぁ

正直、人間性を失いかけているような

命令を実行する事だけを視野に残して、他を排除しているような…

 

「うん、全ては根気だ

最初はゆっくりでいい、ゆっくりと外側を抜けて、内側に干渉する

此方側で不信と反乱の種を蒔く

そうすれば必ず…榛名は

向こうで反乱を起こす筈だ」

 

榛名という艦娘は、素直で優しい

という性質が強く描かれているが

反面の問題もある、

それは素直すぎる、優しすぎるせいで

周りの為に、自分を犠牲にしてしまう事、それをなんとも思わずにいられる事だ

 

だが、それを逆用してこちら側から干渉してやれば、トリガーは効く

既に弾は装填されている、まさしく兵器として磨き抜かれた照準技術も備わっている

 

あとは、引き金を引くための意志を

本人に芽生えさせれば良い

 

「…少々心苦しいが、榛名を懐柔して

利用させてもらう、それが最善だ」

 

今後の予定を変更、再度提示する

「榛名には今後、

金剛か俺のどちらかについてもらう

金剛型高速戦艦としての運用方針はもうわかっていると思うから

高火力艦娘としての制圧、及び支援を受ける/行う際のスキルを習得してもらう

あとは執務の秘書艦役もやってもらう

これは単に執務を行うのみならず

俺の近くに居させるという意味でもある」

 

「なるほど…以前の提督の姿と神巫提督の姿、その違いを見つけさせるのですね」

「そうだよ、艦娘と艦とは違う

それを知ってもらおうじゃないか」

 

俺と戦艦娘による会議は終わった

 

 

 

「どうしましょう…聞いてしまいました」

 

一人の艦娘の影には、

誰も気づけなかった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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